http://www.webmoney.ne.jp/
新聞などで、インターネット決済に関する記事を見ない日は少ない。セキュリティの問題、新しい電子決済サービスなどさまざまだ。新しい決済サービスは多数生まれているものの、現状でこれがスタンダードと言えるものはまだない。
このシリーズでは、現在実用化されている決済サービスの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素などを検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。
さて、10回目はプリペイドカードでデジタルコンテンツや商品を購入できる「WebMoney」をお送りする。
「WebMoney」は、アスキーサムシンググッドが開始した、デジタルコンテンツなどの小額決済向けプリペイドカード。とはいっても磁気カードなど特殊なものではなく、16文字の英数字が銀色の膜で隠されているだけだ。インスタント宝くじのスクラッチカードを思い浮かべればわかりやすいだろう。この膜をコインで削り、出てきた文字列をWWW上で入力すると、支払いができる仕組み。販売情報や残高は決済センターで管理されており、カード自体には利用金額や残高情報は記録されない。残高照会は、WWW上で行なえる。設定などは一切必要ないので、初めての人でも簡単に使えるだろう。仕組みとしては、第2回で紹介した「BitCash」と同じだ。
「WebMoney」は、BitCash同様に、店頭でカードを販売することにより匿名性を実現している。インターネット上で受け渡しが完了するデジタルコンテンツなら、誰が購入したかまったく分からない。カードは2,000円(2,000point)と5,000円(5,000point)の2種類。1point=1円だ。
利用の大まかな流れ
1.WebよりWebMoneyカード取扱店を探す
2.店頭でWebMoneyカードを購入
まずWebMoneyを販売している店をWWWサイト( http://www.webmoney.ne.jp/ )のカード取扱店一覧から探してみる。ラオックスやソフマップなどの大手パソコンショップのほか、8月6日からは全国1,800店舗のサンクスでも取り扱い始めた。
WebMoneyを買うべく自宅近くのサンクスへ行く。2,000pointと5,000pointのスタンダードデザインと“The
Underground Live'98”特製カード(2,000point)があったので特製カードを買った。もしかすると店員がWebMoneyを知らず、「待たされるのではないか」という不安を抱いたが、あっさり買えて拍子抜けした。カードには野村佑香や松本恵のデザインカードもあるが、限定発売なのであらかじめ予約の必要がある。
WebMoney使用時の大まかな流れ
1.WWWサイトよりライブ視聴を申し込む
2.受信用パスワードを入手する
3.オンラインライブを見る
WebMoneyは'98年4月にスタートした。現在利用できるWebショップは40店舗余りだ。ちょうど「佐野元春 and The Hobo King Band 有料オンラインライブThe Underground Live'98」が行なわれる。佐野元春氏は、早くからホームページを開設しているほか、過去に数回インターネットライブ中継を行なっており、インターネットの活用に積極的なミュージシャンの一人だ。
今回行なわれる有料のライブ中継では、決済手段のひとつとしてWeb Monyを採用している。早速、WebMoneyで申し込むことにした。
ライブを見るには、受信ソフトRealPlayer5.0が必要になる。ホームページから「詳細」ボタンを押すと、ライブの詳細情報が得られる。Step0の「Movie」ボタンを押せば、RealPlayer5.0が動作するかチェックできるようになっている。料金の払い戻しには応じていないので、購入前には必ず試して欲しい。
受信できることが確認ができたら、いよいよ申込みだ。ホームページから、決済方法を選択すればよい。今回は、もちろん「WebMoney」だ。
料金は配信されるデータ量により違うが、28.8k Modemで300point(300円)56k ISDNで500point(500円)だ。今回は28.8kを申込んでみる。スクラッチ番号の入力を要求されるので、番号を入力する。すると、購入確認のメッセージが表示され、ここで「購入する」ボタンを押す。これで購入が確定し、取り消せなくなる。決済が完了すると、ライブ受信に必要な入場IDとパスワード、利用金額と残高が表示されるのでメモしておこう。
万一、入場IDやパスワードを忘れてしまった場合、もう一度確認することができる。これは、デジタルコンテンツが正常にダウンロードできなかった場合に備え、同じスクラッチカードである一定の期間内であれば、再度ダウンロードのやり直しができるというものだ。今回の場合は、決済完了から1年間の期限となっていた。
ダウンロードしなおす場合は、初めて申込みした方法と全く同じ手順でスクラッチ番号を入力ればよい。すると「ショッピングプロテクション期間中」とメッセージが表示されるので、「継続」を選ぶと、再度入場IDとパスワードが表示される。
また、決済時にカードの残高不足だった場合は、「○○○point残高が足りない」というメッセージが表示され、更に別のスクラッチ番号を入力する画面になる。最大20枚までのカードが利用できる。またカード情報を間違って入力した場合は、「ご確認ください」というメッセージが表示される。
何回か利用していると、カード残高を忘れてしまうときもある。そんな時はWebMoneyのWebサイトで残高の確認をしよう。WWW上のフォームからカード残高照会を選び、カードに書かれているスクラッチ番号を入力して「照会」ボタンを押す。
また、何枚もカードを持つのは紛らわしいもの。そんなときは、複数のカードを1枚にまとめる機能を使おう。プレゼントなどでもらったカードをまとめたい場合に便利だ。WebMoneyでは、1回の購入時の支払いにカードを最高20枚まで利用できる。
まとめ終わって残高が0になったカードでも、すぐに捨てないほうがいい。「ボーナスサイト」で50日間有効な抽選に参加でき、WebMoneyの限定カードが当たるかもしれないからだ。また、同じコンテンツをダウンロードしなおす時もカードが必要だ。
カードさえ買ってくれば、特別な設定もなく使える点は便利。同時にカードの購入から支払いまで名前や住所などの個人情報をまったく必要としないので、プライバシーに敏感な人でも気軽に利用できるだろう。
一つ気になったのは、商品購入のときに、スクラッチ番号の入力ではSSLを使った暗号化処理がされているが、残高照会や残高引き継ぎのときはSSLが使われていないところだ。
同様の決済システムとしては、「BitCash」があるが、使い勝手は両者とも大差はなかった。やはりなんといっても、使えるショップの数と魅力あるコンテンツにかかっている。
異なる点として、WebMoneyでは配送を伴う物販も扱っており、利用金額の上限もWebMoneyの方が高い。一方、BitCashはデジタルコンテンツを主に扱っており、匿名性を強調する反面、子供向け、成人向けカードやキャンペーンカードなど、コンテンツの内容により利用制限が行なわれるような仕組みがされている。
運営会社の業界的特色にもよるのだろうが、個人的にはBitCashの方が、利用方法
がデジタルコンテンツに限定されており、コンセプトがはっきりしていると感じた。
●購入にあたって
入会条件:特に無し
●利用にあたって
プラットフォーム:SSLが使えるWWWブラウザー
●費用:利用料のみ(年会費等はない)
●利用技術:SSL
◎評価基準(三段階評価)
設定の簡便 :★★★
○設定はまったく無く、日本語環境でSSL対応のWWWブラウザーさえあれば、即利用できる。
安全性の配慮:★★☆
○安全性ではWWWブラウザーでスクラッチ番号を入力するときにSSLを使っている。しかし、残高照会や残高引き継ぎの時にはSSLがかかっていない。
利用金額 :★☆☆
○利用金額の上限はプリペイドカードの額の20枚分(最大10万円)。
○複数のカード残高を最大10,000pointまで一つにまとめられる。
使いやすさ :★★☆
○カードを買ってきてしまえば、支払いは簡単。匿名性も保てる。
('98/08/27)
[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.ne.jp) ]
第2回「BitCash」
/www/shopping/bitcash.htm
第3回「アコシス」
/www/shopping/acosis.htm
第4回「First Virtual Internet Payment System(ファーストバーチャル)」
/www/shopping/fv.htm
第5回「QQQ Members Commerce System(サンキューシステム)」
/www/shopping/qqq.htm
第6回「CyberCash(サイバーキャッシュ)」
/www/shopping/cyberc.htm
第7回「Smash(スマッシュ)」
/www/shopping/smash.htm
第8回「P-Click(ピークリック)」
/www/shopping/pclick.htm
第9回「コンビニ収納代行システム」
/www/shopping/wellnet.htm