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NICTが研究施設を一般公開、UWBでDV映像を伝送するデモも


 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が7月30日と31日の2日間、東京都小金井市にある研究施設を一般に公開するイベントを開催している。現在NICTが研究・開発に取り組んでいる通信や電波、観測技術などに関する40テーマ以上の展示が設けられており、UWB(Ultra WideBand)によるビデオ伝送システムのデモンストレーションも行なわれた。


100MbpsのDV映像をUWBで伝送

 UWBビデオ伝送システムは、NICTが沖電気工業らと共同開発したCMOS高周波集積回路(CMOS-MMIC)を搭載した、インパルス方式のUWB送受信モジュールを用いたもの。3.5~4.5GHz帯を使って、目視できる範囲において125Mbpsの伝送速度を実現する。デモでは、DVカメラで撮影した会場の風景をIEEE 1394経由でビデオ伝送システムに入力し、CMOS-MMICで変調。数十cmの距離をUWBの無線で伝送した後、同じくCMOS-MMICで復調してPCに映し出していた。DVの映像レートは100Mbpsだったが、再生はスムーズに行なわれていた。

 なお、今回のデモはDV映像の伝送という高速データ通信をUWBで行なうものだったが、インパルス方式の最大の特徴は消費電力が小さいことだという。無線ICタグ(RFID)やセンサーネットワークにUWBを用いる場合など、高速データ通信が不要なシステムではインパルス方式が適しているとしている。

 一方、IEEEにおけるUWBの標準化作業においては、インパルス方式とともにMultiBand OFDM(MB-OFDM)方式も有力候補となっており、NICTでもMB-OFDM方式の無線システムについても研究を進めている。NICTがこれまでに開発した両方式の送受信システムを用いた実験では、同時に使用してもシステム同士の干渉による問題は見られないとしている。


テーブル中央に立っている2本のアンテナ間がUWBによる無線伝送区間 UWB送受信モジュール

RFIDが家の表札に

 RFID関連の展示では、「電子表札」が目を引いた。その家の住所や位置情報、家族構成、建物の平面図などの構造情報などをRFIDに記録し、表札として掲げておくというもので、主に震災時の情報収集に活用することを想定している。救助隊が各世帯の電子表札を読み取ることで、安否や建物の被害状況などの情報を迅速に収集できるようになる。さらに平常時には、RFIDに格納されている位置情報を郵便や宅配、目の不自由な人の道案内、ガスや水道など公共料金の検針などに役立てられるとしている。

 今回、電子表札として展示していたのは、2.45GHz帯を使うシャープ製の無電地タイプのRFID。100Byteのメモリを内蔵しており、ここに各種情報を分割して格納しておくことになる。これをアンテナで読み取った後、建物の被災状況などを調査員がノートPCのアプリケーション上で入力し、RFIDに書き込むデモが行なわれていた。

 課題としては、今の製品では読み取り距離が2m程度と短いことがあるという。より低い周波数帯がRFIDに開放されれば、読み取り距離が延び、アンテナを取り付けた自動車で通過するだけでその地域の情報が迅速に集められるようになるという。また、格納される情報の性質から、暗号化や認証などのセキュリティ対策が不可欠となる。RFIDは、流通分野のように小型化・低価格化に向かう一方で、今回の電子表札のような高性能なシステムに発展する方向性もあると指摘している。


中央にある黒いプレートがRFID 建物の危険度を判定した結果データをRFIDに入力する画面

Webを漫才コンテンツに自動変換

 会場ではこのほか、飛行船を使って成層圏に通信ネットワークを構築する「成層圏プラットフォーム」に搭載するための光無線システムも展示されていた。1.5ミクロン帯の波長を用いて2.5Gbpsの伝送を行なえるシステムだが、飛行船の位置や揺れに応じてアンテナの方向の微調整を行なう機能が必要となる。NICTでは捕捉追尾制御装置も開発しており、今秋にも飛行船と地上の間でデジタルテレビの映像データを伝送する実験にとりかかる予定だという。

 今回のイベントは、NICTの前身である通信総合研究所(CRL)のときから、この時期に毎年開催しているもの。会場ではLANケーブルの工作教室やクイズラリーなども催され、夏休みの小学生や家族連れでにぎわっている一方で、UWBやRFIDなどの最先端技術も紹介されているのが特徴だ。

 小金井市の本部施設のほか、31日には茨城県鹿嶋市の鹿島宇宙通信研究センターや京都府精華町のけいはんな情報通信融合研究センターなども一般に公開される。けいはんなの研究センターでは、漫才メタファを用いてWebページを漫才のような対話型放送コンテンツに変換する技術を展示し、プロの漫才師との公開比較実験が行なわれるほか、RFIDを活用した昆虫採集の体験コーナーも設けられるという。


成層圏ネットワーク用の光無線アンテナと捕捉追尾制御装置 インターネット経由でアラスカに設置されたWebカメラを操作できるコーナーも

関連情報

URL
  イベント概要
  http://www2.nict.go.jp/so/f484/2004kokai/2004ippan.html

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( 永沢 茂 )
2004/07/30 20:08

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