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電子タグの普及にはプライバシーや地域特性への配慮が不可欠〜RFID特別セッション


 幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2004」で5日に行なわれた特別セッションでは、「ユビキタス社会実現に向けた連携の強化」と題し、総務省や経済産業省、RFIDビジネスを推進する民間企業の代表者などがそれぞれの立場から、RFIDを利用したシステムの普及に向けた意気込みと課題を語った。


省庁間の人材交流も含め政府が一丸となって推進する姿勢

総務省の大臣官房審議官を務める松井英生氏(左)と経済産業省の商務情報政策局審議官を務める桜井俊氏(右)
 政府の側からは、総務省の大臣官房審議官を務める松井英生氏、経済産業省の商務情報政策局審議官を務める桜井俊氏の2人が、現在のRFIDに対する政府の取り組みの状況を語った。ちなみに、松井氏は経産省の出身、桜井氏は総務省の出身なのだが、ともに6月に行なわれた両省の間の交換人事により現職に就いたということで、この件に関して従来の省庁の枠組みを超え、政府が一体となって取り組んでいくという姿勢が垣間見える。

 まず松井氏は、現在政府が推進する「u-Japan構想」に関連して、「どうも『ユビキタス』という概念が関係者の間で統一されていないきらいがある」と述べた上で、「ユビキタス社会で重要なのは、誰もがネットワークの存在を意識しないでその上のサービスを利用できるようになること」「年配の方の中には、携帯電話で電話するのが精一杯という方がまだまだ少なくないが、そういう人でも簡単にサービスを利用できるようにすることが重要」と語り、RFIDがそのためのキーデバイスとなるという政府の考えを説明した。

 松井氏は総務省の立場として、現在問題になっているUHF帯を使用するRFIDへの周波数割当問題について、「950MHz近辺の割当に関しては年内にも結論が出る見込み」と語ったほか、RFIDの国際標準規格の中でこの帯域を利用できるようにするための支援活動なども積極的に行なっていることも明らかにし、電波行政の一環としてRFIDの利用を強力にバックアップしていく姿勢を明確にした。

 その一方で松井氏は、「消費者の観点は極めて重要」「これまでは供給側の視点ばかりがもてはやされてきたが、今後は国と民間・消費者が一体となって問題の存在を認識しながらコンセンサスを作っていくことが重要だ」とも語り、プライバシー問題などを背景に消費者側からRFIDの導入に反対する意見が根強いことに特に配慮すべきとの姿勢も合わせて示していた。

 続いて登場した桜井氏は、経産省の立場から「電子タグは企業間連携のための重要なツール」と述べ、従来は主に企業内活動の効率化に費やされてきた企業のIT投資を、電子タグの導入により企業間取引の効率化にもつなげたいとの考え方を強く訴えた。既にそれに向けたプロジェクトとして、経産省では1個5円のRFIDの実現を目指す「響プロジェクト」を立ち上げているが、これについて桜井氏は「現在、書籍についているスリップのコストがだいたい1個3円程度なので、それに近いところで1個5円という目標を定めた」とその背景を語った。

 また実証実験についても、企業間のSCM(サプライチェーンマネジメント)を効率化するという観点から「業界全体で(実験に)取り組んでもらえるところにお願いしている」と桜井氏は述べ、「電子タグが産業構造政策のインフラである」と、RFIDを利用して企業の国際競争力を何としても向上させたいという意向を示した。


書籍にRFIDをつける理由と残された課題

日本出版インフラセンターの常務理事を務める本間広政氏(左)と日立製作所の古川一夫氏(右)
 このあとは、民間側のRFIDに対する取り組みについての解説が続いたが、その中で注目したいのが出版業界における電子タグ実証実験。日本出版インフラセンターの常務理事を務める本間広政氏が、予定している実証実験の概要と今後の課題について語った。

 本間氏は出版業界がRFIDを導入する必要性について、既に言われている万引き被害の防止といった観点に加え、現在の出版流通が抱える委託販売に関する構造的な問題をRFIDが解決できる可能性があると語った。現在、日本国内で販売される出版物のほとんどは書店への委託販売の形態を取っているが、この点について本間氏は「本来であれば書籍の形態や内容によって委託販売と買い切り制を使い分けするのが理想なのだが、通常の書店で販売可能な書籍は約65万点にも及んでいるため、実質的に個別の書籍毎にこれを区別するのは困難であり、ほとんどは委託販売の形を取らざるを得ない」と説明。これに対し、RFIDを使うことで書籍の管理を大幅に効率化できれば、書籍によってもっと柔軟な流通形態を取れる可能性があると訴えた。

 こうした背景を受けて実施される実証実験では、印刷・製本段階でどのようにすれば、初版部数が数百万部に達するようなケースでも問題なくRFIDを書籍に組み込めるかといった点を検討するという。また、前述のSCMへの応用や、図書館で既に利用が進みつつある13.56MHz帯のRFIDと今回の実証実験で使用するUHF帯のRFIDの両方が1つの書籍に付いた場合に、どのような影響が出るのかといった点を中心に実験を行なう。具体的には、まもなく実験に使用するダミーの書籍の準備を開始し、11〜12月にかけて全国12カ所で実験を行なう予定となっているとのこと。

 ただ現段階で残されている課題も少なくない。例えばRFIDを万引き防止用に利用しようとすると、どうしても通信可能距離が2〜3m以上必要だが、逆を言えばRFIDリーダがあれば2〜3m先にいる人が持つカバンの中の本が何かといったことが判明してしまうため、プライバシー問題に配慮しつつどのようにして万引き防止という機能を実現するかという点はかなり厄介だという。また、返本された雑誌や絶版になった書籍は断裁された上で最終的に溶かされ古紙の原料となるが、この際にRFIDタグが本についたままの状態だとリサイクルにも影響が出かねないため、この点の評価も問題だと本間氏は語った。

 しかし本間氏は、これらの問題は技術開発や運用面での配慮、法整備や消費者への啓蒙活動といったことで全てクリアできるだろうという考えも明らかにし、それに向けて「今後マスコミを挙げて、ユビキタス社会により得るものと失うものの議論を行なっていく必要がある」と語っていた。


日本出版インフラセンターが予定している実証実験の概要

垂直統合モデルに強みがあるが、地域特性に合わせた開発が今後の課題

NTTコミュニケーションズの野村雅行氏(左)と松下電器産業の秋山正樹氏(右)
 最後には短時間ながらディスカッションの時間が設けられ、RFIDの普及における日本の強みと問題点について活発な意見が交わされた。

 まず日本の強みとして多くのパネリストが挙げたのが「垂直統合モデル」。松下電器産業の秋山正樹氏は、先頃発表された松下電器と松下電工の間の事業再編に関連して「グループ全体の効率を上げるというだけでなく、ネット家電なども含めた『ビル・マンションまるごとソリューション』という観点から、統合により全てのことができる要素が揃う」と述べ、RFIDで必要とされるさまざまなシステムをトータルで提供できることが同社の強みであるとの考えを示した。

 また、NTTコミュニケーションズの野村雅行氏も、「電子タグはコラボレーションして始めてSCM(サプライチェーンマネジメント)ができるうえ、グローバルなIPネットワークとシステムをセキュリティを確保しながらつなげていく必要があり、まさに試金石となる」と語り、それに必要なシステムとネットワークをまとめて提供できる点に活路を見出したい考えを示した。

 一方で問題点として挙がったのがやはりプライバシー問題。松井氏は「電子タグは『究極のSCM』を実現するのに欠かせない技術だが、一方で使い方を誤ると『人間のSCM』にもなってしまう」と語ったほか、「日本では便利になるというと消費者が比較的飛びつきやすい傾向があるが、欧米では便利になるというだけでは消費者は飛びつきにくい」「米国ではテロ対策や入退室管理などへの関心が高く、地域によって価値観が違ってくる」と述べ、世界への普及を考えたときにもっとプライバシーなどへの配慮を高めるほか、地域特性に合わせたソリューションを提供しないと、日本企業の持つ技術が国内でしか活用されなくなってしまうという危機感を示していた。


関連情報

URL
  CEATEC JAPAN 2004
  http://www.ceatec.com/

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( 松林庵洋風 )
2004/10/06 22:08

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