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NTTの三浦惺代表取締役社長
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NTTの研究所における取り組みを紹介する「NTT R&Dフォーラム2008」が7日と8日、東京都武蔵野市にあるNTT武蔵野研究開発センタで開催された。7日には、NTTの三浦惺代表取締役社長が講演し、3月末から商用サービスの開始を予定しているNGN(次世代ネットワーク)について言及した。
三浦社長は、中国産冷凍ギョーザが話題になっていることに触れ、いろいろな意味で安心・安全ということが国の大きなテーマになっているとした上で、「通信においても例外ではない。NTTも通信キャリアとして、当然これを確保していくことが至上命令であることは言うまでもない」とコメント。セキュリティ確保という面でも、NGNは社会インフラとしての機能を持っていることを説明した。
また、日本経済が成長するにあたってはICT(情報通信技術)の果たす役割が非常に大きいとして、「NTTとしては、NGNを活用した新しいビジネスが起こり、企業の生産性が向上することによって、日本の経済発展の役に立てればと思う。同時に、日本の抱える少子高齢化、遠隔医療や介護、環境問題といった社会問題の解決のためにもお役に立てるのではないか」とコメントした。
NGNの具体的な活用形態については、企業や社会、個人それぞれの場でいろいろな利用形態が考えられるとして、その中から映像配信サービス、SaaS、医療・ヘルスケア分野という3つを挙げた。
このうち映像配信サービスについては、NTTグループではこれまで、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズの3社が別々にサービスを提供していたのを、2006年8月にNTTコミュニケーションズに集約したことを説明し、「いよいよこれからは、この3つをぷららに統合する。そして3月から、ハイビジョンクラスの新しい映像配信サービスを提供する予定」とした。
また、NGNによる地デジの再送信サービスも、テレビ局の同意を得ながら、3月より東京・大阪を皮切りに実施していきたいとし、「地デジの再送信、ビデオオンデマンド、多チャンネルがセットでご利用いただけるサービスになっていく」という。さらに今後は、通信の双方向性を生かしたIPTVも開発していく考えた。
● まだ画期的なサービスはない、共同開発を広く呼びかけ
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NGNで提供する新しい映像配信サービスのイメージ
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NGNのサービス展開スケジュールについては、すでに発表されているように東京・大阪の一部からとなる。三浦社長は「最初は非常にスモールスタート。その上で、ネットワークのオペレーションを含め、しっかりと安心・安全を確認しながら、その後は速いスピードで展開していきたい」とし、2010年度までには現在のBフレッツのサービス展開エリアまで拡大することを改めて説明した。
三浦社長はこの後、NGNで提供する新サービスの一覧を提示した上で、「まだ画期的なものはないとの意見をうかがうが、正直言ってその通り」と認める。そこで、NTT自身が新しいサービスやアプリケーションの開発に注力していくだけでなく、外部の事業者とも共同開発に取り組んでいく姿勢を提示。そのために設置する「次世代サービス共創フォーラム」を紹介した。
このフォーラムは、次世代サービスの開発や事業化に必要になる情報ライブラリを提供するほか、情報交換などが行なえるコミュニティも用意。事業化の支援も行なう。NTT R&Dフォーラム2008では、来場者にフォーラムを紹介するチラシも配布され、詳細は2月15日にオープンするフォーラムのサイトで提供していく予定だ。
このほか三浦社長は、NGNによって既存のIPネットワークとは別のネットワークが構築され、ネットワークじたいがセキュリティなどさまざまな機能を持つ点に関連して、外部からは「NGNを構築すれば、インターネットの自由な発展を阻害するのではないか」「ネットワークはステューピッドな土管であるほうがいいのではないか」といった意見があることを紹介。
これに対して「私としては、決してインターネットが阻害されることはない。ベストエフォートとしてのインターネットはこれからも発展し、新しいアプリケーションも次々に出てくると思う」とした上で、「そういうベストエフォートの現在のサービスにプラスして、高い品質と高いセキュリティを持った新しいサービスが追加される。これがNGNサービスだというふうに理解している」とコメント。プロバイダーや事業業者にとっても、利用の範囲が広がることをアピールした。
講演の最後、三浦社長は、「R&D機能がなければ、NGNの3月商用化は実現できなかった。ルータを買ってきてつなぐだけではできなかった」と述べ、R&D部門を持つことの重要性を指摘。さらに、NTTの今後のR&Dの方向性について、1)NGNの本格展開に向けたR&Dの推進、2)R&Dのビジネス化の推進、3)成長戦略を下支えする基礎要素技術研究の推進、4)国際競争力の強化、研究成果のグローバル展開──の4本を柱としていくことを示し、「単なるキャリアではなく、サービスの創造企業として取り組んでいく」と締めくくった。
関連情報
■URL
NTT R&Dフォーラム2008
http://event.ecl.ntt.co.jp/forum2008/
次世代サービス共創フォーラム
http://www.ntt.co.jp/ngs-forum/
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( 永沢 茂 )
2008/02/08 19:22
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