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ひろゆき氏&夏野氏が講演「日本のネットは決してダメじゃない」
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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UQ Com田中社長、高速&オープン志向「UQ WiMAX」のメリット語る
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主催者企画コーナーでは「ServersMan@iPhone」のデモも
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国内初のデジタルサイネージ展示会、裸眼で見られる3D映像など
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【 2009/06/10 】
CO2排出量が都内最多の地域、東大工学部のグリーンプロジェクト
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IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
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[19:20]
「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
[14:53]

トラフィック、ファイル共有、ビジネスモデル~P2Pの課題を議論


 NPO法人ブロードバンド・アソシエーションの主催により22日に開催された「ブロードバンド特別シンポジウム~インターネットのP2Pに関連する技術的・社会的諸問題を考える」では、NECビッグローブ代表取締役執行役員社長の飯塚久夫氏、Winny開発者弁護団の事務局長を務める弁護士の壇俊光氏らが参加してネルディスカッションが行われた。

 このほか、パネリストとしてはブロードバンド・アソシエーション顧問(フランステレコムCTO)の持田侑宏氏と慶應義塾大学DMC機構専任講師の斉藤賢爾氏が登壇し、モデレータは東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏とIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏が務めた。


トラフィック増でISPの設備投資が売り上げの4割に!?

(向かって左から)ブロードバンド・アソシエーション顧問(フランステレコムCTO)の持田侑宏氏、北尻総合法律事務所の弁護士である壇俊光氏、慶應義塾大学DMC機構専任講師の斉藤賢爾氏、NECビッグローブ代表取締役執行役員社長の飯塚久夫氏
 NECビッグローブの飯塚氏は、ISPの台所事情を「火の車」と訴える。同社は上場していないため具体的な数字は挙げられないとして、同様の事業形態であるニフティを例に挙げた。「ニフティの売上は1000億円だが、利益は1%。売り上げの30%はネットワーク増強の設備投資に充てている」とした。これに対して「ヤフーは2600億円の売り上げのうち、50%は利益。設備投資はほとんどない。同じインターネット事業をやっている人たちでも、だいぶ違う」と説明する。

 BIGLOBEのトラフィックは、毎年1.7倍の勢いで増えており、これが設備投資の増大につながっている。「わずか10%のユーザーが回線の60~90%を占有している」というのが大きな原因だ。「これはネットワークのただ乗り問題。帯域制限をしないとお客さんに迷惑をかける。P2Pソフトの利用制限などを行い、権利を否定するつもりはないが、権利には義務がつきまとう。インターネット産業では、このバランスがとれていない。受益者負担がないと日本のインターネットは持たない。ある上限に行ったら、料金を上げるという議論をしていってもいいんじゃないか」とした。

 このような日本のISPの現状で、P2P技術を用いたコンテンツ配信を導入したらコストはどれくらい削減できるのだろうか。飯塚氏は「このまま行くと設備投資が売上の4割に達してしまう。コンテンツ配信にP2P技術を導入することでこれを2割や3割にしたい」との考えを示した。

 持田氏は、フランスの状況を説明する。ARCEPの報告によると、2007年時点で、フランスにおけるブロードバンドの人口普及率は23.4%で、同統計の日本の21.3%とほぼ同じだ。しかし、フランスのブロードバンド回線は95%がADSLだ。

 コンテンツとインフラの関係は日本とは逆だ。「コンテンツやサービスの面では、日本よりもFMC(Fixed-Mobile Convergence)や通信と放送の融合が自由に進んでいる。IPTVでもすべての地上波やサッカーのプレミアリーグ、フランス国立視聴覚研究所のコンテンツが楽しめる」というほど充実している。しかし、これらのコンテンツはADSLで楽しんでいる状態だ。「P2Pにおいても、日本とヨーロッパの発展は異なるだろう」とした。


BIGLOBEのアクセスラインにおけるトラフィックの動き。ダウンロードの約50%、アップロードの75%はP2Pによるトラフィックだとする EU主要国のブロードバンド普及率。フランスは23.4%、参考値として日本は21.3%となっている

ファイル共有ソフトと、どう向き合うか?

(向かって左から)東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏
 壇氏は、P2Pソフトウェアを用いて著作権者に無断にコンテンツを配信した場合において「キャッシュは著作権法違反なのかという問題もある」との法的に曖昧な部分を示した。

 これに対して「P2Pソフトウェアの開発によって責任が問われるか」との疑問を投げかけたのは斉藤氏。その答えの1つとして、自ら「GNU」の「GPL」の例を挙げた。P2Pソフトウェアの利用も、GPLと同じく「自由に使えるが、その代わりに、責任を負わせることはできない」との原則を適用してはどうかということだ。

 津田氏は、これら「ファイル共有ソフトとどう向き合っていくのか」としてエピソードを語った。実家に帰省したときに、親戚の中学生の女の子がインターネットからダウンロードしたアニメをiPodに入れていて衝撃を受けたという。「この時代、中学生の女の子が動画をインターネットから落として変換してiPodに入れている。いいとか、悪いとかの世界を超えている。これとどう向き合っていくのかが問題だ」というのだ。

 「教育の問題は重要だ」と江崎氏が賛同した。「娘と話していて気が付いたのが、僕らの時代にはコピーライトの意識はなかったということ。今の小学生や中学生は、違法ダウンロードに対して後ろめたい気持ちはある。しかし、お金がないから仕方なくやっているような状態。僕らが教えなければならない。大人の責任だ」とした。

 これを受け津田氏は、「具体的に、どんなネガティブなことが起きるのかという考え方を一歩先に進めないといけない」とした。Winnyを使って著作権者に無断でコンテンツをダウンロードするのは著作権法に抵触する恐れがあるが、「権利者の人と話していると、『違法なものは違法なんだよ』と連呼する。しかし、個人情報が漏れる可能性が高いなど、使った後の怖さを教える教育をしていく方が効果的ではないか」とする。


権利者の意識改革やビジネスモデルの転換が必要

 コンテンツホルダーが、P2Pによるファイル交換を一方的に阻止するのではなく、意識の改革やビジネスモデルの転換が必要とするのが壇氏と津田氏だ。

 「ファイル共有ソフトで映画やCDの売り上げが下がったというが、ちょっと上がっているという調査結果もある。コンテンツホルダーの理解、意識の改革が必要」というのは壇氏だ。具体的には、「日本は、本当は違法だけど黙認する“黙示の承諾”がある」とする。「最たるものは同人誌で、実際にはほとんどが著作権の侵害。同人誌を発行する人たちはクリエイターであるとともに、消費者であるという判断がコンテンツホルダーに働いている。しかし、同じようなことが動画で行われていても、寛容な態度は見られない。コンテンツホルダーの意識がついて行っていない」とする。

 津田氏は、「アメリカの音楽業界ではCDが売れなくなっている。しかし、ここ2~3年でライブで収益を上げている。8000円のチケットが20000円になってもお客さんは来る。ビジネスの環境が変わるとともに、モデルも変わっていかなければならない」と提言した。

 「日本の意識も変わりつつある」と、実際にコンテンツホルダーの意識改革が進んでいることを示したのは飯塚氏だ。飯塚氏が社長を務めるNECビッグローブでは、一部のアニメをテレビ放送が終了した直後から配信している。「従来はテレビで流してから1週間程度のタイムラグがあったが、最近ではすぐに流している」という現状だ。さらに、「米国では、ネットで先に流した方がテレビの視聴率がいいという考え方もある」とする。

 最後に江崎氏が、「今回は技術のシンポジウムだったためか、参加者に情報を受け取る立場の人が少なかった。今回は、運ぶ人(通信会社)がたくさんいるが、送る人(コンテンツホルダー)と受け取る人(ユーザー)の意見も聞きたい」としてディスカッションを終了した。


関連情報

URL
  ブロードバンド特別シンポジウム
  http://www.npo-ba.org/symposium200809.html

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( 安達崇徳 )
2008/09/24 17:43

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