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10代のネット利用を追う

全国高等学校PTA連合会・高橋正夫会長に聞く(後編)

携帯フィルタリング原則化には“半分”反対

 未成年者の携帯フィルタリングが原則義務化となり、続いて「青少年ネット規制法」も成立した。当事者である高校生の保護者は、この動きについてどう考えているのか? 前回に続き、全国高等学校PTA連合会・会長の高橋正夫氏に聞く。


青少年ネット規制法案、反対会見での発言の真意は?

4月23日に開かれた、青少年ネット規制法案への反対会見で。(向かって左から)ディー・エヌ・エーの春田真氏、ネットスターの高橋太洋氏、マイクロソフトの楠正憲氏、ヤフーの別所直哉氏、楽天の関聡司氏、全国高等学校PTA連合会の高橋正夫氏
 高橋氏は4月23日、マイクロソフトやヤフー、楽天、ディー・エヌ・エー、ネットスターとともに、青少年ネット規制法案(当時)に反対する会見に参加している。このことから、高等学校PTA連合会が青少年ネット規制法反対派のように報じられてきた。実際はどうなのだろうか?

 「反対会見に参加したのは、ヤフーから『私たちだけでは企業の自己弁護だと思われてしまうので、第三者的な方に同席していただきたい』と言われたためです。『今のままの規制では困る』という考えは一致していたので参加しました。規制反対派のように報じられているようですが、半分は合っていますが、半分は違います。」

 すなわち、規制することに反対というわけではないが、今のままの規制には反対というスタンスなのだという。高校生の実状に合っていないため、不都合が多く実際的ではないからだ。高橋氏は、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)のメンバーにもなっており、PTAとして企業努力を見守りたいとしている。


ネット規制に対する意見は当初求められなかった

 高橋氏に話を聞いていくと、何と「未成年者の携帯フィルタリング原則化の時も、青少年ネット規制法案の時も、PTAは何も聞かされていなかった」という。当事者のはずなのに、一体どういうことなのか?

 「規制への動きは数年前から始まっていたのに、我々は何も知りませんでした。知ったのは、(フィルタリング原則化)実施間近の2007年12月末のこと。全都道府県のPTA会長が集まる会合があるため、そこで『来年から実施する旨伝えてほしい』と総務省から求められたのです」。聞くと、何と2008年2月から未成年者の携帯電話新規加入者はフィルタリング加入が原則化され、6月には強制的に一斉にかけるという(現在は延長された)。

 「周知期間をおいてくれないのはおかしい。どうしてもっと早く我々に声をかけなかったのでしょうか。親としては、いきなりフィルタリングをかけられると慌ててしまいます」。全国240万人の高校生の98%が携帯電話を持っている。自分で買ったのになぜ強制されるのかと思うのは当たり前のことだ。

 「総務省は『インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会』を開催していましたが、それにも呼ばれていなかった。そこで、子どもに関する施策をPTA不在で決めるのはおかしいのではないかと考え、『検討会に入れてもらえないと困る』と伝えました」。PTA代表として高橋氏らが検討会のメンバーになったのは、3回目の会合からだ。


19歳以上は事件に遭ってもいいのか?

 携帯フィルタリング原則化については、「規制に関しては別に反対ではないが、小学生と高校生が同じポリシーで規制されるのはおかしい」と高橋氏は言う。「成長に合わせて、段階的に規制の範囲を切り替えられるようにすべき。パソコンのフィルタリングには段階があるのに、携帯電話にはなぜ『かける』か『かけない』しかないのか?」。

 「小学生にフィルタリングをかけるのは反対ではないし、説得もする」と高橋氏は語る。「ただし、小学生と高校生に同じ規制がかかるのは、どうしても納得がいかない。それでは高校生は隠れて持つようになるだけです。そもそも、今の携帯電話を捨てて、親の名義で買ってもらえばフィルタリングはかかりません。子どもに裏の手口に手を染めさせるようなことはしたくありません。規制するなら一斉にすべきですが、ただし条件をかけてしたいですね。児童ポルノなどは規制して、他は緩和してもらいたい」。

 青少年ネット規制法についても、「最初、(自民党の)総務部会では『18歳まではパソコンにフィルタリングをかけて絶対に外さない』と言われていて、それでは困ると話し合いをしていました。家庭で外したいと思ったら、外せるようにしたいと思ったのです。幸い、義務化は免れることができましたが」という。

 高校を卒業すると、親元を離れるケースも多い。「18歳までフィルタリングで規制して、19歳になったらいきなり親元を離れて何も守ってくれるものがないのでは危険すぎる。それよりも、親元にいる3年間で学ぶのがいいのでは」というのが高橋氏の考えだ。

 「多少失敗してもいいでしょう。例えば不正請求されてお金を払い込んでしまい、そこで親に相談したケースもあります。そういう場合、初めの1万円は授業料と考えたらいい。そういうことも親が側にいればこそできること。親元を離れてから騙され、仕送りを振り込んでしまったら、親にはわからない。だから反対なのです。19歳も未成年です。19歳は被害に遭ってもいいのでしょうか? 18歳までフィルタリングで隠しておいて、19歳でいきなり放置するというのはおかしい。」


青少年ネット規制法、すべてを否定するわけではないが……

 青少年ネット規制法に関して、「親が規制できないから、国が代わりに規制をする」と政治家は言う。「しかし、誰が責任を取るのでしょうか? 国がやったら事件がなくなるのでしょうか? 私には、所詮一時的な対処としか思えません。子どもを取り巻く環境に影響する法律は慎重に進めていただきたい」と高橋氏は主張する。

 「ただ、すべてを否定しているわけではありません。これで企業が本気になった面はあるので、起爆剤としては感謝しますが、実状に合わない形での法律には反対ですね。また、どうしてみんなで考えようとしなかったのかも不思議です。ネット企業にはプロがたくさんいるのだから、そういう方たちに聞いて対策を考えればいいのです。それを、プロを規制しようというわけだから、仲良く話せるはずがありません。」


親は規制の内容を理解していない

 「『国が規制してくれるとうれしい』という親がいますが、どういう規制がかかるかわかっていない」と、高橋氏は保護者の現状を語る。小学生くらいの親なら若くて自分もネットユーザーなのでわかるかもしれないが、中学生以上の親はわからない人が多数だという。

 「親がわかっているのは、児童ポルノや自殺サイトは困るということくらい。実際は、援助交際なら連絡先は隠語でやりとりしているし、ネットを規制しても電話をすれば済むのに、それをわからずに規制した方がいいと言っている。何に、どういう形で規制がかかるかも、子どもが使うサイトが使えなくなるということもわかっていない。」

 内閣府が行った「有害情報に関する特別世論調査」によると、90.9%がインターネット上の有害情報の規制に賛成だという。この結果に関しても「フィルタリング義務化にほとんどの親が賛成と聞くが、どこの誰が言っているのか? 小学生の親ならそうかもしれないが、高校生の親が9割賛成というのはあり得ない。年配者やネットのことが何もわからない人が言っているだけなのでは」と指摘する。


青少年ネット規制法の成立前にしてほしかったこと

 高橋氏の考えは、「ネット企業の人たちが自主規制するというのだから、まず実施してもらえばいい。規制はそれからでもいいのではないか」というものだ。「企業の方たちには、言うからには最低限の自主規制はしっかりやってもらいたい。そうでないと、国がまた規制を強めるでしょう」。

 また、「国が規制する気があるなら、その前に保護者や子どもたちに正しい使い方を教えてもらいたかった」とも言う。「これからでもいいので、小学生などに情報リテラシー教育をしてほしい。横に座って、こういう問題があった時はこうすればいいという具体的なことを教えてほしい。(インターネットを使いこなしている)若い人が親になったら必要なくなるかもしれませんが、今後5年くらいはそういう教育が必要です」。


英語教育より情報リテラシー教育を

 「子どもは学校で表計算ソフトの使い方は教わってきても、情報リテラシーは教わってきません。高校には情報科の授業があるからまだいいですが、小中学校には教えられる先生がいません。まず教員を育てるべきではないのでしょうか。罰則規定とか責任をかぶせるのはもっと先でいいでしょう」と高橋氏は語る。

 「情報リテラシーを教えられる教員を増やして、子どもたちに学ばせるのは最優先課題です。教育再生懇談会で『英語を遅くとも小学3年生からの義務教育とする』という提案がありました。英語も大事ですが、ネットも大事です。英語では命を落とすことはないですが、ネットでは命を落とすこともあります。今の親たちは、我々が情報リテラシー教育の準備をしても会合に来ません。それこそ、無料でも来ないのです。危険性に気付いていない状態で、自分の子に限って大丈夫と思っているからでしょう。しかし、いつ事件にあっても不思議ではないと思います。」

 保護者向けの情報リテラシー教育を実施するというのあれば、「PTAに言ってくれれば保護者は集めます」という。ネット企業に保護者向けの資料を作ってもらい、国や行政には、そのための会場を無料開放してほしいという。「1人が最低1回は聞けるくらいは実施していただきたい」。

 「高校を卒業したら規制がすべて外れて、自分でやっていける能力がついているようにしたいですね。それには、小中学校を巻き込んでやっていく必要があります。小学校は先が長いので一番必要とされています。それを実現するためには、今、みんなで力を合わせてやっていくしかないのです。」

 協力すれば、ネットを完全に規制することなく、子どもが安全に使えるようにすることも可能なはずだ。国も企業も学校も親も、今こそ子どもや親たちの現状を知り、力を合わせて問題を打破すべき時なのだ。


関連情報

URL
  全国高等学校PTA連合会
  http://www.zenkoupren.org/

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2008/07/25 11:43
高橋暁子(たかはし あきこ)
小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。

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