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携帯向けフィルタリングの原則義務化には課題、総務省の検討会で指摘


 総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第2回会合が27日に開催された。同検討会では、青少年が有害サイトにアクセスして犯罪に巻き込まれる問題などへの対策としてフィルタリングのさらなる導入促進について検討しているが、今回の会合では、携帯電話向けフィルタリングサービスの機能が不十分である点が指摘されたほか、フィルタリングの仕組みや効果、利用した後の影響などについて十分な周知を求める声が上がった。


携帯向けフィルタリングの促進に進む中、機能面では大きな課題が

「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第2回会合
 会合では最初に、12月10日付で総務大臣から携帯電話事業者に対して出された、フィルタリング導入促進に向けた新たな要請について、検討会の事務局である総務省総合通信基盤局消費者行政課から説明があった。これは、青少年が使う携帯電話とPHSでフィルタリングの適用を原則化するものだ。

 これを受けて、電気通信事業者協会(TCA)専務理事の坂田紳一郎氏から、具体的な今後の取り組みが説明された。新規契約については、未成年者の契約または保護者が18歳未満に利用させるために契約する場合は、フィルタリングの申し込み欄に「不要」の記載がない限り、デフォルトでフィルタリングを適用する。既存契約者についても、18歳未満に対しては、十分に周知した上で、不要の申告がない場合はフィルタリングを適用するという。

 会合では、フィルタリングソフトベンダーであるネットスターとデジタルアーツも出席し、フィルタリングの仕組みなどを説明したが、現在の携帯電話向けフィルタリングサービスには大きな課題があることも指摘された。

 ネットスター営業マーケティング本部広報部長の高橋大洋氏によれば、携帯電話向けに提供されているフィルタリングサービスは、「PC用のフィルタリングの常識からすると遅れている」。すなわち、適用されるフィルタリングルールがキャリアごとに一律で、ユーザー側で子供の成長に合わせて変更したり、フィルタリングしない例外URLを設定することができない。また、そもそもURLデータベースのカテゴリー分けでは「コミュニティサイト」が一括りになっていることから、その中でも未成年者に不適切なコミュニティを分類するための客観的な基準について広く検討する必要があるとした。


親はフィルタリングの仕組みについて理解が不十分、周知徹底を

 日本PTA全国協議会副会長の加藤秀次氏は、「違法情報であれば、警察で対応できる。保護者からすれば、有害情報も違法として取り締まれるような方向に行って欲しいという思いもある」と述べ、有害情報の扱いについて対策を求めた。少女コミックなどは対象年齢を考えると「有害」の域を超えているとし、「表現の自由や萎縮の問題もあるが、ここまで底が抜けてしまった感のある状況では、提供する側もきちんと襟を正し、フィルタリングありきでいい結果を出してもらいたい」とした。

 全国高等学校PTA連合会会長の高橋正夫氏は、最近では生徒の98%が携帯電話を持っているという数字を紹介した上で、フィルタリングの導入を促進することに賛成の意を示しながらも、「受け入れる保護者の側の準備ができていない」と説明する。

 その背景には、子供の方が携帯電話に詳しく、親が口出しできないという事情がある。実際のところ、保護者がフィルタリングの仕組みをきちんと理解できていないため、不要だと主張する子供のいいなりで、フィルタリングを適用しない保護者もいるのが実情だという。逆に、契約手続きに同行し、親はフィルタリングを適用したつもりにだったにもかかわらず、適用されていなかった事例も半分あったという結果も紹介。「保護者が今どれだけ勉強しなければいけないか、勉強会で各学校に出向いて徹底させていかなければ、フィルタリングがどういったものか理解できない。こういった検討会に参加して、広く伝えていきたい」と述べた。

 高橋氏はまた、フィルタリングには一長一短があり、小・中学生の利用では強化の必要があるが、「高校生は自分で判断つけなければならない時期だろう」とし、一律に制限される現状のサービスの不自由さも指摘した。

 同じような観点では、モバイル・コンテンツ・フォーラム事務局長の岸原孝昌氏が、講演会で保護者から相談を受けた体験を紹介した。「フィルタリングを入れないとダメだと思って入れたら、(今まで使っていたサービスが利用できなくなって)娘が1カ月間口をきいてくれない」と言われたのだという。「(フィルタリングについて)親子間で情報交換するために十分な情報が提供されていない。このままでは、混乱して、フィルタリングが普及しなくなってしまうのではないか」との懸念も示した。


DeNA南場社長、「健全コンテンツ」への配慮を訴える

 ディー・エヌ・エー(DeNA)の代表取締役社長である南場智子氏は、同社が運営する10代に圧倒的な人気の携帯サイト「モバゲータウン」について、同社が進めている健全性強化の取り組みなどを紹介。その上で、現状のフィルタリングでは自殺サイトやアダルトサイトとSNSのコミュニティなどが1つのカテゴリーに属してしまい、一律でフィルタリングの対象となっていることで、「しっかり監視・管理しているサイトとそうでないサイトの区別がない」と指摘した。ユーザーにとっては具体的にどのサイトがフィルタリングされるのかわからない状況にあるため、「フィルタリングを適用したら、モバゲーが見られなくなった」という保護者からの質問もあるとした。

 南場氏は、12月10日付で総務大臣から携帯電話事業者に要請されたフィルタリングの導入促進強化について、「健全なコンテンツビジネスの展開の妨げとならないよう配慮しつつ」という記述があることを強調。「18歳未満に生まれているコミュニケーション文化がある。これを萎縮させないようにお願いしたい」と訴えた。

 会合の最後には、「フィルタリングには課題もあり、青少年の表現やコミュニケーションの手段を過度に制限してしまうことがある。インターネットを使って情報を発信していくことは、将来を担う子供たちの重要な能力。やみくもに推進していくこと以上に、青少年や保護者への啓蒙を含めて総合的に対策を進めていくことが重要」といった意見も上がった。


関連情報

URL
  インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html

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( 永沢 茂 )
2007/12/27 21:51

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