2月23日には超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)の打ち上げ、26日にはGoogleやKDDIらによる光海底ケーブルの建設計画発表と、今週は大きな通信インフラに関するニュースが続きました。今週の解説は、こうしたインフラの整備についてまとめます。
同じくインフラ系のニュースとして、NTTからはNGNのサービス「フレッツ 光ネクスト」の発表や、ソフトバンクテレコムの光伝送フィールド実験、イーモバイルの通話サービスなどの発表もありました。一方で、DivXの動画共有サイト「Stage6」閉鎖のニュースは、高画質動画の共有サービスを提供するインフラの維持コストがかさんだのが原因とのこと。高速回線と大容量コンテンツとのいたちごっこや、インフラを維持するためのビジネスモデルの重要性など、考えさせられるニュースです。
◆“フィルタリング原則化”の“一般化”を懸念する声も~総務省の検討会
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/27/18599.html
2月27日、総務省「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第4回会合が開催。中間報告書の骨子案が提示され、現状のフィルタリングサービスの課題を指摘し、改善の方向性を示すものとなった。インターネット全体においても規制が一般的されることを恐れる、との指摘もあった。
◆KDDIやGoogleなど6社、日米間光海底ケーブルの共同建設に合意
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/26/18584.html
2月26日、KDDI、Googleなど6社は、共同で日米間に光海底ケーブル「Unity」を建設する協定を締結したと発表。最大容量7.68Tbpsで、2010年1月~3月の運用開始を予定している。
◆米Adobe、「AIR」正式版と「Flex 3」の提供を開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/26/18582.html
2月25日、米Adobee Systemsは、AjaxやFlashなどWeb技術を利用してデスクトップアプリケーションを実行できる「AIR」の正式版(英語版)を公開。日本語版は2008年半ばに公開予定とした。また同時にWebアプリケーション開発環境「Flex 3」の提供を開始した。
◆イー・モバイル、基本料無料の音声通話サービスを3月28日開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/25/18579.html
2月25日、イー・モバイルは3月28日からの音声通話サービス開始を発表。端末としてHTC製スマートフォン「S11HT(EMONSTER)」と東芝製「H11T」の2機種を公開した。料金プランは月額基本料を無料とし、独自のシンプルな料金体系をアピール。学割などを盛り込んだ「ケータイデビューキャンペーン」も同日に発表している。
◆高速ネット衛星「きずな」打ち上げ成功、正常に飛行中
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/25/18572.html
2月23日、超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」が、H-IIAロケット14号機によって種子島宇宙センターから打ち上げられた。「きずな」は島嶼部などブロードバンドが普及していない地域のデジタルディバイド解消や、教育・医療分野などでの利用が期待されている。
● 環太平洋地域に衛星と海底ケーブル。新しい通信インフラの登場
2月23日、超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」が打ち上げられました。この「きずな」は、もともと2001年の「e-Japan重点計画」に基づいて、2005年の打ち上げを目標として研究開発が開始されたものです。
2002年の1月にNASDA(当時の宇宙開発事業団)とJSAT株式会社が共同実験開始を発表。日本の宇宙開発事業は2003年10月よりNASDAなど3組織を統合したJAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)に引き継がれ、2007年10月に愛称が「きずな」に決定。そして今回の打ち上げとなりました。
「きずな」は静止軌道上を飛び、日本国内のほか東アジアや東南アジアの諸都市と最大12Gbpsの高速通信が可能です。島嶼部や山間部のデジタルディバイドを解消する、太平洋周辺での重要なインターネットインフラとして期待されています。
続いて2月26日、KDDI、Google、Bharti Airtel(インド)、Global Transit(マレーシア)、Pacnet(香港)、SingTel(シンガポール)の6社は、ロサンゼルスと千葉を結ぶ光海底ケーブル「Unity」の共同建設を発表しました。
Unityは最大7.68Tbpsの容量を持ち、急増する日米間およびアジア各地域のトラフィックに対応します。既存の海底ケーブルは多数ありますがJapan-USケーブルネットワークは最大640Gbpsですから、Unityは桁違いの容量となります。
都市部を中心にブロードバンドは十分普及していますが、帯域を利用するコンテンツ利用も伸びており、国内ブロードバンド利用者のトラフィック総量は812.9Gbpsで3年前の2.6倍という試算発表もありました。
トラフィック増加の原因としてYouTubeなど動画共有サイトの存在を指摘されることが多く、近年ではインフラへの「ただ乗り」が批判されることもありました。そのYouTubeを提供するGoogleがインフラの建設を始めたというのは、新しい動きです。なお、Googleは昨年11月には再生可能エネルギー開発への投資を発表しており、通信インフラだけでなく、幅広い生活インフラに関心を示しています。
ところで、Unityの総建設費は3億ドル(1ドル=110円として330億円)が見込まれています。一方で「きずな」は、衛星の開発だけで約370億円。打ち上げ費用や地上オペレーションなどの維持費にはさらに100億円以上かかり、設計寿命はわずかに5年(目標)です。もっとも、「きずな」自身は技術の実証が主な任務であるため、高額で短命であるのは仕方のないところではあります。継続して運用する際には、より安価で長く使える後継の衛星が投入されるでしょう。
無線通信技術としてはWiMAXのような新しい技術も登場している現在、「きずな」プロジェクトには、衛星ブロードバンドの費用対効果が、計画当初の2002年当時よりも厳しく問われるようになるのかもしれません。
2008/03/03 11:57
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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