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第134回:「OpenStreetMap」を作る人の会合で、地図編集の心得を学んできた


OSM初心者からディープな愛好家まで多彩な顔ぶれ

 世界中の誰でも利用できるフリーな地理情報データの作成を目的とした地図サービス「OpenStreetMap(OSM)」。ここ最近、「foursquare」やAppleの写真編集アプリ「iPhoto」、「Wikipedia」のモバイルアプリなどで、Google マップなどに代わって新たに採用され始めていることもあり、OSMへの注目は日々高まりつつある。Yahoo! JAPANが提供する地図サイト「Yahoo! ロコ」でも切り替えレイヤーとしてOSMが選択可能になり、このようなサイトですでにOSMの地図画面を見たことのある人も少なくないだろう。

OpenStreetMap

「iPhoto」の地図 「Wikipedia」のiPhoneアプリ

OSMレイヤーが選択可能となった「Yahoo! ロコ」

 OSMを目にする機会は着実に増えてきているが、一方でOSMの地図データを作る側に回ろうと思うと、さまざまな面で戸惑うことも多い。OSMは基本的にだれもが気軽に参加できるオープンで自由なプロジェクトではあるが、Wikipediaなどと同様に、そこには守らなくてはならないルールやマナーがあるからだ。

 そのようにOSMで地図編集を行う上で不安や疑問を感じている人に対して、先人が編集スキルをレクチャーしてくれるイベントが全国で開催されている。今回はそのひとつとして、4月15日に開催された「横浜定例マッピングパーティ(準備編)」の様子をレポートしよう。

 マッピングパーティとはOSMの愛好家によるコミュニティイベントであり、OSM初心者に対してトレーニングや講習を行ったり、参加者同士で議論したり情報交換したりするための集まりだ。OSMの愛好家同士がコミュニケーションを深めるための機会でもあり、文字通りトレーニング後に“パーティ”を行うこともある。

 今回の「横浜定例マッピングパーティ」の主催者は、OSMの活動を支える法人組織「オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン(OSMFJ)」の一員である飯田哲氏。会場は横浜駅近くのイベントスペースで、定員14名のところ満員となった。

 OSMにおける地図編集は、手持ちのGPSログを記録してサーバーにアップロードしたり、ログをもとに地図を描いたり、衛星写真をトレースして地図を描いたりといろいろな作業がある。参加者のOSMへのかかわりも多種多様で、OSMの地図作りを全く経験したことのない人もいれば、GPSのログをアップしたことはあるが地図編集はしたことのない人、編集経験はあるがスキルを向上させたい人、他人のやり方を知りたい人、ふだんは忙しくてあまり地図編集に時間を割けないが、イベントを機会に日頃やりたかったことを一気に片付けてしまいたい人など、さまざまな目的を持った人が集まった。

OSMFJの飯田哲氏 参加者は14名

OSMの基本ルールを学んだ後はハンズオンで地図を編集

 まずは初心者向けのレクチャーを受けるグループと、経験者同士が目標を設定して情報交換をしながら地図編集を行うグループの2つに分かれた。初心者向けグループでは、まず飯田氏がOSMの意義ややり方を丁寧に解説。「OSMの地図編集は楽しみながら取り組むもの」とした上で、自分の好きなエリアを選び、興味のあるものを地図にすることの大切さを強調した。その上で、許諾を得ないで市販の地図を参考にするなど、OSMの地図編集において、してはならないとされる行為についても説明した。

ハンズオン風景

 ちなみにOSMで地図を描く場合、Microsoftの「Bing」の衛星写真をトレースすることは許諾を得ている。また、災害時にほかの衛星写真が一時的にトレースを許される場合もある。ただしほかの地図や写真のトレースが許されている場合でも、タグ付けでソースを明示することがルールであり、その点についてもレクチャーが行われた。

 さらに、鶴ヶ城や新宿ゴールデン街、成田ゆめ牧場、送電線など具体的に各地の作例を示すとともに、地図を描いた時に行うタグ付けのルールについても紹介。道路や建物を描いた場合に最低限、必要なタグを紹介した。

 一方、経験者のグループでは、バスルートやハイキングコースの作成、GPSログのトレースなど、各人が思い思いの目標を設定し、情報や技術を交換しながら地図作成に取り組んでいた。

鶴ヶ城の地図 送電線をテーマに描いている人の例

 レクチャー後は昼食休憩を挟んで、実際に地図編集エディタのハンズオン(体験学習)がスタート。飯田氏をはじめ経験者グループの人たちが使い方を解説しながら、デスクトップアプリケーション「JOSM」や、OpenStreetMapの本家サイトで使えるウェブアプリケーション「Potlach」の使い方を解説した。

 筆者は今までPotlachを使って編集したことはあるのだが、JOSMについてはほとんど知識がなく、ソフトをインストールしてから衛星写真を表示させて、道路や建物をトレースした上で名称やタグを入力し、サーバーにアップロードするプロセスを、経験者の方に詳しく教えていただいた。

 JOSMは多機能なアプリケーションで、最初に見た時は正直、ボタンだらけで訳がわからなかったが、地物の種類やソースなどの基本的なデータを入れれば、ほかの要素は省略しても構わないということを知って一安心。施設の名称を入れる場合に、和文表記と英文表記をどのように組み合わせるかといった細かい点についてもひとつひとつアドバイスを聞けて、かなり有意義な時間を過ごせた。

Potlach
JOSM

 ハンズオン後は、経験者グループがマッピングの成果などを紹介。地図上にバスルートを描いて、バス路線名やバス停の位置をマッピングした成果などを見た。さらに、最近になって公開されたOSMの3Dデータの紹介や、インドア(屋内)マップの紹介など、今後のOSMの進化を予感させる話題についても触れられた。

バスルート

3Dデータの紹介

 なお、事前の予定ではGPSロガーを使って付近を歩き、ログを取ったり、GPSを使った宝探しゲーム「ジオキャッシング」に挑戦したりすることも予定されていた。残念ながら時間が足りなくて今回は室内での活動のみとなったが、それだけにハンズオンの内容はとても濃かったように思う。

復興支援ワークショップや国際年次カンファレンスにも注目

 同様のマッピングパーティやOSM関連の講習会は現在、全国各地で開催されており、屋外でのログ記録を中心とした集まりや、OSM以外の話題を取り混ぜたイベントなどさまざまだ。

 その中には、3月20日に岩手県釜石市で行われた「復興していく三陸の店舗を記録しよう!ワークショップ」というイベントもある。このイベントは、震災復興を支援するためのIT開発を支えるコミュニティ「Hack for Japan」およびその支部「Hack for Iwate」が主催したもので、OSMFJがOSMの講師派遣などで協力した。震災により被害を受けた釜石市の復興していく被災地の店舗を記録し、OSMで地図を描くというイベントで、現地の人を中心に40名以上が参加した。同様の復興支援イベントは、5月12〜13日にも開催する予定だという。

 さらに9月6〜8日には、OSMの国際年次カンファレンス「State of the Map(SotM)」が初めて日本で開催される。会場は東京大学・駒場リサーチキャンパス。「State of the Map 2012 Tokyo」と題したこのイベントでは、海外からもOSMFスタッフをはじめ多数の関係者や愛好家が集まるものと見られる。また、高尾山でマッピングパーティを行う計画もあるそうだ。

 このようにOSM関連のイベントは現在、大小さまざまな規模のものが全国各地で開催されている。「横浜定例マッピングパーティ」は今回が初めてとなる定例イベントで、飯田氏によると今後も2カ月に1回くらいのペースで開催していくという。ちなみに参加費は、会場の使用料として1000円かかった。参加費についてはイベントごとにまちまちで、中には無料で行われるイベントも少なくない。

 OSMの地図編集に挑戦してはみたいが、具体的に何をしたらいいのかわからない人は、とりあえずこのようなイベントに参加して、基本操作などを覚えるのがおすすめだ。OSM関連イベントの情報はOpenStreetMap Japanのサイトにて紹介されており、また同サイトは初心者向けのガイドも充実している。興味のある人はぜひチェックしてほしい。

「State of the Map」のサイト

「OpenStreetMap Japan」のサイト




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2012/4/19 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅−デジタル地図に残す自分だけの鉄道記−」がインプレスジャパンから発売中。