趣味のインターネット地図ウォッチ

第182回

オープンデータ活用して「リモートでちょっと川の様子見てくる!」ほか

地図好き的にも注目だった「UDCT2013」コンテスト

 オープンデータを使って地域の課題解決を支援する作品を募集する「アーバンデータチャレンジ東京2013(UDCT2013) Finalステージ」が3月1日、東京大学駒場第IIキャンパス(生産技術研究所内)のコンベンションホールにて開催された。

会場となったコンベンションホール

 UDCT2013は、自治体などが保有するデータの公開・流通促進に向けた取り組みとして、自治体や企業など25機関によるデータ提供をもと。それらのデータの活用に効果的なツール、有効なデータやそのアイデア等を募集するもので、2013年6月に開催されたキックオフイベント以来、シンポジウムおよびワークショップを8月・10月・11月と計4回実施し、首都圏はもちろん、それ以外の地域からも多くの参加者が訪れた。主催しているのは社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)および東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)の「次世代社会基盤情報・寄附研究部門」。

 このようなシンポジウム/ワークショップを実施する一方で、2013年10月5日〜12月20日まで、コンテスト用作品の募集の事前エントリーを受け付けた。作品提出の締め切りは2014年1月31日。参加資格は個人・法人・グループ問わず、首都圏内外から幅広くオープンデータを利用した作品が集まり、最終的には75作品がエントリーされた。この中で1次審査を通過した17作品の中から、「アイデア」「データセット」「アプリケーション」の部門ごとに金賞・銀賞・銅賞が決まるほか、自治体特別賞やスポンサー賞なども用意される。自治体提供のデータは地理空間情報にかかわるものも多く、位置情報や災害関連のアプリやサービスも目立った。

 今回のFinalステージでは、1次審査を通過した17作品のプレゼンテーションを実施後、最終審査を経て各賞が決まるという進行だったが、その前に基調講演として3つの自治体による発表が行われた。

 最初の基調講演では、静岡県の野村秀樹氏(企画広報部・情報統計局長)が「ふじのくに発!オープンデータで世界最先端IT国家」と題して、同県のオープンデータへの取り組みについて語った。静岡県がオープンデータへの取り組みを開始したのは2013年5月で、最初に行ったのは統合GISデータおよびボーリングデータ(地質や地盤を調べるための掘削調査で得られた情報)のオープンデータ化だった。そして8月27日にそれらのデータを「ふじのくにオープンデータカタログ」(http://open-data.pref.shizuoka.jp/)として公開。開始直後の公開データは31種類だったが、現在は91種類(静岡県66データ、裾野市25データ)まで増えたという。ファイル形式はXMLやCSV、SHPなど。現在最も多く活用されているデータは富士山周辺の位置情報と写真をセットにした「富士山ビューポイント」で、写真は職員がボランティアで撮影したものを収録している。データのライセンスは、防災関連のデータで一部、改変不可のものがあるが、ほとんどがクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで改変可能なデータを意味する「CC-BY」を採用している。

静岡県の野村秀樹氏

 これらのオープンデータを活用したコンテンツとして、「富士山ビューポイント」を地図上に表示したコンテンツや、「道路照明灯」データを利用した街灯マップなどのアイデアが寄せられたほか、「富士山ビューポイント」のデータを使った「富士フォト」(http://amay077.github.io/blog/2013/10/28/fujiphoto-index/)というiPhone/Androidアプリも完成し、アプリストアにてダウンロード可能となっている。同アプリはGPSにより現在地付近にある撮影スポットを検索できるほか、現在地から撮影スポットまでをARで案内する機能も搭載する。さらに、水辺情報を登録できる地図コンテンツ「AQMAP」において、ほかの地域は個人による投稿が中心となっているのに対して、静岡県については「静岡のみずべ100選」のオープンデータが使われているという。このほか、静岡の地元情報を集めた口コミサイト「eしずおか」の「静岡ロケ地ガイド」も「ふじのくにオープンデータカタログ」で公開したデータが使われている。
 野村氏はこのような成果を紹介した上で、「今後、日本では国や自治体が積極的にオープンデータ化を進めていくと考えられる。オープンデータを活用したアプリは日本人的な発想のものが多く、街作りや観光、防災など身近な問題の解決になる」とした上で、「日本はオープンデータで世界最先端になることを確信しています」と締めくくった。

富士フォト

 次に登壇したのは、千葉市の三木浩平氏(総務局次長・情報統括副管理者/CIO補佐監)。三木氏はデータ利活用のステップとして「データ化」「共有化」「利活用」の3段階を紹介し、「千葉市は主に利活用に主眼を置いて活動している」と語った。

千葉市の三木浩平氏

 例えば昨年の「インターナショナル・オープンデータ・デイ」で、市民と行政が一緒に地域の課題を共有・解決する「Fix My Street」のワークショップを千葉市で実施したが、それを2013年6月〜12月に実際に市民1300人に参加してもらって「ちば市民協働レポート実証実験(通称:ちばレポ)」(http://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kocho/chibarepo.html)を行い、2014年度からは市民に向けたサービスとして提供開始する予定だという。「ハッカソンやアイデアソンで出てきたアイデアを棚晒しにせずに最大限活用し、実際に市民が活用できる段階に持って行きたい」と三木氏は語る。

 「ちばレポ」の利用にあたっては、市民がスマートフォンのアプリをインストールし、街を歩いていて歩道やベンチなどが破損しているのを見つけたら、アプリで撮影するとマップ上にプロットされる。それを見た行政の担当者が業者などに修理を依頼するほか、「公園で雑草が伸びている」など一般の人でも対応可能な案件については、市民ボランティアに依頼する仕組みも検討しているという。「問題が起きたらそれを隠すのではなく、課題も含めて市民に公開して、どうやったら解消するのかを一緒に考える。そのような街作りを考えたい」(三木氏)。

 さらに、ほかの自治体と連携している事業として、武雄市・千葉市・奈良市・福岡市が参加する「ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会(四市協議会)」のアイデアソン/コンテストや、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市が参加している「九都県市首脳会議」において、救急・防災分野においてオープンデータを推進する際に、各自治体が異なるデータ形式を使うと利用者が混乱するので、同会議に参加している自治体が足並みを揃えようと取り組んでいることなどを紹介した。

「ちばレポ」で将来目指すイメージ

 最後の登壇者は横浜市の長谷川孝氏(政策局担当理事)。「横浜市はもともと市役所の主導でオープンデータに力を入れていたわけではなくて、市民の皆様がデータを使って地域の課題を主体的に解決しようと取り組んでおり、そこに行政が持っているデータを活用しようというアプローチで始まっています」(長谷川氏)。最初は「横浜LOD(リンクト・オープンデータ)プロジェクト」で、横浜市芸術文化振興財団がウェブサイトで配信しているアート関連イベントや施設、アーティストなどの情報をLOD化し、それを使ったウェブサイト「Yokohama Art Spot」(http://lod.ac/apps/yas)を開発。それが「LODチャレンジ2011」で受賞したという。

 さらに、払った税金がどこにいくら使われているかが分かる市民主導のプロジェクト「WHERE DOES MY MONEY GO?〜税金はどこへ行った?〜」(http://spending.jp/)に参加したのも、日本では横浜市民の取り組みが最初で、現在は約120都市に広がっている。

横浜市の長谷川孝氏

 現在の横浜市では、オープンデータ活用の主体となる市民・企業・団体と行政が連携するために、「横浜オープンデータソリューション発展委員会」という民間団体が発足しており、アイデアミーティングやハッカソン、街歩きツアーなどのイベントを開催している。また、市ではCIO(副市長)の統括のもとに政策部局を中心とした庁内横断体制を構築するために、「横浜市オープンデータ推進PJ」も立ち上がっており、データの作成や提供の基準、ルール作りなど基盤整備の課題について検討している。

 このほか、日本マイクロソフト株式会社との連携や総務省の「自治体情報流通連携基盤」実証実験への参画、金沢区内の情報を提供するポータルサイト「かなざわ育なび.net」(http://kirakana.city.yokohama.lg.jp/)、「横浜オープンデータポータル」(http://data.yokohamaopendata.jp/)などを紹介したほか、横浜市オープンデータの推進に関する指針を現在作成中であることを紹介した。さらに、2014年度は職員の啓発(研修)および、市のウェブサイトやGISデータのオープンデータ化、市内中小企業のオープンデータ活用の促進などに取り組むと語った。

かなざわ育なび.net

 基調講演の後は、1次審査を通過した作品のプレゼンテーションが行われた。発表されたのは、アイデア、データセット、アプリケーションの3部門で計17作品。プレゼンテーション後に参加者による投票が行われて、その結果を加味して部門ごとに金賞・銀賞・銅賞が選ばれた。賞金総額は200万円。

アイデア部門

お・す・そ・わ・け−オープンデータを使って古き良き「田舎」のコミュニティをつくる

https://www.dropbox.com/s/cvgr163yae0pv2g/21.pdf

移動販売・臨時店舗による買物難民の解消

https://www.dropbox.com/s/479kfiihwoetr5z/77.pdf

公共土木インフラにも迫る高齢化を考える

https://www.dropbox.com/s/y4dlrpzmytqs23j/30.pdf

ゴミ収集のみえる化システム「ゴミえるん」

https://www.dropbox.com/s/3kf0tnc5usgr8fv/04.pdf

 6作品の中で唯一、災害をテーマにした作品が「直感的な避難誘導」。スマートフォンを活用した災害時の情報提供サービスのアイデアで、水戸市が提供する津波ハザードマップを活用している。現在地および進行方向をもとに津波に対する危険性を随時評価して知らせるもので、目的地を自ら設定しなくてもナビゲーションを行えるのが特徴だ。ハザードマップデータや標高データから安全な場所を自動的に判断し、それらの情報は、走りながらでも、また、子供や外国人でも理解できるように、音や色などの直感的な方法で案内する。性別や年齢など能力を考慮した誘導を行う機能や、想定した経路が安全かどうかを事前に確認できる「訓練モード」などを搭載するほか、通信が途絶した場合に備えて必要なデータは端末内部に保持させる。さらに、より安全で通行可能な経路を選択できるように、通行実績データや混雑度データなども活用する。

 「移動販売・臨時店舗による買物難民の解消」は、日常の買い物が困難な“買い物弱者”を支援するアイデア。高齢者の人口分布や小売業者の分布、医療機関の所在地などのオープンデータをマップ上にプロットし、移動販売車や仮設店舗の出店候補地を選定する。さらに、出店候補地の買い物弱者の分布や近隣商業集積地区の商品販売額、空き家・空き地の情報などを参考に、出店場所や出店形態、出店頻度、取扱商品および販売量などを決定する。次に、その計画に沿って実際に販売を行って販売実績や買い物弱者の声を蓄積する。さらに販売計画と実績と対比させた上で、利用者の声にもとづいて計画を評価し、それにより販売ノウハウを蓄積して改善策を検討する。既存のオープンデータを活用することにより、勘に頼らずに手堅く店作りの計画立案を行うことが可能で、PDCAから得たノウハウを蓄積し、新たなオープンデータとして自治体間で共有できる。

 6作品の中でも特に実現したら便利そうだと思ったアイデアが「ゴミえるん」。ゴミ収集事業者がGPS端末と重量計を用いて位置情報やゴミ積載量を取得し、これらのデータを住民に提供する。収集車の位置や到着時間をリアルタイムで知らせることにより、ゴミの出し忘れを防ぎ、回収の直前にゴミを出すことで悪臭や景観悪化、不正業者によるゴミ回収などを予防できる。また、ゴミの量を開示することにより、ゴミを減らそうという意識も啓発できる。行政やゴミ収集事業者側のメリットとして、ゴミ収集車のルート・回収時間・ルートごとの回収量を一括で把握することで最適な回収ルートや人員配置計画の策定が可能となる。

ゴミ収集車の位置をリアルタイムで公開(「ゴミえるん」)

 このほか、インフラに関するデータで共用開始年度が含まれるものを地図にプロットすることで、日本全国のどのインフラに老朽化の可能性があるかを可視化する「公共土木インフラにも迫る高齢化を考える」や、自治体が公開しているウォーキングマップに、航空機レーザー計測データやバス停・バス運行情報、公園、トイレなどの情報を組み合わせる「快適ツーリズム」など地図関連のアイデアも興味深かった。

供用開始から45年を過ぎたインフラの所在例(「公共土木インフラにも迫る高齢化を考える」)
既存のウォーキングマップにさまざまな情報を追加(「快適ツーリズム」)

 この中で金賞を受賞したのは「直感的な避難誘導」。プレゼンターを務めた国土交通省の西沢明氏(国土政策局総合計画課)は講評として、「ニーズとしては非常に高く、災害が増えている昨今では求められるアイデアだと思います。実現するためにはいろいろなハードルがあります。例えばオンラインで運営するとサーバーの負荷が高くなるという問題もありますが、今回の提案ではオフラインでやるというアイデアもよかったと思います」と語った。そのほか、銀賞は「ゴミえるん」、銅賞は、共有農地の情報を集約する市民参加型ウェブサイト「お・す・そ・わ・け」が選ばれた。

目的地を設定しなくてもナビゲーションが可能

データ部門

公共施設情報(建物,消防署,福祉施設,病院,等)のRDF化

http://www1.u-netsurf.ne.jp/~s-koba84/lod/publicFacilityInfoDataAbstract.pdf

平成25年4月〜11月八王子市内侵入窃盗データ

http://kanto.me/kobayashi.wataru/hachio_data/index.html

 5作品の中でも、特に身近なツールとして普及している乗換案内サービスの課題を解決したのが「鉄道インフラデータ」。経路検索結果を地図にプロットした場合、具体的な経路が不明で、「車窓から富士山が見えるのはどの駅あたりか」「災害時に地下鉄が止まった場合の自分の位置」といった情報が分からない。Google マップの乗換案内サービスならば途中経路も地図にプロットされるが、そのデータは自由に利活用できない。そこで作成したのがこのデータで、鉄道の経路探索(位相情報)および駅間の路線形状(幾何形状)双方をカバーした鉄道データを、国土数値情報の鉄道データをもとに作成した。
 このデータには全国の鉄道路線の路線形状と駅位置が含まれるが、路線ラインの端点が駅とは限らないため、そのままでは経路探索できない。よって路線を辿りながら駅の位置で区切るという作業を行った。作成したデータは、駅をノード、駅間の接続関係をリンクとした鉄道のネットワークデータで、オープンソースの経路探索エンジン「pgRouting」で鉄道経路探索が可能。駅間の路線形状(ジオメトリ)も含み、国土数値情報をもとに作成したのでオープン(CC-BY)に利用できる。

pgRoutingで経路探索が可能(「鉄道インフラデータ」)

 一方、UDCT2013で提供されているオープンデータをより利用しやすくするために、これらのオープンデータに緯度・経度を付与し、CSV、KML、GeoJSONのフォーマットで配信を行ったのが「udct+」。使用したのは東京都・大島町のデータで、座標を付与する基盤としては、カスタマイズ可能な位置辞書データベースを使用して座標付与を支援する開発中のアプリケーションを使用。この座標付与基盤はオープンソースで公開する予定だ。

大島町のデータに緯度・経度を付与(「udct+」)

 また、今回は八王子市の犯罪被害発生状況のデータを利用した作品として「児童防犯マップ」と「平成25年4月〜11月八王子市内侵入窃盗データ」の2件が含まれている。「児童防犯マップ」は犯罪の発生数を町丁目ごとに地図化し、どの地区でどのような犯罪が多く発生しているかをGoogle Earthで可視化した。小中学校の位置と犯罪/不審者情報を組み合わせて表示することにより要注意校区が分かる。

 「平成25年4月〜11月八王子市内侵入窃盗データ」は犯罪被害発生状況のデータをもとに名義尺度化を行い、町丁目別世帯数・人口を加えて緯度経度を付加した。世帯データと組み合わせることで被害品目と場所を組み合わせて絞り込んだり、「店舗・事務所では窓や出入口が壊されるケースが多く、集合住宅では無施錠による被害が多い」というように犯罪の手口を建物別に見たりすることができる。犯罪を防止するため、「ふだんからの心がけ」のためのオープンデータ活用を目指している。

犯罪の発生数を町丁目ごとに地図化(「児童防犯マップ」)
犯罪の手口を建物別に分類(「平成25年4月〜11月八王子市内侵入窃盗データ」)

 プレゼンターを務めた日本情報経済社会推進協会の郡司哲也氏は、データセット部門の審査について、「今回の審査にあたっては、どれだけ複数のデータを効果的に使って課題解決をしたか、という点で審査をしました」と説明。金賞に選ばれたのは「平成25年4月〜11月八王子市内侵入窃盗データ」だった。講評としては、「データを地図に表示させるだけでなく、いろいろなデータを重ねて組み合わせた時に、グラフにするなど、さまざまなアプローチで評価するところまで見せてくれた点と、GISのスキルがなくてもそのような課題解決ができることを示してくれたこと、そして犯罪という身近なテーマについて、公開データを使って課題を解決した点を評価しました」と語った。このほか、銀賞は「udct+」、銅賞は「鉄道インフラデータ」が選ばれた。

アプリケーション部門

メイド・イン「地元」

http://mij.hozo.jp/udtc2013.html

富岳3776景サイト(仮)

http://fugaku3776.okfn.jp/

リモートでちょっと川の様子見てくる!

http://pingineer.net/flood-map/

AED SOS

http://www.strikingly.com/aedsos

 6作品の中で防災をテーマとしたのが「生存確率0%」と「リモートでちょっと川の様子見てくる!」の2作品。「生存確率0%」は豊島区の水害ハザードマップや消防水利マップを使ったもので、明治時代の古地図と現在の地図を重ねてどこに住むかを回答すると、その土地のリスクについて「○年は安心」「○年に一度の危機」などと危険度を判定して表示する。

指定した土地のリスクを診断(生存確率0%)

 「リモートでちょっと川の様子見てくる!」は、国土数値情報を使って、川の水位や浸水想定区域、避難所、避難ルートなどを地図上に表示したハザードマップ。避難所の種類を選択することで表示/非表示を選択可能で、観測所をクリックするとリアルタイム雨量や河川の水位を表示できる。Google翻訳により60超の言語に翻訳して表示することが可能だ。

浸水想定区域などを地図上に表示(「リモートでちょっと川の様子見てくる」)

 防災がメインではないが、2月中旬に起きた関東甲信越地方の豪雪被害の際、災害情報にもすばやく対応したのが「富岳3776景サイト(仮)」だ。同サイトは位置情報付きの富士山の写真を投稿・閲覧できるサービス。既存データとして「ふじのくにオープンデータカタログ」の「富士山ビューポイント」の画像を閲覧することが可能で、投稿された画像はオープンデータ化されて(Twitterの投稿を除く)再利用でき、自治体の観光案内などにも利用できる。

富士山の写真を投稿・閲覧できる

 人の流れを地図上で見られる「mobmap」も面白い。Chrome用アドオンがChromeウェブストアにて公開されている。CSV形式のパーソントリップ補間データなどを読み込むと、マップ上で人の流れをアニメーションで表示したり、分析を行ったりすることができる。

人の流れを地図上に表示
周囲にいる救命協力登録者にSOSを通知

 まだ開発中だが、実現したら画期的だと思ったのが、AEDを救命現場に届ける仕組みを作るアプリ「AED SOS」だ。心停止者を発見した場合に同アプリでSOSを発信すると、半径500mの救命協力登録者(事前にアプリをダウンロードして救命協力登録を行ったユーザー)にSOSをプッシュ通知して知らせることができる。twilioを活用して最大40人まで同時通話が可能で、電話で詳しい場所を聞いて現地に来てもらう。その際、AEDに近い場所にいる人はそのまま持ってきてもらう。これにより、救急車到着前にAEDを使用できる確率が高まると同時に、熟練者による適切な応急処置が可能となる。使用しているのは自治体が提供するAEDのオープンデータだが、これを公開している自治体はまだ少数なので、アプリ内にAED設置場所の投稿機能を付加してデータを収集する機能も搭載する。

 これらの中で金賞を獲得したのは「AED SOS」。プレゼンターを務めた朝日航洋株式会社の大伴真吾氏は、「命を救うためにできることを支援してくれる大変有益なアプリ。プッシュ通信や同時通話など、スマートフォンならではの機能をよく活用しています。本アプリをインストールする意識の高いユーザーは、いざというときにきちんと協力してくれそう」と講評のコメントを紹介した。このほか、銀賞には「mobmap」、銅賞には「富岳3776景サイト」が選ばれた。

 さらに、スポンサー賞(NTT空間情報株式会社)には「リモートでちょっと川の様子見てくる!」、自治体特別賞(静岡県)には、基調講演でも紹介された「富士フォト」、実行委員会奨励賞には「移動販売・臨時店舗による買物難民の解消」が選ばれた。

ワークショップがきっかけでオープンデータへの取り組みが積極的に

 最後にUDCT2013の実行委員長である東京大学生産技術研究所・准教授の関本義秀氏が、「今回は本当にいろいろな立場の人からいろいろな作品が集まりました。このようなかたちでよいアプリやサービスが集まってくると、決定版といわれるようなものも出てきて、そうなると今度はますますデータの必要性も高まり、『あの自治体はオープンデータを公開しているけど、こちらの自治体にはデータがない』という声などが増えてきて、次のステップに移っていくのだろうと思います」と語った。

 関本氏によると、基調講演に登壇した静岡県の野村局長は、8月1日に開催したUDCT2013の第2回ワークショップに参加したことがきっかけでオープンデータへの取り組みに積極的になり、8月27日の「ふじのくにオープンデータカタログ」の公開に至ったという。コンテストだけでなく、そこに至るまでの過程として開催されたワークショップ自体が、オープンデータを推進させる力となったわけだ。今後は首都圏にこだわらず全国化も検討されているUDCT、オープンデータ推進のために来年以降どのような展開を見せるのか注目される。

関本義秀氏
受賞者一同

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。