趣味のインターネット地図ウォッチ
第181回
Google Glass的なゴーグル「Recon SNOW2」を装着して滑ってみた
日本のゲレンデマップも収録、ゴーグル内に表示
(2014/2/20 06:00)
ちょうど3年前、この連載で米Recon InstrumentsのGPS搭載HUDスノーゴーグル「Recon ZEAL Transcend」を紹介したが、同社の最新モデルとなるHUD「Recon SNOW2」が2月10日、いよいよ日本で発売となった。SNOW2はZEAL Transcendと同様に滑走速度や移動距離、軌跡ログなどを記録できるだけでなく、Bluetooth接続でスマートフォンとの連携も可能となり、より多くの機能が加わった。今回はこのSNOW2を装着して実際にゲレンデで滑ってみたので、その使用感をお伝えしたい。
Bluetooth接続によりスマートフォンとの連携が可能に
Google Glassが話題になる以前からHUD搭載のゴーグルを世に送り出していたRecon。そのHUDを搭載したZEAL Transcendは、スキーやスノーボードで滑走しながら滑走スピードや移動距離、標高などさまざまな情報を確認したり、GPSにより軌跡ログも記録したりと、スノースポーツを楽しむためのさまざまな機能を搭載していた。今回発売した「SNOW2」では、ここからさらに進化して、スマートフォンとの連携が可能なBluetooth(4.0)とWi-Fi接続(IEEE 802.11b/g/n)機能を搭載している。
日本国内で代理店を務めるのは、ウェアラブルカメラ「Contour」シリーズを扱う株式会社美貴本。SNOW2はZEAL Transcendのようなゴーグルと一体化した製品ではなく、HUDユニット単体で販売する形となり、各ゴーグルメーカーから発売されている対応ゴーグルと組み合わせて使用する形となっている(対応ゴーグルとのセットパッケージも用意)。対応する「Recon READY」ゴーグルは、UVEX、Alpina、Briko、Scottの4メーカーが発売しており、セットパッケージにはUVEXの「G.GL9」というゴーグルが入っている。
本体は左右に分かれており、左にバッテリー、右に電源ボタンやマイクロUSB端子、HUDが搭載されている。ゴーグルに取り付ける際は、左右のユニットをつなぐケーブルをゴーグルの上部にはめ込んで装着する。HUDユニットを装着すると、右眼の斜め下にディスプレイが来るように固定される。
搭載しているセンサーはGPSに加えて加速度・ジャイロ・磁力計(いずれも3軸)、温度センサー、気圧センサー。プロセッサは1.0GHzのデュアルコアで、メモリは1GB、ストレージは2GB。ディスプレイの解像度は428×240ピクセル。仮想画像サイズは、1.5m先に14インチのディスプレイがあるように見える。
ディスプレイの見え方はZEAL Transcendと同様で、前方の景色を見ている時は視界に入らず、それでいて視線を少し下げるだけで情報を確認できる絶妙な位置にある。HUDの部分は回転させることも可能で、可動範囲はそれほど広くないが見やすい位置に調節できる。
ウェアやゴーグルストラップに取り付け可能なリモコンが付属
本体に付いているボタンは電源スイッチだけで、オン/オフ以外の操作はすべてリモコンで行う。リモコンは付属のバンドで厚手のウェアの上から腕に巻けるほか、バンドを替えることによってゴーグルのストラップに取り付けることも可能だ。リモコンの電源はコイン電池(CR2032)を使用。
リモコンは左右上下の十字ボタンと選択ボタン、そしてBACK(戻る)ボタンと、計6つを装備。LEDインジケーターも装備しており、ボタンが押されるとインジケーターが短く点灯する。
左側のユニットにはリチウムポリマー充電式バッテリーを内蔵している。充電する場合は右側ユニットのマイクロUSB端子にUSBケーブルをつないで、付属のUSB ACアダプターやPCに接続する。充電時間は1時間の高速充電で80%を充電可能。100%まで充電するには約4時間かかる。バッテリーの容量は1200mAhで、駆動時間は最長約6時間。
本体の重量は約65g。普通のゴーグルに比べると手に持った感じでは少し重さを感じるが、装着してみるとそれほど違和感はない。激しく動いても重さのせいでずれたりすることもなかった。
日本国内52カ所のゲレンデマップを搭載
起動すると自動車のスピードメーターのようなデザインのメイン画面(ダッシュボード)が表示される。SNOW2のメインディスプレイ画面はダッシュボードに加えて、方角やゲレンデマップを見られる「レーダー」、スマートフォンの音楽を操作できる「音楽」、スマートフォンにかかってきた電話やSNSへの投稿などを通知する「通知機能」、アラームやストップウォッチなどを利用できる「アプリ」の5種類を切り替えられる。
ダッシュボードでは、「速度のみ」「速度・ジャンプ滞空時間・垂直移動距離」「速度・標高・垂直移動距離」など、さまざまな表示形式から選択できる。速度については最高速度も小さく表示される。
レーダーでは登録したほかのSNOW2ユーザーの位置が分かるほか、ゲレンデマップ上で自分の現在地を確認できる。収録しているゲレンデマップは海外だけでなく日本のスキー場も収録している。日本のリゾートで収録しているのは全52カ所で、志賀高原や八方尾根、ニセコ、蔵王、安比などメジャーな大規模リゾートはほとんどカバーしている。
ゲレンデマップの内容は、黒(上級)・赤(中級)・緑(初級)と色分けしてコースが描かれているほか、リフトの位置やレストハウスの位置も入っている。シンプルで味気ないデザインだが、初めて訪れたスキー場でも、今どこの位置で滑っているのか分かりやすい。マップはリモコン操作で拡大・縮小が可能で、滑走中にはヘディングアップ表示にも切り替えられる。
音楽の画面では、スマートフォンで再生中の曲名を表示することが可能で、曲送りやボリューム調整などを行える。通知機能では、電話がかかってきたことや、SNSの投稿などを確認できる。
通知画面では電話の着信に加えて、最高速を記録した時にも知らせが入り、Facebookへの投稿操作も行える。アプリについてはアラームやストップウォッチに加えて、ウェアラブルカメラ「Contour」との連携機能を利用できるアプリや、心拍計と連携できる機能などを搭載する。Contourと無線接続してアプリを起動することにより、Contourで撮影した映像をSNOW2のディスプレイでモニタリングすることが可能で、Snow2のリモコンで録画の開始/停止が可能だ。
このように数多くの機能を搭載しているSNOW2だが、実際に使って一番便利だと思ったのは、やはりゲレンデマップで自分の位置が分かることだ。初級・中級・上級の色分けが実際のゲレンデマップと異なる点があったものの、ゲレンデ内での自分の現在地をいつでも確認できるという体験はこれまでにはなかったことで、いちいちゲレンデマップのペーパーをポケットから取り出すのに比べると実に使い勝手がいい。レストハウスの位置も収録されているので、特に初めて訪れるゲレンデの場合はかなり重宝する。
次に便利だと思ったのはペアリングしているスマートフォンへの電話の着信を知らせてくれること。ゲレンデで滑っている時に電話がかかってきた場合、場内音楽がうるさかったりして着信音が聞きづらいことがあるが、ゴーグルに表示されれば着信を逃す心配がない。友人や家族との待ち合わせで電話を待っているような状況ではこの機能が役に立つだろう。
速度表示やジャンプの滞空時間を表示する機能も面白いが、個人的にはゲレンデマップの中で自分の位置が分かるという体験に特に感動を覚えたので、今後は日本のゲレンデを小さなところまで網羅して収録する方向に進化してほしいと思った。さらに、Google マップなどを使ってオリジナルのゲレンデマップを自分で作成し、簡単に追加できるようになれば便利だと思う。
このほか、スタート地点とゴール地点の緯度・経度を登録して、カウントダウンによるスタートで2点間のタイムを自動的に測れる機能がほしいと思った。ポールバーンが設置してあるゲレンデでこの機能を利用すればタイムを計測して蓄積し、あとから振り返ることができるだろう。SNOW2は開発環境が公開されているので、今後このようなアプリが新たにリリースされる可能性はある。
リフト搭乗時を除いて滑走時のログだけを抽出可能
滑走後はPCにUSBケーブルで接続することにより、「Recon ENGAGE」のPC向けウェブサイトに接続し、滑走データや軌跡ログを転送できる。Zeal Transcendでは「Recon HQ」というネイティブアプリケーションを使用していたが、現在はGoogle Maps APIを使ったウェブアプリケーションへと変わった。
SNOW2から取り込むデータは軌跡ログのほか、ジャンプ滞空時間や天気の情報なども含まれており、これらをまとめてクラウド上に保存できる。軌跡ログのほかに高度変化や速度変化のグラフも表示されて、軌跡ログと位置を連動させながら振り返ることができる。また、保存したデータはiPhone/Androidアプリ版のRecon ENGAGEから閲覧することも可能だ。
以前、Recon HQを使用した時に便利だと思ったのが、単に軌跡ログを表示するだけでなく、リフト乗車部分と滑走部分を自動的に判別して、滑走部分だけを表示させる機能が搭載されていたこと。この機能はRecon ENGAGEでも健在で、リフト乗車時のデータを除いて滑走記録だけを「1RUN」「2RUN」「3RUN」と順番に表示することができる。GPSロガーを持って同じコースを1日に何回も滑ると、ログが重なってわけがわからなくなってしまうが、SNOW2で記録したログをRecon ENGAGEで見れば、1回ごとの軌跡を抽出できるのでとても便利だ。
なお、Recon ENGAGEはまだ提供開始して間もないということもあり、機能的に物足りない部分もある。最も残念なのは、軌跡ログをGPXやkmlなどの形でエクスポートできない点だ。Reconのユーザー掲示板でもこの点について不満が寄せられており、Reconは対応を予定していると返答している。というわけで今回は同じ地図上で軌跡ログを比較することはできないが、同時に記録したガーミンのeTrex20Jのログを掲載するので参考にしてほしい。eTrex20Jの方はログを5秒おきで記録したので軌跡が粗く、単純に比較することはできないが、SNOW2は山頂付近のジグザグの部分を見ても十分な精度を持っている。
また、今回試した時、1日に2つのスキー場を訪れたのだが、スキー場からスキー場へと移動するときにSNOW2の電源を入れっぱなしにしておいたところ、自動車での移動が滑走と認識されて、滑走ログとして残っていた。現状では一度このように記録されてしまうと編集してその部分だけを削除することはできず、この点も不便だと思う。
このほか、Recon ENGAGEの地図画面を衛星写真に切り替えると、SNOW2でゲレンデマップを収録しているスキー場に同じ内容のコース情報が表示される。つまりRecon ENGAGEのマップを見れば、どのスキー場が収録されているのかがわかるというわけだ。
ちなみにゲレンデマップが用意されていないスキー場でSNOW2をナビゲーションモードにすると、「No map available」という通知とともに、付近でゲレンデマップを用意しているスキー場を教えてくれる。例えばゲレンデマップが用意されていない水上高原スキー場に行った時は、「Nearest resort Houdaigi , 2km」と、近くにある水上宝台樹スキー場でマップが用意されているという案内が出た。
スキー/スノーボードを楽しくする注目ガジェット
このようなゲレンデマップの収録やスマートフォンとの連携により、スノーゴーグル用HUDとしての完成度を高めたSNOW2。価格はHUDだけで5万2500円、ゴーグルとセットだと6万5000円と、決して気軽に買える値段ではないが、今後、アプリやゲレンデマップが追加されればさらに魅力は増してくる。現状はスノーゴーグルにしか対応しないが、MTBやモトクロスなどで使うサイクル用ゴーグルや、バイク用ヘルメットなどにも取り付けられるようになれば可能性はさらに広がると思う。
常にゲレンデ内の自分の位置を把握できるというのは今までにない体験だし、エアの滞空時間の測定機能などもほかのガジェットにはない機能だ。Contourユーザーにとっては連動機能もかなり便利で、スキーやスノーボードを楽しくするツールとして注目だ。現在、都内ではツクモパソコン本館の2階などに展示しているので、興味のある人は一度見てみてはいかがだろうか。