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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

ネットの検閲を一切なくした「重慶クラウド特区」を発表 ほか
2011年6月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を取材拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

ネットの検閲を一切なくした「重慶クラウド特区」を発表

 内陸の都市「重慶」に、海外へのネット接続でグレートファイアウォールなどのネット検閲を一切なくした「重慶クラウド特区(中国語で重慶雲特区)」が発表され、内外の知識人から注目を浴びた。特区開設は、中国におけるデータセンターなどのアウトソーシング産業の発展促進が目的だ。

 ただし、本連載で前回紹介した内モンゴル自治区において厳戒態勢となった内モンゴル自治区内で人気SNSサイトが利用できなくなったことをはじめとして、中国のインターネットの検閲は国体維持のために行われている傾向が強いため、一般の中国人の利用は禁じるようだ。

 「重慶経済および情報化委員会(重慶経済和信息化委員会)」によれば、既に外国企業がコンタクトを取ってきているとし、3年内に第一期の工事を完成させるとしている。一方でいくつかの中国メディアは発表後「重慶クラウド特区の外国メディアの反応として、中国のネットに対し不信感を抱いているようだが、安全でない根拠は見あたらない」という記事を掲載している。

重慶クラウド特区の記事。グレートファイアウォールが描かれている 中国企業によるクラウドが中国国内で普及するとするIT新聞記事

 

中国ナンバー1人気ミニブログサイト「新浪微博」が日本進出

ミニブログ・ブログ・SNSの利用実態

 中国で最も人気のあるミニブログサイトの「新浪微博」の日本進出の足がかりとして、Find Japan株式会社と提携して公式アカウント認証サービスを開始した。詳しくは「”中国版Twitter”の「新浪微博」が日本進出、公式アカウントを取得可能に(※http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20110629_456914.html)」の記事を参照。

 6月に中国のリサーチ会社「iResearch」が発表した調査結果によれば、2011年2月時点でミニブログ利用者は2億人を突破、利用者は年内に2億8000万人、2014年末には4億3000万人になると予想している。


新浪微博 新浪微博2

 

一地方の国税局、オンラインショップに税金を課し騒然

 中国中部の大都市「武漢」の国税局は、人気オンラインショッピングサイト「淘宝網」に出店する人気アパレルショップ「我的百分之一」に納税の督促を行った。同店は2010年に1億元(約12億5000万円)以上の売上げを記録し、今回国税局は延滞金も含めて計430万7900元(約5400万円)を納税するよう通告している。武漢市ではこのほか、市内の淘宝網に出店する人気ウェブショップ4店についても通告するとしている。

 淘宝網は個人でもショップを開店でき、企業も個人も同じ扱いということで多くの個人が淘宝網内でウェブショップを運営している。武漢国税局は「店舗がないから税金を払わないというのは不公平だ」としている。

 ただし、中国全土で一致した動きはなく、北京においても現在までのところ、国税局は各ショップへに対する通告は行っていないという。武漢市側としても「(武漢だけ厳しいのでは)ショップが武漢から逃げてしまう」という認識があり、舵取りの難しさを痛感しているようだ。

 ポータルサイト「網易(NetEase)」では、「値段を上げるか、それとも店じまいするか」という読者アンケートに対し7割が「店じまいすると思う」と回答している。

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中国国内の海賊版コンテンツの淘汰に向け様々な動き

百度mp3捜索

 正規版音楽を普及させるべく、中国政府文化部を筆頭に中国の音楽レーベルや百度を含むポータルサイトら20社により「網絡音楽行業発展聯盟(ネット音楽業界発展聯盟)」が発足した。百度は既に海賊版音楽の温床と名指しされた「mp3捜索」サービスへの回答として、正規版音楽コンテンツ「ting」をリリースし、6月末を最終期限として海賊版コンテンツへのリンク消去を行う(mp3捜索は終わらない)とした。

 上海文化産権交易所らは「2011媒体版権高峰論壇」を開催、そこで上海の裁判所が10年近くで550のネット著作権の判決書の統計を発表。全案件中、版権所有者の勝訴率は94.4%で、同55%が半年以内に結審したとしている。

 動画絡みでは、優酷網(YOUKU)がワーナーブラザーズとの提携を発表。三年契約で、優酷網の有料サイト内でワーナーブラザーズの提供する450タイトルの映画を配信するという。この発表により優酷網の株価は大幅に上がった。

 また今月には国家版権局が処理を行った1148件の海賊版絡みの事件のうち、15のネットを利用した典型的な事件について公表した。音楽の無断配信、オンラインゲームのチートプログラムの販売・チートサーバーでの運営、数万冊単位の海賊版文学作品の有料ダウンロード販売、1万以上の映像作品のアップロードなど多岐にわたり、それぞれの代償として数万元の損害賠償や数年単位の実刑判決が紹介された。

 とはいえ海賊版への取り締まりは中国国内コンテンツばかりで、日本を含む外国のコンテンツの海賊版は、見せしめが少ない分、特にアニメ・ゲーム・コミックで海賊版が蔓延している状況だ。ただ以前に比べ正規版化により動き出しているようなので、ワーナーブラザーズのように提携を模索するもよし、また海賊版コンテンツに頭を抱えている場合、国家版権局に属する中国版権保護センター( http://www.ccopyright.com.cn/cpcc/index_jp.jsp )からアクションを起こすとよいかもしれない。


政府サイトの公式写真がコラージュ写真で話題に

 内陸四川省のそのまた奥地にある会理県の政府サイトで、政府役人の現地視察写真を公開。それが例えば役人の足元に影がないなど、明らかに不自然だとわかる低質なコラージュ写真とあって、ネット利用者の中で話題になった。その話題っぷりは「PS 会理」で画像検索するとネットユーザーらによる多数の悪乗りコラージュ写真が表示される。ちなみにPSは中国ではPhotoshopの略、転じて画像処理の意味。

 四川省の田舎「会理県」は突如この事件で中国全土のネットユーザーの間で話題となるや、渦中の会理県の政府役人「孫正東」氏もこれに便乗。「ネタと思って笑って見てください」とばかりにコラージュ写真による会理県観光案内をミニブログで開始し、多くのフォロワーを得て会理県をPRする結果となった。また中国で既に人気のグルーポン型クーポンサイトでも「貴方も会理に行って空を浮く!?会理県3泊4日ツアー」クーポンが登場。この機を逃さずネットでアクションを起こした企業も登場した。

新たに二次作品としてネットユーザーらに作られるコラージュ写真 話題となった会理県政府のコラージュ写真

 

インドの反腐敗サイトを模倣した告発サイトが中国で多数登場も即消去に

インドのIPAIDABRIBE

 インドで2010年夏に彗星のごとく登場した反腐敗サイト「I PAID A BRIBE(賄賂払いました)(※http://ipaidabribe.com/)」に触発されて、中国でも同コンセプトのサイトが登場している。しかし中国のインターネットの方針と反するのか、「我行賄了」「我賄賂了」といったサイトが、立ち上がっては消され、別ドメインのサイトが立ち上がっては消されている。

 サイトのひとつ「我行賄了」は開始2日目で5万アクセスを記録。メディアの取材に対しサイト管理人は「インドのサイトに触発を受けた。反腐敗情報の書き込みは今まで分散していたから、こういうサイトに情報が集まればいい。中国政府も反腐敗を唱えているし悪いことではないと思う。政府関係者コンタクトがあれば直接会って対話したい」とコメントした。我行賄了も現在アクセスできない。


軍ではネットでコミュニケーションを厳しく規制

「光栄使命」を紹介する記事と「休憩時にネットを利用する兵士」の写真

 人民解放軍の総参謀部と総政治部は連合で、人民解放軍の軍人がネットを介して秘密情報が漏らさぬよう、ネットで友人・恋人探しや、ブログ開設・掲示板スレッド立てや、校友会・戦友会などの利用に規定を定めた「予防犯罪工作条例」を出し、各軍人のネットでの友人作りの状況について検査指令を出した。自己申告に嘘があった場合、公安機関に通報し刑罰を与えるとしている。

 一方で軍におけるPCの利用を推進するニュースもあった。6月21日に人民解放軍南京軍区が「独自開発」を謳ったFPSゲーム「光栄使命」をリリース。34の人気FPSゲームを参考にし、座談会で兵士の趣味や要求などを聞いた上で、オンラインゲームベンダー大手「巨人網絡」と半年かけて共同開発したとのこと。基礎訓練、個人ミッション、グループ対抗からなり、仮想軍事演習ができるという。ネットの反応は「政治や戦争は遊びじゃないんだ!」と辛口コメントが並んだ。


ネットで自動車保険がひそかに人気に

中国平安の自動車保険のページ

 ひとりっこネット世代は他の世代に比べ積極的に消費をする一方、オンラインショッピングが人気であったり、グルーポン型クーポンサイトが人気であったりと倹約家の一面もある。マイカーを持つネット世代も増えてくる中、ネットでの自動車保険がひそかに人気となってきているようで、様々なメディアから流行になりつつあるというニュースが報じられた。中国平安や太平洋保険など保険会社大手がこぞって簡単見積もりサイトを構築、特に北京や上海は車のナンバーを入力するだけで見積もり結果が表示されるという。
 

 


関連情報

2011/7/6 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。