山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
中国のネット利用者は6億人弱も伸びは鈍化 ほか ~2013年7月
(2013/8/16 06:00)
本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
中国のネット利用者は6億人弱も伸びは鈍化
中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)は17日、中国における2013年6月末におけるインターネットの利用状況をまとめた「第32次中国互換網発展状況統計報告(第32回中国インターネット発展状況統計レポート)」を発表した。2013年6月末時点のインターネット利用者は5億9100万人で、総人口に対するインターネット利用率は44.1%。利用者の増加は昨年までと比べ緩やかとなった。
携帯電話によるインターネット利用者は4億6400万人となり、インターネット利用者のうち78.5%がモバイル機器を(モバイル機器も)利用している。農村部のインターネット利用者は年間で半年間で900万人増の1億6500万人で、農村部においても増加ペースは緩んでいる。
なお中国政府工業和信息化部が発表した、6月末の時点での契約回線数は携帯電話全体で11億7585万、うち3Gが3億1887万、ブロードバンド契約数は1億8094万、モバイルインターネットユーザー数は8億447万となった(携帯電話でのインターネットの定義が異なると思われる)。
詳しくは「中国のネットユーザーは約5億9100万人。伸びの鈍化が顕著に~CNNIC調査」の記事(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130718_608093.html)でご紹介しているので参照していただきたい。
Apple、App Storeランキング上昇代行業者の台頭に再調整
7月末、Appleは2度目となる中国におけるApp Storeランキング調整を行った。「I AM MT」や「拡散性ミリオンアーサー」などの人気のゲームが軒並み大幅にランクダウンした。App Storeのランキング上昇代行業者によるランキング操作が原因といわれている。ランキング上昇代行業者は今回の見直しに「半月もあればクラックできる」とコメントしている。
各メディアの報道によると、代行業者は無数にあり、所有する数万のIDを利用して一気にダウンロード。1日で4万元(64万円)、1週間のランクアップ操作で14万元(約224万円)を要求する業者があるそうだ。そのアカウント取得方法は様々だが、利用者がJailBreakしたデバイスで中国のアプリ配信サイトを利用したり、PCと連携するユーティリティを利用したりすることで、IDが盗まれるという。半数以上のiOSデバイスユーザーがApp Storeを使わず、JailBreakしているというレポートがあるほか、Androidに関してもGooglePlayが使えないという中国ならではの事情で、スマートフォンやタブレットをハッキングしやすくなっているようだ。
朝日新聞などの微博アカウントが封鎖される
7月17日、新浪、騰訊、捜狐、網易の4大微博で同時に朝日新聞のアカウントが封鎖された。中国語サイトの社説が原因でないかと言われている。また在上海アメリカ総領事館の新浪微博アカウントが封鎖された。
サイトcnBetaの7月の記事によると、新浪微博はデマツイートに関する公示システム、監測システム、通知システムを構築し、世論を誘導する「微博社区委員会」メンバー(中国では通称「五毛党」と呼ばれる)を10万人に拡大するという。
微博利用が2011年当時まで減少、ユーザーは微信へシフト
微博のつぶやきが2012年の後半より下がり続け、2011年の段階まで減少していることが判明した。草の根で情報を発信できるはずが、いつのまにか大本営つぶやきばかりが目立つようになり、大ニュースがあるときは利用されるものの、平時はLINEに似た微信のグループチャットなどに移行しているのではないかと分析されている。
人気が高まるLINEのようなメッセージングソフト「微信(WeChat)」の利用実態については、艾媒咨詢(iiMedia Research)が調査結果を発表している。利用者のうち76.4%がグループチャットを利用、67.0%が文字でのチャット、45.3%が音声通話を使うという結果となった。またやりとりは文字での送受信が83%強と最も多く、音声が送信で49.3%、受信で60.3%、画像の送受信が40%強、動画は発信2%受信4%となった。
百度、モバイルアプリ配信サイト「91無線」を19億ドルで買収
百度はモバイルアプリ配信サイト大手「91無線」を19億ドルで買収した。中国ではGooglePlayが利用できないが、「91無線」サイトではAndroidアプリ、iOSアプリなど、スマートフォン用アプリを配信している。利用率も高く、ポータルサイト「新浪(Sina)」の読者調査では、3万3000人の回答者のうち約72%が利用したことがあると回答。91無線と百度のダウンロードサイトを合わせると1日平均6900万ダウンロード(主にモバイルからのダウンロード)となる。今回の買収により91無線は百度配下のサイトとなるが、今後も名称を変えることなく運営していく。
PC向けサービスでは、ポータル、動画、検索、SNS、ECなど各ジャンルにおいて、大手サイトがいくつか立ち上がって、小さいサイトが淘汰されるという状況が繰り返されてきた。2011年から2012年にかけて、アプリ配信サイトは100サイトから20サイトまで絞られ、儲けが出ないサイトは撤退した。
今回91無線が大手ポータルの百度に買収されることで、さらに中小アプリ配信サイトが淘汰し、巨大サイト同士の競争となるのではないかと予想されている。現在残っているのは、検索の「百度」とチャットソフトQQの「騰訊(Tencent)」とセキュリティソフトやLINEの中国展開の「奇虎360」の3大サイトと、「応用匯」「机鋒網」「安智」などの中小サイトだ。
現状海賊版アプリも多数出ているが、動画サイトで動画コンテンツホルダーから提訴されたことで正規版コンテンツ購入競争が起きたように、アプリベンダーと提携した独占アプリ配信というのも出てくるかもしれない。
中高年がスマートフォンを利用しはじめる
調査会社のiResearchはモバイルインターネットに関する調査レポート「中国手机上網用戸行為研究報告」を発表した。調査によると、男女比では男性ユーザーが多く全体の56.6%を占めるが、前年より若干女性の割合が増えた。また、ユーザーは高学歴が多く、大卒以上が60.8%を占める。年齢別では40歳以上の利用は13.0%と割合としては少ないものの、去年よりずっと割合は増えた。
利用頻度は「毎日、時間があるときに何度も利用する」利用者が71.9%を占め、具体的な状況としては「渋滞で何もすることがない車内(54.2%)」「バスや地下鉄内(47.3%)」「帰宅後の家の中(46.6%)」「会社で休憩時(39.4%)」「外に遊びに行くとき(32.5%)」「街で買い物をするとき(13.1%)」となった。
WEBサイト訪問はアプリ利用が41.0%、ブラウザー利用が59.0%。社会人より学生、定収入より高収入のほうがアプリ利用の割合が高いという結果となった。またスマートフォンよりもタブレットのほうが様々なネットサービスで利用されているという。
アリババもセットトップボックスをリリース
今年に入り、動画サイトの楽視網が同サイトをテレビで使いやすく利用できるセットトップボックス「楽視盒子」やそのテレビ本体「楽視TV」が発表され、安価なスマートフォンのメーカー「小米」が「楽視盒子」をリリースするなど、テレビをスマートテレビ化できるセットトップボックスが話題となっている。
こうした流れに乗って、中国ネット界の重鎮「阿里巴巴(アリババ)」も、セットトップボックスを発表した。セットトップボックスの名前は「華数彩虹」。動画サイト「華数TV」と提携し、華数TVのコンテンツが視聴できる。スマートフォンをリモコン化できたり、アリババ系の電子マネー「支付宝(アリペイ)」からコンテンツ利用料やECサイトでの支払や光熱費の支払いができる独自OS「阿里智能TV操作系統」を搭載している。価格は競合製品同様300~400元(4800~6400円)で、9月に市場に投入される予定だ。
ポータルサイトやECサイト、金融サービス提供を加速
人気ナンバー1ECサイトの「淘宝網(タオバオ)」で、10数社の証券会社が許可を受けファンドを販売することが発表された。8月末に販売を開始する。
阿里巴巴(アリババ)系サイトである淘宝網といえば、6月に「支付宝」が電子マネーの少額残金で運用するファンド「余額宝」という新サービスをリリースした。支付宝は淘宝網で利用できる電子マネーのサービスを提供している。
この7月には、ポータルサイトの百度や新浪にも電子マネー発行(第3者支払サービス)許可がおり、1億ユーザー以上を抱える阿里巴巴系の支付宝を追う。ただ、百度や新浪はECサイトではないので、たとえば新浪微博での有料サービスや百度の各種サービスと紐づけてユーザーを増やし、さらにモバイルで利用できるようにするのではないかと各中国メディアは予想する。
また、ECサイトの京東商城は金融関連部署を立ち上げ、ショップ運営企業に対して年率10%未満/貸し出し期間1カ月の小口融資を始めることを発表している。
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人気ECサイト天猫、モバイル取引が1日に1億元を突破
人気B2Cサイトの天猫(Tmall)によると、同サイトのモバイルからの売上が1日あたり1億元を突破した。天猫は2012年4月にiPhone向けアプリをリリース、その後、Android、Windows Phone、iPad向けアプリをリリースした。現在は天猫へのアクセスの15~20%がスマートフォン向けアプリからのアクセスとなっている。商品ジャンルでは、女性向けの服、化粧品、生活用品、デジタル家電に人気があるという。