山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

百度がパブリックDNSをリリース、中国のネット環境が体験可能 ほか〜2014年12月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、中国にラブコール

 FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、中国のインターネット行政のトップを同社本社に招き、猛烈なラブコールを送った。招かれたのは、中央宣伝部副部長兼、中央網絡安全和信息化領導小組方公室主任兼、国家互聯網信息方公室主任の魯wei氏(火へんに緯)。招待時には、オフィスデスクに習近平の著書を置いてべた褒めしていたと報じられている。このニュースは中国では報じられていない。

 中国国外のSNSや動画共有サイトは、西方の「敵対勢力」とも呼ばれることがあり、Facebookの中国進出は難しい。仮に中国に進出するとなれば、携帯電話番号と紐付けた実名登録や、NGワード・NG画像のフィルタリングなど、中国のルールが厳しく適応されることになるだろう。中国に進出したところで、SNSは利用者がいないと意味がないが、中国っぽいネットサービス作法に慣れきった中国人は、Facebookをあえて利用することはないのではないだろうか。

 これとの関係性は定かではないが、12月27日に、Facebookのチベット人活動家が書き込んだ焼身自殺に関する書き込みが消された。活動家によると、2008年よりFacebookに登録していたが、消去されるのは初めてとのこと。

百度がパブリックDNSをリリース、中国のネット環境が体験可能

 百度は12月6日、パブリックDNSサーバーをリリースした。「クラウドによるセキュリティ対策をし、より快適により安全にインターネットが利用できる」ことを謳っている。DNSのアドレスは「180.76.76.76」。

 検索サイトでは、GoogleがパブリックDNS「8.8.8.8」「8.8.4.4」をリリースし、ベトナムなどFacebookやTwitterが利用できない国々の人々に愛用されている。百度のパブリックDNSサーバーは中国のサーバーなので、外国に居ながらにしてFacebookやTwitterが利用できない中国のネット環境を再現できる。

百度DNS

アニメ関連サイトに政府の指導、弾幕にもフィルタリング

 中国人による日本のアニメ/コミック/ゲーム(略称ACG)愛好家に支持されている動画サイト「ACFUN(略称:A站)」「bilibili動画(略称:B站)」も、海賊版コンテンツのチェックで対象に。ACFUNやbilibili動画は、ニコニコ動画と同じコメント機能が特徴であることから、「弾幕視頻(弾幕動画サイト)」と呼ばれるが、そのコメント機能について検閲の対象にすべきという論が、版権問題と同時に挙がっている。

 動画サイトのコメント機能の検閲については、10月に開催された映画イベント「中国金鷹電視芸術節」のライブ配信において、15秒のコメント遅延表示とキーワードによる自動フィルタリングの実装、人の手による検閲により、成功を収めたとしている。

 これは中国政府文化部による、ネット整頓キャンペーン「第二十二批違法違規互聯網文化活動査処行動」によるもの。2014年には、他の動画コンテンツも調査対象となったが、今回のネット整頓キャンペーンにおいては、アニメとゲームアプリのチェックを強化したという。そのため、ほかにも騰訊(Tencent)のアニメチャンネル「騰訊動漫」など21のサイトが、ポルノや暴力コンテンツを流しているとしてチェックを受け、「極影動漫」「動漫花」といった動画サイトが閉鎖した。

 また、10月には字幕付き海賊版動画サイト「人人影視」が摘発されて閉鎖に追い込まれ、翌11月には「人人影視」が韓国サーバーで復活したと報じたが、12月にその「人人影視」が再度閉鎖を発表した。

Gmailが利用できなくなる

 Googleが2014年5月末に利用できなくなったが、Gmailも12月末より利用できなくなった。以前であれば、使えなくなったことは伏せられるが、使えなくなったことが報道されている。中国外交部は「分からないので担当部門に聞いてほしい」と回答し、その他の政府関連部署も反応を見せない。

 これで困ったのが、アメリカ留学を目指す中国の学生たちだ。アメリカの大学ではGmailでのみ受け付けているので、応募すらできなくなる。中国メディアは「VPNを使えば、メールの送受信はできる」という記事を掲載している。

Gmailアクセス不能を報じるニュース。つなげる手段を報じる記事も

個人情報詮索こと「人肉捜索」に法的責任

 10月に最高裁判所は、ネット炎上案件においても、その調査によるプライバシーの侵害は犯罪だという「最高人民法院関于審理利用信息網絡侵害人身権益民事糾紛案件適用法律若干問題的規定」を発表した。

 犯罪自慢や犯罪が発覚したことにより「ネットで炎上」し、いわゆる「お祭り状態」になった際に、ネットの傍聴者も参加して、炎上元の人のプライバシーが暴かれることはあり、それを中国では「人肉捜索」と呼ぶ。人肉捜索は、掲示板やブログなど人と人が繋がり出した2006年以降によく聞くようになった。人肉捜索のターゲットは、ネットユーザーから政府高官まで広がり、政府の役人すらも人肉捜索のターゲットとなれば謝罪に追い込まれていた。最高裁判所により、そのうちの個人情報を暴いて晒す行為が罪だと認定された。

 12月に至るまで、人肉捜索のニュースは絶えずある。例えば年末のカウントダウンで、上海の観光地「外灘(バンド)」で群衆が将棋倒しとなり、多数の死者が出た事件においても、米ドル札っぽい紙を建物の高層階からばらまいた人間が犯人だとして人肉捜索された(後で事故後にばらまいたことから犯人ではないことが明らかになる)。

 また、泥棒の被害者が、瞬時に泥棒を撮影した映像をネットにアップし、人肉捜索により泥棒が逮捕された例が10月以降も見られる。人肉捜索が役に立っているからか、人肉捜索を強く禁止する動きは見えず、各メディアが人肉捜索によるプライバシーの侵害はやめようとたしなめる記事が若干ある程度にとどまっている。

bilibili動画

年間検索ランキング上位はネット小説

 百度は2014年の年間検索ランキングを発表。1位から順に「大主宰」「完美世界」「莽荒紀」「淘宝」「絶世唐門」「百度」「双色球」「qq」「nba」「微信」という結果に。淘宝、百度、qq、微信は、定番のネットサービス。双色球は一種の宝くじ。nbaは中国で長く人気のアメリカプロバスケットボールリーグ。1〜3位と5位の「大主宰」「完美世界」「莽荒紀」「絶世唐門」は、オンライン小説のタイトルで、オンライン小説人気を示した結果となった。

2014年に人気のネット小説

オンラインショッピングのイベント増加に消費者が買い物疲れ

 オンラインショッピングサイト各社が11月11日の「双十一(ダブル11)」に続き、12月12日を「双十二」と名付けてオンラインショッピング祭りを仕掛けたが、安いイベントならいつでも動く、というわけではなさそうだ。

 ニュースメディアの南都網が調査を行ったところでは、双十一参加者のうち、双十二でもオンラインショッピングをしようとした人は全体の57.1%にとどまり、残りは参加しないと回答した。双十一の時にすでに消費意欲を満たした上に、双十一では、定価を高くして大幅値引きをする店が多数あったことが表面化し、実はそんな安くなかったことに気気付いたことが理由の1つだ。もう1つの理由が、サイトでの商品情報と、実際届いた商品が違いすぎたので返品し、冷ややかになったということだ。南都網の調査によれば、双十一の返品率は5割に及ぶとしている。

12月12日セール

阿里巴巴が、支払いで巨人「銀聯」に勝負を仕掛ける

 その12月12日、阿里巴巴(Alibaba)は、広く普及したクレジットカードの「銀聯(UnionPay)」ではなく、スマートフォンの「支付宝(Alipay)」から支払うと、最大20元をキャッシュバックするキャンペーンを行うと発表した。また、協力店舗で食事をしたり商品を買ったりする時に支付宝を利用すると半額になるキャンペーンも実施。お得情報に敏感なヘビーユーザーが支付宝での支払いキャンペーンに食いついた。

4Gユーザー、5000万人に

 中国移動(China Mobile)の4Gユーザーが5000万人を記録したと、同社は発表した。中国の4Gは、そのほぼすべてがTD-LTEを採用する中国移動の4G利用者となっているため、中国の4Gユーザーが5000万人を突破したといえるだろう。TD-LTE端末は、1億台が出荷されたとし、2015年には1億5000万ユーザーを目指す。

増えてきた4G端末の広告

「世界インターネット大会」を開催、自国のネットを尊重すべきと締める

 11月19日〜21日に中国が「世界互聯網大会(World Internet Conderence)」を浙江省烏鎮で開催。百度、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)など、中国のインターネット業界を代表する企業の代表と、Facebook、LinkedIn、Amazonなどの米国企業数社を招待した。そこでは11月に開催されたAPEC同様に、会場内の公衆無線LANからのみ、TwitterやFacebookなど中国からは普段繋がらないサイトにアクセスできるようになった。

 大会閉幕前に、「各国のネット主権を尊重しなければならない」とした「烏鎮宣言」を発表。参加者が同意しないまま発表したものとも言われている。また、一部の中国の知識人からはおかしいという声が挙がっている。

(※筆者注:11月のニュースですが、書いていなかったので12月に追加させていただきました)

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。