山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
4G「TD-LTE」のライセンスを3社に発給 ほか~2013年11月
(2013/12/18 06:00)
本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
4G「TD-LTE」のライセンスを3社に発給
12月4日に中国政府の情報産業省にあたる「工業和信息化部」は、中国でライセンス発給が予定されている「TD-LTE」と「FDD-LTE」のライセンスのうち「TD-LTE」を中国移動(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)、中国電信(China Telecom)の3社に発給した。FDD-LTEについては「諸条件が成熟してから発給する」という。
3Gでは中国も開発したTD-SCDMAを採用した中国移動は、4Gにおいても中国も開発に携わったTD-LTEを採用。中国聯通と中国電信はTD-LTEとFDD-LTEの2方式を採用予定だ。まずは中国が開発したTD-LTEのサービスを先行することでシェアを高めていく方針と見られる。
対応する都市は、中国移動は年内に北京、上海、広州、深セン、成都など13都市。2014年年末には340都市に拡大する。北京などでは、すでにSIMカードの交換サービスも開始している。端末は2014年下半期には1000元(約16000円)程度の機種を用意したいとしている。
利用料金については3Gを上回らないように、と工業和信息化部から通達があり、中国移動・中国聯通・中国電信各キャリアは、「100元チャージで倍額の200元分チャージ」「10倍チャージキャンペーン」といったキャンペーンを行い、3Gの値段を据え置きしつつ、実質は値下げのキャンペーンを実施。「上に政策あり、下に対策あり」というわけだ。
ネット世論引き締め策は効果あり~オピニオンリーダーを重点チェック
ネット世論をチェックする「人民網輿情監測室」秘書長の祝華新氏は8月以降のネット世論引き締め後の変化の結果を発表。ネット検閲のコントロールは有効だった、と発表した。これは具体的には、調査において微博のオピニオンリーダー100人の2カ月間の微博でのつぶやきが10%減少し、特に政治的言論が減少したとしている。発表では、政治関係のつぶやきを行うオピニオンリーダーについて重点的に報告された。
10月始めには、中国の最高裁に相当する「最高法院」が、誹謗と認められる情報が5000回以上見られたり、500回以上転載(リツイート)された場合は原作者は最高で3年の実刑となることと発表。またこの2カ月の間に著名なオピニオンリーダーがアカウントを突然削除されたこともあった。中国のジャーナリストの間では、9月には何も政府役人の腐敗についての新しいニュースがでなかったことも影響している。とはいえ、一度官対民の事件が起きれば、民はあらゆる抜け道を使うために微博などのSNSが使われることになるだろう、と分析している。
11月11日の「双棍節」商戦、盛り上がるも課題多数
11月11日はネット商戦「双棍節」の日。今年は昨年以上に盛り上がり、阿里巴巴系のサイトで、B2C(企業対個人)オンラインショッピングでトップシェアの天猫が1日に350億元(約5600億円)強の売上げを、それを追う京東商城は100億元(約1600億円)強を記録。また、C2C(個人対個人)でトップの淘宝網でも250億元(約4000億元)の売上げを記録した。
2012年の天猫の同日の売上げが191億元だったので、対前年で2倍近く伸びたことになる。日本の企業では、天猫に出店するユニクロが特に売れた店舗の1つとして名前が上がった。また、この商戦に合わせて天猫は保険や投資信託の販売を開始。こちらも好調なスタートとなった。
IT系ポータルサイト「中関村在線」の調査によると、調査対象の73.2%がこの日にオンラインで何かしら買ったとし、その多くが18~35歳に集中した。
購入したサイトでは、1位から順に、天猫(74.5%)、淘宝網(48.2%)、京東商城(48.2%)、家電量販店の「蘇寧易購」(8.6%)、Amazon中国(7.9%)となった。
4割の利用者が去年の消費金額を上回り、約半数の利用者の消費金額は平均月収並みの2000元(約3万2000円)を超えた。この日に購入した理由として「今必要なモノが安く買えるため(65.3%)」「今後必要となるモノが安く買えるため(26.0%)」といった理由が多く占めた。「勢いで買ってしまった」という回答者は1割に満たず、この日を待って冷静に買い物をしていたことが伺える。
ちなみに、1111の双棍節の成功に倣って、12月12日にもネット商戦を仕掛けたが、こちらの反応は今ひとつだったようだ。
百度が海賊版コンテンツ配布で集中砲火
中国国内のコンテンツを中心に正規版コンテンツの動画配信の環境が整ってきているが、動画の検索サービスを提供する百度が集中砲火を受けた。
11月13日、中国網絡視頻反盗版聯盟(中国オンライン動画反海賊版聯盟)が発足。メンバーは動画サイトの優酷土豆(Youku Tudou)、楽視網、ポータルの捜狐(SOHU)、騰訊(Tencent)、日本のコンテンツ海外流通促進機構(CODA)、アメリカ映画協会(MPAA)に加え、ディズニー、パラマウント、ソニー、ワーナーブラザーズ、BBCなども参加し、海賊版を配信し続けているという百度らを相手取って3億元の損害賠償の請求を行なった。同時に、百度の動画検索サービス「百度視頻」のクローラーを拒否するとした。
問題とされた百度の行為は、百度視頻での検索結果画面で動画が再生できてしまい、配信している動画サイトに飛ばないこと。また、百度が提供するCMS「動画サイト作成システム」により、容易に海賊版をアップする動画サイトが作成できることだ、と中国網絡視頻反盗版聯盟は指摘する。
中国網絡視頻反盗版聯盟の訴えに対し、百度はすぐに、百度自身も対海賊版に対処をしており、すでに580万もの海賊版へのリンクを削除していると弁明のコメントを出している。
ネットのペイメントサービスも激しい競争に
コストパフォーマンスの高いスマートフォン「小米手机」などでファンの多い中国メーカー「小米(Xiaomi)」の最新機種「小米手机3」の予約販売が開始された。
高スペックな「小米手机3」はヘビーユーザーの注目を浴びたが、同時に、支払い方法が、淘宝網(TAOBAO)や天猫(Tmall)などの阿里巴巴(Alibaba)系のオンラインショッピングサイトで使われる「支付宝(Alipay)」ではなく、阿里巴巴のライバルの騰訊(Tencent)がリリースするLINEのようなメッセンジャーアプリ「微信(Wechat)」の支払いサービス「微信支付」の利用を指定したことでも、話題となった。
微信支付は、各銀行のネットバンキング口座と紐づけて利用するサービスで、8月5日のスタート以降3カ月でユーザー数は1000万を突破、毎日10万もの新規ユーザーが増えている状況だ。さらに、小米手机3をトリガーに、微信支付のユーザー数は右肩上がりになると見られる。
ほぼ独占だった第三者支払サービスにライバル登場となった「支付宝」。支付宝は有名だけに、ネット犯罪のターゲットにもなりやすく、約10件の支付宝アカウントを狙ったクラッキングやウィルスやフィッシング詐欺に関するニュースが報じられた。支付宝は状況によっては被害額を全額弁償する動きも見せるが、今後はクラッキングされにくい強固なシステムであることも競争に勝つために必要な要素となるだろう。
検索サイトシェア、Googleが凋落
中国のリサーチ会社「易観国際(Analsys International)」が行った7月から9月にかけての検索市場に関する調査結果によると、9月における検索市場のサイト別アクセス数のシェアで、トップは「百度(72.1%)」となり、2位以下が「360搜索(14.2%)」「搜狗(5.8%)」「Google中国(1.9%)」となった。
Googleのシェアがますます低くなる一方、百度はモバイル方面でも力を入れ、カメラと提携した画像検索など検索機能を強化したアプリをリリースし、現在4億ユーザーが利用しているという。また第2位の360(奇虎360)も、キーボードベンダーと提携し、ctrlキーを2度連打することで同検索サイトを利用するキーボードという変わった製品で利用者を呼び寄せようとしている。
中国農村部のインターネット、未だ普及せず
CNNIC(China Internet Network Information Center)は、2012年末における中国農村部のインターネット環境についてまとめた「2012年中国農村互聯網発展状況調査報告」を発表した。それによると中国農村部のインターネット利用者は1億5600万人で、普及率は23.7%。都市部との差は所得差で約3倍あるが、インターネット普及率においても都市部では59.1%となっており、依然として大きな開きがある。
利用用途の傾向としては、チャットや検索や音楽視聴などエンターテイメント用途が高い一方、都市部では人気のオンラインショッピングやオンライン旅行予約やオンラインバンキングなどの利用率は低い。ネットカフェ利用者が若干減り、携帯電話やスマートフォン、それにデスクトップPCでの利用者が増加した。
より普及するためには、インターネットに関する啓蒙に加え、より簡単に使えるデバイスの普及や、各集落までモノが届く物流網の完備が必要だとしている。
中国版ソーシャルレンディング、淘汰が進む
中国では2012年に登場した、借り手と貸し手を引き合わせるソーシャルレンディング(P2Pレンディング)。このプラットフォームを扱う企業が毎日3~4社のペースで増えており、今年の年末には800社(サイト)に達すると見られている。また、金額的には1000億元(1兆6000億円)がソーシャルレンディングで動くと言われている。
多すぎることから淘汰も始まっている。本来の仲介の目的から外れ、勝手に個人間取引にサイトが介入し資金をとったあげく、投資に回して失敗するのが、倒産するソーシャルレンディング企業でよくあるパターンだという。