山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

Windows XP、MSと提携する中国企業がサポート ほか~2014年3月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

Windows XP、MSと提携する中国企業がサポート

 マイクロソフト中国は、同社オフィシャル微博アカウントで「ユーザーがWindows XPサポート終了後にWindows XPを使うのを止めさせる立場にない」とし、「マイクロソフトによるWindows XPのサポート終了後は、騰訊(Tencent)やレノボなどと提携し、Microsoftが直接サポートするわけではなく、これら中国ベンダーがユーザーサポートを行う」という。

 またこの発表時に名前のあがらなかった中国の各セキュリティベンダーも、引き続きWindowsXP用のセキュリティソフトのサポート継続を行っていくという。

 中国では、パソコンおよびインターネット普及期にWindows XPが発売されていて、今も世界で最もWindows XP利用者は多く、人気は根強い。今も海賊版Windows XPはいくつものバージョンが登場している。

WindowsXPについてのニュース

百度、教育コンテンツの無料公開を提案

 3月上旬の政治イベント「両会」で、百度のCEO李彦宏氏は、各省各地域での教科書や練習問題などを無料でネット上で公開するよう提案したと報じられた。学費が上がり、誰もが良い教育を受けられるわけではなく、都市部と農村部で教育にも差がある中で、教育の均等化を目指す目的だという。中国メディアは、社会貢献だけでなく、オンライン教育市場で一気にシェアを取るための布石だとも分析している。

 そして3月末に、百度のワードやpdfファイル検索サービス「百度文庫(http://wenku.baidu.com)」で、この要望を反映された教育チャンネル「教育文庫(http://wenku.baidu.com/edu)」がリニューアル。小学校から高校までの指導方針のファイルや、テスト(試験)のファイルが無料で公開された。結果として、百度文庫で公開中の1億以上のファイルのうち4割が教育関係のファイルとなり、同サイトは中国最大の教育用コンテンツ掲載サイトとなった。

百度文庫で教材が無料で見られるように
百度文庫で早くも反映された教育コンテンツ

LINE、韓流ドラマ人気で注目度が急上昇

 中国でのLINEは、中国向けバージョンのリリース直後こそ注目が集まったものの、その後の人気はいまひとつだった。しかし、韓流ドラマの「星から来たあなた」が中国で人気となると、LINEがドラマ内で利用されていたため注目度が急上昇した。百度でのLINEについての検索数は急上昇し、「LINE」を「星から来たあなたのLINE」という名称で配信するアプリサイトも登場。これを機に利用し始める人も出てきた。ただし国内サービスが強くなりがちな中国市場では、この類のインスタントメッセンジャーにおいても騰訊(Tencent)の「微信(WeChat)」が圧倒的シェアを握っている。インストールしても、利用する知人が少なければ離れてしまうこともありそうだ。

LINE人気は韓流ドラマで盛り上がったが、勢いは再びおちている

官製検索サイト登場に抵抗の声

 3月1日、新たな「中国捜索(chinaso.com)」という検索サイトがオープンした。この中国捜索は、もともとは新華社系の「盤古搜索」と、人民日報系の「即刻捜索」が合併して誕生したもので、その系譜からわかるように官製の検索サイトである。Googleや百度風のデザインだが、「国情」「財政」「地方」「国際」「財経」アイコンがあり、最新の大本営ニュースを見ることができる。また各地の新聞や雑誌の紙面も無料で読むことができる。

 中国捜索サイトオープンに、中国のネットニュースの反応は「絶対見ない」「市場絡みのアイコンがないとは経済を重視してないのか」「Google早く帰ってきてくれ」などの声が上がっている。

中国捜索
中国捜索では様々な官製メディアの紙面が無料で見られる

テロ対策で、ネット規制をより強化か

 3月1日、昆明で無差別殺人テロが発生し、この際にネットでデマを流した45人が逮捕された。政治イベント「全人代」では、参加した新疆ウイグル自治区の張春賢氏が、この事件の背景として、「新疆ウイグルでしばしば起こる動乱で撮影された動画の9割が、(名指しこそしなかったがYouTubeなど)外国の動画サイトにアップし、国際テロ組織などに広めている」ことを挙げた。その上で張氏は、中国から見られないYouTubeやFacebookやtwitterをVPNやプロキシサーバーを通して見られるようにする「壁越え(翻壇)」が不十分だと指摘。より強固なシステム構築を請願した。

 国境なき記者団(RSF)の最新レポートによれば、中国はベトナムと並んで最もネット規制が厳しい国であり、改善する傾向はないとして、“インターネットの敵”に認定されている。

流行のタクシー呼び出しアプリに賛否両論

 年始から2月までタクシー呼び出しアプリの利用者が各大都市で急増している。だが、利用者と運転手へ1利用時毎に支給されるアプリベンダーからの利用奨励金が減額されると、やや勢いはそれまでに比べ落ちるようになった。

 中国青年報と騰訊がモバイル向けサイトで行った、北京・上海・広州・深セン・杭州の5都市のユーザーを対象にしたアンケートによれば、回答者の86.4%がタクシー呼び出しアプリを利用し、73.1%が利用してよかったと回答。利用奨励金がなくなってもまた利用する派と利用しない派は半々に分かれた。

 タクシー呼び出しアプリで、運転手に乗客の電話番号などの個人情報を教えた結果、乗車時に運転に不満を漏らした乗客に対して、後日運転手が嫌がらせの電話をかける事件も発生している。まだ「人と人とが信用できない社会」と言われる中で、既存のタクシー予約システムでは機能が不十分なようだ。

 かといって、多くの人のニーズを満たす信用あるシステムが作れるかというと、去年からブレイクした電子マネーによる投資「余額宝」や、古くから人気のインスタントメッセンジャー「微信」「QQ」においても個人情報目当てのハッキングが頻繁にあり、信用ができないという声は残るため、安心できるサービス構築は簡単ではないだろう。

3Gは端末数ユーザー数ともにTD-SCDMAがトップ

 情報産業省にあたる「工業和信息化部」によると、2014年第1四半期の携帯電話(スマートフォン含む)出荷台数は前年同期比24.7%減の1億台で、この期間に発売された機種数は同9.5%減の607機種となった。減少の原因は2G端末市場の縮小で、出荷台数は同71.7%減の1144万台、機種数は同45.6%減の135機種と、それぞれ大幅な減少を記録。

 一方3Gに関して方式別でみると、TD-SCDMA(中国移動)の出荷台数は263機種4368万台、W-CDMA(中国聯通)は84機種2079万台、CDMA 2000(中国電信)は75機種1516万台となり、この1年でTD-SCDMAが機種数販売台数ともに増やし、W-CDMAとCDMA 2000は機種数販売台数ともに大幅減となった。

 契約者数で見ると、携帯電話契約者数は12億4000万で、うち4億3000万が3Gでの契約者だが、3G契約者の半数超がTD-SCDMAを利用している。

 4GのTD-LTEはこれまでに50機種が登場、974万台が出荷された。中国移動は「今年の下半期には6~700元(日本円にして約1万円)の4G端末を出し、普及を加速させたい」としている。

 なお、工業和信息化部はブロードバンドについても発表。契約戸数は1億9200万戸で、このうちの80.5%が4Mプランを、24.7%が8Mプランを、5%が20Mプランを利用しているという。

中国モバイルネットユーザーのこれまでとこれから。iResearch予測

ほとんどのハリウッド映画が配信停止の危機に

 コンテンツを監督する広電総局(国家新聞出版広播電影電視総局)が、動画サイトでの動画の規制を強化する方針だと報じられた。特に米国・英国のコンテンツに影響があると言われている。米国メディア「TV Guide」は、悪の組織から米国で起きるテロ絡みのコンテンツまでが対象になり、配信しているドラマや映画などのコンテンツの8割が配信停止の危機に面しているという。報道では日本のコンテンツに関してはあまり取り上げられていない。

 中国の動画配信企業は、中国国内外のコンテンツホルダーとの契約を次々に結び、優酷土豆などが、昨年度ようやく収益をあげられるようになった。本格的な規制を実行すれば、中国の動画サイトは冷や水を浴びせられる格好となる。

ECサイト大手「京東商城」、コンビニと提携。LBSも活用

 家電やデジタル製品に強い大手オンラインショッピングサイト「京東商城」が、上海や西安など15都市のコンビニと提携し、提携のコンビニで京東商城の商品が購入できるようになった。位置情報システム(LBS)を活用し、手持ちのスマートフォンから至近の提携コンビニを案内することもできる。

 3月10日、3大中国ネット企業「BAT」の1つ「騰訊(Tencent)」が同社の15%の株式を2146億ドルで取得。騰訊のインスタントメッセンジャー「微信(Wechat)」などから、京東商城に誘導するようになる。また騰訊の運営するオンラインショッピングサイトは「易迅網( http://www.yixun.com/ )」と「QQ網購」があるが、「QQ網購」は京東商城に移行する。BATの1つ、「阿里巴巴(Alibaba)」の「天猫(Tmall)」や「淘宝網(Taobao)」とは両社ともライバル関係にあり、敵の敵は味方とタッグを組んだ。

 しかし、ヘビーユーザーには以前から騰訊のイメージはよろしくなく、京東商城と組んだところで「騰訊のところでは買わない」という声をよく聞く。どれだけ魅力的な商品を揃え、衝撃的なキャンペーンを展開できるかが今後の鍵となるだろう。

京東商城
易迅網

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。