山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

Windows XPのサポート終了、ニュース満載で盛り上がる ほか
~2014年4月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

Windows XPのサポート終了、ニュース満載で盛り上がる

 中国でも他国と同様に4月9日にWindows XPのサポートが終了した。Windows XP利用率の高さでは世界屈指の中国では、この機をチャンスとばかりに様々な企業がアクションを起こした。

 「騰訊(Tencent)」、「金山軟件(キングソフト)」、「奇虎360(Qihoo)」はWindows XP向けセキュリティソフトのサポートを継続。各社は自社製のセキュリティソフトでウイルスを防ぎきれず経済損失が発生したときに賠償金を払うと発表し、力の入れ具合をアピールした。

 こうした中、3社とは無縁なセキュリティ関連企業「湖南合天智匯信息技術有限公司」が、3社のセキュリティソフトの実力を比較することを目的としたハッキング大会を開催し、ネットユーザーの間で話題を呼んだ。著名ハッカーを呼び、3台のWindows XP搭載PCを用意、3台に別々のセキュリティソフトをインストールして、ハッキングさせるというイベントは、騰訊のセキュリティソフトが数秒で破られ、奇虎360は破られなかったという結果に。ユーザーは奇虎360に流れたが、結果的にWindows XP健在を示すイベントとなった。

小米(Xiaomi)、12時間で130万台のスマホを販売

 人気上昇中の新興メーカー「小米」は、4月8日、同社の製品を大量に用意し、安く買えるイベント「米粉節」を開催した。12時間で同社製品が130万台(うち香港台湾シンガポールで10万台)を販売。売上額は本体で15億元(240億円超)、アクセサリで1億元(16億円超)を記録し、話題となった。

 また、4月23日にはHDD内蔵の無線LANルーター「小米路由机」を販売開始、ASEANなど世界10カ国でも販売することを発表した。さらに、4月の段階で5月15日に新製品発表会があると予告し、5月15日に予告通りスマートテレビ「小米電視2」や低価格タブレット「小米平板」や廉価版「紅米2」などを発表。コンスタントに話題を出しては、注目を集めている。

 Canalysによれば、2014年1四半期のスマホ出荷台数は2億7940万台で、国別では中国が35%(1億台弱)を占める。中国市場では小米はサムスン(18%)、レノボ(12%)に続く11%のシェアがあり、アップル(8%)を凌ぐ(Counterpoint Market Intelligence調べ)。次の四半期ではより小米は世界で目立つ存在となりそうだ。

米粉節(小米ファン祭り)
日本円で24000円強と意欲的な価格でリリース

中国音楽市場はいまだ収益モデルが成立せず、一方草の根系音楽サイトが人気

 コンテンツを担当する中国政府文化部は4月11日、2013年のオンライン音楽市場についてまとめた「2013中国網絡音楽市場年度報告」を発表した。

 発表によると、2013年末のオンライン音楽サービス利用人数は、モバイルでの利用者が昨年末の9600万人から2億9100万人に大幅増加したことを受け、4億5000万人に。ユーザー増加を受けてオンラインでの音楽サービスベンダーの総収入は昨年比140%増の43億6000万元(約700億円)となった。

 2013年はスマートフォンの普及が拡大する中で音楽を扱うベンチャー企業が登場する一方、大手ネット企業が定番の音楽サイトを買収し参入し、業界再編が起きた年であった。毎月500から800ものモバイル向けの音楽アプリが中国向けにリリースされ、2013年末には中国向け音楽アプリの数はAppStoreだけで3万1000にも及んだ。しかし、動画サービス同様、有料のサービスを提示してもユーザーは全く利用しようとせず、無料で利用し続けようとしていることから、収入は広告など別のところから賄わなければならない状態だとしている。

 一方で、スマートフォンの普及によって草の根の音楽市場が成立している。最も著名なサイトは参入していないが、それに続く第2グループの動画サイト「六間房(http://www.6.cn/yy)」「YY(http://www.yy.com/)」などが提供する、素人が歌をビデオや音声で披露し、評価されてサイト内で有名人となっていくサービスがウケている。こちらは応援したい素人の歌い手に対し、様々な有料アイテムを提供することで投票できることから、多くの利用者がお金を落としている。その結果、前述のオンライン音楽サービスの市場金額43億元のうちの84%にあたる36億7000万元(約590億円)がこの草の根音楽市場によるものとなった。報告によれば、草の根音楽市場規模は85億元(約1360億円)にまでなるという。

自分アピールをする人が集まるサイト、「YY」(画面左)と「六間房」(画面右)

各社がビッグデータを活用し始める

 百度は4月はじめにビッグデータを活用した新サービス「百度予測(http://trends.baidu.com/)」を発表。著名観光地にどれだけ人が来るか、中国国内のどの都市、中国国外のどの国に旅行するかが見られる(なお、海外旅行先は日本が最も人気のようだ)。またインフルエンザの予想についても近い将来リリース予定としている。また、24日には「ビッグデータ検索」のサービスも開始した。

 4月には、大手オンラインゲームベンダーの「巨人」や、結婚紹介サービスの「世紀佳縁」や、「上海電信(中国電信の上海支社)」、それに広西チワン族自治区や貴州省など地方政府でビッグデータを活用することが発表された。中国でも、これから様々なところでビッグデータが活用される。

ビッグデータを活用した百度予測

オンラインショッピング利用者の平均利用額は年間約5万2000円

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は4月21日、中国のオンラインショッピングユーザーについてまとめた「2013年網絡購物市場研究報告」を発表した。

 発表によると、2013年末のオンラインショッピング市場規模は前年比40.9%増1兆8500億元(約30兆円)。ユーザーの購入商品ジャンルは(複数回答可)「アパレル(75.6%)」、「日用品(45.1%)」、「デジタル製品(43.3%)」、「オンラインサービス用マネー(34.9%)」、「鞄(32.7%)」、「化粧品(30.6%)」、「書籍/CD/DVD(25.7%)」、「家電(22.7%)」、「(健康)食品(22.4%)」、「文房具(18.0%)」の順となった。

2006~2013年のオンラインショッピングユーザー数と浸透率

 ユーザー数は、前年比5987万人増の3億200万人で、利用率では42.9%から48.9%へと拡大。スマートフォンなどモバイル利用については、利用者は1億4400万人いるが、ほとんどはPCがメインでモバイルはサブという利用スタイルだ。インターネットショッピングの利用額は、半年間で平均3240元(約52000円)に対し、モバイルでの購入額は1271元(2万円強)だが、沿岸部と内陸部で差は目立つ。クーポンサイトは、オンラインショッピング利用者の22.8%が利用する。

 性別では男性の利用率(54.5%)が高く、また年齢別では20代が56.4%と最も高く、続いて30代が22.5%と続く。ただし、中国東北地方だけは30代の利用率が高い。収入別では「1000~3000元」が34.5%、「3001~5000元」が27.7%で、年収1000~5000元のユーザーが約6割を占める。

地域と収入別のオンラインショッピング利用者
地域別で分けたオンラインショッピングで半年での平均利用額

 サイトは淘宝網(Taobao)が最も利用されているが、天猫(Tmall)や京東商城(360buy)の支持者も多い。淘宝網の利用者は「安い」「商品が豊富」であることが魅力で利用するも、一方で「買った商品が低品質」「嫌な経験をした」ことを理由に淘宝網離れをする人はいる。逆に、天猫などB2Cのオンラインショッピングサイトでは、価格の安さでは淘宝網に負けるものの商品の品質や信頼がおけることやサイトデザインで利用者を呼んでいる。

 オンラインショッピングユーザーの7%が海外のバイヤーからの購入経験者。前回の4.7%から増加。海外からの商品の年間購入回数は「2、3回(44.0%)」が多く、「1回(22.0%)」「4、5回(15.4%)」と続く。海外の商品では「粉ミルクやベビー用品(25.8%)」や「デジタル製品(23.0%)」の利用が多い。また、23.2%がマイクロブログの「微博(Weibo)」で情報を得て淘宝網で購入。微博経由での購入は年間で「2、3回(47.3%)」が多く、「1回(22.9%)」「4、5回(13.8%)」と続く。半年での購入平均金額は1364元(約2万2000円)。

個人の消費でオンラインショッピングの支払が占める割合
モバイルでのサイト別オンラインショッピング市場シェア

ポルノコンテンツ摘発開始、ポルノ小説が原因で大手ネット企業株が暴落

 中国ではポルノコンテンツは、画像動画テキスト問わず削除や処罰の対象で、しばしば取り締まりのキャンペーン「打黄掃非浄網」が行われる。今年は4月から11月までネット上のポルノコンテンツ一掃を強化することが報じられている。

 4月に早くも槍玉に上がったのが、近年スマートフォンで移動中に読む人が目立つオンライン小説だ。専門の小説サイト数サイトと、大手ポータルの新浪(Sina)のオンライン小説サイトでポルノ小説が見つかったと、取り締まりキャンペーンで明らかに。新浪は影響が大きなサイトでありながら管理不十分だったとして謝罪、罰金510万元(約8200万円)を支払った。このニュースが報じられた後には新浪の株価が4.29%下落、金額にして約280億円が消えたことになる。

 また、この打黄掃非浄網キャンペーンでP2Pサービス大手の迅雷と百度影音、クラウドサービスの百度云も突然サービスが停止し利用できなくなり、多数の利用者から不満の声が上がった。

エイプリルフールにウソ記事発信せず

 エイプリルフールは中国では愚人節と呼ばれる。クリスマスなど他の海外発イベントと異なり、ネットのデマにナーバスな中国では、4月1日当日は「西側諸国ではこういうイベントがある」、「詐欺に注意」、「過度のウソは法により処罰される」といったニュースばかり報じられた。

 エイプリルフールを楽しむ記事もあるにはあったが、日本では毎年4月1日恒例となっているようなウソ記事はなく、「ショートメールで相手を騙す面白いウソ」や「過去10年の面白いウソ」など、「今日のウソ記事を不特定多数に流す」ことを避けるような記事ばかりが並べられていた。

「“以前の4月1日”はファミコン版のDiabloが出た」といったウソ記事が掲載された
ショートメールでウソを書こうというエイプリルフール記事

中国移動の4G利用者数は約280万

 4月22日、中国移動(China Mobile)は3月の同社データを発表。同社の4G(TD-LTE)サービスの利用者は、1カ月間で145万3000増えて279万3000となった。3Gの利用者は1カ月間で957万増えて2億2497万となっており、2Gから3Gへのシフトのほうが目立つ。なお、中国工業和信息化部は、今年の4G契約者数の目標を3000万としている。

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。