NOWing SERVERで解決する中小企業のIT課題

第2回:バックアップだけで安心?
いざという時の復元手順を確認しておこう

戻せなければ意味がない

 「バックアップで、万が一のトラブルも安心」。よく目にするフレーズですが、実際にトラブルになったとき、具体的にどうすればいいのか、ということまで、考えたことはありますか?

 前回、紹介したように、TEKWINDの「NOWing SERVER for SMB Generation 2」のような中小企業向けのサーバーは、標準でたくさんの機能を搭載しているだけでなく、その機能を意識することなく利用できるように工夫されているため、これまで管理担当者を設置して、設定や運用に気を配らなければならなかったIT関連の悩みをあらかた引き受けてくれます。

 実際、NOWing SERVERに搭載されたWindows Server 2012 Essentialsでは、クライアントのバックアップは自動的に実行されるので、普段はバックアップについてまったく意識する必要はありません。

 しかし、「いざ」というときも、何もしなくて良いということではありません。クライアントパソコンの故障、オペレーションミスによるファイルの喪失、サーバー自体の不調など、実際にデータが失われるようなトラブルが発生した際は、やはり、それなりの「作業」が発生することになります。

 もちろん、保守契約を結んでいれば、その対応もサポートに依頼することもできますが、簡単な対処方法を覚えておくことは、サーバーを利用する上でムダにはならないはずです。

 バックアップも、いざというときに戻せなければ意味がありません。ぜひ、この機会にデータやクライアント、サーバーの復元方法を確認しておきましょう。

TEKWINDのNOWing SERVER for SMB Generation 2。バックアップ機能を手軽に利用できるが、本当の意味で万が一に備えるなら、復元方法も一度は確認しておきたい

ファイル履歴からのデータ復元

 まずは、簡単なトラブルの解決方法から見ていくことにしましょう。サーバー上の共有フォルダーを利用して、複数のユーザーで作業をしている場合、操作ミスなどで、うっかり大切なファイルを削除してしまったり、上書きで編集してしまうということも、珍しくありません。

 このようなケースでは、実は対応はあまり難しくありません。NOWing SERVERに採用されているWindows Server 2012 Essentialsには、共有フォルダーのファイル履歴を自動的に取得する機能が搭載されているため、ファイルやフォルダを過去に戻って復元することが簡単にできます。

共有フォルダーの履歴からの復元

【STEP1】
サーバーの共有フォルダーにアクセスし、右クリックしてプロパティを表示
【STEP2】
「以前のバージョン」タブを開くと、以前のファイル履歴が表示されるので、戻したい日時を指定してファイルを表示
【STEP3】
過去の時点のファイルが表示されるので、必要なファイルをコピーするなどして復元

 標準では、毎日、6時と13時に自動的にファイルの履歴が保存されるようになっているため、戻せるのは、このタイミングのみとなりますが、ファイルが完全に失われるようなことを避けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。

クライアントのデータ復元

 続いて、サーバー上のファイルではなく、クライアントのファイルが失われてしまった場合の対処方法を見てみましょう。

 前述したように、Windwos Server 2012 Essentialsを搭載したNOWing SERVERでは、初期導入時にクライアントにインストールしたプログラムによって、クライアントのデータが自動的にサーバー上にバックアップされるようになっています。

 このため、たとえばピクチャフォルダの写真を削除してしまったり、ドキュメントフォルダにあったデータを上書き保存で変更してしまった場合でも、サーバー上に取得されているバックアップから、簡単にデータを復元することができます。

クライアントのデータ復元

【STEP1】
スタートパッドを使って、サーバーのダッシュボードに接続。「デバイス」タブからデータを復元したいクライアントを選択し、右クリックして「コンピューターのファイルまたはフォルダーの復元」を選択
【STEP2】
バックアップを選択。クライアントのバックアップは基本的に1日1回。戻したい日付のバックアップを選択する
【STEP3】
ドライブを選択。複数のドライブがクライアントにある場合は、どちらのデータを復元するかを選択する
【STEP4】
取得されているファイルの一覧が表示されるので、戻したいファイルを選んで復元する
【STEP5】
復元先は、元のフォルダーだけでなく、別のフォルダーも選択可能。一旦、別のフォルダーに復元して、内容を確認してから、元のフォルダーに戻すのが安全

 一方、HDDそのものの故障などで、クライアントそのものが起動しなくなってしまったときは、OSやアプリケーションを含めたすべてのデータをバックアップから復元することもできます。

クライアントの復元

【STEP1】
まず最初に、クライアントを起動するためのUSBキーを作成。サーバーのダッシュボードから、「デバイス」を開き、右下の「デバイスタスク」から「コンピューターのバックアップとファイル履歴の設定をカスタマイズ」をクリック
【STEP2】
「ツール」タブを開き、「コンピューターの回復」にある「キーの作成」ボタンをクリック。
【STEP3】
サーバーのUSBポートにUSBメモリーを装着し、作成を実行。クライアントの起動と復元に必要なファイルをUSBメモリー上にコピーする
【STEP4】
作成したUSBキーで、クライアントを起動して、ウィザードで作業を進める。AID構成の場合などはドライバをここで読み込む
【STEP5】
ネットワーク上のサーバーが検出されたら、管理者アカウントを使ってサーバーにアクセスする
【STEP6】
復元するクライアントの名前を選択し、取得されているバックアップの中から戻したい日付を選択する
【STEP7】
復元するドライブを指定。元の容量よりも大きければ、異なる容量のHDDにも復元できる。HDD故障の際は大きい容量のHDDに交換しておこう
【STEP8】
復元完了。USBメモリを取り外し、再起動すればクライアントが起動する

 これで、データだけでなく、OSや設定、インストールしたアプリケーションなど、すべての情報がまるごと復元されます。もちろん、戻るのはバックアップした時点までとなるため、それ以降に更新したデータは戻らないうえ、メールなども受信しなおす必要があることは覚えておきましょう。

サーバー自体の復元

 クライアントのバックアップを保管するサーバーそのものも、残念ながら、何らかのトラブルに見舞われる可能性はあります。このため、サーバー自身も、バックアップから復元することが可能となっています。

 まずは、データですが、これはクライアントと同じ要領で復元することが可能です。外付けのUSB HDDなどをバックアップ用として構成しておけば、サーバーのダッシュボードからデータを復元することができます。

サーバーデータの復元

【STEP1】
ダッシュボードからサーバーを選択し、右クリックして「サーバーのファイルまたはフォルダーの復元」を選択
【STEP2】
バックアップデータから、ドライブや復元したいフォルダーを選択する
【STEP3】
復元先として、元のフォルダー、または別のフォルダーを選択可能。クライアントと同じく、一旦、別のフォルダーに復元するのが安全

 続いて、OSを含めたフルリストアですが、これは若干手間がかかります。そもそもサーバーが起動しないため、ダッシュボードなどのサーバー上の機能を使って復元することはできません。このため、Windows Server 2012 EssentialsのDVDを利用して、スタートアップオプションからOSを復元していくことになります。

 NOWing SERVERもそうですが、サーバーには、DVDドライブが搭載されていないため、マウスやキーボード、ディスプレイとともに、USB接続のドライブを接続した状態で作業する必要がある点に注意しましょう。

OSの復元

【STEP1】
OSのインストールDVDから起動。Windows Server 2012 EssentialsのDVDからサーバーを起動(USBのDVDドライブなどを利用)
【STEP2】
スタートアップオプションで「トラブルシューティング」-「イメージでシステムを回復」を選択
【STEP3】
バックアップされたイメージファイルのうち、最新のものが自動的に選択されるので、それを利用して復元する

 なお、OSも含めたサーバーの復元は、データだけでなく、OSなどすべての設定が削除されるため、慎重に実行する必要があります。もちろん、あらかじめ方法を知っておくことは大切ですが、実際に実行する場合は、サポートセンターなどに相談し、そのリスクや機器固有の注意点なども確認しておく必要があるでしょう。あくまでも慎重に作業することが大切です。

慌てずに対処できるようにしておこう

 以上、TEKWINDのNOWing SERVERを例に、サーバー上のデータの復元やクライアントの復元、サーバーそのものの復元方法を紹介しました。これらのうち、履歴を使ったものやクライアントバックアップからの復元に関しては、誰でも簡単にできるので、普段の運用時に必ず役立つはずです。

 いざというときに、慌てず、短時間で対処できるようにするためにも、一度は、具体的な手順に目を通しておくといいでしょう。

(次回更新は7月1日です。)

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。