ここがポイント! ○○の選び方

紙に書く&電子化を同時にこなせる――アナログ筆記とデジタル入力の融合、その現実解としての“デジタルペン”

 人は「書く」という行為から離れられない。仕事、趣味、勉強……生活のあらゆるシーンにおいて、考えをまとめたり、人に何かを伝える時、必ず文字や図形を「書く」必要がある。

 もちろん、これだけIT技術が進化した時代だ。「メモは全部PCにキーボード入力するよ」や、「スマホのタッチ画面で手書きする」など、必ずしも「ペンで紙に書く」とは限らない。昨今の情勢に合わせた手段を見つけて、それを実践していることだろう。

 アナログの極地である「紙に書く」と、電子機器への「デジタル入力」。その中間的存在として、長年に渡って研究・開発が続けられているのが、いわゆる「デジタルペン」だ。実際にインクが出るペンの動きを何らかの技術でトレースし、紙だけでなく電子媒体にも保存する。スタイラスとは違い、タッチパネル操作用の製品ではない。紙に記述した内容をカメラでスキャンするのとも違う。あくまでも紙への筆致を電子的に記録するのが主目的である。

Livesvribe製「Livescribe 3 スマートペン」
ぺんてる製「airpenPocket++」
学研が国内販売している「echo smartpen」
コクヨ製「CamiApp S」。写真以外にもメモパッドタイプが存在する
NEXX製「MyInk(NMIK-410)」
ゼブラ製「TegakiLink Personal」

購入時に検討すべきポイントは?

 デジタルペンはいくつかのメーカーから発売されている。購入にあたってはどんなポイントに注意すべきなのか? 以下、6つの項目にまとめてみたので、詳しく解説していこう。

ペン以外にどんな部品が必要か?

 原則として、デジタルペンは利用にあたって何らかの“部品”を必要とする。最も多いのが、筆致データを一時記録するためのアダプター。筆記位置の位置検出にも使われ、主に紙の上部へクリップで留める。

 こういった部品が大きければ、立ったままでは当然使いづらいだろう。よって、これらペン本体以外の部品をどうハンドリングするかは大きな課題だ。現状認識として、背広の内ポケットから取り出した、ただ一本のデジタルペンですべてが完結するわけではないことを覚えておいてほしい。

継続利用に必要な消耗品は?

 コピー機の利用にあたってトナーが必要なように、デジタルペンでも何らかの消耗品が必要となる。特に「専用の用紙に書いた時のみ、デジタル化できる」というタイプのデジタルペンでは、この専用紙を恒常的に買わなければならない。当然、これら消耗品の価格を下調べするべきだ。他にも、替えのペン先(インク)や、動作用電池などがある。

筆記データを別端末に保存するための方法、および対応OSは?

 デジタルペンの存在意義を考えれば、その筆記データを別端末にどう転送するかは重要なポイントだ。最も多いのはペン本体もしくは付属レシーバーにBluetooth機能が内蔵されていて、ワイヤレスで送信する方法。とはいえ、有線ケーブル接続限定の機種ももちろんある。

 この際、どのOSに対応しているかも注意したい。近年はスマートフォンへの対応が一般化しているが、それでもAndroid非対応品はある。確認は念入りに。

アプリ側の機能は?

 データの転送は、専用のアプリを使うケースが大半だ。そのアプリの機能が、デジタルペンの使い勝手に影響を与えるのは言うまでもない。

 各社の開発哲学が異なるため、一言で注目機能を挙げるのは難しいが、それでもあえて断言するならば「OCR」機能だろうか。手書き文字をデジタルのテキストデータに変換するため、検索や後からのデータ参照が容易になる。

 なお、各デジタルペンのスマートフォン用アプリは、OS別のアプリストアで無償配布されている。基本的な利用感の確認のため、ペン本体購入前にダウンロードして触ってみるのもいいだろう。

データの保存件数は?

 筆記データをこまめに外部端末へ転送するならば問題ないが、例えば1カ月に1回だけまとめて転送するような運用スタイルだと、デジタルペン本体にどれだけデータを保存できるか、ある程度気にした方がいいだろう。端末スペックのページでは、「A4用紙○○ページ分」などと記述されている例が多い。

重量および形状、価格は?

 デジタルペンはその機能ゆえに、鉛筆やボールペンと比べて重い。筆記具である以上、持ち心地……フィーリングも当然重要視しなければならないだろう。各社のホームページでは、販売店や展示施設を公開している例があるので、活用したい。

 価格もまた気になるところだ。今回調べたところでは、1万円台後半~2万円台前半あたりが相場。ただ、デジタルペンは年に3回も4回もモデルチェンジする類の製品ではないことも、申し添えておこう(少なくとも今のところは)。

各社のデジタルペンを個別チェック!

 それでは各社の製品を見ていこう。どの製品も似ているようで少しずつ違う。細部に注目しながら、ぜひ自分にあった1台(1本)を見つけてほしい。

CamiApp S

http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/camiapp-s/
直販サイト価格:1万7280円(メモパッド型)・2万2680円(ノートブック型)

 2014年9月発売。ノートなどの紙文具や大型オフィス家具のメーカーとして知られるコクヨの製品で、実際には「デジタルノート」と呼称されている。

 “本体”というべき部分はノートカバーもしくはメモ台のような形状で、重量は約460~730g。電磁誘導センサーが内蔵されており、専用の用紙をセットし、同じく専用のペンで筆記すると、記録を開始する。一方、ペンの重量は約17g。

 筆記内容は、iOS/Android端末へBluetoothで転送できる。この際、端末側には専用のアプリのインストールが必要。なお、記述したページを実際に転送するかは、用紙下部に表記された専用マスにチェックをいれるかどうかで判定される。OCRやクラウド連携の機能もある。

 商品ラインナップは全4種類。形状がノートブック/メモパッドの2種類あり、さらにOS対応(iOS/Android)が分かれている。機器の充電は“本体”側のみで、ペン側には電池類が不要な設計となっている。

「CamiApp S」ノートブック型
「CamiApp S」メモパッド型(写真はCamiApp S発表会時のもの)

Livescribe 3 スマートペン

http://www.livescribe.com/jp/smartpen/ls3/
Amazon.co.jp販売価格:1万7582円

 米国では2013年10月に発売。ペン先端部にカメラが内蔵されており、無数のドットパターンが印刷された専用紙の上で筆記すると、同時にデジタル化されるという仕組み。用紙こそ専用となるが、データ転送用アダプターや筆記台を必要としないのが利点だ。

 現時点ではiOS端末との連携が可能(Android非対応)で、専用アプリの名称は「Livescribe+」。ペンとiOS端末間のBluetooth通信を有効化すれば、記述内容が即座に端末側に保存される。この際、iOS端末のマイクを使った同時録音も可能だ。なお、ペン側にメモリを内蔵しているため、記述した内容を後から端末側へ転送してもよい。

 Livescribe 3の利用に必須となる専用紙はサイズバリエーションなど豊富。価格は2000円前後。替え芯の販売も行っている。ペン本体重量は34g。

airpenPocket++

http://www.airpen.jp/airpenpocket++/
Amazon.co.jp販売価格:1万8480円

 ボールペンやマーカーなど筆記具のメーカーとしておなじみのぺんてるが2012年5月に販売を開始したデジタルペン。ボタン電池(SR41)2個で動作するとペン部と、リチウム充電池式のメモリーユニット(背面にクリップ付き)の2つで構成される。

 利用にあたっては、まずメモリーユニットを用紙に固定する。専用用紙ではなく、一般的なコピー用紙などが使える。対応用紙サイズはA4/B5/A5はがきの4種類。この状態でペン筆記を始めると、ペンとメモリーユニットの間で赤外線および超音波によるリアルタイム位置判別を行い、筆記内容が記録される。このため、ペンとメモリーユニットの間を指や手でふさぐと正常に動作しない。

 メモリーユニットはBluetooth機能を備えており、専用アプリを通してiOS/Androidスマートフォン/タブレットにデータを保存する。Windows、Macでも利用できる。重量はペン部/メモリーユニット部いずれも約22g。なお、メモリーユニットの固定に便利な下敷きがオプションとして販売中。

MyInk(NMIK-410)

http://www.nexx.co.jp/products/myink/
標準価格:1万9764円

 2014年9月発売。用紙の上部中央に専用レシーバーを取り付け、同じく専用のペンで筆記するタイプの製品。ペンを紙に押しつけている時だけスイッチがオンになり、レシーバーとペンの位置を超音波素子による3点間測定で検出する仕組みという。

 筆記内容はいったんレシーバーに記録され、iOS端末もしくはWindows PCへBluetoothで転送できる。また、従来品と比較して、データ取り込み用ソフトウェアの機能が強化された。Windows版では、手書き文字の行間などを自動調整して読みやすくしてくれるほか、OCR処理も行える。

 ペン、レシーバーはともに充電式の内蔵バッテリーで動作する。重量はペンが17.7g、レシーバーが27g。

TegakiLink Personal

http://www.zebrawing.jp/tegakilink_p/
Amazon.co.jp販売価格:1万3900円

 大手筆記具メーカー、ゼブラが2011年12月に発売。ペンとベースユニットを組み合わせ、赤外線および超音波で筆記位置を測定する。ペン重量は18gで、ボタン電池(SR41)2個で動作。ベースユニットは重量30g、内蔵リチウムイオン電池による充電式。

 筆記データはiOS端末もしくはWindows PCへ転送できるが、いずれも有線接続となる。iOS端末用接続ケーブルは30ピン仕様(Dockコネクター)のため、iPhone 6などの機種で使用する場合はアップル純正の変換アダプターが必要になる。

 WindowsおよびiOS用の連携ソフトでは、手書き文字をテキストデータへ変換する機能を備える。文字検索も可能。

echo smartpen

http://pen.gakken.jp/
標準価格:2万4000円(2GBモデル)~

 学習書などで知られる学研グループが2013年9月から日本国内で独占販売しているデジタルペン。開発元は、前述の「Livescribe 3」も手がけるLivescribe社。実際の販売は、大手チェーン系書店の店頭や通販サイトなどで行われている。

 開発元が同じこともあり、ペン先端部のカメラが専用ノート(別売)表面のドットパターンを読み取ることで筆記内容や位置を検出する方式を採用。電池駆動のレシーバーや筆記台を別途用意する必要がない。

 「Livescribe 3」と違い、ペン本体にマイクを内蔵しているため、外部機器連携なしに録音できる。ノート上の記述内容をペンでタップすると、その部分を書いていた時に録音した内容が再生される。

 対応OSはWindowsおよびMacで、データ転送は有線ケーブルで行う。製品パッケージには手書き文字のOCRソフトも同梱する。ペン本体重量は36gで、充電式バッテリーを内蔵。記録メモリ容量違いの3モデル(2/4/8GB)がラインナップされる。

森田 秀一