清水理史の「イニシャルB」

2ベイ2万円+2ポート200MB/s 2ベイNASの新定番モデルQNAP「TS-231P」

 QNAPから、家庭・SOHO向けNASの新モデル「TS-x31P」シリーズが発売された。リーズナブルな価格ながら、パワフルなCPUとホットスワップ可能なフロントベイを搭載する製品だ。2ベイモデルの「TS-231P」を実際に試してみた。

「2ベイ2万円」だけでなく「2ポート200MB/s」も

 最近の個人向けNASの売れ筋をチェックしてみると、2万円前後の2ベイモデルが人気のようだが、これからNASを選ぶのであれば、さらに2つほど「2」に関連するポイントを押さえておくことをおすすめする。

 「2ポート」で「200MB/sオーバー」。つまり、2つのLANポートを備え、トータルスループットが200MB/s以上となる2万円前後の2ベイモデルだ。

 今年の中盤以降から、海外勢の進出に対抗するように、国内メーカーも速度や機能で対抗する製品を投入し始めたことで、一般家庭での利用を想定した、リーズナブルな価格の2ベイNASの選択肢も増えてきた。これはこれで歓迎すべきことだが、選択肢が増えるということは、ユーザーにとって購入時の悩みが増えることでもある。

 たくさんのメーカー、たくさんのモデルの中から、どの製品をどんな基準で選べばいいか? その判断は難しいところだが、その新しい指標として、今後、特に重要になりそうなのが、LANポートの数とトータルの転送速度ということになる。

2ベイ2万円だけではもう物足りない。2ポート・200MB/sも検討時の基準として考えよう

 もう少し具体的に考えてみよう。

 ネットワークに接続される機器は、今やPCだけでなく、スマートフォンやタブレット、ゲーム機、家電など、大量に存在するうえ、それぞれが写真や動画、バックアップなど、大容量の通信を必要とする時代になった。

 このため、NASの利用機会も飛躍的に増えている。PCのデータをNASにバックアップしている最中に、NASに保存された動画をテレビで再生するといったシーンは、もはや特別なものではないし、場合によってはさらに多くのタスクが同時に実行されることも珍しくない。

 このような環境では、データの送信先でもあり配信元でもあるNASが遅ければ、それだけでストレスを感じることになるだけでなく、NASがボトルネックとなって、ネットワーク全体の速度を下げることにもなりかねない。

 たとえば、無線LANでつながるPCのバックアップに時間がかかれば、それだけ無線LANの通信時間が増え、無線LANを使う他の機器のパフォーマンスも一緒に下げてしまう。いくら高速な無線LAN環境を用意しても、NASがボトルネックになっているおかげで、ネットワーク全体の体験が台無しになってしまうわけだ。

 そこで注目されているのが、複数ポートや高いトータルスループットを備えたNASだ。これまで企業向けに提供されてきたリンクアグリゲーション(Link Aggrigation:複数のLANポートを組み合わせて負荷分散させるしくみ。以下LAGと省略)のような機能を搭載し、同時アクセスでも高い性能を提供できる処理性能を備えた家庭向けのモデルが、徐々に登場し始めている。

 もちろん、LAGを利用するには、NASだけでなく、スイッチやルーターなどの通信機器の対応も必要だが、無線LANルーターの上位モデルなどではLAGがサポートされるようになってきており、まさにNASを接続するためのポートとして活用が始まっている。

 そんな中、QNAPから登場したのが、今回取り上げる「TS-231P」だ。同社のNASは、従来からコンシューマー向けモデルにも2つのLANポートを搭載していたが、今回の新モデルではさらに処理性能を強化することで、同時アクセス時のパフォーマンスも改善している。

 価格は「2万円前後」とするには少々高めだが、QTS 4.3と呼ばれる大幅な機能強化が施された新ファームウェアの登場も間近に迫っており、今最も注目されるNASと言っていいだろう。

2ベイで、ギリギリ2万円台。もちろん、2ポートで200MB/sを実現可能な高性能NAS QNAP「TS-231P」

従来モデルを踏襲したハードウェア

 それでは、製品をチェックしていこう。まずは、外観だが、見た目というか構成的には、以前に発売されていた「TS-231+」とほとんど変わらない。厳密に言えば、背面のUSBポートの位置が違うのだが、基本的には一緒だ。

 デザインは白が基調となっており、清潔感のある印象だ。フロントには、ホットスワップも可能な2つのベイが搭載されており、初期設定時やHDDの故障時に簡単にHDDを脱着することができる。

正面
側面
背面
HDDはトレイ式。もちろんホットスワップにも対応

 2万円前後の低価格なNASの中には、本体を分解しないとHDDを装着できない製品もあるが、これなら交換も簡単だ。故障時だけでなく、容量不足になった時や、より大容量のHDDが低価格で入手できるようになった段階で、HDDを交換することも簡単にできる。

 なお、今回はNAS向けのHDDとして販売されているWestern DititalのWD Redを装着した。NASは24時間365日の稼働が前提となるうえ、大切なデータを預ける場所となるので信頼性の高いHDDを選んでおくといいだろう。

 背面は、1000MbpsのLANポートが2つ搭載されており、詳細は後述するが、これを組み合わせてLAGを構成できる。また、USB 3.0ポートが2ポート(フロントにさらに1ポート)あり、ここに外付けHDDを接続して、バックアップなどに利用できる。

 スペックはというと、こちらも従来モデルとほぼ同等だが、CPUが強化され、同じAL-212でも1.7GHz動作となった。

 比較としてSynologyのDS216のスペックも掲載したが、LANポートの数などの他のスペックだけでなく、今回のCPU強化で、さらに一歩ライバルとの差を広げた格好だ。最近では、無線LANルーターでも1.4GHzくらいのデュアルコアCPUを搭載するケースが増えているが、より多くのデータを扱ううえ、いろいろな処理を実行しなければならないNASに、さらにパワフルなCPUが搭載されるのは自然な流れと言えそうだ。

 このようなハードウェアの優位性により、TS-231Pのスループットは読み込みで最大224MB/s(公称)となっている。ファイルコピーやバックアップ、動画配信、写真の表示など、さまざまな機器の同時アクセスでスループットを分け合う形になっても、1台あたりに十分な速度を提供できることになる。

表1:スペック表
TS-231PTS-231+DS216(synology)
2万9800円(想定価格)2万3566円(amazon.co.jp)3万2582円
CPUAL-212 dual-core 1.7GHzAL-212 dual-core 1.4GHzArmada 385 dual-core 1.3GHz
RAM1GB DDR3512MB
ベイ2ベイ(ホットスワップ対応)
LAN1000Mbps×21Gbps×1
USBUSB3.0×3USB3.0×2、USB2.0×1
サイズ(高さ×幅×奥行mm)169×102×219165×108×233.2
重量1.28kg1.3kg
スループット(読み込み)224MB/s204MB/s112MB/s

実際のファイルコピーで実力を検証

 気になるパフォーマンスだが、かなり優秀だ。まずは、有線LAN接続したPCからCrystalDiskMark 5.1.2を実行したのが以下の画面だ。

 シーケンシャルはリードで116MB/s、ライトで117MB/sをマーク。RAID1構成なのでもう少し書き込みが遅くなるかと思ったが、ほぼ有線LANの上限まで使い切る性能を発揮できている。

CrystalDiskMark 5.1.2の結果。単独でも100MB/s以上を軽くマークする

 ただ、最近では100MB/sを超えるNASも珍しくない。そこで注目したいのが同時アクセス時の性能だ。

 TS-231Pの背面にある2つのLANポートの両方にケーブルを接続し、それをスイッチに接続。スイッチの設定画面で、NASを接続した2つのポートをLAGで構成し(LAGに対応したルーターでも設定可能)、その後、NASの設定画面からコントロールパネルのネットワークで「ポートトランク」を構成した。

 構成方法はいくつかあるが、ここでは802.3adを選択。これにより、2つのポートが論理的に1つのポートとして扱われるようになり、一定の基準に従ってデータが各ポートに分散されるようになる。

背面の2つのポートでLAGを構成。スイッチやルーター側でも同様に802.3adで構成すれば、負荷分散がかかるようになる

 TS-231Pのトータルスループットは224MB/sなので、3台以上のPCからデータを転送しないとすべの実力を発揮させることができないが、今回はテストの都合上2台のPC(いずれも有線接続)から同時に5GBのファイルを読み書きしてみた(下グラフ参照)。

 ライトではディスクがボトルネックになるからか、大きな差はないが、リードでは2台のPCから同時にアクセスしても、両方とも100MB/s前後と、単独アクセス時と変わらない速度で通信できている。

 つまり、PCやテレビなど、2台の端末から同時に4K動画などの大容量のファイル転送しても、お互いに相手の通信に影響を与えることなく、快適にデータを転送できるというわけだ。

 自分しかNASを使わないなら、1ポートでもなんとかなるかもしれないが、家族みんなでNASを活用したい場合は、明らかにLAGを構成できる方が有利だ。

表2:ベンチマークテスト(LAG)
PC1PC2
1portRead5756
Write6446
LAGRead100101
Write6349

QTS 4.3の一部機能を先取り

 このように、2万円前後で買えるNASとしては、非常に高性能で、現代の使い方にマッチするTS-231Pだが、ソフトウェアの進化による使いやすさの向上も見逃せないポイントと言える。

 本稿執筆時点では、まだベータテストの段階となるが、新たなOSであるQTS 4.3の登場が予定されており、将来的に以下のような機能が追加される予定となっている。

・コントロールパネルのデザイン変更
・電源や冷却、ストレージを音声でアラート
・Let's Encryptに対応
・64bitアーキテクチャに対応
・マニュアルやFAQを参照できるヘルプセンターを改善
・Qtier 2.0による自動階層化に対応
・VMやコンテナと接続可能な仮想スイッチに対応
・バックアップ、復元、同期を統合したHybrid Backup Syncを搭載
・macOS Sierra対応(SMB TimeMachine)
・種類ごとにファイルを自動分類するQfilingを搭載
・Qsyncの同期高速化
・UI変更や共有カートが一新されたFileStation 5
・UI変更に加えブックマークやタグ設定可能なVideoStation 5
・スポットライトモードを搭載したMusic Station 5
・マップビューなどが追加されたPhoto Station 5.3
・UI変更されPDF対応やカレンダー連携も可能なNoteStation 3.0
・複数のメールアカウントをまとめるQmailAgent
・GoogleアカウントやCSVを取り込める連絡先管理Qcontactz
・リモコンと連動するIoTソリューションQbutton

 これらの機能の搭載までは、まだしばらく時間が必要だが、「QmailAgent」や「Hybrid Backup Sync(beta)」などの一部機能はすでに現状のQTS 4.2でもAppCenterからダウンロード可能となっている。

 QmilAgentは、複数のメールアカウントをまとめることができるメールエージェントだ。iCloud、Gmail、Yahoo、Outlook.com、IMAPなどのメールに対応しており、これらのメールを一元管理できるだけでなく、ローカルのバックアップとしても活用できる。複数アカウントを簡単に切り替えたり、横断的に検索したりできるため、仕事用やプライベート用など複数のメールを使い分けている場合に重宝する。

 また、添付ファイルを自動的にNASに保存できるうえ、NASから直接リンクでファイルを送信することもできる。専用のスマートフォン用アプリも提供される。

 中でも、添付ファイルをNASのリンクで送れるようになるのは非常に便利だ。これにより、大容量のファイルを転送するときに、わざわわざ外部のクラウドストレージとメールを組み合わせて利用する必要がなくなる(CloudLinkのインストールが必要)。

QmailAgent。複数のメールサービスに対応したメールクライアント。メールの切り替えや横断検索が可能で、NASのファイルをリンクとして添付するのも簡単

 一方、Hybrid Backup Syncは、データ損失を軽減するための機能を統合したアプリだ。バックアップ、復元、同期などの複数の機能を1つのUIで設定可能。Amazon DriveやOneDrive、Dropboxなど豊富なクラウドサービスにも対応しており、複数バージョンバックアップやファイル圧縮バックアップなども可能となっている。

 今までは、ローカルのバックアップ、クラウドのバックアップ、同期など、似たような機能を別々のUIで使い分ける必要があったが、文字通り、複数の方式が統合され、やりたいことを選ぶだけで設定が簡単にできるようになった。

 最近のNASは、多機能な分、どの機能をどう使えばいいのかに迷うことがあったが、このように複数機能を統合し、目的ごとに機能を使い分けられるようになったのは、大きな進歩と言えるだろう。

Hybrid Backup Sync。バックアップ、復元、同期を統合したアプリ。クラウドストレージへのバックアップも簡単に設定できる

 このほか、DTCP-IP対応のメディアサーバー「sMedio DTCP Move」も利用可能になっている。nasneなどで録画した番組をNASに転送できるアプリだが、新たにARMプロセッサにも対応したことで、本製品でも利用可能になった。

お買い得なモデル

 以上、QNAPから新たに登場したTS-231Pを実際にテストしてみたが、ハードウェアとしての完成度が高いことはもちろん、今回のQTS 4.3の登場でソフトウェア的にもかなり充実した製品となった印象だ。

 QTS 4.3については、ここだけでは、とてもその詳細を伝えきれないほどのボリュームとなっているので、あらためて詳しく紹介する必要がありそうだが、QmailAgentやHybrid Backup Syncなどは先行して使えるので、現行のQTS 4.2でもかなり使いやすさが向上している。

 また、新たに画面キャプチャを多用したマニュアルも同梱されるようになっており、初期設定なども迷わずできるように工夫されている。

 冒頭でも触れたように、2万円、2ベイ、2ポート、200MB/sの4つの「2」を満たす製品であることを考えても、かなりお買い得なモデルで、これからNASをはじめようと考えている人に最適な製品だ。

マニュアルが同梱されるようになったのは大きなメリット。コストがかかっている

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。