清水理史の「イニシャルB」
NASで請求書を無料発行! 「抹茶請求書」をMisocaの代わりに使う
2017年10月16日 06:00
2017年5月から料金体系が変更され、無料プランの制限が大きくなったクラウド請求書作成サービスの「Misoca」。その代わりに活用を始めたのが、NAS上で動作する「抹茶請求書」というオープンソースの請求書管理システムだ。今回はSynologyのNASで稼働させてみた。
4種類の帳票に対応、捺印もOK
毎月の請求書の作成数は、少ないときで3~4通で、多くても10通ほど。
作成した請求書は郵送する必要はなく、PDFで出力してメール送信でOK。
筆者の場合、毎月の請求書管理は上記のような状況だったので、これまでMisocaはとても便利なサービスだった。しかしながら、2017年5月からの新体制で料金プランも変更。無料プランで作成できる請求書が5通までになってしまったことから、その代わりとなるサービスを探していた。
一時期、本コラムでも取り上げた「InvoicePlane」で請求書を発行していた時期もあったのだが、帳票の日本語対応が面倒な上、現行バージョンではPDF出力が文字化けしてしまったため、利用を断念した。
「やっぱりExcelしかないか?」と諦めかけていたときに見つけたのが、株式会社アイシーズが開発した「抹茶請求書」という国産オープンソースの請求書管理システムだ。
有償の「商用ライセンスEdition」に加え、「GPLライセンスEdition」が提供されており、環境を自前で用意さえすれば、今まで通り無料で、請求書の発行や管理ができる。
何よりうれしいのは、国産であること。オープンソースの業務システムには、いろいろなソフトウェアが存在するが、捺印対応、文字化け、小数点以下のけた数の扱い、税金などの項目の問題など、日本の商習慣に合わないことも少なくない。このため、カスタマイズなしで使うのは困難な場合が多いのだが、本製品は国産だけあって、そういった細かな違いに悩まされずに済む。
請求書の郵送が必要なら有料のクラウドサービスを使うのが効率的だが、筆者のように送付をPDFで済ませることができるのであれば、請求書を枚数の制限なく発行できる上、各種管理が手軽にできる抹茶請求書は良い選択だ。見積書、納品書、領収書の作成も可能で、以下のように機能的にも非常に充実している。
抹茶請求書の機能
- 「見積書」「納品書」「請求書」「領収書」を作成可能
- 印影登録と捺印が可能
- 送付状(FAX/郵送)を作成可能
- 各帳票で転記が可能
- 帳票を一覧で管理可能
- 取引先、取引先担当者、商品データを登録管理可能
- マルチユーザーで利用可能
- 帳票の色や向きを変更可能
- 消費税設定、割引設定に対応
オンラインデモも用意されているので、アクセスして、使い勝手を試してみるといいだろう。
SynologyのNASに各種パッケージのインストールし、設定を行う
それでは、実際にインストールしてみよう。
まずは、ソフトウェアをダウンロードする。こちらのページから、利用者情報を登録後、ソフトウェアをダウンロードしよう。
システム要件は、こちらを参照してほしいが、Apache 2.2系のウェブサーバーとPHP 5.1~5.6(GDライブラリも必要)、MySQL 5以降かMariaDB 5.5のデータベースが必要になる。
一般的なNASの場合、ウェブサーバーやPHP、データベースのバージョンが製品によって異なるため、この条件を整えるのが難しい場合もあるが、SynologyのNASであれば、利用するウェブサーバーやPHPを複数のバージョンからをGUIで簡単に指定することができる。
1.パッケージのインストール
NAS側の利用環境によってインストール手順は異なるが、まずは以下のような順でパッケージセンターから必要なパッケージをインストールする。
1-1)「Web Station」をインストール
1-2)「Apache 2.2」インストール
1-3)「PHP 5.6」をインストール
1-4)「phpMyAdmin」をインストール
1-5)「MariaDB 5」をインストール
2.ウェブサーバーの設定
続いてウェブサーバーの設定をする。前述したようにバージョンが指定されているので、Web Stationで利用するウェブサーバーやPHPの設定を変更しておく。
2-1)全般設定で「Apache 2.2」と「PHP 5.6」を指定
2-2)PHP設定の拡張で「gd」をオン
3.データベースの作成
phpMyAdminを使って抹茶請求書が使うデータベースを作成しておく。MariaDB 10とMaria DB5の両方がインストールされている場合は、接続先に注意しよう。
3-1)MariaDB 5の設定でパスワードを登録(標準はパスワードなし)
3-2)phpMyAdminでデータベースを名前「matcha」、照合順序「utf8_general_ci」で新規作成
4.ファイルのアップロードと設定
ここからは、アイシーズのウェブサイトで紹介されているインストール方法に沿ってインストールを進める。
4-1)ダウンロードしたファイルをNASのウェブフォルダー配下にアップロード
4-2)/app/config/core.phpをエディターで編集
4-3)パーミッションを変更(systemに読み書き権限を許可)
4-4).htaccessを設定(RewriteBaseでディレクトリを指定)
4-5)ブラウザーからインストールを開始(http://192.168.3.97/matcha)
4-6)データベースを指定してテーブル作成
4-7)基本情報設定
印影や顧客、商品などを登録すれば利用可能
以上で、抹茶請求書がSynologyのNAS上で稼働するようになる。「https://NAS名/matcha」などからアクセスできるので、トップページの案内に従い、自社情報や取引先情報などを登録しておけばいい。請求書に押印したい場合は、あらかじめjpgファイルなどで用意しておけば印影を登録できる。
使い方の詳細までは解説しないが、シンプルで分かりやすい構成なので、特に迷うことはないだろう。例えば、請求書を作成したいなら、「帳票管理」から「請求書を作成する」を選んで、件名や顧客名、明細の各項目を入力していけばいい。請求書を保存した後、PDFで出力すれば、登録した印鑑が捺印された形で請求書を出力できる。
顧客や商品を登録しておけば入力が楽になる上、ベースとなる見積書から、納品書や請求書、領収書と、件名や項目を引き継ぎながら、流れに沿って書類を作成することもできる。個人事業主や小規模なオフィスなら、これで十分過ぎるほどの実力を持っていると言えそうだ。
ただし、アップデートなどでは注意が必要だ。ソフトウェアがアップデートされた場合は、自分でインストールを行わなければならない上、NAS側のサーバーソフトウェアがアップデートされたりすると、動作しなくなる可能性もある。自分で管理する以上、ある程度の手間が掛かることを覚悟すれば、かなりお勧めできるソリューションだ。