第187回:PCと携帯電話の両方で利用できるカレンダーサービスは?
オンラインカレンダーを家族で手軽に共有するためのソリューションを検証



 リビングの壁に掛けられたカレンダーに家族の予定を書き込むように、インターネット上で家族それぞれのスケジュールを手軽に共有できないものだろうか? PCや携帯電話から利用可能なカレンダーサービスのいくつかを実際に利用した。





PCとケータイからのスケジュール管理が理想

 筆者宅では、家族の間でスケジュールを共有することが欠かせない。筆者は基本的に自宅にこもって原稿を書いていることが多いのだが、突発的に発表会や取材、打ち合わせで外出することも少なくない。うっかり、家族のスケジュールを確認せずに打ち合わせの予定を入れると、当日になって、てっきり家にいるものだと思っていた家族から、「クルマを使いたかったのに……」と文句を言われることもある。

 このため、筆者宅では以前からグループウェアを利用して家族の間でスケジュールを共有することにしていたのだが、最近、利用するサービスを変更することにした。以前は、自宅のPCにマイクロソフトの「GroupBoard」をインストールして利用したり、アリエル・マルチスケジューラをPCにインストールして利用していたのだが、多機能すぎたり、インストールやアップデート、管理が面倒だったりと、いまひとつ使いにくかったのがその理由だ。

 さらに携帯電話を機種変更したこともあって、PCだけでなく携帯電話からもスケジュールを共有できるようにしたいと考えるようになった。というわけで、PCと携帯電話から、手軽に、しかも無料でスケジュールを共有できるサービスをいろいろと検証してみることにした。





グループウェアは操作が煩雑で却下

 まず、利用を検討したのはWebベースのグループウェアだが、結論から先に言えば、これはすぐに候補から外れた。理由は単純で、有料のサービスが多いからだ。「Intranets」などのように、無料で利用できるグループウェアも提供されているが、携帯電話からの利用には有料サービスへの加入が必要なケースがあり、無料で使いたいという今回のニーズには合わなかった。


企業で利用するならグループウェアの利用が最適だが、家族でスケジュールを共有したいというニーズの場合は多機能すぎてかえって使いづらいことも。無料サービスではできることが限られているのも家族での利用には向かないと感じた

 「Team Gear」のように、携帯電話からの利用も含めて無料で提供されているサービスや、レンタルサーバーにインストールするタイプのグループウェアをいくつか利用してみたが、グループウェアの場合、総じてログイン(特に携帯電話からの)が煩雑で、多機能なだけに操作や管理に手間がかかる傾向があった。

 企業で利用するのであれば、グループウェアの方が効率的なのは確かだが、家族のような少人数(しかも筆者宅の場合は筆者を含めて2人)で、しかもスケジュールを共有したいだけで利用するのには、機能がありすぎてかえって不便に感じてしまう。また、家族が使うことを考えると、操作が煩雑で難しい印象であったのも利用を避けた理由の1つだ。





ポータルのカレンダーサービスも一長一短

 続いて検討したのが、ポータルサイトが提供しているカレンダーサービスだ。Yahoo! JAPANの「Yahoo!カレンダー」、gooの「gooカレンダー」、So-netの「So-net Calendar」など、さまざまなサービスを利用してみた。

 まず、So-netの「So-net Calendar」だが、デザインに優れており、携帯電話からの利用も可能であったが、ほかのユーザーとのスケジュール共有ができないため、今回は利用を見送った。テレビ番組や映画上映など、パブリックなスケジュールを自分のカレンダーに反映することはできるが、あくまでもプライベートな予定を管理するためのツールだ。


プライベートな予定とテレビなどのパブリックな予定を管理できるSo-netカレンダー。携帯電話からの利用も可能だが、ユーザー同士での共有はできない

 続いて、Yahoo!の「Yahoo!カレンダー」を利用してみた。Yahoo!カレンダーは、PCからの利用に限れば、家族でスケジュールを共有するにはなかなか良いサービスだ。「公開カレンダー」の機能を利用して、自分のカレンダーを公開するユーザーを友だちリストに登録すると、そのユーザーのカレンダーからも予定を参照できるようになる。公開した相手に予定を変更する権限を与えるかどうかなども設定できるため、家族やサークル、特定のグループなど、スケジュールを公開しても差し支えない親密な間柄のユーザー間で予定を共有するのに向いている。

 サイトへの自動ログインも可能で、My Yahoo!の利用によってホームとして設定しておくことで常にスケジュールを確認できるなど、筆者のニーズには非常にマッチしたサービスであった。

 ただ、1つだけ惜しいのは携帯電話から利用できる機能が制限される点だ。Yahoo! Mobileからもカレンダーを利用できるが、参照できるのは自分の予定のみで、公開カレンダーで共有している相手の予定は携帯電話からは参照できない。これさえできれば迷わず利用していたのだが、非常に残念だ。


公開カレンダーの機能によって、第三者、もしくは特定のユーザーにカレンダーを公開することが可能なYahoo!カレンダー。家族など、親密な関係のユーザー同士でのカレンダー共有に最適だが、携帯電話からは公開カレンダーの機能が利用できない

Yahoo!カレンダーが言わば公開型のカレンダーだとすれば、共有型のカレンダーと言えるのがgooが提供している「gooカレンダー」だ。このサービスでは、自分がプライベートで利用するカレンダーに加えて、特定のグループで共有するためのカレンダーを個別に作成することが可能だ。

 たとえば、筆者の場合であれば、標準で作成される自分のカレンダーに加えて、「清水家」というカレンダーを作成しておき、そのカレンダーへのアクセス許可を家族に与えておくことで家族でカレンダーを共有できる。グループのカレンダーに登録された予定は、カレンダーのトップページのビューから個人用のカレンダーと一緒に1つのカレンダーにシームレスに表示可能で、個人の予定とグループの予定を統合的に参照できる。

 gooカレンダーは携帯電話からのアクセスもサポートしており、前述したグループ用のカレンダーも携帯電話から参照できる。こちらもなかなか筆者のニーズに合ったサービスなのだが、最終的には利用を見送った。その理由は、自分のカレンダーとグループのカレンダーを使い分けるという概念がわかりにくかったからだ。gooカレンダーの場合、前述したように予定の閲覧は個人とグループでシームレスに参照できるが、登録するときは書き込み先のカレンダーを選択しなければならない。たとえば、自分のプライベートの予定であれば、「Myカレンダー」に、グループの予定であれば前述した例の「清水家」といったようにカレンダーを選ぶ必要がある。


複数のカレンダーを使い分けることができるgooカレンダー。個人用、家族用、仕事用、さらには特定のプロジェクト用などと、個別にスケジュールを登録できる。各カレンダーの予定はトップページのビューからシームレスに表示可能。相手の空き時間検索なども可能となっている

 筆者はこの方法でもさほど不便ではないのだが、家族にはカレンダーを使い分けるという考え方がいまひとつ理解しにくいようだ。試しに使ってみたところ、書き込み先のカレンダーで「清水家」を選ばなければならいところを自分のカレンダーにしてしまうなどのミスが多く、せっかく共有しているグループカレンダーに予定が反映されないことが多かった。グループ用のカレンダーは複数作成できるため、個人用、仕事用、家族用、サークル用、特定のプロジェクト用など、複数のグループやタスクごとにスケジュールを共有するには適したサービスだと言えるが、スキルレベルが低いユーザーと利用する場合は事前にしっかりと使い方をレクチャーする必要がありそうだ。





日本語化されれば面白い「30 Boxes」

 というわけで、無料で、カンタンで、PCと携帯電話の両方から使えるカレンダー共有サービスがほかにないかをいろいろな人に聞いて回ってみたところ、本コラムの編集担当から「30 Boxes」という海外のサービスを教えてもらった。

 このサービスは携帯電話からのアクセスはできないので今回の筆者のニーズには合わないのだが、なかなか将来性を感じさせるサービスだ。基本的にはカレンダーの共有/公開サービスなのだが、たとえば「meeting tomorrow 7pm」といったように自然文を入力することで該当する日時にスケジュールを登録できるようになっている。

また、タグの概念が採用されており、予定を登録するときに設定したタグによって、スケジュールの共有相手を指定することが可能だ。たとえば、「work」というタグを設定したときはあらかじめ登録した仕事上のメンバーにだけその予定を公開するとか、「family」というタグは家族にのみ公開するといったように、予定ベースで公開先を設定できる。


自然文によるスケジュールの登録ができる30 Boxes(画面左)。タグベースのスケジュール共有が可能となっており、予定を追加するときに特定のタグを指定すると、そのタグを共有する設定にしたメンバーと予定を共有できる

関連情報

2006/3/7 11:07


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。