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第404回:WiMAXを自宅のメイン回線に使える無線LANルーター NECアクセステクニカ「AtermWM3400RN」


 NECアクセステクニカから、IEE802.11n(2.4GHz)に対応した無線LANルーター「AtermWM3400RN」が登場した。本体に内蔵したWiMAX通信モジュールをインターネット接続に利用できる据え置き型の無線LANルーターだ。固定回線の置き換えも可能な本製品の実力を検証してみた。

WiMAXを自宅のメイン回線に

 工事の手間がなく、リーズナブルなプランも選べ、しかも高速。そんなインターネット接続環境を求めているなら、自宅のメイン回線としてWiMAXを検討してみるのも1つの手だ。

 モバイル向けのインターネット接続環境としてスタートしたWiMAXだが、開始から1年以上が経過し、エリアの拡大と通信品質の向上が格段に進んできた。これまでは都心部に出かけたときの通信手段というイメージだったが、最近では住宅地でも通信できる場所が増えてきており、自宅でもそのままWiMAXが使えるケースも少なくない。

 家庭やオフィスでも、そのまま電波をとらえることができ、しかも数Mbps〜十数Mbpsの速度で通信できるのであれば、純粋なインターネット接続用の回線として、ADSLや光ファイバーの代わりにWiMAXを使うというのも、もはや悪くない選択だろう。

NECアクセステクニカのWiMAX内蔵無線LANルーター「AtermWM3400RN」。インターネット接続にWiMAXを利用できる据え置き型の無線LANルーター。

 そんな中、登場したのが、今回紹介するNECアクセステクニカの「AtermWM3400RN」だ。同社からは、すでにバッテリー駆動可能なWiMAX対応モバイルルーター「AtermWM3300R」が発売されているが、今回の製品はこの据え置き型となる製品だ。家庭やオフィスなどに設置する無線LANルーターとして利用することで、WiMAXを家庭内の機器で共有することが可能となる。

 すでにWiMAXを利用中のユーザーはもちろんのこと、これから家庭やオフィス用のインターネット接続環境を新たに用意しなければならない場合などに最適な製品と言えそうだ。

回線工事不要ですぐ利用でき、内装やレイアウト変更の際も簡単に移動できる。有線LANポートも備え、無線LANを使わない場合はスライドスイッチで無線LANをオフにすることもできる

無線クライアントも有線クライアントもWiMAXで手軽に接続

 では早速、製品をチェックしていこう。AtermWM3400RNは、WiMAX通信モジュールを内蔵した据え置き型の無線LANルーターだ。

 サイズは、幅67mm×高さ94mm×奥行き35mmと、前述したバッテリー駆動のAtermWM3300Rに台座を付けて、若干、厚みを増した印象となっている。正面から見た幅や高さなどのサイズはほぼ同じだが、奥行きが厚いため、一回り大きく見える。

正面(左)、側面(右) バッテリー内蔵のモバイルルーター「AtermWM3300R」の厚みが少し増した程度のコンパクトさ

 とは言え、一般的な無線LANルーターと比べると小さく、どこにでも設定できる手のひらサイズとなっているうえ、必要以上に存在感を主張しないシンプルなデザインなので、ワンルームの部屋などに設置しても違和感がなさそうだ。

 インターフェイスは、最小限となっており、前面にいくつかのランプと無線LAN接続などに利用するボタンを搭載しているうえ、側面に電源用のコネクタと10BASE-T/100BASE-TX対応のLANポート×1、反対側に無線LANのオン/オフスイッチを搭載している。

 このLANポートは、クライアントを接続するためのポートだ。小型の無線LANルーターの場合、通常、LANポートはWAN側の回線に利用する場合が多いが、本製品ではWAN側にWiMAXを利用する。

 このため、液晶テレビやレコーダーなどの有線LANしかサポートしない家電製品を接続することはもちろんのこと、事務機器などのオフィス用機器なども接続することができる。100Mbpsである点が気になるかもしれないが、WiMAXの速度が最大40Mbpsなので、この製品でGigabitにする意味はないだろう。

 もちろん、無線LANも搭載されているため、PCやスマートフォンなどの機器をワイヤレスで接続することもできる。対応する無線LANは、最大300Mbpsの通信が可能なIEEE802.11n/b/gとなっているため、LAN内のクライアント同士の通信も高速に行うことが可能だ。

対応する無線LANはIEEE802.11n/b/g。デュアルチャネルにも対応し最大300Mbpsの通信が可能 iPhone4などのスマートフォンでも手軽に利用可能

WANにWiMAXを利用するメリットとは

 本製品の最大の特徴は、WAN側にWiMAXを利用する点だが、これには具体的にどのようなメリットがあるのだろうか?

 まず考えられるのは、工事や申し込みの時間と手間を大幅に短縮できる点だ。WiMAXの場合、電波さえ届けば、製品を買ってきて、その場で申し込みをするだけで、すぐに開通させることができてしまう。光ファイバーのように引き込みを考える必要がないうえ、ADSLのように工事の日程を調整する必要がないため、スピーディな利用が可能だ。

 もちろん、光ファイバーやADSLと異なり、音声通話を利用することができないが、最近では携帯電話があれば事足りる場合も多いため、純粋にインターネット接続環境を整備したいという人向には、むしろ好都合だ。就職や就学で一人暮らしを始める、転勤で別の場所に引っ越す、小さな事務所で利用するなどという場合の選択肢として十分に検討する価値があるだろう。

 また、MVNOが多く、多彩な料金プランが選べるのもWiMAXの魅力だ。固定料金、段階制定額、1日利用と用途に合わせてプランを選ぶことができる。

 これは長期的な利用だけでなく、短期間での利用や、数週間から数カ月程度の中期的な利用時のコストを押さえるのにも適している。たとえば、工事現場などの通信環境として半年ほど利用するなら、月額4480円固定の「UQ Flat」を契約し、工事が完了したら解約しておけばいい。

多彩な料金プランを活用できるため、利用期間や利用シーンに合わせた柔軟な使い方ができる。特に中期的、短期的な利用では既存の固定回線よりも使いやすい

 また、プロジェクトの関係で滞在するマンスリーマンションの通信環境として利用したいなら、使わない月の料金を節約できる2段階制の「UQ Step(月額380円〜上限4980円)」を利用するといいだろう。もしも、引っ越しや新居建設の仮住まいで数日だけ使いたいというのなら1日600円で利用できる「UQ 1 Day」という手もある。

 複数の機器を接続できる高速な通信環境が必要だが、長期的な契約はしたくないうえ、すばやく開通させたいという場合、これまでの固定回線ではなかなか選択肢が無かったが、AtermWR3400RNのような通信機器とWiMAXの組み合わせなら、こういった使い方にも柔軟に対応できるというわけだ。

開通手続きもクライアント接続もカンタン

 セットアップもカンタンだ。PCを有線、または無線で接続後、ブラウザを起動してセットアップ画面にアクセスする。ここでウィザード形式の設定を進めていくと、自動的にWiMAXポータルサイトに接続されるので、任意のMVNOを選んで申し込みをするという流れになる。

 もちろん、すでに契約がある場合は追加機器として登録することも可能で(200円/月)、この場合は数分もあれば開通するという手軽さだ。

まずは有線LAN、または無線LANでPCを接続。WPSでの接続も可能なためPCならボタンを押すだけで無線LAN接続可能
ブラウザを起動して「http://web.setup」にアクセス。自動的に設定画面が表示される 利用にはWiMAXの契約が必要。ポータルページから事業者を選んで加入する。クレジットカードさえあれば30分ほどもあれば開通させることができる

 契約が完了すれば、実際にWiMAXを利用した通信が可能となる。気になる通信速度だが、筆者宅でテストしてみたところ下り13.51Mbps、上り4.71Mbpsとなった。有線LAN接続、無線LAN接続のどちらでもほぼ同じ数値となっており、電波状況さえ良ければADSLなどと同等以上の速度で通信できると言えそうだ。

筆者宅での測定結果。基地局が増えてきたことで住宅街などでも通信環境が改善されつつある

 WiMAXはエリアが狭いというイメージがあったが、屋外基地局が1万局に達したとの報道もあり、かなり改善されてきている。実際、筆者宅も、今年の初めあたりまでは、1階は圏外で3階まで移動すると何とか通信できる程度であったが、夏に入ったあたりに近所に基地局が設置されたからか、自宅内のどこからでも通信できるようになった。

 もちろん、対応エリアや実測値などは、環境によって異なるので、UQコミュニケーションズのエリア情報ページで確認してみると良いだろう。

 また、前述した工事現場などの一時利用など、購入前に使えるかどうかを確認したい場合は、UQコミュニケーションズが提供している「Try WiMAXレンタル」を利用するといいだろう。データ通信カードを15日間無料で利用することができるので、事前に自宅などの状況をチェックすることができる。

UQコミュニケーションズのWebサイトを利用すれば対応エリアや実際の速度測定結果なども確認できる

 このように、WiMAXの環境自体がかなり整備され、使いやすくなってきたが、本製品は、これに加え電波状況に合わせて設置場所を選べるというメリットもある。PCに内蔵されているWiMAXの場合、PCを使う場所が圏外だとどうにもならないが、本製品の場合、本体を電波状況の良い場所に設置し、クライアントは無線LANで自由に置き場所を選ぶことができる。

 たとえば、WM3400RNは3階の窓際に設置し、PCは1階や2階で使うといった使い方も可能だ。台座部分を取り外すと、壁掛けもできるので、場合によっては壁への設置も検討すると良いだろう。

台座を背面に取り付ければ壁掛けで利用することもできる

Atermシリーズならではの完成度の高さ

 このように手軽にWiMAXをメインのインターネット環境として使えるWM3400RNだが、無線LANルーターとしての完成度の高さも、その特長の1つとなっている。

 小型のWiMAXルーターということで簡易的な機器という印象を持つかもしれないが、Atermシリーズならではの使いやすさをしっかりと受け継いでおり、らくらく無線スタート/WPSによる無線LANのボタン設定が可能だったり、ゲーム機などを接続するためのマルチSSID対応や、インターネット悪質サイトブロックまでも搭載している。

本体のボタンを押すことで無線LANの設定が可能。「らくらく無線スタート」に加えて「WPS」もサポートする
マルチSSID対応のため、ゲーム機などを個別のセキュリティ設定で接続可能。ネットワーク分離機能もサポートする インターネット悪質サイトブロックにも対応。家庭での利用に加えて、オフィスなどでの利用にも適している

 インターネット悪質サイトブロックは家庭での子供向けの機能だが、本製品の利用シーンを考慮すると、工事現場やサテライトオフィスなど、本社管理部門の目が届きにくい場所でのセキュリティ確保にも役立ちそうだ。今後は、ルーターによるフィルタリング機能をビジネスシーンで活用しようという例も増えてくるのではないだろうか。

 また、無線LAN機能をオフにするためのスイッチが搭載されているのも、なかなか面白い工夫だ。この機能を利用して、有線LANのみの接続に限定すれば、同様に本社の管理が届かない現場での無線LANの利用を禁止し、不正アクセスなどの危険性を下げることもできるだろう。

 唯一、注意しなければならないのは、WiMAXで1つの契約で複数の機器を追加登録している場合の同時通信だろう。WiMAXは複数の機器を登録している場合でも、同時に接続できる端末が1台に限られている。このため、たとえばWM3400RNとPC内蔵のWiMAXを併用している場合、自宅やオフィスのWM3400RNで通信しながら、同時に外出先のPCでWiMAXを利用するということができない。

 標準ではWM3400RNで自動再接続の設定が有効となっているため、同時接続が行われた場合でもWM3400RNの接続が優先される。たとえば、WM3400RNの接続中に、外出先のPCで接続すると、同時接続の制限から、WM3400RN側で回線が一瞬切断される。しかし、自動再接続の設定が有効のため、再びWM3400RNで再接続が行われることになる。

 WM3400RNで再接続が行われると、PC側が切断されるため、PC側で再接続を行えば、両方で接続と切断が繰り返されることになるわけだ。このため、複数の機器で同時接続する可能性がある場合は、WM3400RNの設定画面で自動再接続をオフにしておくのがおすすめだ。こうすれば、外出先で接続した際は、そちらの接続が優先され、WM3400RNは切断後、本体のボタンを押すか、設定画面から手動でWiMAXに接続するまで切断された状態が維持される。

 自宅やオフィスで他の人がインターネットに接続する可能性がある場合は、ちょっと困ったことになるが、これはWiMAX側の契約の問題なので、あらかじめ運用ルールなどを決めておくなどして、避けるしかないだろう。

標準では切断時の自動再接続が有効になっている。複数の端末を利用する可能性がある場合はオフにしておくといいだろう

WiMAXの新しい使い方を提案する製品

 以上、NECアクセステクニカのAtermWM3400RNを実際に使ってみたが、WiMAXを固定回線のように使える非常に面白い製品だ。

 開通までの手間と時間を節約できるうえ、柔軟な料金プランを選べるというWiMAXの特性をうまく利用すれば、さまざまなシーンでの活用ができそうだ。また、コンパクトな製品でありながら、同社のAtermシリーズと共通の機能を備えており、はじめて利用する人でも手軽に扱えるうえ、セキュリティの確保が要求されるビジネスシーンでの利用にも適しているのも大きなメリットと言える。

 WiMAXはモバイル向けのサービスと考えられがちだが、本製品の登場によって、柔軟な運用ができる万能なインターネット接続環境への進化も期待できそうだ。

 唯一残念なのは、同時利用時の動作だ。WiMAXの契約上、同時利用ができないのは仕方がないが、できれば同時利用のために切断されたことがわかるようにランプが点灯するか、PCのユーティリティやスマートフォン用のアプリなどと連携して、外出先側が切断されたら、自宅側が再接続するといった工夫ができるようになるとありがたいところだ。

 個人的には、企業ネットワークなどのバックアップ回線としての利用も面白いのではないかと感じた。メイン回線がダウンした場合でも、UQ 1 Dayなどの1日単位の料金プランを活用すれば、障害時のみ安価に回線をバックアップすることができる。設置場所を選ばず工事も不要なので、企業などで、イベント用やバックアップ用といった用途向けに1台用意しておけば安心だろう。


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2010/8/24 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ