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第405回:24時間どこからでもアクセスできるデスクトップ「お名前.com Windowsデスクトップ」


 お名前.comが、リモートデスクトップ専用サービス「お名前.com Windowsデスクトップ」の提供を開始した。データセンターに仮想的に構築されたWindows Server 2008R2をデスクトップとして、いつでも、どこからでも使えるサービスだ。どこまで何に使えるのかを実際に試してみた。

Hyper-VベースのWindows Server 2008 R2が月々2268円で

 お名前.comが7月27日からサービスを開始した「お名前.com Windowsデスクトップ」は、デスクトップ用途にターゲットを絞った仮想サーバーサービスだ。

 GMOインターネットが運営するデータセンターのサーバー上に、Hyper-Vを利用したWindows Server 2008 R2を構築し、リモートデスクトップ経由で自宅や外出先などから利用することができるようになっている。

GMOインターネット株式会社が提供する「お名前.com Windowsデスクトップ」。Windows Server 2008 R2のデスクトップをリモートから利用することで、アプリケーションなどを自由に実行できるサービスとなっている

 CPUやメモリなどのリソースを確保できることから、インターネット上のホスティングサービスは、仮想化技術を利用したVPS(Virtual Private Server)へと主流が移行しつつあるが、本サービスも基本的にはVPSの一種だ。

 ユーザーのニーズによって自由に利用できる一般的なVPSサービスと異なり、「お名前.com Windowsデスクトップ」はデスクトップ用途に限られるが、アプリケーションの実行に最適化した設定を施すことで、Windows 7と共通のリッチなユーザーインターフェイスを実現しながら、軽快な操作ができるのが特長となっている。

 料金も比較的リーズナブルで、50GBのディスク容量、1GBのメモリ、1つのグローバルIP、100Mbpsの回線(共有)で初期費用が2100円、月額費用は1カ月払いで2520円/月、12カ月払いで2268円/月で利用することができる。

 そもそも、Windows Server 2008 R2を利用したVPSサービスそのものがあまり存在しない状況の中、デスクトップという目新しい用途のサービスを、高いコストパフォーマンスのサービスとして提供してきたことは大いに注目されるところだろう。

申し込み後すぐに利用できる

 本サービスは、すでに提供が開始されているため、同社のWebページ(http://www.onamae-desktop.com/)から申し込みをすることで、すぐに利用することが可能だ。

 実際に申し込みをしてみたが、手続きそのものは非常に簡単だ。1カ月払い、6カ月払い、12カ月払いの3つから支払いサイクルを選択後、氏名や住所、支払用クレジットカードなどの情報を登録して会員IDを作成する。1時間ほどするとクレジットカードによる決済とサーバーの準備が行われ、実際にサービスを利用可能になる。

お名前.com Windows デスクトップのページから申し込みをする。最初に料金の支払いサイクルを選択
氏名や住所、決済情報などを入力して会員IDを作成 1時間ほどすると決済とサービスの準備が完了し、サービスが使えるようになる

 サービスが利用可能になったら、まずは同社のログインページからサービスにアクセスして、リモートデスクトップ接続に必要な情報を入手する。申込時にメールで送られてきたIDを利用してサービスの設定ページ(コントロールパネル)にアクセスする。

 このコントロールパネルは、Windowsのコントロールパネルに近いデザインが採用されているが、あくまでも同社のWebページ上にあるサービス設定用のページであり、Windowsのコントロールパネルそのものではない。

 プロセッサやメモリなどのシステムの情報を確認したり、仮想マシンの起動やシャットダウン、再起動ができるほか、パスワードの設定、OSの再インストールなどができるようになっている。

 ここで「リモートデスクトップ」を選択すると、リモートデスクトップ用のRDPファイルをダウンロードしたり、ブラウザから直接リモートデスクトップを起動してデスクトップにアクセスすることが可能となる。

 ブラウザでそのまま開いてもかまわないが、ブラウザ内でデスクトップを表示するわけではなく、ブラウザ経由でリモートデスクトップを起動するだけなので、まずはRDPファイルを保存しておく方が良いだろう。

サーバーの管理は同社のWebページ上にあるコントロールパネルから行う まずはリモートデスクトップ用のRDPファイルをダウンロードしておこう

 ちなみに、コントロールパネルの情報を確認すると、プロセッサはIntel Xeon E5620 2.4GHzとなっている。CPU自体はクアッドコアの製品だが、仮想マシンに割りあてられるCPUコアは1つのみとなっており、シングルスレッド処理となる。

 また、「OSの再インストール」だが、これはあらかじめ用意されている標準のイメージを書き戻す処理となっており、ユーザーが自由にOSをインストールできるわけではない。

CPUはXeon E5620だが割りあてられるコアは1つ OSの再インストールはイメージの書き戻す機能となっている

リモートデスクトップならではの操作感

 さて、ダウンロードしたRDPフェアを起動すれば、インターネット上の自分専用のデスクトップにアクセスし、画面上にデスクトップ画面が表示される。

 前述したように、OSにはWindows Server 2008 R2が採用されているが、機能の追加で「デスクトップエクスペリエンス」がインストールされているようで、Windows 7とほとんど同じユーザーインターフェイスでデスクトップが表示される(WMP12もインストールされるがコーデックがないので動画再生などは不可)。

 RDP7.0(Windows 7は標準)対応のリモートデスクトップクライアントを利用すれば、Aeroによる半透明表示も可能で、Aeroプレビューなどの機能も利用することが可能だ。

Windows 7と同じユーザーインターフェイス。RDP7.0対応クライアントならAeroも有効になる

 操作感に関しては、リモートデスクトップを使ったことがある人なら、さほど違和感を感じることはないだろう。もちろん、ローカル環境と比べれば軽快感に欠けるが、たとえばブラウザを起動し、インターネットにアクセスするといった操作も問題なくできる。

 リモートデスクトップの場合、どうしてもウィンドウを動かしたり、メニューを表示して項目を選ぶといったときにカクカクとした表示になり、操作と画面上の表示に若干のタイムラグが発生する。この独特の操作感は、、LAN上の物理マシンにアクセスしたとしても同じで、リモートデスクトップならではの操作感として慣れるしかない。この感覚さえつかんでしまえば、比較的快適にデスクトップ操作が可能だ。

 なお、物理マシンへのリモートデスクトップと比べると、わずかにディスクアクセスやネットワークアクセスが遅い印象だ。このあたりは、インターネット経由であることや仮想環境であることが影響していると言えそうだ。

「やりっぱなし」で使える快適さ

 もちろん、アプリケーションのインストールなども問題なくできる。試しに、Office 2010をインストールしてみたが、もちろん問題なく利用することができた。

 OSはWindows Server 2008 R2だが、Windows 7対応のものであれば、ほぼ動作させることができるので(OSチェックする場合はNG)、一般的なソフトウェアであれば問題なく利用できるだろう。

 消費電力の心配やハングアップなどの懸念がないため、同社が提案しているFXの自動売買ソフトなど、24時間稼働させることを想定したアプリケーションなどを利用するのにも確かに適している。

 このように、普段、よく使うアプリケーションをインストールすると、外出先など、どこからでも慣れた環境で作業ができる自分のデスクトップとして非常に便利に使えるようになるが、感心したのは作業をいつでも中断できることだ。

 仮想マシン自体は常に起動させておくことができるので、作業の途中で席を離れなければならない場合でも、接続を切るだけで、すぐに作業を中断できる。もちろん、画面は中断したときのまま維持されるので、再接続すれば、次回、再び途中の画面から作業を開始することができる。このやりっ放しで良いという感覚はなかなか新鮮だ。

 少しでも時間のあるときに、ちょこちょこと原稿を書き進めるといった使い方ができるのは、本当にありがたい。

 このほかちょっと試してみたいなどというアプリケーションをインストールするのにも便利だ。マルウェア対策として、Microsoft Forefront Client Securityが標準でインストールされているうえ、万が一、システムに影響が及ぶようなアプリケーションを利用したとしてもローカルへの影響がないうえ、再インストールですぐに初期状態に戻すこともできる。テスト環境としてはかなり便利だろう。

マシン自体は常に起動した状態を保ってくれるので、やりっぱなしでいつでも中断できる。連続稼働させたいアプリケーションの実行にも便利 マルウェア対策としてForefrontがインストールされている

サーバーとしての利用は不可能

 このほか、Windows Server 2008 R2の役割を追加することなども可能だ。標準では、サーバーマネージャが「コンピュータの管理」に置き換えられているが、「mmc」を起動してスナップインを追加すれば、サーバーのコンポーネントを自由に利用できる。Active Directoryだろうが、IISだろうが、インストール可能だ。

 ただし、これらのサーバーモジュールは、実質的にインストールしても意味がない。なぜなら、「お名前.com Windowsデスクトップ」はデスクトップ用途に限られているため、外部から内部への通信がポート3389のリモートデスクトップ以外許可されていないからだ。本サービスをWebサーバーなど他の用途に使うことはあきらめた方がいいだろう。

サーバーマネージャを利用すれば、ADやIISなどの役割も追加可能 シマンテックのセキュリティチェックでポートを確認。Windowsファイアウォールとは別に、仮想ネットワーク側であらゆるポートが閉じられている

 もちろん、内部からの通信であれば問題なくできるため、たとえば外部サイトを経由するアプリケーションやPeer to Peerで通信するアプリケーションであれば利用可能だ。たとえば、Windows Live Syncを利用して自宅のPCとデータを同期することもできるし、Serversman@desktopなどを利用すれば外部からWebDAVでアクセスできるようになる。また、自宅などとの間でVPNを構築するという手もあるだろう。

Windows Live Syncを利用して自宅のPCなどとデータを同期させることも可能 Serversman@desktopを利用してWebDAVのファイル共有は可能

 このように、工夫次第では、ローカルとデータを同期させたり、インターネット上のストレージとして利用することも可能だが、あくまでも仮想環境で動作していることは考慮する必要がある。

 転送量の制限などはないが、ストレージ容量は50GBと限られるうえ、CPUの割りあてコアも1つとなるため、複数の処理を実行させるとCPU負荷が高くなりがちだ。リソースを考慮して使う機能を選別することが、本サービスとうまく付き合うコツだろう。

同時接続セッションは2つ

 このほか、気になる点としては、同時接続可能なセッション数があるだろう。

 これはWindows Server 2008 R2に準ずる。管理セッションとして2つまでの同時接続が許可されている。このため、ローカルユーザーとしてアカウントを作成し、リモートデスクトップ接続を許可しておけば、同時に2人のユーザーでサーバーにアクセスすることが可能となる。

 ただし、この制限は前述したサーバーマネージャを利用し、リモートデスクトップの役割で、セッションホストやライセンスサーバーをインストールすることで拡張可能だ。

 実際に利用するには、接続する端末数かユーザー数分のリモートデスクトップライセンスが必要になるうえ、パフォーマンスの問題があるため、現実には2セッションくらいが実用的だが、場合によっては、いろいろな活用もできそうだ。

ライセンスを別途用意すれば、リモートデスクトップの

工夫次第で使えるサービス

 このように、「お名前.com Windowsデスクトップ」サービスを利用してみたが、長時間稼働させたいアプリケーションの利用だけでなく、どこでも使える作業用のデスクトップとしても便利なうえ、データのバックアップ先や簡易ストレージとしても利用したり、テスト環境としても使えるなど、なかなか便利なサービスと言える。

 場合によっては、在宅勤務用に活用したり、パートタイムで仕事をする人向けのデスクトップとして活用したり、外部の人に作業を依頼する場合に作業用のアプリケーションといっしょに使ってもらうデスクトップ環境としても活用できそうだ。

 デスクトップの仮想化やホスティングは、比較的新しいサービスだが、Windows 7やWindows Server 2008 R2のService Pack1では、RemoteFXによって3D処理をサーバー側で実行できるようになるなど、さらなる進化も期待できる。ひとつのクラウドの形として、今後の発展が期待できるサービスと言えそうだ。


関連情報

2010/8/31 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ