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ソフトバンク、量子コンピューティング技術で無線基地局の設定最適化による通信性能の向上に成功

 ソフトバンク株式会社は7月29日、量子コンピューティング技術を活用して、無線基地局の設定を最適化する実証実験を東京都内で行った結果、「キャリアアグリゲーション」(CA)を活用した5G通信において、ハードウェアを増設することなく、下りのデータ通信速度を約10%、データ通信容量を最大50%向上させることに成功したと発表した。

 CAは、複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線としてデータの送受信を行う技術。同実験は、CAのエリア拡大を目的として、量子コンピューティング技術の一種であるイジングマシン(組み合わせ最適化問題に特化した専用計算機)を活用し、基地局の設定を最適化する検証を行った。実験にあたっては、量子コンピュータと数理最適化を専門とする株式会社Jijが支援している。

 CAを使用するには、「CAリンク」と呼ばれる基地局同士の関連付けを事前に設定する必要がある。しかし、基地局が増加していることで、CAリンクの構成が複雑化してしまっていることや、基地局ごとに設定可能なCAリンクの上限数などの制約もあることから、CAの利用可能エリアを最大化する最適な組み合わせを見つけるのが、従来は困難だった。

 今回の実証実験では、複数の5G基地局が設置された東京都内のエリアを細かいメッシュに分割し、複数の基地局から異なる周波数の電波を同時に受信できるメッシュを、CAの利用が可能な候補として抽出した。このメッシュ情報に基づき、CAが利用可能なメッシュ数を最大化するCAリンクの組み合わせを、量子コンピューティング技術を活用して算出した。

CA可能メッシュ数を最大化するようにCAリンク構成を最適化
最適化前後のCA可能エリアの一例(青いメッシュ部分がCA使用可能エリア)

 この算出結果に基づいて作成したCAリンク構成で、CAの利用可能エリアをシミュレーションした結果、従来と比べてより広いエリアでCAが利用可能になることが確認できたという。また、この構成を東京都内で稼働する特定エリアの5G基地局に適用した結果、CAが利用可能なエリアが拡大し、下りのデータ通信速度の平均が約10%向上した。CAの利用割合を示すCAコンフィグ率に加え、セカンダリーセル(主にデータ通信容量の拡大を目的として、同時に接続する補助的な通信レーン)におけるデータ通信量も最大50%増加した。

平均下りデータ通信速度が約10%向上
セカンダリーセルを活用したデータ量が上昇(適用前・適用後ともに各期間のセカンダリーセルのデータ量の合計)