第410回:書き込み可能なDVDドライブを内蔵したNAS LG Electronics 「N1T1DD1」


 この秋に液晶テレビの国内本格参入を発表した韓国のLG Electronics。そんなLGが海外で販売しているNASが「N1T1DD1」だ。1TBのHDDに加えて、書き込み可能なDVDドライブを搭載するという斬新な製品を実際に使ってみた。

海外製NASが面白い

 ここ最近の円高もあり、個人的に海外のショッピングサイトを眺めることが多くなったのだが、あらためて海外のストレージ機器やネットワーク機器を見てみると、国内では見かけない製品に出会うことが多く、非常に刺激になる。

 いろいろな問題もあるので、ネットワーク機器は手を出せない場合が多いのだが、NASを中心としたストレージ関連の機器は、先日、国内展開を発表したData Roboticsの製品やCisco、D-Linkなどのネットワーク機器ベンダーの製品、Seagateなどのストレージベンダーの製品など、目新しい製品が数多く存在する。

 そんな中、先日、思わず購入してしまったのが、今回紹介するLG ElectronicsのNAS「N1T1DD1」だ。もちろん、国内では販売していない製品となっているが、Amazon.comなどでInternational Shippingに対応している販売元などを利用すれば、国内からでも本体価格185ドル+送料50ドル程度で購入可能となっている。

LG Electronicsが海外で販売しているNAS「N1T1DD1」。1TBのHDDに加えて光学ドライブを搭載している

 実は、このほかにも、Seagateの「FreeAgent GoFlex Net STAK100」という製品も一緒に購入した。これは以前に本コラムで紹介したPogoplugを搭載したSeagate版の製品だ。Pogoplugについては最新バージョンで印刷機能がサポートされているのだが、オンラインアップデートの順番待ちとなっており、まだ実際に機能を試せていない。このあたりについては、またあらためて本コラムで紹介していくことにしよう。

スロットインのDVDドライブを搭載

 では、早速、製品を見ていこう。LGの「N1T1DD1」は、1TBのHDDを搭載した1000BASE-T対応のNASだ。

 本体サイズは約70×155×210mm(幅×高×奥行)となっており、小型化が進む国内のNASと比べると、一回り大きい印象だ。本体カラーはブラックとホワイトの2種類が存在するが、今回は白地にグレーのLGロゴがあしらわれた側面パネルが装着されたホワイトモデルだ。

正面(左)、背面(右)側面

 CPUはスペックシートによるとMarvell 88F6192 800MHzとなっており、1GBのDDR2メモリを搭載している。HDDのメーカーは公表されていないが、3.5インチの7200rpmのSATAIIとなっている。

 このような本製品の最大の特徴は、DVDドライブを搭載している点だ。本体内部にはスロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブ(HL-DT-ST GA31N)が搭載されており、本体前面からDVDやCDなどのメディアを挿入することが可能となっている。

 同社ではLGブランドやHLDS(Hitachi-LG Data Storage)ブランドで、NAS製品をグローバル展開しているが、これらのラインナップには実はほとんど光学ドライブが搭載されている。今回のN1T1にはDVDスーパーマルチドライブが搭載されているが、「N2B1」シリーズというBD-Rドライブを搭載した製品も存在しており(LG Network Storageサイト:http://www.lg.com/uk/it-products/network-storage/index.jsp)、このあたりは光学ドライブを広く供給しているメーカーならではといったところだ。

 では、NASに光学ドライブが搭載されると、どのようなメリットがあるのだろうか? N1T1でできることは、以下の点となる。

・DVDメディアの共有
  DVDメディアに共有フォルダーとしてアクセス可能
・DVDへのデータバックアップ
  WebUIからNASのデータをDVDに書き込み可能
・DVDのバックアップ
  DVDのデータをボタン1つでNASにコピー(iso化)
・ローカルドライブとしての利用
  背面スイッチでUSBローカルドライブとして利用可能

スロットインのDVDスーパーマルチドライブを搭載。フロントからメディアを挿入できる

 これは、なかなか面白い機能と言えるではないだろうか。もちろん、NASとして普通に利用することも可能となっており、ユーザーやグループでのアクセス権設定(ドメイン参加機能はなし)などの基本的な機能はもちろんのこと、Mac対応も実現しているうえ(TimeMachineバックアップも可能)、FTPサーバー、DLNAサーバー(DiXiM Media Server)、iTunesサーバー、BitTorrentなどの付加機能も搭載する。

 また、AjaxべースのWebUIによるファイルアクセスとDynamicDNS、UPnPによるルーター設定機能もサポートしており、外出先からのアクセス環境も手軽に構築可能だ。ファイルを第三者と共有するためのランダムなURLを生成する「Public Link」機能も搭載しており(パスワード設定可能)、ファイル転送サービスの代わりとして利用することもできる。

 パフォーマンスも、高速というわけではないが、実用性としては全く問題のないレベルとなっている。

ファイル共有などの基本機能に加えて、Webベースのファイルアクセスにも対応。外出先からの接続に加えて、ランダムURLの生成によるファイル転送サービスとしても利用できる
ネットワーク上のクライアント(Core i7 860/RAM8GB/1.5TB HDD/Realtek8168D/Windows 7 Ultimate 64bit)から有線LAN(1000BASE-T)経由でCrystalDiskMark3.0gを実行した際の結果

DVDドライブを使ってみる

 実際に使ってみると、NASに光学ドライブがあるというのは、確かに便利なものだと実感させられる。

 まずは、単純にクライアントからDVDメディアが参照できるのがありがたい。最近では小型のノートなど光学ドライブを搭載しないPCが増えているが、N1T1があれば、NASにメディアを入れるだけで、手軽にデータを読み込むことができる。

 iPadやiPhoneなどにSMBクライアントアプリを導入しておけば、これらの端末からもDVDのデータを参照できる。意外に活用の幅は広そうだ。

ドライブにセットしたメディアは「cdrom」という共有フォルダーからアクセスできるiPhone/iPad用のSMBクライアント(ezShare)からアクセス。DVDのファイルにアクセスできる

 続いて書き込み機能を利用してみた。N1T1では設定画面にDVD書き込み用のUIが用意されており、ここからNAS上のファイルをドライブに装着したDVDメディアに書き込むことができるようになっている(リライタブルメディアの消去も可能)。

 この機能は、NASのデータをDVDに保存して第三者に渡したいときなどに便利だ。メディアをセットしてデータを選ぶだけですぐに書き込めるので、打ち合わせなどをしながら、その場で書き込んでしまうといったことも可能だろう。ISOファイルの書き込みにも対応しているため、ダウンロードしたISOファイルなどを書き込むときなどにも便利だ。

 このほか、データのバックアップなどにも活用できる。スケジュールバックアップでDVDへのバックアップがサポートされており、日時を指定して光学メディアにデータを定期的にバックアップすることも可能だ。ただし、DVDでは、やはりバックアップメディアとしては容量不足となる。上位モデルのようにBDドライブがないと、実際の運用は少々ツライところだ。

NAS上のファイルを指定して書き込みを実行することで内蔵のDVDにデータを書き込むことが可能。ISOの書き込みにも対応するスケジュール設定によってメディアに自動的にバックアップする機能も備える

セットしたDVDメディアをワンタッチでコピー

 このように、クライアントからの利用やデータの書き込みにDVDドライブを利用できるN1T1だが、さらにDVDメディアからのデータ吸い出しにも利用できるようになっている。

 データが保存されたDVDをN1T1にセットし、フロントの「BACKUP」ボタンを押すと、メディア上のデータが自動的にN1T1上のHDDにコピーされる。コピーの方法は2種類用意されており、メディア上のファイルをフォルダ構造ごとそのままコピーすることもできるし、メディアをISO形式のファイルとして保存することもできる。

 どちらを利用するかは設定画面から「BACKUP」ボタンの動作として設定することが可能となっている。N1T1には、ISOファイルをメディアに書き込む機能は搭載されているのだが、残念ながらISOをフォルダーとしてNAS上でマウントする機能は搭載されていない。このため、メディア上のデータを日常的に使うならデータでのコピーを、バックアップ目的で保管しておきたいならISO形式でのコピーと使い分けるといいだろう。

 なお、市販のDVDや音楽CDなどは、この機能を利用してデータをコピーすることはできない。試しに、市販の映画DVDを挿入後、「BACKUP」ボタンを押してみたが、アラート音と共に自動的にメディアが排出された。このあたりの作り込みも隙がないといった印象だ。

「BACKUP」ボタンの設定。ファイルを保存するか、ISOとして保存するかを選択できるファイルとしてコピーした場合、日付のフォルダにメディアの内容がそのままコピーされる

ローカルドライブとしても使える

 最後に、ローカルドライブとしての利用方法を紹介しよう。N1T1の背面にはUSBポートが1つ搭載されているが、これはUSBメモリーからのデータコピーやUSB HDDへのバックアップなどに利用できるだけでなく、PCとの接続にも利用可能となっている。

 両端がタイプAとなっている付属のUSBケーブルを利用してPCと接続後、本体背面のスイッチを「EX.ODD」に切り替えると、Windowsでデバイスとして検出され、光学ドライブとして利用可能になる。

背面に切替スイッチがあり、「EX.ODD」にするとUSB接続光学ドライブとして、「EX.HDD」にするとUSB HDDとして利用可能「Nero Backup&Burn Essentials」が付属しており、USB接続時のバックアップやDVD書き込みに利用できる

 製品には、バックアップやDVDの書き込みに対応した「Nero Backup&Burn Essentials」が同梱されており、これを利用してN1T1をローカルドライブとして活用することができる。

 この切り替えは、なかなかうまくできており、NASとして稼働中にスイッチを操作することができるようになっているうえ、切り替え時間も10秒とかからない。もちろん、EX.ODDに切り替えることでNASとしての機能はすべて停止するため、複数のユーザーで利用している場合は注意が必要だが、これさえあれば外付けドライブとしてOSのインストールなどにN1T1を利用することもできる。

 なお、同様の外付けモードにはHDDモードも用意されており、スイッチを「EX.HDD」にすると、USB HDDとしてN1T1を利用できる。ただし、この機能は、HDDのすべての領域が利用できるわけではない。

 N1T1の設定画面でHDDのボリューム情報を確認すると、EXT3でフォーマットされた通常の共有領域に加えて、「x-hdd」と表示されるNTFSフォーマットの100GBの領域が表示される。USB接続で利用できるのは、この領域だけとなっており、通常の共有フォルダーをUSB接続時に利用することはできない(x-hdd領域にネットワーク経由でアクセスすることは可能)。

 前述したように、本製品はネットワーク経由のアクセス速度もさほど遅くないため、通常はわざわざUSB接続に変更する必要はなさそうだが、巨大なファイルをコピーする際などに活用することもできるだろう。

USB HDDとして利用する場合は、「x-hdd」として確保済みの100GBのNTFS領域のみが利用可能

国内でも十分に受け入れられそう

 このように、LGのNAS「N1T1DD1」を試してみたが、国内のNAS製品にない光学ドライブを活用しようという発想はなかなか面白い。NASとしての基本機能もしっかりとしているうえ、製品には動画で使い方が紹介されたDVDメディアも付属しており、使い方もさほど難しい印象はない。

 また、静音性も非常に高く、背面のファンが小型のわりに動作音はほとんど聞こえてこない。DVDドライブが稼働すると、回転によるうなりと振動がかなり響くが、常にというわけではないので気にしなくて良いだろう。

 個人的には、せっかくメディアをISO化できるのだから、ISOのマウント機能を搭載して欲しかったのと、今後のトレンドを考えるとiPhone、iPadからの利用を想定したアプリなどを提供して欲しい印象だ。これらの点が充実してくれば、国内で販売してもかなり受け入れられるのではないかと思える。液晶テレビの成否もかかっているかもしれないが、国内への投入も期待したい製品だ。


関連情報

2010/10/5 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。