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第415回:HP MicroServerで作る最強ホームサーバー
10TB+GeForce GT430+USB3.0でVailを搭載


 日本ヒューレット・パッカード(以下HP)から登場した「HP ProLiant MicroServer」は、コンパクトなサイズながら高い拡張性を持ったサーバー製品だ。どこまで拡張できるのかを試すと共に、次世代ホームサーバーの「Vail」をインストールしてみた。

抜群の静かさ

 おそらく、筆者が使ったことがあるサーバー製品やNAS製品の中でも、トップレベルの静かさを実現した製品と言っても過言ではないだろう。今回、HPから登場した「HP ProLiant MicroServer」は、それほどまでに静音性の高い製品となっている。

日本ヒューレット・パッカードのHP ProLiant MicroServer。高い拡張性を備えながら、コンパクトかつリーズナブルなサーバー製品となっている

 すでにハードウェアについては、クラウドWatchPC Watchでもレポートされているので、スペックなどの詳細は省くが、本製品には低消費電力のAMD Athelon II Neo N36L(デュアルコア1.3GHz)やAMD 785Eチップセットなどが採用されており、発熱や消費電力が低く押さえられている。

正面 側面 背面
フロントパネル内に4つのベイを搭載 背面の12cmファンで冷却。非常に静か

 これにより、背面に装着されて12cmファンと電源ユニットの3cmファンのみで、十分な冷却効果が得られるようになっており、動作中もファンの微かな音とHDDのアクセス音が若干聞こえる程度で、ほとんど音が気にならない設計になっている。

 もちろん、静かなNASやサーバー製品は他にも存在するが、本製品で驚かされたのは、“いつでも”動作音が静かな点だ。通常、静かな製品であっても、負荷をかけるとファンの回転数が上がって動作音が気になる場合があるのだが、本製品の場合、CPU負荷が100%の状態が長時間続いたとしても、動作音はアイドル時とほとんど変わらない。

 小規模な事務所やSOHOなどの環境では、動作音というのはサーバー製品選びの1つのポイントとなると思われるが、本製品に関しては非常に高いレベルで静音性が保たれている。いわゆる激安サーバーの動作音に悩まされたことがあるユーザーにとっては、これだけでも本製品を選ぶ価値があると言えそうだ。

せっかくなので最強サーバーを目指してみる

 というわけで、筆者も発売後にすぐに個人的に購入したのだが、せっかく使うのであればその高い拡張性を活かしたいということで、考えられるパーツを軒並み搭載してみた。

 まずは、メモリだが、標準では2つあるスロットに1GBが1本搭載されており、この1GBのうちの128MBをチップセット内蔵のグラフィックが消費されるため、かなり物足りない感じになっている。そこで市販の2GBのDDR3メモリを2本購入し、標準のメモリを取り外して、2GB×2=4GBの構成にしてみた。

標準のECC付きメモリを取り外して、市販のDDR3メモリを搭載。2GB×2で4GB構成にしてみた

 すでにレポートされているように、本製品では標準ではECC付きメモリが搭載されているが、混在させなければECCなしのメモリも利用することができる。ファイルサーバーなどの一般的な用途ならECCなしでも問題ないため、容量を重視した構成に交換してしまうのも1つの手だろう。

 続いてHDDだが、本製品にはフロントパネルの内側に4つのHDDベイが用意されており、標準では160GBのHDDが搭載されているのだが、当然のようにこれも換装した。あまり予算もかけられないことから、SAMSUNG製の2TBのHDDである「HD204UI(8000円前後)」を4台用意し、標準のHDDを取り外してフロントのベイにフル実装してみた。

 装着は簡単で、ベイからアダプタを取り外し、HDDをネジ止めして、滑り込ませるようにして装着すればいい。

アダプタにHDDをネジ止めして滑り込ませるようにして装着する

 これで合計8TBの構成にしてみたのだが、実際にやってみると物足りない感じが否めない。筆者は光学ドライブレスの構成で購入したため、上部の5インチベイが空いたままになっているのだが、どうにもこの空きスペースが気になるのだ。

 もちろん、光学ドライブを後から装着してもかまわないのだが、筆者の用途では光学ドライブはインストールのときしか利用しない。というわけで、思い切って5インチベイ用の脱着式HDDマウンタを用意して、2TBのHDDをさらにもう一台搭載し、2TB×5台=10TBの構成にしてみた。

 光学ドライブ用に用意されているポートは、HDD側とは別のコントローラーに接続されているため、オンボードのRAID構成の対象外となるが(IDEモードで接続される模様)、バックアップ用などの用途では十分に活用可能だ。

 いやはや、こんなに小型のサーバーでまさか10TBの大台に乗せることができるとは思わなかった。やった本人が言うのも何だが、贅沢な構成だ。

上部の5インチベイに脱着式のHDDマウンタを搭載。2TB×5で10TBになった

ビデオカードとUSB3.0を装着

 続いて、こちらもマザーボード上に、寂しく空いているPCI Expressスロットを埋めることにした。本製品にはx16とx1の2つのPCI Expressスロットが用意されており、ロープロファイル、ハーフハイトの製品に限られるが拡張カードを装着することが可能となっている。

 実際に企業で利用するのであればオプションのリモートアクセスカードや冗長用のEthnernetカードなどを装着するのが妥当かもしれないが、今回のテーマは最強のホームサーバーということなので、ビデオカードとUSB3.0のインターフェイスカードを装着してみた。

 ビデオカードに関しては、内部のスペースに限りがあるため、製品はかなり限られるが、今回はPalit製のGeForce GT430(1024MB DDR3)搭載カードを利用してみた。

 拡張カードは、一旦、マザーボードを取りはずした状態で装着し、再びケースにスライドさせて入れるという手順になるのだが、これがうまくいかない。

PalitのGeForce GT430搭載ビデオカードを装着。マザーボードを引き出して装着してから再度収める ヒートシンクが微妙に内部に干渉するため、一番下のフィンだけペンチで折り曲げて収めた

 というのも、今回利用したビデオカードは、ヒートシンクの厚さが1スロット分より若干大きくなっているため、この部分がケース内部に干渉してしまうからだ。そこで、少々力業だが、ヒートシンクの一番下の部分、干渉しているところをペンチで折り曲げることで、何とか収めることに成功した。

 一方、PCI Express x1の方は特に何事もなくカードを装着できた。x1用のカードというのは市場にあまり存在しないので、何を装着しようか迷ったが、ここはさらにストレージを追加することを想定してUSB 3.0を選択した。

 本製品にはeSATAも搭載されているため、ここにHDDを搭載することもできるが、USB3.0のストレージも増えてきたので、使えるようにしておいた方が便利だろう。USB2.0に比べて転送速度も速いので、サーバーのバックアップ用に活用できるだろう。

PCI Express x1のUSB3.0インターフェイスを装着。サーバーのバックアップ用にUSB3.0 HDDを活用できる USB3.0で接続したHDDのCrystalDiskMark3.0の結果。USB2.0と比べると圧倒的に速い

 これで、考えられるパーツはほぼ組み込んだかと思ったが、ふとマーザーボードを見ると、内部にUSBのポートが1つ空いていることが確認できた。おそらくUSBメモリを装着し、Linixなどをブートするために利用することが想定されているのだろうが、今回はWindows Server、それも次期Windows Home Serverの「Vail」をインストールしようと決めていたため、とりあえず手の届く場所にころがっていた無線LANアダプタを装着してみた(PLANEX GW-USMicroN)。

USBポートが空いていたので、とりあえず無線LANアダプタを装着してみた 最終的な完成形

Vailをインストール

 というわけで、組み上げて電源を入れてみたところ、無事に起動させることができた。本製品では、電源ユニットが200wとなっていることから、HDD5台、ビデオカード、USB3.0カードという構成で、果たして電力が足りるのかが気になっていたのだが、とりあえずこの問題はクリアできたようだ。

 なお、システム全体の消費電力をワットチェッカーで確認してみたところ、起動時に瞬間的に110w程度になるものの、通常時で55〜65w前後、アイドル時は36w前後となっており、スペックの割には消費電力は抑えられている印象だ。

 無事に起動することが確認できたので、OSをインストールしてみた。Windows Server 2008 R2あたりが一般的だと思われるが、今回は以前に本コラムでも紹介した次期Windows Home ServerとなるWindows Home Server Premium(コードネーム:Vail)をインストールしてみた。

 実は、Vail(次期SBSのAuroraも)はシステム要件が、1.4GHz以上のx64プロセッサ、1GB以上のRAM、160GBのHDDとなっているため、MicroServerではCPUの要件が満たされず、通常のインストールではエラーが発生してしまうのだが、これを回避することも可能となっている。

 具体的には、リリースノートに記載されているセットアップアンサーファイルを利用する。これは、いわゆるヘッドレスと呼ばれるディスプレイを接続することができないホームサーバー製品で、対話的な設定をすることなくVailをインストールするための方法だ。

 方法については、「We Got Served」の「Windows Home Server Vail Preview: Installing Vail from a USB Flash Drive」という記事に画面付きで詳しく紹介されているが、ダウンロードしたVailのISOファイルからツールを使ってUSBにインストールファイルを展開し、そのルートに「cfg.ini」というファイルを作成し、以下の内容を記載しておく。

インストールDVDをUSBに書き込んでから、ルートにcfg.iniを作成。以下の内容を記載しておく

 

【「cfg.ini」の内容】
[WinPE]
InstallSKU=SERVERHOMEPREMIUM
ConfigDisk=1
CheckReqs=0
SystemPartitionSize=60

 ポイントは「CheckReqs=0」という記載だ。これでインストール時のシステム要件のチェックを回避することができるため、1.3GHzのMicroServerにもVailをインストールすることができる。

 もちろん、システム要件が設定されているとういことは、それ以下のシステムではOSの機能をフルに活用できないということなので、このあたりのリスクも考慮しておく必要はあるだろう。

 なお、Auroraの場合、InstallSKUが「SERVERSOLUTION」となるが、筆者が試してみたところAuroraは別の要因が関係してか、うまくインストールできなかった。また、リリースノートを参考にすれば、このほかにもパラメーターを指定することができるが、最低限必要なのは上記の項目のみとなる。

 また、上記のcfg.iniを利用すると1台目のHDDに無条件でインストールされるため、今回の例のように光学ドライブ用に用意されているポートにHDDを接続すると、ここに強制的にインストールされるので注意が必要だ。

ポイントはCPU負荷

 さて、気になる性能だが、ファイルサーバーとしてのパフォーマンスは申し分ない印象だ。以下は、ネットワーク上のクライアント(ThinkPad X201s)からCrystalDiskMark3.0dを実行した値だが、100MB、1000MBともに良好な値を示している。実効でこれくらいの値が出ていれば実用上の問題はなさそうだ。

 ただし、いろいろなサービスを利用しようとすると、やはりCPUの性能に限界が気になる場合もある。たとえば、前述したCrystalDiskMarkのテストでも、テスト中のCPU負荷は30%前後となる場合があり、単純にクライアントからファイルをコピーしても50%以上に負荷が上がるケースが見られた。

 今回はVailを利用しているため、データの複製処理などにCPUパワーが割かれていると考えられるが、要するに一定の処理が重なると、すぐにCPU負荷が跳ね上がってしまうわけだ。

CrystalDiskMark3.0の結果
処理が重なると即座にCPU負荷が高くなるのが弱点

 とは言え、冒頭でも紹介したように、CPU負荷が上がっても、動作音は静かなので多少の無理はさせることができる。このあたり、どのような用途に本製品を利用するかを事前によく検討し、実際にパフォーマンスなどを検証した方が良さそうだ。

 ちなみに、今回、グラフィックカードにGeForce GT430を搭載したので、一応、FF14ベンチマークも実行してみた。さすがにローエンドのビデオカードだけあって、表示のスムーズさに若干欠けるうえ、スコアもあまり好ましくなかった。

FF14ベンチを実行。スコアは1017と最低限のレベル。ただし、サーバーの処理でうまくGPUを使えるようになるとメリットが見えてくる

 ただし、動画の再生などでCPU負荷を軽減できるうえ(内蔵のGPUでも可能)、アプリケーションによってはGPUを利用した演算などにも活用できる。試しに、CUDAに対応した動画編集ソフトを利用してみたが、H264のエンコードを実行しても、CPU負荷を70%前後に押さえることができるうえ、再生時間とほぼ同程度の時間でエンコードすることができた。

 現状、プレビュー版のVailではコーデックが含まれないため利用できないが、Vailではサーバー上に保存された動画を配信先の機器やネットワーク状況に応じてトランスコードしながらストリーミング配信する機能なども搭載される。

 また、HPのMediaSmartServerやDataVaultなどには、サーバー上に保存された動画ファイルをiPhoneやPSPなどの形式で自動的にエンコードする機能が搭載されている。

 今後、こういった機能が一般化してくると、CPUだけに処理を頼るというのは限界が見えてくるが、GPUがうまく活用できるようになれば、より効率的に処理できるようになるだろう。今後、サーバーにこそ高性能なGPUが必要な時代がやってくるのではないだろうか。

いずれにせよお買い得感は高い

 以上、HPの小型サーバー「HP ProLiant MicroServer」を実際に利用してみたが、非常に使い勝手が良いハードウェアとなっているうえ、用途によって拡張が容易にできるため、中小規模の企業からSOHO、そして家庭まで、さまざまな環境での利用に適した製品と言えそうだ。

 これで価格は最小構成で3万5750円なのだから、お買い得と言うほかない。今回はVailを利用したが、現行のWindows Home ServerのDSP版をHDDとセットで購入するなどしてMicroServerと組み合わせて利用すれば、かなりリーズナブルなサーバーとして仕上げることができる。個人に買った製品の中でも、かなり満足度の高い1台と言えそうだ。


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2010/11/9 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ