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第451回:新型MacBook Airのインターネット経由リカバリーをテスト。
ついでにWindows Thin PCもインストールしてみる


 アップルからOS X Lionを搭載した新型のMacBook Airが発売された。その特徴的な機能の1つであるインターネット経由でのリカバリー(Lion Recovery)を試すと共に、Bootcampを利用してWindows Thin PCもインストールしてみた。

他に選択肢がない

 そこそこパワフルで、1kg前後で薄く、しかも安いパソコン。仕事で持ち歩くノートパソコンを探そうとすると、困ったことに選択肢がほとんどない。ここ数年、「困ったなぁ」と思いつつも、あれこれ買って試してみていたのだが、今回、11インチ版のMacBook Air(128GB SSD版)を購入してみることにした。

 Macはテスト用に使っているCore Duo世代のMacBookを買って以来となるので、非常に久しぶりなのだが、意外にと言っては失礼かもしれないが、違和感なく、普通に使えるので重宝している。

 メールとカレンダーはGoogleのサービスをChromeから使えば、普段と変わらない状況で仕事ができるうえ、日本語入力もATOKを利用できる。使い慣れたエディタ(WzEditor)が使えないのと、キーストロークが浅すぎるので、2時間、3時間にわたって原稿を書き続ける気にはなれないのだが、外でメモを取るくらいなら、これで十分という印象だ。

 欲を言えば、3GかWiMAXが内蔵されていてくれると助かるが、10万円前後の価格を考えれば、持ち運び用のノートパソコンとしては文句ナシだろう。

11インチ版の新型MacBook Air。軽量、コンパクトなうえ、そこそこパワフルで、値段も高くないので、サブマシンに最適

 

インターネット経由でリカバリーできる

 このようなMacBook Airだが、今回の新製品には、1つ面白い機能が搭載されている。インターネット経由でのリカバリー機能「Lion Recovery」だ。

 もちろん、起動時にCommand+RやOptionキーを押してSSDのリカバリー領域からリカバリーしたり、TimeMachineのバックアップから復元することはできるが、SSDが完全に故障した場合は、この方法は使えない。

 従来のMacBook Airには、このような場合に備えて、リカバリー用のUSBメモリが付属していたのだが、今回の製品ではこれが廃止され、インターネット経由でのリカバリーに置き換えられているというわけだ。

通常はSSDのリカバリー領域から復元できるが、SSD自体が故障するとこの方法は使えない

 最近のパソコンは安定して動作するので、滅多なことがないとリカバリーすることはないのだが、こんな機能までオンライン化してしまうと、本当にクラウドの時代なのだなぁと実感させられる。

 余談だが、OS X Lionになって、NASやWindows Home ServerのTimeMachineバックアップが使えなくなってしまったが(一部のNASでは対応済み)、こういった機能も帯域の問題さえクリアされれば本格的にクラウド化されていくのだろうと実感させられたところだ。

 とは言え、インターネット経由となると、本当にリカバリーできるのか、できるとしてもどれくらい時間がかかるのかが非常に気になるところだ。いざ、SSDが故障したときに慌てたくないので、実際にテストしてみることにした。

 MacBook AirをWindowsのインストールUSBで起動し、diskpertコマンドから「clean」を実行して初期化。この状態で電源を入れても、当然のことながらMacBook Airは起動しない。

 リカバリーを実行するには、通常通り、Command+RかOptionを押しながら起動する。すると、無線LANの接続先が選択できるので、自宅のアクセスポイントを選択し、暗号キーを入力する。

 なお、インターネット経由でのリカバリーは、無線LANの暗号化方式が「WPA/WPA2」の場合のみ可能(http://support.apple.com/kb/HT4718?viewlocale=ja_JP)となっている。無線LAN経由でやり取りされるOSイメージを強固な暗号化で保護したいのだろうが、であれば、せめてWPSなどの接続方式に対応して欲しいものだ。

 さて、無線LANでの接続が完了すると、「Network Recovery」というアイコンが表示される。これを選択すると、自動的にインストールに必要なファイルがダウンロードされる。なお、ここまでの所要時間は、300Mbpsの無線LAN(IEEE802.11n/a)と1Gbpsの光ファイバー(auひかり)を利用した場合で、4〜5分程度だ。

SSDの内容を完全にクリアしてリカバリーをテスト Command+RかOptionキーを押しながら起動すると無線LAN接続の画面が表示される
暗号キーを入力して接続すると「Network Recovery」というアイコンが表示される インターネット経由でインストールに必要なファイルがダウンロードされる
ダウンロードが完了すると再起動し、見慣れたユーティリティが起動する。ここまでの所要時間は5分前後

 ダウンロードが完了すると、再起動され、見慣れたリカバリー用のツール(Mac OS Xユーティリティ)が起動するので、まずはディスクユーティリティでインストール先のパーティションを設定する。

 インストール先の準備ができたら、OSのインストールを実行する。OS X Lionのインストーラーを起動し、インストール先を選択すると、再びネットワーク経由でOSのファイルがダウンロードされ、インストールが進められる。ここでは、大量のファイルがダウンロードされるため、さすがに時間がかかるが、それでも前述した環境で約20分ほどであった。

 インストールが完了すれば、購入時と同じ初期設定画面が表示される。インターネット経由とは思えないほど手軽なリカバリーだ。

ディスクユーティリティでパーティションを用意 OS X Lionのインストールを選択すると再びダウンロードが開始される
ダウンロードしたファイルでインストールが実行される インストールが完了すると初期設定の画面が表示される。ここまで高速な回線で20分前後

 ただし、所要時間は環境次第だ。今回のテストでは、比較的高速な無線LANと回線を利用したため、トータル30分以内でリカバリーが完了したが、54Mbpsの無線LANや低速なインターネット接続環境を利用すれば、倍以上の時間がかかる場合もあるだろう。なるべく高速な環境下でリカバリーした方が効率的だ。

 なお、リカバリー用のメディアも作成可能なようなので(参照:http://support.apple.com/kb/HT4718?viewlocale=ja_JP)、無線LANで接続できない場合でも事前に準備さえしておけばリカバリーは可能だ。

 ただし、筆者の環境では、同じApple IDで、別のMac用のLionを購入済みとなっていることが影響しているためか、AppStoreでOptionキーを押しながら購入済み項目を参照しても、アプリを再ダウンロードすることができなかった。このあたりの動作は、要再検証といったところだ。

 

Bootcamp向きなWindows Thin PC

 続いて、Bootcampを利用してみた。ただし、128GBのSSDしか搭載しないMacBook Airに通常のWindows 7をインストールすると、容量が心許ない。

 そこで、今回は検証も兼ねてWindows Thin PCをインストールしてみることにした。同OSは、TechnetやMSDNからも入手可能だが、今回はマイクロソフトのサイト(http://www.microsoft.com/windows/enterprise/solutions/virtualization/products/thinpc.aspx)からダウンロード可能な試用版を利用した。

仮想デスクトップ環境向けのシンクライアントとして提供されるWindows Thin PC。SA契約向けのOSだが、試用版をダウンロードして利用可能

 同OSは、SA契約者向けに配布されるVDI向けの製品のため、通常のパッケージ版やDSP版で利用することはできないのだが、Windows Embedded Standard 7 SP1がベースとなっており、非常にフットプリントが小さい。

 たとえば、今回、手元のMacBook ProにBootcampでWindows 7 Ultimate 64bit版をインストールしてみたが、この容量はインストール直後で22GB前後、SP1などの更新プログラムを適用していくと30GB近くにも及んでしまう。これに対して、Windows Thin PCの容量は、インストール直後でわずか4.2GB、更新プログラムを適用してIE9をインストールしても4.5GB前後で収まってしまう。

 もちろん、通常のWindows 7も32bit版にしたり、他のエディションを選べば、容量を減らすことができるが、それでもWindows Thin PCのコンパクトさとは比較にならないわけだ。

Windows 7 Ultimate 64bit版のディスク容量。インストール直後で22GB。SP1までアップデートすると30GB近くになる Windows Thin PCのディスク容量。インストール直後で4.3GB。SP1適用済みなので、アップデートしても4.5GB前後で済む

 UIが英語となるうえ、MPEG2サポートや各種アプリも削られているが、Webベースのアプリの利用などを前提にすれば、普段の利用にも活用可能なOSとなっている。「Windows 7 for Mac」としてAppStoreで販売するのは、さすがに無理だとしても、Chrome book対抗として販売するのは十分にアリだと思うが、まあそれは夢の話だろう。

 いずれにせよ、現状は正式には90日間のお試しで使うしかないのだが、このWindows Thin PCをBootcampでMacにインストールすることも可能だ。

 ただし、インストールするには、いくつかの注意点がある。まずBootcampアシスタントからWindowsのインストールを実行できない点だ。MacBook AirのBootcampアシスタントの場合、インストール用のUSBとドライバを用意することは可能だが、作成されたUSBが対応OSとして認識されないため、パーティションの分割とインストールの実行ができない。

 このため、インストール用USBとドライバを準備したら、Bootcampアシスタントを抜け、ディスクユーティリティから手動でパーティションを作成する。その後、作成したUSBメモリからWindows Thin PCを起動してインストールすればいい。

Windows 7の場合、Bootcampアシスタントからインストールを実行可能だが、Windows Thin PCの場合、未対応OSと判断され、パーティション分割とインストール実行ができない 手動でパーティションを分割し、作成したUSBメモリからWindows Thin PCのインストーラーを起動してインストールする

 もう1つの注意点はドライバのインストールだ。Bootcampアシスタントによって作成されたドライバは、Windows 7用となるが、Windows Thin PCをWindows 7と判断できないため、通常の方法ではトラックパッドのドライバなどがインストールできない。

 このため、セットアッププログラムのプロパティで互換モードをWindows 7に設定してインストールする必要がある。これで通常のWindows 7と同様にBootcamp環境での利用が可能だ。

 ライセンス上、SA契約がなければ継続して使えないのが残念だが、一度、試してみる価値はあるOSだ。

Bootcamp用のドライバも未対応OSと判断され、一部のドライバがインストールできない。互換モードを使ってWindows 7としてインストールする必要がある

 

Windowsユーザーにもおすすめ

 以上、OS X Lionを搭載した新型MacBook Airを紹介したが、このパソコンだけでなく、今回組み合わせたWindows Thin PCもそうだが、やはりいろいろな意味での「軽さ」というのは、非常に大きな武器になるということがよくわかった。

 そのうえ、ネットワーク経由のリカバリーのような、これまでローカルでしかできなかったような環境までもが、クラウドへと拡がりつつあることに、あらためて時代の進化を感じさせられた印象だ。

 というわけで、新型のMacBook Airは、一台あると便利なうえ、いろいろ遊べるPCと言えそうだ。Windowsを中心に使っているユーザーも、試しに使ってみてはいかがだろうか。


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2011/8/2 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ