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第459回:「持ち運べるサーバー」の便利度は?
パナソニック「ポケットサーバー DY-PS10」


 パナソニックからバッテリーと無線LAN通信機能を搭載した持ち運び可能なサーバー「ポケットサーバー DY-PS10」が登場した。DIGAの録画番組を持ち出すことで、iPhoneで再生可能にする製品だ。先行モニターで発売された製品を購入できたのでレポートしていこう。

ちょっと期待しているモバイルサーバー

 今回取り上げるパナソニックの「ポケットサーバー(DY-PS10)」、10月1日に発売されるキングストンの「Wi-Drive」には、個人的にちょっと期待している。

 持ち運び可能なサーバー、無線LAN接続で使うストレージと、いろいろな解釈ができそうな新ジャンル感にワクワクさせられるうえ、こういった製品の登場でスマートフォンやタブレット、そして家電を巻き込んだ周辺機器市場が大きくなって欲しいと期待したくなる。さらには、同じような機能を持つオンラインサービスとハードウェアがどう差異化していくのか、サービスとデバイスがどう融合していくのだろうか? と考えるだけでも楽しくなってくる。

パナソニックの「ポケットサーバー(DY-PS10)」。バッテリーと無線LANを内蔵した本体でSDメモリカードのデータを共有できる

 もちろん、今後、スマートフォンやタブレット自体のストレージ容量が今の数倍、数十倍となれば単純なストレージを外部に頼る必要がなくなるだろうし、iCloudやGoogleMusicなどの今後登場してくるクラウドサービスを使った方が便利かもしれないが、いわゆるPCの「ローカル」の世界観をスマートフォンやタブレットに適用することは、トラフィック問題の回避などのメリットもある。

 従来のローカルサーバーに比べると、よりパーソナルな用途になるうえ、そのネットワークもパーソナルなエリアに限られるが、このパーソナルな世界をローカルやクラウドと結びつけていけば、今までとは何か違う、面白い世界も見えてきそうだ。

SDメモリーカードを無線LAN経由で利用

 前置きが長くなってしまったが、本題に入ろう。今回、取り上げる製品は、パナソニックの「ポケットサーバー(DY-PS10)」だ。同社製品の直販サイト「Panasense(パナセンス)」の限定製品で、1万4800円で販売されている

 その名の通り、約117×66.8×13mm(縦×横×厚)、82gのポケットサイズの製品となっており、本体に内蔵されたSDカードスロット(SDXC対応)と無線LAN(IEEE802.11b/g)によって、SDメモリカードに保存されたデータを無線LAN経由でiPhone/iPod Touchから利用することが可能となっている。

高さ(厚さ)13mmとコンパクト。重量も82gなのでかなり軽い
左側面に充電とDIGA/PC接続用のUSBポートを搭載 上部のカバーを開けるとSDカードを装着可能。64GBのSDXCにも対応。スイッチは電源ボタンとMODEボタン(無線LANモード/USB接続モード)が用意される

 基本的には、同社製のレコーダー「DIGA」シリーズから転送した録画番組をiPhone/iPod touchで再生するための機器となっているが、SD-Video規格(H.264 Mobile Video Profile 準拠)の動画に対応しており、同規格に対応した動画であれば再生可能となっている。筆者が試した限りでは、、ブルーレイタイトルのe-moveで転送した動画も再生することができた。

 また、録画番組に加えて、音楽(MP3)、写真(JPG)のデータの再生にも対応しており、iPhone/iPod touchの本体メモリに収まりきらないデータの持ち運びに利用することも可能となっている。

DIGAやPCから録画番組を転送

 実際の使い方を見ていこう。まず、ポケットサーバーに再生用のデータを準備する。

 前述したように、DIGAシリーズから録画番組を転送する場合は、SDメモリカードをDIGAのスロットに直接装着するか、USBケーブルでポケットサーバーをDIGAに接続して番組を転送すればいい。操作方法は機種によって違いがあるが、筆者が利用したDMR-BZT810では、録画時に「持ち出し番組の設定」で「高画質(VGA)」で番組を録画後、「かんたん転送機能」を使って録画番組を転送すれば完了だ。

基本的にはDIGAから録画番組を転送して利用する DIGAで録画する際に、持ち出し番組の作成を設定。作成された番組をポケットサーバーに転送する

 なお、持ち出し番組の画質は「ワンセグ画質(QVGA)」も選択できるが、ポケットサーバー、およびiPhoneで再生できるのは、「高画質(VGA)」のみとなっている。設定を間違えると、転送しても動画がiPhoneから見えないので注意が必要だ。

 また、Android OSを搭載したポータブルメディアプレーヤー「SV-MV100」を利用した場合、ネットワーク経由(無線LAN)での持ち出し番組の転送ができるが、ポケットサーバーではネットワーク経由での転送には対応していない。

 ポケットサーバーには無線LANが搭載されているが、これはアクセスポイント機能のみで、クライアントとして利用することができない仕様になっている。個人的には、密かに期待していただけに、ワイヤレスでの自動転送ができないのは非常に残念だ。

 一方、PCから転送する場合もSDメモリカード直接装着かUSBとなる。PCからストレージとして認識できたら、「contents」フォルダを作成し、ここにデータをコピーしておけばいい。無線LANでポケットサーバーにアクセスすることもできるが、ブラウザでアクセスしても無線LANの暗号キーなど最低限の項目のみが用意された設定画面にしかアクセスできないため、ネットワーク経由でファイルをコピーすることは不可能だ。

 データに関しては、音楽と画像は前述した通りだが、動画はMP4に対応している。iPhoneで再生可能なサイズや形式のものを用意しておくといいだろう。

PCからデータを転送する場合は「contents」フォルダを作成する必要がある。これ以外のフォルダのデータは再生できない

無線LANで直接接続してアプリで再生

 データを用意できたら、続いてiPhone側の準備をする。まずは、再生用のアプリをダウンロードする。ポケットサーバーでは、HTTPでのアクセスは設定画面しか用意されないため、必ずアプリ(無料)を利用してアクセスする必要がある。AppStoreで「ポケットサーバープレーヤー」と検索してアプリをダウンロードしておく。

 アプリを用意できたら、続いて無線LANの設定を変更する。iPhoneの無線LAN設定画面で「PocketServer[macアドレス]」というSSIDを探して接続すればいい。なお、標準ではWEPによる暗号化が設定されているが、すべての端末で共通の暗号キーが設定されている。非常にわかりやすいものとなっているので、暗号化方式を含め、必ず変更しておくことをおすすめする。

 外出先で利用する可能性があるうえ、パーソナルなデータを保存する可能性がある端末に、共通の暗号キーを設定するというのは、メーカーとして考え直していただきたいポイントだ。

ポケットサーバーには専用のアプリを使ってアクセスする。あらかじめアプリをダウンロードしておこう 無線LAN経由でポケットサーバーに接続。ポケットサーバーはAP機能のみしか搭載しないため直接接続することになる 初期設定の暗号キーは全製品共通。設定画面から変更しておくことを強くおすすめする

 ちなみに、ポケットサーバーは、同時に接続できる無線LANクライアントが1台のみに限られるようだ。1台の端末から接続すると、2台目以降から接続しようとしてもエラーになって接続できない(先取り方式)。録画コンテンツが保存される以上、多数端末の接続を可能にしてしまうと、不特定多数への配信になる可能性があるため、これを回避するための処置だと考えられるが、写真の共有など複数端末からアクセス可能にすることで生まれる使い方も想定できるので、動画のセッションだけを限定するなど、別の方法も検討してほしかったところだ。

 接続が完了したら、あとは簡単だ。アプリを起動すると、ポケットサーバーのデータを参照できるので、VIDEOやIMAGE、AUDIOなど再生したいデータのフォルダをたどって再生すればいい。

 若干キャッシュする影響か、再生が開始されるまでに4〜5秒の間があるものの、再生が開始されてしまえば、そこはローカルの世界だけあって極めて快適だ。録画番組やブルーレイから転送した動画も、非常になめらかに再生することができる。

 再生中はスリープに移行しなくなるうえ、動画の再生中に着信があった場合、再生が一旦中止されるものの、通話終了後や着信拒否後、アプリに戻れば再び続きから再生することができる。これはなかなか使い勝手が良い印象だ。

アプリでアクセスするし、VIDEO、IMAGE、AUDIOを選択してフォルダをたどるとデータにアクセスできる DIGAから転送した録画番組に加えて、Blu-rayタイトルからe-moveで転送した映像も再生可能。汎用的なSD-Video形式の映像なら再生できそうだ
PCから転送したMP4の動画を再生した画面。再生開始時に数秒の待ち時間はあるが、再生開始後はさすがに無線LAN直結だけあって快適

動画以外のデータをもっと扱いやすく

 このように動画の再生は悪くない印象のポケットサーバーだが、ほかのデータに関しては、かなり改善の余地がありそうだ。

 まずは音楽だが、これはバックグラウンドでの再生に対応していないのが致命的だ。アプリから再生したい曲を選択すると、すぐに再生が開始されるが、画面を移動すると即座に再生が中断される。このため、iPhone+ポケットサーバーを通勤や通学中に使う携帯音楽プレーヤー代わりとして使うのには無理がある。

 このほか、音楽形式に関してはmp3にしか対応していないうえ(m4aなどはポケットサーバープレーヤーから見えない)、プレイリストも利用することはできない(音楽データをフォルダに分けて保存すればフォルダ単位で再生できるのでそれで代用することは可能)。

音楽プレーヤーはバックグラウンドでの再生に対応しない。プレイリストも使えないため、日常的な利用には難がある

 個人的には、この手の製品では、音楽プレーヤーとしての使い勝手を向上させることは必須だと考える。以前、本コラムで紹介したが、GoogleMusicなど、クラウド系のサービスは、クラウドを利用するというその仕組みが斬新なだけでなく、意外なほど端末側のプレーヤーの使い勝手が良い。この点で劣ってしまうと、いかにクラウド系サービスのようにアップロードの手間がかからないとは言っても、ユーザーの評価は厳しいものにならざるを得ない。

 これはNASやルーターのリモートアクセス機能などにも言えるのだが、黒船的なクラウドサービスの来航までに間があるうちに、対抗する手段を用意しないのは実にもったいない話だ。単にデータにアクセスできるようにするだけでなく、既存の方法やクラウド系のサービス以上の使いやすい環境を提供しないと生き残っていくことは難しいだろう。

 画像についても同じことが言える。現状は、ポケットサーバーに保存した写真を単に表示できるだけだ。スライドショーもなければ、表示した写真をコピーしたり、メールで送信することもできない。

写真も表示できるが、本当に表示できるのみ

 文書ファイルなどもPCからコピーすることはできても、それをポケットサーバープレーヤーから表示することはできない。DIGAの周辺機器という位置付けはわかるが、動画の転送と再生以外の機能は、あまりにも物足りない印象だ。

 どこでも使えるポケットサーバーという特徴を考えれば、たとえばパーティの会場などに設置し、スマートフォンで撮影した写真をみんなが保存し合ったり、他の人が撮影した写真を自由にダウンロードできるようにするといった使い方ができる。Eye-Fiなどに対応させて、撮影後、こちらにデータを保存できるようにするという使い方も考えられる。

 同様に、仕事の打ち合わせ用のデータその場で全員がアップロードして共有し合ったり、短期間のプロジェクト用のファイルサーバーとして使うといったこともできそうだ。このようなその場限りのプライベートな情報の共有というのは、ニーズがあるように思えるうえ、ポケットサーバーのような機器であれば、それが実現できそうだ。もちろん、Android端末向けのアプリの開発やPCからのアクセス方法の提供などの課題はあるが、それが実現されていないのはもったいない話だ。

モバイルルーターでのアプローチにも期待

 以上、パナソニックの「ポケットサーバー(DY-PS10)」を実際に使って見たが、現状は、やはりDIGA用のオプション製品という印象だ。もう少し、汎用的に使えるサーバーを期待したが、おそらくあえて用途を絞り込んだのだろう。

 とは言え、iPhoneでSD-Video形式の映像を再生できるメリットは大きい。録画番組を移動中などにも見たいという場合は、この製品を選ぶメリットはありそうだ。

 バッテリーも1400mAh、3.7Vのリチウムイオン電池が内蔵されており(背面カバーを開けると取り外し可能だが、堅く固定されており、筆者はうまく開けられなかった)、カタログスペックで10時間の利用が可能となっている。実際、iPhoneからe-moveで転送した映画(1時間40分ほど)を繰り返し再生してみたところ5回ほど再生できることを確認できた。正確に計測したわけではないので、はっきりとは言えないが、8時間程度の実動は確実と言えそうだ。

 なお、省電力機能も搭載されており、10分間アクセスがないと自動的に電源オフになるうえ、設定画面からエコモードを有効にすると、充電が90%までに制限され、満充電回避による電池の寿命を延ばすことが可能だ。

 個人的には、せめて音楽アプリの改善(バックグラウンド再生とプレイリストの作成機能)だけでも実現して欲しいところだ。であれば、音楽データの待避先としてのメリットも見えてくる。

 もしくは、ハードウェアとして、もう少し、付加機能があってもよさそうに思える。誰もが期待したくなるのは、モバイルルーターとの融合だろう。現状もmicroSDカードを搭載したハードウェアは存在するので、これが今回のポケットサーバーのように使えるようになってくれることを期待したいところだ。


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2011/9/27 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ