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第470回:5800円のNAS組み立てキット アイ・オー・データ機器「RockDisk CL2-004LD」


 アイ・オー・データ機器から挑戦者ブランドのNAS組み立てキット「RockDisk CL2-004LD」が発売された。5800円という低価格が魅力の製品で、余ったHDDを有効活用するのに最適だ。その実力を検証してみた。

余ったHDDで手軽にNASを

 本来なら、本体とHDDあわせて「1万円強でNASを自作」。なんて見出しを立てたかったところだが、まだちょっと時期が早かったようだ。

 HDDの相場は落ち着いてきたとは言っても、一時期に比べれば、まだ割高感がある状況が続いている。必用に迫られて買うなら、納得できなくもない価格だが、「遊び」に使うなら、まだちょっと躊躇してしまう。

 というわけで、今回、取り上げるアイ・オー・データ機器のNAS自作キット「RockDisk CL2-004LD(以下RockDisk)」は、ぜひ余っているHDDの使い道として活用してほしい製品だ。

挑戦者ブランドで発売された自作NASキット「RockDisk CL2-004L」

 RockDisk購入者向けに2TB HDDを割安で購入できるクーポンも配布されているので(12/25まで)、もちろん新品のHDDを購入して使ってもかまわないのだが、「挑戦者」ブランドというサポートや保証が基本的にない製品(初期不良交換および有償での延長保証は提供)となっていることを考えると、とりあえず余ったHDDで「いじる」という使い方が適した製品となっている。

 HDDさえ用意できれば、あと必用になるのはRockDiskの本体価格の5800円のみ。容量は用意できるHDDに依存するが、この価格でリモートアクセス機能まで備えたNASが使えてしまうのだから、なかなか興味深い製品と言って良いだろう。


HDL-Cシリーズの簡易版的な位置づけ

 今回、アイ・オー・データ機器から発売された「RockDisk」は、HDDを自分で組み込むタイプのNAS自作キットだ。

 本体は、生産終了になってしまった同社の「HDL-Cシリーズ」とほぼ共通で、これをツヤのないマットブラックで塗装。前面に動作中に緑に点灯するLEDを配置し、背面には小形の排気用ファンと、USB×1、LAN×1の各ポート、電源ボタン、リセットボタン、電源コネクタが配置されるというシンプルな構成になっている。

正面 側面 背面

 背面にUSBポートがあることからもわかるように、本製品はLAN接続のNASとしてだけでなく、USB2.0接続の外付けHDDとして動作させることも可能となっており、電源オン時にどちらのインターフェイスで接続されているかによって、自動的にモードが切り替わる仕様になっている。

 基本的にはNASとして使った方が面白いと思うが、最悪、外付けHDDとして使うこともできるので、将来的により高性能なNASを手に入れたとしてもムダにならないのはありがたいところだ。

 製品の位置づけとしては、現在、同社のエントリーモデルとして発売されているHDL-CEシリーズよりも、若干下位といったところになるだろう。

 詳細については後述するが、性能についてはHDL-CEとほぼ同等、搭載される機能については、SMB、FTP、WebDAV、メディアサーバー、リモートアクセス(WebDAV利用)、ビットトレントとなっており、デバイスサーバーやTimeMachineバックアップなどの機能を備えていない分、若干、簡易的な製品になっている。

 RockDisk向けにHDDを新たに購入するのであれば、HDL-CEシリーズを購入した方が多機能なだけにお得感が高いため、個人的には、やはり余ったHDDを活用したい場合におすすめしたい製品と言えそうだ。


手軽だが覚悟は必用

 実際の組み立てだが、これは非常にカンタンだ。本体には、製品紹介の紙が同梱されている程度だが、同社の直販サイトである「ioPLAZA」から、写真付きで組み立て手順を紹介したビギナーズガイドなどをダウンロードすることができる。これを参考にすれば、誰でも迷わず組み立てられるだろう。

 具体的には、まず側面のカバーを開ける。購入直後はネジ止めされていないので、側面を押さえながら後方スライドさせるようにすればカンタンに開くことができる。

 カバーを開いたら、内部のケーブルを取り外す。フロントのLEDに接続されているコネクターとファンの電源ケーブルを基板から取り外す。その後、基板を取り出す。基板はケースに固定されていないので、HDD固定金具を持って持ち上げれば、そのまま取り出すことが可能だ。

 基板を取り出したら、HDDを装着する。前面側から滑り込ませ、ファン側に用意されているSATAコネクタにHDDを直結。最後に背面からHDDをネジで固定する。

 後は戻すだけだ。HDDを装着した基板をケースに押さめ、ケーブルを2本取り付ける。最後にケースを閉めて、背面側からネジで固定すれば、すべての作業は完了だ。

ケースをスライドさせるようにして開ける 基板に取り付けられているLEDケーブルとファンのケーブルを外す
基板を取り出す 基板にHDDを装着。ネジで固定する
基板を戻し、ケーブルを接続。カバーを閉めてネジで固定すれば完了

 慣れていれば、おそらく10分もかからない作業だと思われるが、はじめてでも前述したビギナーズガイドを見ながら作業すれば、おそらく迷うことなく組み立てられるはずだ。唯一注意するとすれば、ケーブルの接続くらいだろうか。と言っても、方向などを間違えないようになっているので、よく確認しながら作業すれば、難しいことは一切ないはずだ。

 ただし、手軽ではあるものの、自分で組み立てることに対するリスクは覚悟しておく必用はある。粗雑に扱えば、基盤を傷つけてしまうこともある。このあたりは、初期不良以外は無保証となる「挑戦者」ブランドであることを頭に入れて、作業してほしいところだ。


仕様と不具合に注意

 組み立て後の初期設定だが、こちらも手間はさほどかからない。ブラウザを使って設定ページにアクセスするか、前述したサイトからダウンロードできるツールを使って、HDDの初期化や初期設定を実行する。

 HDDの初期化だけでも標準の共有フォルダー(Public)にアクセスできるが、はじめに設定しておいた方が良い点をいくつか紹介しておく。

ツールかブラウザを使ってアクセスし、最初にHDDを初期化。これでとりあえずNASとして利用可能になる

 まずは、管理者パスワードの設定だ。標準で設定されているパスワードは簡易的なものなので、必ず変更しておくことをおすすめする。特に、後述するリモートアクセスを有効にすると、設定画面そのものに外部からアクセス可能になるため、標準設定のまま使うのは非常に危険だ。この設定は必須と言えるだろう。

 続いて、Guestアカウントの無効化も必ず設定しておいた方がいい。SMBについては、アカウントのパスワードなしのPCからアクセスすることを考えて有効にしたまま運用してもかまわないが、WebDAVとFTP(anonymous)については、有効にしておくのは危険だ。特にWebDAVのGuestアカウントは、管理者パスワードと同様に、リモートアクセスを有効にした時点で外部からGuestでPublicフォルダーにアクセス可能になってしまうため、まず最初に無効にしておくべきだろう。

 「挑戦者」ブランドということで、このあたりは「わかっている」人向けの仕様となっていると思われるが、価格を考えると、はじめてNASを使う人が購入する可能性もあるため、このあたりは標準で無効化しておいた方がよかったのではないかと思える。

管理者アカウントのパスワードを変更するのは当然として、Guestアカウントの扱いにも注意。基本的に無効にしておいた方が安心

 続いて、SMBの共有フォルダーの作成方法についても触れておこう。設定画面に実際にアクセスしてみるとわかるのだが、SMBの設定では、ユーザーの設定画面はあるのだが、共有フォルダーの設定画面がメニューに見当たらない。

 どこにあるのかと、筆者も迷ったのだが、ユーザー設定画面を開くと、アクセス権を設定するためのフォルダのリストボックスの上に「作成」ボタンがあった。つまり、新しい共有フォルダーを作成したいときは、だれかユーザーを選択後、そこから新しいフォルダーを追加することになる。

共有フォルダーはユーザーの作成画面から追加できる。どこにあるのかが最初わからなかった

 共有フォルダーの新規作成だけなら、この方法でもガマンできなくはないのだが、新しく追加した共有フォルダーのアクセス権を設定する際に手間がかかる。通常は、共有フォルダーのプロパティから、アクセス権を付与したいユーザーを選ぶという方法になると思われるが、本製品では共有フォルダーの設定画面そのものが存在しない。このため、各ユーザーのプロパティを1人ずつ開いて、作成した共有フォルダーを共有リストに追加していかなければならない。

 本製品では、作成可能なユーザー数が最大16ユーザーに限られているうえ、グループも扱えないため、あまり複雑なアクセス権を設定することを想定していないのだと思われるが、それでもフォルダーごとの設定画面がないと、複数のフォルダーをユーザーごとに使い分けたいときなどに手間がかかる。ここは改善してほしいポイントだ。

 メディアサーバー機能についても、DTCP-IP対応ではないのは仕方がないとして、もう少し使いやすくても良かった印象がある。PS3やAndroidタブレットに搭載されたDLNAクライアントから音楽や写真、ビデオを再生することはできるが、iTunesからサーバーとして認識させるには手動でライブラリを作成する必用がある。ボタンを押すだけだが、これも最初はiTunesからサーバーが見えないので、戸惑うことがないようにしたいところだ。

メディアサーバーやiTunesサーバー機能も搭載。iTunesから認識させるにはライブラリを作成する必用がある

 このほか、12月16日に公開された最新版のファームウェアで改善されたが、初期出荷時当初は、Windows 7からファイルのコピーを中断するとハードディスクの空き容量が減る(中断された容量が残ってしまう)といった不具合などがあった。

 また、筆者宅の環境でも、UPnPの設定が設定画面では正常に完了しているように見えるものの、実際には完了していなかったなどの現象も見られたため、若干、未完成な部分が残っていることも頭に入れておきたいところだ。

 もともと、こういった仕様やトラブルなどをユーザーと共に改善していくというのが、「挑戦者」ブランドの考え方なので、このあたりはユーザー側もある程度の覚悟を持ちつつ、広い心で対応すべきだろう。


AndroidやiPhoneからもリモートアクセス可能

 機能的には、比較的シンプルなRockDiskだが、注目すべきなのは、やはりリモートアクセス機能になるだろう。

 最近のNASは、単に外出先からアクセスできるだけでなく、スマートフォン向けのアプリも提供し、外出先でファイルをダウンロードしたり、スマートフォンで撮影した写真や動画をアップロードできるようになっている。これと同様の機能をRockDiskでも利用可能だ。

 設定は簡単というか、標準で有効になっているため、特別な設定は必用ない。設定画面でホスト名(標準ではMACアドレス)を設定すると、その値とグローバルIPアドレスが「mycloudsync.com」というインターネット上のサイトに登録され、このサイト経由で外出先からアクセスできるようになる。

リモートアクセスの設定は標準で有効になっている PCからの場合はブラウザで「mycloudsync.com」からアクセスするか、DDNSで設定したホストでアクセスする
WebDAVでNAS上のファイルにアクセスできる

 仕組みとしては、ローカルでのブラウザ経由でのアクセスとまったく同じだ。http://mycloudsync.comにホスト名を入力すると、ローカルと同じ設定画面が表示され、そこから「フォルダ」のリンク経由で、WebDAVのフォルダーにアクセスすることができる。要するにWebDAVそのものだ。

 このため、設定画面でDynamicDNS(現状対応はDynDNSのみ)を設定すれば、任意のホスト名+設定画面で指定したWebDAVのポート番号でもアクセスすることができる。このあたりも、非常にシンプルな設計だ。

 スマートフォンの場合はアプリを利用する。Androidは「CloudSync」、iOSは「MyiSharing CloudSync(CloudSyncのみの名前のアプリは英語版)」といアプリを無料でダウンロードできるので、これを利用し、同様にホスト名とユーザーとパスワードを指定してアクセスすることができる。

 ファイルのダウンロードだけでなく、アップロードも可能となっており、保存されている動画や写真に加え、その場で撮影した写真や動画もアップロードすることが可能となっている。接続されてしまえば、比較的動作は軽く、アップロードなども手間がかからないので、使い勝手は悪くない印象だ。

iOS版の画面。カメラで撮影した写真をそのままアップロードすることなどが可能 iOS版では、ファイルをダウンロードすることなく再生可能。Android版はダウンロードが必須

 だだし、比較的便利に使えるのは、Android版ではなく、iOS版を使った場合だ。Android版では、iOS版で可能なボイスメモのアップロード(録音してその場でアップロード)に対応していないうえ、RockDisk上の画像や音楽、映像を再生する場合は必ずダウンロードが必用になるが、iOS版は対応ファイルならその場で再生できる(音楽などのバックグラウンド再生は不可)。

 iOSでも、拡張子がm4aのファイルが再生できないなど、惜しい部分もあるのだが、このあたりは拡張子を変更するなどの工夫でクリアすることも可能だ。


パフォーマンスは十分

 最後にパフォーマンスについて触れておこう。1000BASE-Tで接続したPC(Intel Core i7 860/RAM8GB/WD15EARS/Realtek 8168/Windows 7 Professional 64bit版)から、ネットワークドライブにマウントしたRockDiskにCrystalDiskMark 3.0.1bを実行したのが以下の画面だ。

 シーケンシャルリードは40MB/sを超えるものの、シーケンシャルライト、ランダムライトは若干低めの値となっている。とは言え、結果としては、以前に本コラムでレビューしたHDL-CEシリーズとほぼ同等となっているので、結果としては妥当だ。

 実際に使っていても速度的な不満を感じることはほとんどないので、価格を考えれば、悪くないパフォーマンスと言えそうだ。

 なお、消費電力については、電源オン時(HDDスピンアップ時)に一時的に17W程度となるものの、通常は8W前後と消費電力は低い。HDDを10分程度でスピンダウンすれば4W前後まで落とすことができるので、常時利用に適した消費電力と言えそうだ。

 以上、アイ・オー・データ機器から発売された「RockDisk CL2-004LD」を実際に試してみたが、価格を考えれば、十分に面白い製品と言えそうだ。ただ、やはりところどころに未完成な部分も見受けられる。このあたりは、「挑戦者」ブランドらしいとも言えるので、今後の改善や発展につながってくれることを期待したいところだ。

 実用性も十分にあるとは思うが、製品をメーカーと一緒に開発しているくらいの気持ちで、良い意味での未完成感を楽しむための製品と言えるのではないだろうか。


関連情報

2011/12/20 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ