第19回:NASの実力はいかに?
アイ・オー・データの「HDA-i120G/LAN」を試す
アイ・オー・データ機器から、いわゆるNAS(Network Attached Storage)製品となる「HDA-i120G/LAN」が登場した。今後、SOHOや家庭などへの普及が見込まれるNASとしての実力は一体どれほどのものなのだろうか? 早速、レポートをお届けしよう。
●SOHOや家庭環境に最適なNAS
アイ・オー・データ機器の「HDA-i120G/LAN」 |
ADSLやCATVなどのブロードバンド環境の普及によって、パソコンをネットワークで接続することはもはや当たり前になってきた。このような環境が普及するにつれ、次第に増えてきたのがネットワークでのファイル共有だ。ブロードバンド環境の導入によって、せっかくパソコンがネットワーク化されたのなら、同時にファイルを共有しようというのも自然な流れだ。
そこで利用したいのが、今回取り上げるNASだ。NASとは、「Network Attached Storage」の略で、ネットワークに直接接続することでファイルサーバーとして利用できる単機能のサーバーのことだ。ファイル共有というとPCにあるフォルダを共有に設定するのが一般的だが、この場合は共有フォルダがあるPCが起動していないとファイルを共有できなかったり、ユーザーや共有資源の設定や管理が面倒という欠点がある。しかし、NASであれば、このような面倒を避けつつ、手軽にファイルサーバーを構築可能となる。大企業などであれば、サーバーPCを設置した方が効率的だが、SOHOや家庭といった小規模な環境では、NASを利用するメリットが高いだろう。
●設定は非常に簡単、すぐに利用できる
今回、試用したのは、アイ・オー・データ機器から登場した「HDA-i120G/LAN」という製品だ。120GBの外付けHDDである「HDA-iU120」とネットワークに接続するためのコンバータ「LAN-iCN」がセットになっており、これらを組み合わせることで低価格のNASとして利用できる。すでに80GBの容量のモデルが今年の2月に発売されているが、今回のモデルはその大容量版と位置づけられている。
設定は非常に簡単だ。まずは物理的な接続だが、外付けHDDである「HDA-iU120」には、ケーブルを取り替えることで様々なインターフェイスに対応できる同社独自の「i・CONNECT」が装備されているので、ここにLAN-iCNを接続する。続けて、LAN-iCNにネットワークケーブルを接続。最後に付属のCFカードをLAN-iCNに装着すればいい。
接続は非常に簡単。i・CONNECTでHDDとLAN-iCNを接続し、ネットワークに直接接続すればいい。ただし、電源はHDDとLAN-iCNの両方に必要。せっかくならHDDの電源はLAN-iCN経由で供給できるようにしてほしかったところだ |
今回のポイントとなるのはこのCFカードだ。LAN-iCNのファイル共有機能は、このCFカードに書き込まれた組込用のLinuxによって実現されている。つまり、LAN-iCN自体が小型のLinuxサーバーとして動作するわけだ。もちろん、本製品はあくまでもNASであるので、TELNETでLinuxにログインしたり、設定を変更することはできない。あくまでもNASのベースとしてLinuxを利用していることになる。
付属のCFカードに組み込み用のLinuxが書き込まれており、これによってNASとして動作可能となる。事実上、LAN-iCNが小型のLinuxサーバーとして動作することになる |
ここまでの準備ができたら、PCからブラウザなどでLAN-iCNにアクセスする。初期のIPアドレスは「192.168.0.200」に設定されているので、これをURLに指定すれば設定ページが開ける。最後に設定ページからHDDを初期化すれば、とりあえずファイルサーバーとして利用可能な状態になる。
設定はブラウザから行なう。初期設定で必要なのはHDDのフォーマットのみ。これだけでもNASとして利用可能 |
なお、この製品はDHCPクライアントとしても動作可能だが、その場合は設定ページからの設定変更が必要となる(DHCPサーバーとしては動作不可)。また、LAN側が「192.168.0」のサブネットですでに構築されていれば問題ないが、そうでない場合はPC側のIPアドレスを変更する必要があるので注意が必要だ。
●多少わかりづらい高度な設定
以上の設定で、とりあえずファイルサーバーとしては利用可能だが、場合によってはさらに詳細な設定が必要になるケースも考えられる。たとえば、ワークグループ名を変更したり(標準では「WORKGROUP」)、ユーザーによるアクセス制限を設定したい場合などだ。
このような場合は、設定ページから「高度な設定」のページを利用して各種設定を変更する。この設定を利用することで、ワークグループ名やIPアドレスの変更、そしてユーザーやグループの登録、各共有フォルダへのアクセス制御の設定などが可能となる。これにより、特定のユーザーやグループだけがアクセスできるような共有フォルダを作成することも可能となる。
ただし、アクセス制御に関しては、ユーザーを登録してからでないとグループの登録ができないにもかかわらず、設定画面でグループの設定項目が先に表示されるなど、多少わかりづらい面もある。例を交えながら設定方法を説明するなど、マニュアルの完成度が高いのが救いだが、このあたりはもう一工夫してほしかったところだ。
高度な設定では、IPアドレスやワークグループの変更、ユーザーの管理などが行える。ただし、設定に多少のクセがあるため、マニュアルを参照しながら設定しないと2度手間になる可能性もある |
前述したように、最近ではファイル共有のニーズが初心者層にシフトしつつある。この点を考えると、IPアドレスの設定やアクセス制御の設定はまだまだ敷居が高いと言える。今後、本製品のようなNASが広く受け入れられるには、さらにユーザーインターフェイスの改良が必要と言えるだろう。
●パフォーマンスはあまり期待できない
実際に利用してみると、パフォーマンスに難がある点が気になった。実際にファイルのコピーにどれくらいの時間がかかったのかは以下の表の通りとなるが、パソコンでファイルを共有した場合と比べると、そのスピードはかなり低く、1/10ほどとなった。これは、純粋にLAN-iCNの処理能力が原因だと予想できる。LAN-iCNは、CPUに日立のSH3を採用しているが、やはりこれでは大量のファイル転送などを処理しきれないのだろう。
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パソコンのスペックはPentiumIII 733MHz、RAM512MB、HDD120GB。OSはWindows XP Professionalを使用し、100BASE-TXでLANに接続。 |
ただし、実際の利用シーンを考えると、一度に文書や画像などのファイルを数ファイルコピーする程度となるため、それほど速度は気にならないはずだ。体感的には、多少遅いかなと感じる程度であった。大量のファイルや容量の大きなファイルをやり取りするような使い方は希なので、あまり問題にならないとも言える。手軽に利用できる点を考えれば及第点と言えそうだ。
●VPNを使えば外部からも利用可能
さらに、今回はADSLなどの常時接続回線を利用して、外出先などからも利用可能かどうかをテストしてみた。もちろん、そのままでは外出先から利用することはできない。このため、今回はオムロンの「MR-104FH」というルーターを利用し、Windowsに標準で搭載されているVPNクライアントで外部から接続する方法でアクセスしてみた。
低価格ながらVPNサーバーもサポートしたオムロンの「MR-104FH」。高速なスループット、スレートフル・パケット・インスペクション型ファイアウォールのサポートなど、機能的にも充実している製品だ |
このMR-104FHは、コンシューマー向けの製品としては数少ないVPNサーバー機能(PPTP)を搭載したルーターだ。設定画面の「PPTP」の項目に、接続させたいユーザーのIDとパスワードを登録するだけで手軽にPPTPサーバーとして動作させることができる。価格も安く、実売で2万円を切る程度なので、手軽にVPNを構築したい場合には最適だろう。
VPNの設定は非常に簡単。PPTPで接続したいユーザーを登録するだけでかまわない。最大で20ユーザーまで登録することができる |
結論から言えば、VPNで外部から接続した場合でも問題なくHDA-i120G/LANにアクセスできた。マイネットワークにHDA-i120G/LANのアイコンが表示されたので、名前解決の問題もなさそうだ。PCでファイルを共有した場合、せっかくVPNで接続しても相手先のPCが起動していないと実際にファイルを共有できないが、NASであれば常時稼働も容易で、外部からでも手軽にファイルを共有できる。どうやら、このような使い方にもメリットはありそうだ。
●手軽さを考えれば買いと言える製品
このように、速度面に欠点があるHDA-i120G/LANだが、5万7000円という価格にして、設定の簡単さ、実際の使い心地の良さなどを考えると、買って損のない製品だと言える。特に、PCサーバーでファイルを共有する場合と比べると、その静粛性、低消費電力性、省スペース性などは、比べものにならない。場合によっては、複数のユーザーでファイルを共有するという目的ではなく、単なるストレージとして利用するのも悪くはないだろう。さまざまな面で今後の発展と普及が期待できそうな製品と言えそうだ。
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2002/7/23 11:14
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