第125回:ブロードバンドのキラーコンテンツとなるか
フレッツフォンでテレビ電話を楽しむ
NTT東日本から、「フレッツフォン」に対応したIPテレビ電話端末「VP1000」の出荷が開始された。販売の受け付けは9月1日から開始されていたが、ようやく実機の提供が追いついた格好だ。果たして「VP1000」を利用したテレビ電話サービスの使い心地はどうなのだろうか? 早速、検証してみた。
●テレビ電話普及への第一歩
フレッツフォン VP1000 |
NTT東日本から、IPテレビ電話端末「VP1000」が発売されたことで、子どもの頃に見たアニメや近未来をテーマにしたSF映画などで見かけたテレビ電話がようやく現実のものとなった。
もちろん、携帯電話の世界ではすでにテレビ電話サービスが開始されており、PCでの映像コミュニケーションも実現されていはいるが、液晶が備えられたVP1000が実際にリビングに設置されているのをこの目で見ると、ついにテレビ電話が実現したかと少し感慨深くなる。
今後、映像を使ったコミュニケーションがどこまで普及するかは、まだ未知数ではあるが、VP1000の登場によって、普及へさらに一歩前進したと言ってもいいだろう。
VP1000の外観。上部に30万画素のCMOSイメージセンサー、右側面にマウスを接続できるUSBポートを備える | 背面はLANポートのほかに映像の入出力端子、ハンドセット端子を搭載 |
●ブロードバンドやテレビ電話サービスとと組み合わせて利用
さっそくVP1000の概要について見ていこう。VP1000は、本体に小型のカメラ(30万画素のCMOSイメージセンサー)とタッチパネル式の8インチTFT液晶ディスプレイを搭載したIPテレビ電話端末だ。回線を通じて、音声と一緒にカメラで撮影した映像をやり取りできるようになっており、いわゆるテレビ電話を手軽に実現できる。
と言っても、既存の電話機を置き換えるような製品ではない。前述したように、VP1000は「“IP”テレビ電話端末」だ。このため、実際にテレビ電話を利用するためには、VP1000の購入に加えて、ADSLやFTTHなどといったブロードバンド環境や、プロバイダーで提供されている050番号を利用したIPテレビ電話サービス(ぷららの場合月額315円)、もしくはNTT東日本のFLET'S.Net(月額315円)やFLET'S.Netナンバー(月額210円)の契約が必要になる。
ただし、サービスへの加入方法自体は意外に手軽だ。VP1000をADSLやFTTHなどの環境に接続して起動すると、セットアップウィザードが表示される。この画面から、直接、プロバイダーのIPテレビ電話サービスやFLET'S.Netへの加入ができるようになっているため、あらかじめPCなどからインターネット経由でサービスに加入しておく必要などはない。なお、サービスによってはサーバー側の登録に30分程度時間がかかる場合もある。
初期設定で利用する回線やサービスの設定が必要。加入が必要なサービスもその場で直接申し込むことができる |
設定画面で唐突に求められるユーザーIDとパスワードが何のIDとパスワードであるのかがわかりづらい(結局はプロバイダーの接続ID)、ソフトウェアキーボードでの入力が面倒など、若干、気になる点はあったものの、端末だけで設定が完了するのは実に手軽だ。極端な話、PCを利用していないユーザーでも回線さえ用意しておけば利用することができる。このあたりは、幅広いユーザー層をターゲットにしているのがよく表われている。
文字入力はソフトウェアキーボードで操作する。ただし、初心者を意識してか、キーボードがABC順に配列されているなど、入力が面倒に感じられる場面もあった |
●テレビ電話で1対多、多対多のコミュニケーション
設定が完了すれば、テレビ電話の利用が可能だ。VP1000の本体前面にある「TV電話」ボタンを押すと、電話画面が表示される。ここで、相手の050番号、もしくはFLET'S.Netナンバーをダイヤルすれば、相手に接続される。標準では音声のみの通話だが、通話開始後に画面上の「映像送信」ボタンを押せば、実際に映像を利用したテレビ電話での通話が可能だ。
実際に使ってみたところ、これが意外に面白い。1対1の通話は、顔を見て話すため、どうも照れくさい印象があるのだが、1対多、もしくは多対多の通話に関しては、これまでの電話にはなかった面白さがある。まさに空間を共有しているようなイメージで、実際には離れた場所にいても、自分がほかの人と同じ場所にいるように、みんなでワイワイ話をすることができる。また、テレビの中継でスタジオの出演者が外のレポーターと会話をしているシーンがあるが、まさにあのイメージだ。
テレビ電話の画面。1対多ならなかなか面白いコミュニケーションが可能だが、1対1の場合は少々照れる | 相手もVP1000を利用している場合は、メモ帳の共有も可能。イラストなどをお互いに見ながら会話をすることもできる |
正直なところ、個人的には映像を使ったコミュニケーションというもの自体に懐疑的だったのだが、どうやら1対1のコミュニケーションをイメージしすぎていたようだ。1対多、多対多のコミュニケーションという新しい使い方に関しては、意外な面白さがあることが実感できた。これまでの音声通話が個人的なコミュニケーションを提供する手段だとすれば、テレビ電話は家族同士、仲間同士のコミュニケーションを提供する手段と言えそうだ。
ただし、通話相手が限られる点に注意が必要だ。プロバイダーの050番号を利用したIPテレビ電話サービスの場合、映像を利用した通話ができるのは相手もVP1000を利用しており、なおかつ現状では同じVoIP基盤網のサービスに限られる(音声通話のみなら一般加入電話などへも可能)。一方、FLET'S.Netのサービスを利用した場合、「FLET'S.Netナンバーソフトフォン」を利用することで、PCとのテレビ電話も可能だが、PC側でもFLET'S.Netの利用が必須だ。また、プロバイダーの050番号を利用したサービスとFLET'S.Netサービス間の通話もできない。
利用するネットワークが異なる以上、050番号サービスとFLET'S.Net間の通話ができないのは仕方のないところだが、プロバイダーのサービスでもソフトフォンを提供するなど、通話可能な対象がさらに広がることを望みたいところだ。
●映像品質は良好。音声品質はハンズフリーの影響が
映像の品質も悪くない印象だ。標準では1MbpsのビットレートのMPEG-4に設定されているが(最大2Mbpsまで設定可能)、実用的な品質の映像を表示することができる。さすがに、相手が速く動くとブロックノイズが発生したり、映像を全画面で表示すると映像がぼやけた印象になるが、相手の顔を見て話をするには十分なレベルだ。
標準ではMPEG-4 1Mbpsで映像が送信される。最大2Mbpsまで変更することが可能 |
また、本体のカメラが撮影可能な範囲も広く、通話相手の後ろに何人かの人がいても、きちんと画面に収められるようになっている。このあたりも多人数同士のコミュニケーションに適している点と言えそうだ。
ただし、音声品質に関しては、あまり良くはないと感じられた。若干、雑音が混じる印象があり、音声も全体的にクリアとは言い難い。ただし、これは音声そのものの品質というよりも、VP1000本体のマイクとスピーカーを使ってハンズフリーで通話していることが影響しているようだ。ちょうど、電話の子機をハンズフリーモードにして会話したときに近い音質となる。VP1000には別売りのハンドセットを接続することもできるので、音声品質が気になる場合は、ハンドセットを利用するのも良いだろう。
また、VP1000では、ホームページの閲覧やメールの送受信機能も搭載している。解像度が低いため、ページによってはスクロールを頻繁に利用しなければならず、メールもソフトウェアキーボード(五十音、ABC配列)での入力が面倒だが、手軽に使えるインターネット端末としても利用できそうだ。
ホームページなども表示することが可能。ただし、解像度が低いため、一度に表示できる領域が限られる |
●端末の価格がネック。低価格化に期待
このようにテレビ電話を手軽に楽しめるVP1000だが、気になる之のは何と言っても端末の価格だ。NTT東日本での販売価格は、税込みで62,790円とかなり高価で、気軽に導入できるとは言い難い。
個人的には、実家の祖父母へ贈って孫と話をさせるということも考えていたが、自宅と実家で2台購入するとなると12万円もの出費になるため、あきらめざるを得なかった。せめて1台で3万円前後、2台で6万円程度の価格にならないと普及は難しいのではないだろうか。
または、ADSLモデムなどの通信機器と同様に、レンタルでの提供をぜひ検討してほしい。現状の価格設定では、月額のレンタル料が高くなってしまう可能性があるが、現状の買い取りのみに比べれば、ユーザーを多く獲得できるはずだ。
端末の機能も、実際の利用を考えると、無線LANやバッテリーを内蔵して家の中を持ち運べるようになれば、さらに使い道が広がるだろう。本体から、液晶やカメラ部分を取り外せるセパレートタイプにするといった方法も面白そうだ。
テレビ電話というソリューション自体は、非常に面白いものであることに間違いはない。今後は価格の値下げや無線LAN対応など、ユーザーの敷居を下げるための努力に期待したい。
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2004/11/16 11:04
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