第269回:「ながら視聴」に最適なデジタルラジオ
バッファローのUSB対応ワンセグチューナー「DH-KONE/U2R」



 バッファローから地上デジタルラジオに対応したUSB接続のワンセグチューナー「DH-KONE/U2R」が発売された。その機能を検証しつつ、ネットワークとの連携について改めて考えてみよう。





「PCでもワンセグを楽しみたい」というニーズ

 携帯電話ではほぼ当たり前、カーナビへの搭載も進んできたワンセグ。手軽に見られるテレビとして、もはやその存在もさほど珍しくなくなってきた。

 もちろん、PCへの搭載も進みつつあるが、現状は一部のモバイル向けのPCに搭載されていたり、オプション扱いだったりと、まだ当たり前とまでは言えない状況だ。どちらかと言えば、PCの世界ではネットワークを経由して動画を楽しめるストリーミングが主流であり、放送による動画がなくてはならないというわけでもない。


 とは言え、やはりちょっとした空き時間にテレビが見られるワンセグはやはり魅力的だ。デジタルラジオの試験サービスも開始され、対応製品も徐々に登場し始めてきた。そこで今回はバッファローから新たに発売されたUSB接続のワンセグチューナー「DH-KONE/U2R」を実際に試してみた。


バッファローのデジタルラジオ対応USBワンセグチューナー「ちょいテレ DH-KONE/U2R」




音声だけじゃない動画も楽しめるデジタルラジオ

 バッファローのDH-KONE/U2Rは、高感度と使いやすさが特徴のワンセグチューナーだ。その感度や豊富な付属アンテナ(ロッドタイプの高感度アンテナ、外部アンテナ、F型コネクタ変換アンテナ)が特徴で、ワンセグによるテレビの視聴や録画を手軽に楽しめるようになっている。


高感度アンテナやF型コネクタアンテナ、さらにはUSBの設置台と付属品は豊富

 本製品はPCに2本装着することで2番組同時録画ができるなどのユニークな機能も搭載されているが、個人的に注目したいのはデジタルラジオに対応している点だ。今年の2月から電波出力が向上したことを受けて、対応製品がちらほらと登場しつつあるが、高品質な音声放送に加えて、プロモーションビデオや放送中のスタジオの様子などが表示される簡易動画を楽しめたり、3セグメントを利用する放送(いわゆる3セグ)では放送に加えてダウンロードサービスなども利用可能となっている。

 ネットワークよりの視点で見ると、デジタルラジオという放送そのものよりもダウンロードサービスの詳細が気になるところではあるが、残念ながら、バッファローのDH-KONE/U2Rはダウンロードサービスには対応しておらず、ダウンロードサービスそのものもまだ試験的にしか行なわれていない。このため、今回はデジタルラジオそのものに注目してみた。

 デジタルラジオの使い方はワンセグとほとんど同じだ。というより、本製品ではチャンネルの一覧にテレビとラジオ(9101/9201/9301/9401/9501/9701/9702)が区別することなく配置されており、ユーザーはどちらかを意識することなくシームレスに利用できるようになっている。


デジタルラジオの放送局は右側のチャンネル一覧に表示されており、ワンセグと同じ感覚で視聴できる。簡易動画によって、ミュージッククリップやスタジオの風景などを映像で楽しめる

 放送そのものも、ラジオだということをあまり意識させない。電波を受信すると音楽やDJのトークなどの音声と共に映像(簡易動画)が表示される。ミュージッククリップが表示される音楽番組はまるでCS放送やケーブルテレビの音楽専門チャンネルのようで、トーク番組などは放送局の映像が表示され、こちらも地方局の情報番組を見ているかのような印象を受ける。

 事前に何も知らされずに使えば、おそらく、これらのチャンネルがデジタル”ラジオ”であると気がつかないだろう。データ放送による曲情報も同時に表示されるようになっており、まさに次世代の放送という印象だ。

 著作権保護機能の影響で、実際にできるかどうかは番組次第ではあるが、デジタルラジオの録音機能も搭載されており、まさにテレビのような楽しみ方ができる。


録音にも対応しているが、番組によっては著作権保護機能によって記録できない

 なお、地上デジタルラジオは、2011年から正式に開始予定となっており、現在は東京・千葉・埼玉・神奈川、近畿圏の大阪・京都・奈良・兵庫のそれぞれ一部の地域での試験放送となっている。このため、地域によっては電波の受信状況はかなり厳しく、筆者宅でも、標準アンテナでは屋内での受信はできず(ワンセグは受信可能)、外部アンテナを屋外、しかもなるべく高い位置に設置して、ようやく受信できる程度だった。





ガジェットを使った「ながら視聴」に最適

 個人的に気に入ったのは、Windows Vistaのガジェットとしてワンセグやデジタルラジオを楽しめる点だ。スタートメニューに登録されたプログラムから「ガジェットへの登録」を選択すると、Windows Vista用のガジェットである「PCastTV forワンセグガジェット」が追加され、サイドバー上でワンセグやデジタルラジオを楽しめる。

 実は、この機能は同社のワンセグチューナーの従来モデルから搭載されていた機能なのだが(ちなみにアイ・オー・データ製の製品はGoogleガジェットに対応)、ワンセグのときは画面が小さすぎて、いまひとつ実用的だと思えなかった。


Windows Vistaのガジェットとしてサイドバーに表示することが可能。テレビと違って音声で状況がわかるため、“ながら”には適している。サイドバーから取り出して簡易動画とデータ放送を表示することも可能

 しかしながら、音声や音楽がメインとなるデジタルラジオでは、これが断然便利だ。ラジオの良いところは、視覚に頼らずに状況を把握できる点だ。たとえばテレビの場合、視覚がメインとなるため、放送でも「こちらをご覧下さい」などとフリップを見せるという演出が一般的に行なわれている。

 これに対してデジタルラジオに限らず、ラジオでは音楽はもちろんのこと、トーク番組などでも音声だけで状況がきちんと伝わるように工夫されているため、サイドバーの画面はたまにチラリと見る程度で良い。音声だけで状況がわかるAM放送の野球中継を思い浮かべていただけるとわかりやすいだろう。

 このため、サイドバーの小さな画面を一生懸命見入る必要がなく、たとばブラウザでサイトを見ながら、仕事をしながらと、ラジオにほんの少しの意識をおいたたま同時に他のことを行なうことができる。要するに“ながら”で手軽に音楽やトーク番組を楽しむことができるわけだ。

 インターネット上のコンテンツにも、インターネットラジオのような音声コンテンツはあるが、基本的には文字や静止画、動画といった視覚からの情報がメインとなっている。音声コンテンツ特有のこの”ながら”という特徴は、もしかすると、もっと見直すべきなのかもしれないと改めて実感させられた。

 また、同じデジタルラジオでも携帯電話では画面を見入るという使い方になりがちということを考えると、デジタルラジオという仕組みそのものは別にして、そのコンテンツ形態は“ながら”に適したPC向きのコンテンツなのではないかという印象も受けた。





ネットとの融合に期待

 このようにバッファローのUSBワンセグチューナー「DH-KONE/U2R」でデジタルラジオを主に利用してみたが、放送サービスとしてはなかなか興味深い。製品の完成度も高く、ちょっとした利用にお勧めできる製品と言えるだろう。

 ただし、本製品に限らず、PC用の映像関連製品というのは、もっとインターネットとの連携を図れないものだろうかという疑問を率直に感じた。

 たとえば、世の中にこれだけ多くのストリーミングサービスが存在するのだから、提携によってプレーヤーのチャンネルの1つとしてインターネット上のサービスを登録して、シームレスに利用できるようにするという手もあるだろう。家庭用のテレビがネットワークを利用したストリーミングサービスを取り込みつつあるのだから、PCのプレーヤーもそれに追従しても良さそうなものだ。

 また、大きなスポーツのイベントがあるときなどは、テレビを見ている人同士が、インターネット上の掲示板で実況のようにコミュニケーションを楽しんでいる場合があるが、これと同じような機能をPC用のテレビプレーヤーに搭載できないものだろうか? テレビを見ながらコメントを入力し、その会話によってコミュニケーションが展開できれば、テレビの楽しみ方も広がるだろう。ラジオならDJを含めた進行も楽しめそうだし、メッセージの表示方法を工夫すればニコニコ動画のライブ版のような楽しみ方もできるかもしれない。

 もちろん、そのために乗り越えなければならない課題も多そうだが、個人的には、このようなネットワークとの融合による新しい楽しみ方ができるようになって欲しい。


関連情報

2007/11/13 10:59


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。