第275回:スキャナのカラー化で幸福感が向上
NECのネットワーク対応FAX「SP-NA640」



 NECからネットワークに対応した家庭用FAX「ネットワークスピークス」の新製品「SP-NA640」が発売された。カラースキャナを搭載することで従来モデルからの強化を図った製品だ。カラー化によって、どのような用途の広がりが期待できるのかをチェックしてみよう。





カラースキャナ搭載でパワーアップ

子機が1台セットになった「SP-NA640(LS)」

 NECから発売されているネットワーク対応の家庭用FAX「ネットワークスピークス」シリーズに、新製品となる「SP-NA640」が登場した。従来モデルからスキャナ部分が強化され、カラースキャナを搭載したのが最大の特徴だ。

 「今さらFAX?」と思う読者もいるかもしれないが、ネットワーク対応によって紙と携帯電話、紙とPCという新しいコミュニケーション形態を生み出したのは、以前に本コラムで取り上げた通り。今回のモデルはこのカラー版ということで、さらなる用途の広がりが期待できる。

 なお、カラー対応となったのはスキャナ部分のみで、印刷に関しては従来モデル同様モノクロ対応のままとなっている。この点を残念と捉える人もいるかもしれないが、実質的な用途としてはスキャナのみのカラー化で十分と思わせるだけの魅力を備えている製品だ。





USBポートでPC用スキャナとしても利用可能

 それでは早速、製品をチェックしていこう。まずは外観だが、これは従来モデル「SP-NA540」とほとんど同じだ。前面に大きな液晶パネルを搭載しており、大きめの文字や大きめのボタンで使いやすい操作性を実現している。


新たにカラースキャナを搭載したネットワークスピークス「SP-NA640」外観は従来モデルとほぼ同じ。大きめの液晶やボタンなどは相変わらず使いやすい

 コンシューマ用途ではFAXの主な利用層が高齢者層へとシフトしつつあることを考えると、そういった層でも違和感なく利用できるシンプルかつ使いやすい操作パネルと言えそうだ。

 接続端子などのインターフェイスに関してもほぼ共通で、電話回線を接続するための端子や肝心のネットワーク機能を実現するためのLANポート(10BASE-T/100BASE-TX対応)などは背面に搭載されている。


背面にLANポートと電話回線用のコネクタを装備。ネットワークに接続することで、スキャンtoメールなどの機能を利用できる

 唯一従来モデルと異なるのは、正面から見て右側の側面に新たに用意されたUSBポートだ。従来モデルではPCとの接続はネットワークのみであったが、今回のモデルではUSBによる接続がサポートされている。

 これにより、SP-NA640では本体のスキャナをPCの周辺機器として利用できるようになった。付属のCD-ROMからドライバをインストール後、USBケーブルでPCと接続すると、TWAIN/WIA対応スキャナとしてPCから認識できる。


従来モデルにはなかったUSBポートを新たに搭載。PC用のスキャナとしても利用できる

 残念ながらスキャン用のソフトウェアが付属していないため、Windows標準のアプリケーションを利用してスキャンすることになるが、たとえばペイントを利用したり、Windowsフォトギャラリー(Windows Vistaの場合)を利用することで、SP-NA640にセットした原稿を手軽に読み込むことができる。

 もちろんSP-NA640のシートフィーダに複数枚の原稿をセットしておけば、これらを連続して読み込ませることも可能だ。ただし、WindowsフォトギャラリーなどはBMPかJPEGでの読み込みにしか対応しておらず、複数枚の原稿が個別のファイルとして保存されてしまう。

 ちょっとしたチラシなどをスキャンする程度ならこれでも十分だが、複数枚の文書を読み込みたいといった場合は、市販のソフトウェアを別途用意するといいだろう。たとえばAcrobatなどを利用すれば、スキャンした複数ページの原稿を1つのPDFファイルとして保存することが可能だ。


USB経由でのスキャンにはスキャナでの読み込みに対応したソフトウェアが必要。ペイントやWindows フォトギャラリーなどを利用すると良いだろうAcrobatなどを利用すれば、複数枚の文書を1つのPDFファイルにすることも可能。ドキュメントの整理にも重宝する




やはり嬉しいカラーの表現力

 このように、USB接続でのカラースキャナとしての利用も可能だが、読み込んだ原稿をメールで送信できる「スキャンtoメール」、ネットワーク経由でスキャンする「スキャンtoパソコン」でも、カラーの恩恵を受けることができるようになった。

 スキャンtoメールは、SMTPやPOPなどのメールの設定を本体の設定画面(ブラウザでの設定が可能)に登録しておくことで、SP-NA640で読み込んだ原稿をメールで送信することが可能になる。


PCにインストールされたユーティリティを利用するとネットワーク上のSP-NA640の設定が手軽にできる。このほか、ネットワーク経由で受信したFAXをPCに保存するためのユーティリティなどもインストールされるメールの設定はブラウザから行なうのが手軽。Yahoo! JAPANなどのフリーメールでもPOPアクセスが可能であれば利用できる

 機能的には従来モデルとほぼ共通となるため、詳細については以前の本コラムを参照していただきたいが、この機能がカラーで使えるようになったのは大きなメリットだ。

 スキャンtoメールには、個人的には大きく2つの用途があると考えている。1つは紙によるコミュニケーション、もうひとつは紙情報の電子メモ化だ。

 紙によるコミュニケーションは、文字通りFAXとメールの融合によるコミュニケーションだ。携帯電話やPCのメールに抵抗のある層であっても、紙に書いた文字や絵をFAXで送信するということには抵抗が少ない。紙媒体をメールへと変換することによって、情報リテラシーに差のある層同士のコミュニケーションを実現できるというわけだ。

 このような使い方では、特に絵を送信するときにカラー化の恩恵を受けることができる。たとえば、子どもが書く絵というのは、実にユニークな色遣いがなされる場合があるが、こういった豊かな表現もカラーなら、忠実に相手に伝わる。手紙や絵にカラーならではの”温かさ”のようなものを込められるのもメリットだ。

 一方の紙情報の電子メモ化は、たとえば紙の地図やチラシなどをメモとして携帯電話に転送しておくといった使い方だ。これもカラー化によって、地図などを転送しても見やすくなり、商品写真などでも詳細がはっきりとわかるようになった。やはりカラーの表現力というのは、ありがたいと実感させられた。


同梱されていたチラシをスキャンして携帯電話にメール。ズームすれば文字などもはっきりと判別できる携帯電話側の画面が少々見にくいが、手書きの手紙なども手軽に携帯電話に送信できる




手紙と絵が届く「幸せ感」

 今回、SP-NA640を実際に我が家で利用したとき、この製品を一番熱心に使い心から楽しんで使ったのは我が家の娘だった。

 紙をセットして、電話帳を表示、相手を選んでスタートと、ほぼ3ステップで筆者や妻、祖父母の携帯電話へと紙の手紙を届けられる手軽さ、そして自分が描いた絵がそのままの色で相手に届くというのが、何よりも面白かったようだ。こういった姿を見ていると、コミュニケーションの本質というのは、こうした「楽しむ」ことにあるのではないかと感じた。

 FAXと言うといかにも事務的で、もはや過去のものというイメージがあるかもしれないが、こういったコミュニケーションの手段としてはその価値を見直すべきなのではないかと思える。

 仕事中に届いたメールをなにげなく見たら、子どもが描いたつたない絵と誤字だらけの手紙が送られてきた。この瞬間の幸福感は、ぜひ実際に体験して欲しいものだ。この瞬間を味わうだけでも、個人的には本製品を購入する価値があると言える。


関連情報

2007/12/25 10:53


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。