第274回:ハイビジョンをネットワーク経由で楽しむ
バッファローの11n対応ネットワークプレーヤー「LinkTheater LT-H90WN」
バッファローから、IEEE 802.11n ドラフト版準拠の無線LANを搭載したネットワークプレーヤー「LT-H90WN」が発売された。AVCHDやDTCP-IPに対応しており、無線でハイビジョン映像を楽しめるのが特徴だ。早速実機を検証した。
●ハイビジョンを楽しむための新「LinkTheater」
LT-H90WN |
地上デジタル放送などのテレビ放送、AVCHD対応のビデオカメラ、H.264を採用したビデオ配信サービスと、身の回りにハイビジョンの映像が当たり前のように存在するようになった。
特にビデオカメラはハイビジョン対応機への世代交代が進みつつあるようで、家電量販店の売り場などでもハイビジョン対応製品が前面の棚を占有するようになってきている。これまでハイビジョン映像は見る、もしくは録画するといった程度だったが、映像を自分で撮影して楽しむことも手軽になってきた。
そんな市場の動向を反映してか、バッファローからハイビジョン映像の再生を強く意識した最新のネットワークプレーヤー「LinkTheater LT-H90WN」が発売された。新しい映像フォーマットへの対応や接続端子の追加、無線機能の強化など、さまざまな対策がなされており、ハイビジョン映像を手軽に楽しめる。
これにより、ハイビジョン対応のビデオカメラで撮影した映像がPCに保存されているような場合でも、それをネットワーク経由で家庭用のテレビなどで手軽に楽しめるというわけだ。
●AVCHDやDTCP-IPをサポートし、11nドラフトにも対応
具体的な製品について見ていこう。今回登場したLT-H90WNは、見た目こそこれまで同社から発売されていた「PC-P4」や「PC-P1LAN」などとさほど大きく変わらないが、その中見は大きく進化している。
まず注目したいのはAVCHDへの対応だ。従来のリンクシアターでも、MPEG-1/MPEG-2/MPEG-4/H.264/WMV/Xvid/DivX/AVIと多彩な映像フォーマットに対応していたが、今回の新モデルではこれらに加えてHDVとAVCHDに対応している。
たとえば、ハイビジョン対応ビデオカメラからPCへと取り込んだAVCHDの映像ファイル(m2tsファイル)をそのままネットワーク経由で再生できる。これにより、AVCHDの映像を何も考えずにPCに保存しておくだけで、そのままネットワーク経由で再生することが可能となった。
続いての特徴はDTCP-IPに対応した点だ。従来モデルではViiv対応のPCのみの対応となっていたDTCP-IPに正式に対応した。これにより、同じくDTCP-IP対応の家電製品(レコーダ)などで録画したデジタル放送なども、ネットワーク経由で再生することが可能となっている。
とは言え、現状はDTCP-IP対応と言っても異なるメーカー間での違いがあるため、互換性には注意が必要だ。対応状況などは順次公表される予定となっているので、それを確認してから購入するのが得策だろう。
続いてはHDMIへの対応だ。LT-H90WNの背面には、D4端子、コンポジット、光デジタル出力、USB、LANなどに加えて、新たにHDMI端子が搭載された。代わりに従来モデルからS端子が省略されているが、これにより、ケーブル1本と液晶やプラズマといったハイビジョン対応のテレビなどとの接続が楽になり、クリアで美しい映像を楽しむことが可能となった。
そして最後に注目したいのがIEEE 802.11nへの対応だ。これまで紹介してきたように、LT-H90WNではハイビジョン映像を楽しむことがその目的となっているが、このような映像をなめらかに再生するには高速なネットワーク環境が必要となる。これを無線LANで実現するために11nに対応したというわけだ。
もちろん利用するには11n対応アクセスポイントが必要だが、たとえば同社のWZR-AMPG300NHやWZR2-G300Nなどを利用することで、理論値で最大270Mbps(LT-H90WN側が800msのLongGIのみの対応となるため)の通信が可能となっている。
本体前面 | 本体背面 |
本体と同梱品 | 付属のリモコン |
●接続はサーバー側、本体側ともに簡単
それでは早速利用してみよう。まずはセットアップだが、サーバー側に関しては付属のCDからサーバーソフトウェアをインストール後、共有したいデータがあるフォルダを登録するだけと簡単だ。PC上のデータを自動的に検索して登録することもできるので、こちらはさほど手間はかからないだろう。
付属のCD-ROMを利用するとサーバーソフトウェアが自動的にインストールされる。設定は単純で共有したいデータがあるフォルダを登録するだけだ |
本体側の設定もさほど難しくなく、起動後にネットワークの設定で接続法で有線か無線かを選択し、無線の場合は接続先のアクセスポイントの情報を登録する。もちろん、同じくバッファロー製のアクセスポイントを利用している場合はAOSSによる自動接続が可能だ。今回のテストでは同社のWZR2-G300N(2.4GHz帯の11nドラフト、300Mbps対応製品)を利用したが、ボタンを押すだけで手軽にアクセスポイントに接続できた。
AOSSを利用した設定が可能。LT-H90WN側で設定を開始後、アクセスポイントのボタンを押せば自動的に接続設定ができる |
同社製アクセスポイント以外の無線LAN機器の場合は手動設定だが、アクセスポイントを検索すればSSIDと暗号化方式までは自動的に選択される。リモコンでの文字入力が若干面倒に感じるが、暗号キーを入力すれば利用できるようになる。
手動設定の場合でもSSIDと暗号化方式までは自動的に入力される。暗号キーのみの設定なので手間はさほどかからない |
ただし、接続後の速度などは画面に表示されず、11nで接続したとしてもLT-H90WNの画面上ではIEEE802.11b/gと表示されてしまうため、本当に11nで接続されているのかどうか、さらにはデュアルバンドで接続されているのかどうかも確認できなかった。ハイビジョン映像などがスムーズに再生されない場合の目安にもなるので、できれば接続規格やリンク速度、電波強度などの情報を表示して欲しいところだ。
設定画面では11b/gと表示されるため、11nが有効なのか、デュアルバンドで接続されているのか、どれくらいの速度や電波強度なのかを判断できない |
●ハイビジョン映像のワイヤレス再生は環境次第
肝心のハイビジョン映像の再生だが、これは環境次第と言ったところだろう。
PCにAVCHDの.m2tsファイルをそのまま保存しておけば、それがLT-H90WNの一覧に表示されるので、何も考えずにそのまま再生できる。HDMIを利用すればリビングの液晶テレビなどにも接続できるので、これまでに撮りためた映像を美しいまま、手軽に楽しむことが可能だ。もちろん、WMVやMPEG-2などの映像、写真や音楽などの再生も簡単にできるため、さまざまなメディアを楽しむことができる。この手軽さは大きな魅力だ。
AVCHDの.m2tsファイルなどもそのまま認識可能。WMVやMPEG-2などと一緒にフォルダに保存しておくだけで再生できる |
ただし、映像のビットレートが10Mbpsを越えるような場合は、やはりネットワーク環境の影響を大きく受けてしまう。たとえば、10Mbps以下のWMVやMPEG2であればさほど問題にならないが、ビットレートが13~15Mbps前後のAVCHDなどの場合、アクセスポイントからの距離が遠い場合などは映像がとぎれとぎれになってしまうことがあった。
実際に筆者宅(木造3階建て)でテストした限りでは、1階に設置したアクセスポイントに対して、2階、3階のそれぞれでAVCHDの映像を再生してみたところ、1階では問題なく映像を再生できたものの、2階、3階では数秒おきに映像が停止するような感じでスムーズに再生できなかった。
映像のビットレートを考えると、11nであれば問題なく再生できるはずなので、遮蔽物やチャネルの混雑状況などの周辺環境が影響していると考えられるが、前述したようにLT-H90WN側でリンク速度や電波状況を確認できないため、詳細な原因までは調査できなかった。
もちろん、有線LANであれば問題なく再生できるため、どうしてもリッチな映像を再生したい場合は、有線LANでの接続を強くお勧めしたい。
●共有フォルダでDLNA非対応でもネットワーク連携
続いて互換性の確認をしてみよう。LT-H90WNには専用のサーバーソフトウェアも同梱されているが、これ以外に一般的なDLNAサーバー、Windows Media Connectとの接続にも対応している。これらの互換性についても気になるところだ。
筆者宅に存在する以下の機器での接続を試してみたが、タイミングによってサーバーがリストに表示されない場合などがあるものの、コンテンツを再生することが可能だった。
- Windows Home Server(Windows Media Connect)
- アイ・オー・データ機器 HDL-GT1.0(DLNA Server)
- 東芝 RD-X6(DLNA Server)
同梱のサーバー以外にもDLNA対応サーバーやWindows Media Connectなどにも接続可能 |
ただし、別のサーバーを利用する場合、当然のことながら再生できるコンテンツはサーバー側が対しているフォーマットに限られる。また、一覧にファイルが表示できても、それを再生できるとは限らないので注意が必要だ。筆者がテストした限りでは、Windows Home ServerなどはWMVのファイルをリスト表示することはできても再生できない場合があった。
このような互換性の問題を回避するためというわけでもないだろうが、今回のLT-H90WNでは共有フォルダへのアクセス機能が新たに追加されており、この機能を利用するとサーバー側の仕様に関係なくファイルを参照することが可能となる。
通常の共有フォルダも参照可能。アクセス権の設定をしていない共有フォルダであれば、そこに保存されているメディアファイルを再生できる |
たとえば、DLNAなどに対応していないNASの共有フォルダ(アクセス制限が設定されている場合は不可)にAVCHDのファイルを保存しておくと、LT-H90WNから共有フォルダの内容を参照して、そのファイルを再生できる。
このように、共有フォルダを利用した再生はDLNAと異なり、サーバー側が対応していないフォーマットでもLT-H90WNから参照することができるのが大きなメリットだが、利用してみた限り、ビットレートの高い映像がとぎれとぎれになったり、フォーマットによっては再生開始してから実際に映像が表示されるまでにやたらと長い時間がかかることもあった。写真や音楽などの再生なら問題なさそうだが、映像の場合はやはり専用サーバーを利用した方が良いだろう。
●ハイビジョンをネットワークで楽しめる製品。互換性は注意が必要
以上、バッファローの新型リンクシアター「LT-H90WN」を実際に利用してみたが、写真や音楽はもちろんのこと、ハイビジョン対応(AVCHD)対応のビデオカメラで撮影した映像を大画面のテレビで美しいまま楽しむことができるのは大きな魅力と言えそうだ。環境次第ではあるが、11nによる無線LANでの利用も可能なため、PCとテレビある部屋が離れている場合などでも利用できる。
ただし、DLNAにしろ、11nにしろ、DTCP-IPにしろ、AVCHDにしろ(松下製のビデオカメラの映像では早送りなどが現状できない)、まだ新しい規格のため、互換性という点では、まだまだ注意が必要だろう。基本的には同社製のアクセスポイントを利用し(できれば有線LAN接続が望ましい)、同梱のサーバーを利用するというある程度環境が想定された使い方をすることを推奨したい。
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2007/12/18 10:55
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