第283回:ポッドキャストダウンロードやGyaOの視聴にも対応
無線LAN搭載のポータブルプレーヤー「gigabeat T802」
東芝からIEEE 802.11b/g準拠の無線LANを内蔵したポータブルプレーヤー「gigabeat T802」が新たに登場した。既存モデルから搭載メモリが8GBへと強化され、無線LAN経由で映像をストリーミング再生できるサービス「GyaO for gigabeat」に対応した点が特徴だ。早速、その機能を利用した。
●iPodの牙城にどう挑むか
僚紙AV Watchの記事によると、家電量販店のPOSデータによる2007年の販売実績において、ポータブルプレーヤーのシェアは引き続きアップルが圧倒的な首位となったようだ。
ここまでシェアに圧倒的な差ができてしまうと、追いかける側は相当厳しい戦いを強いられることになるが、単一製品で市場が占有されると製品選びの幅が狭まってしまうので、ぜひ国内メーカーにはがんばって欲しいところだ。
このような場合、通常は、同じ製品で勝負していては差が開く一方になってしまうので、コスト的な優位性で勝負するか、他社製品にはない製品やサービスによる差異化を図ることになるが、そういう意味で今年に入って登場したのポータブルプレーヤーの新製品を見てみると、なかなか個性的な製品が多いことに気がつく。
Bluetoothを採用したソニー、音質と録音機能にこだわったケンウッド、楽器練習向け機能を搭載したティアックと、各社ともに独自性を高めた製品をリリースしている。
この取り組みがどこまでシェアに変化に結びつくかはわからないが、いずれにせよ国内メーカーから独自の面白い製品が登場し始めたのは歓迎すべきことだろう。
●通信+サービスで付加価値を提案
gigabeat T802 |
そんな中、東芝からなかなか興味深い製品が登場した。通信+サービスというアプローチで差異化を図ったgigabeatシリーズのハイエンドモデル「gigabeat T802」だ。
gigabeat T802は、8GBのフラッシュメモリと2.4型TFTカラー液晶(QVGA、320×240ドット)を搭載したポータブルプレーヤーだが、最大の特徴はIEEE 802.11b/gの無線LANを内蔵しており、インターネット上のサービスとの連携が可能な点だ。
無線LANの内蔵とサービスとの連携という意味では、昨年8月に登場し、本コラムでも取り上げたgigabeat T401と同じだが、今回のT802ではT401が対応していたポッドキャストコンテンツのダウンロードに加えて、本製品の発売に合わせて提供される動画配信サービス「GyaO for gigabeat」のストリーミング再生に対応するのが大きな違いだ(T401もファームウェアのアップデートサービスによってサービスへの対応が可能)。
「GyaO for gigabeat」はその名の通り、インターネット上のGyaOをgigabeat用に提供したサービスで、GyaOコンテンツの中からセレクトした映像が無償で配信される。本体に内蔵された無線LANを利用して、このサービスに接続し、映像をストリーミングで再生できるというわけだ。映画やドラマ、アニメなど9ジャンルが用意され、600タイトル以上を毎週更新で無料配信していく予定となっている。
なお、このサービスは2008年8月7日までの体験キャンペーンとして提供されるサービスとなっている。キャンペーン終了後のサービス提供も予定されているとのことだが、せっかくの他社製品にはない付加価値なので、ぜひ継続的に提供してほしいところだ。
本体前面 | 十字ボタンの周囲に機能ボタンを配置 |
底面にUSB端子と電源、ヘッドフォン端子 | 手に持ったところ |
●思いのほか快適な動画再生
「GyaO for gigabeat」のコンテンツを視聴する方法は実に簡単だ。まずは事前の準備として無線LANの接続設定を行なう。トップメニューに[無線LAN設定]という項目があるので、これを選択して接続先の情報を登録する。
設定はSSIDの検索、もしくは手動による接続も可能だが、新たにAOSSによる接続もサポートされた。これにより、バッファロー製のアクセスポイントを利用している場合に限られるが、暗号キーを確認したり、手動で入力するといった手間なく、アクセスポイントの設定ボタンを押すだけで接続設定ができるようになった。
トップメニューから「無線LAN設定」を選択すると無線LANの設定ができる。SSIDを検索する方法に加えて、新たにAOSSによる接続がサポートされた |
また、「BBモバイルポイント」と「HOTSPOT」、「Mzone」による公衆無線LANサービスにも対応しており、外出先での利用も可能となっている。このうち、BBモバイルポイントに関しては3カ月間無料で接続できるキャンペーンが5月7日まで実施されているので、外出先での利用を検討している人は早めに購入すると良いだろう。
無線LANの設定が終わったら、メニューからGyaOを選んで通信を開始すると、「映画」「ドキュメンタリー」「ドラマ」「音楽」「スポーツ」「バラエティ」「アニメ」「アイドル」、「ビューティ」という9つのカテゴリが表示される。見たいコンテンツのカテゴリを選ぶと、それぞれ2~3のコンテンツが表示されるので見たいものを選んで再生すれば映像が表示される。
GyaO for gigabeatでは9つのカテゴリのコンテンツが提供される。アニメなどのコンテンツは比較的充実 |
映像は横方向の表示となるため、再生が開始されたらT802の本体を90度倒すようにして持ち替えるようにして見るスタイルとなるが、クリアな液晶のおかげで映像は見やすい。
再生は横方向。長時間の視聴は辛そうだがクリアな画質で快適に再生される |
無線LANを利用する以上、通信品質は電波状況や混雑具合に左右されるが、木造3階建ての筆者宅で試した限りでは、1階にアクセスポイントを設置した場合に、どの階、どの部屋からでもコマ落ちなくスムーズに映像が再生された。バッファしながらの再生となるため、多少、通信環境が悪い場合でも何とか再生できそうな印象だ。
残念ながら今回は実際に試せなかったが、Mzone対応なので、つくばエクスプレスでもスムーズに映像を再生できるのではないだろうか。
●横置きクレードルが欲しい
以上、東芝の新型gigabeat T802を実際に利用してみたが、新たにGyaOコンテンツの視聴が可能になっており、AOSSによる無線LAN接続の簡略化、ポッドキャストの動画コンテンツへの対応と、従来モデルの不満が解消されており、かなり便利になった印象だ。
従来のポータブルプレーヤーは、PCから転送した音楽を聴くため、どうしても周辺危機的なイメージがあったのだが、本製品は無線LANによる通信によって単独での利用も可能なため、どちらかというと携帯電話に近い感覚で利用できる。無線LANのため利用場所は限られるが、このようなインフラが整った場所で利用できる機会があるなら、購入を検討しても良い製品と言えるだろう。
ただ、家で使う場合などは、いくら軽いとは言え、手で持ったまま画面を見ているとそれなりに手が疲れてくる(場合によっては目も)。横置きでホールドできるようなクレードルがあると便利なのではないかと感じた。
クレードルのように置いて使うということができるようになれば、たとえばオンラインのフォトストレージサービスと提携して、無線LAN経由で写真を次々と表示するフォトフレームのような使い方も考えられる。音楽をBGMにスライドショーを表示したり、各種情報サービスと提携して写真の合間に天気やニュースを表示するなどというのも面白そうだ。
せっかくの無線LAN搭載なのだから、もう少し、gigabeatがあるライフスタイルを想像できるような活用方法を提案して欲しいところだ。そうすれば、もしかすると圧倒的なシェアの差を少しでも縮めることができるかもしれない。
関連情報
2008/2/26 10:58
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