イベントレポート

Interop Tokyo 2025

全国に先駆けインターネットを全学導入したあのキャンパスでは今、デジタルツインやLiDARやローカル5Gが連携。自動運転レベル4も目指している

「デジタルツインキャンパスコンソーシアム」のブース

 「Interop Tokyo 2025」の主催者企画「Academic Innovation」のエリアでは、大学研究室や各種教育機関などが研究成果を展示。慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)を拠点に発足した産学連携プロジェクト「デジタルツインキャンパスコンソーシアム」もブースを出展した。

 デジタルツインキャンパスコンソーシアムは、SFCが企業とコラボし、SFCのキャンパスに5G SA基地局網を構築してLiDARカメラなどの各種センサーをつなげることで、キャンパスのデジタルツインを作るというものだ。それによるデータなどは、学生がAPI経由で利用できるようにしたり、SFCのさまざまな分野の研究で使ったりする。

 ブースの説明では、かつてSFCが全国に先駆けてインターネットを全学導入したように、インターネットが普通になった現代に「もっと面白いキャンパス」という目標から始まったという。

 ブースでは、そうした研究の中からいくつか展示されていた。

デジタルツインキャンパスコンソーシアムの説明

神奈中と共同研究の自動運転、デジタルツインと連携してセンサー補完

 ブースで目立っていたのは、キャンパス内の自動運転シャトルバスの運行についての研究だ。

 大前研究室と神奈川中央交通との共同研究で、2022年からキャンパス内を走らせている。現在は自動運転のレベル2で、レベル4を目指すという。

 車両からは全方向を監視して、人や物を検出している。センサーとしては、GNSS、LiDAR、カメラ、ミリ波レーザーを備え、得意・不得意を補完し合うようにしているという。

 そしてSFCのデジタルツインと組み合わせることで、その時々でバスから死角になっている場所の物も知ることができるとのことだった。

自動運転シャトルバス
屋根の上のセンサー部分
自動運転シャトルバスの研究の説明

デジタルツインキャンパスをそのままメタバース化、講義もその中で実施

 「MEs」は、キャンパスのデジタルツインをそのままメタバースにしたものだ。脇田玲研究室とO(オー)株式会社による。

 アバターを操り、実物そっくりのバーチャルキャンパス内を自由に行動できる。脇田教授の講義をMEs内で実施することもあるという。「世界の見え方を新しくしよう」というのがコンセプトだとのことだった。

 MEsは、Interop Tokyo 2025で出展企業の製品やサービスを表彰する「Best of Show Award」において、「イノベーションテクノロジー(アカデミックチャレンジ(大学研究等))部門」の審査員特別賞を受賞した。

 なお、MEsは、ゲームプラットフォーム「Steam」での公開もしている。

「MEs」
アバターを操ってバーチャルキャンパス内を自由に行動
「MEs」の説明

「未来の当たり前」を創る研究、この次世代キャンパスでいろいろ実施

 「FutureVerse Architecture」は、仮想空間内の都市の未来像に基づいて行動変容につなげる試みだ。

 例えば、人混みを避けるために、MRを使って「キラバース(いい未来)」と「ヤババース(起こってほしくない未来)」を見せることで行動変容につなげ、1つの箇所に人が集中するのを防いで事故を防止するという。

 また、熱中症リスクに対しては、暑さ指数(WBGT)の専用計器なしに、スマートフォン内蔵センサーのデータを集めて暑さ指数を推定する手法を考案。このデータにより行動変容につなげるという。

 人流解析においては、広範囲を撮影する鳥瞰カメラでは、観光地のように人混みになっていたり、テントなどにより隠れることもある場所では精度が低下するという問題がある。この問題に対し、それらのリスクを軽量に推定して追跡に活用して精度を向上させるという。

「FutureVerse Architecture」

 株式会社ハイパーデジタルツインは、モニタリングシステムや自動対応システム、自動運転システムを開発している企業だ。

 SFCのキャンパスで「Tokyo NEXT 5G」を実施。ソフトバンクのプライベートな5G上にてPTP(Precision Time Protocol)により高精度で時刻を同期し、複数のLiDARで検知した点群を統合することで、点群の中で動いている物体を色付けする。会場でも色付けをデモしていた。

株式会社ハイパーデジタルツインの展示
LiDARの検知した点群。赤い部分が動いている
会場でデモに使われたLiDAR