イベントレポート

Interop Tokyo 2025

IOWN APNの凄さアピール。遠隔GPUで分散推論を実行、疑似旅行や裸眼XR相席対話技術なども~NTT Com

「IOWN」をフィーチャーしたNTTコミュニケーションズ株式会社のブース。なお、同社の「APN専用線プラン powered by IOWN」は今回、Interop Tokyo 2025で出展企業の製品やサービスを表彰する「Best of Show Award」において「APN 部門」のグランプリを受賞している

 「Interop Tokyo 2025」のNTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)のブースでは、IOWNを全面的にフィーチャー。IOWN APN(All-Photonics Network)のさまざまな利用例をデモしていた。

 いちばん目立っていたのが、IOWN APN越しの双方向ライブビューイングイベントだ。東京・高田馬場のライブハウスとInterop会場をIOWN APNでつなぎ、ライブの音声や映像を一方向で流すだけでなく、Interop会場の映像や音声もライブハウスに送られる。例えば、ライブ中のコール&レスポンスも、IOWN APNによって遅延なく実現できる。

 このデモには、ヤマハ株式会社と共同開発した独自技術「GPAP over MoQ」を利用。ライブハウスから演奏に合わせてInterop会場の照明をリアルタイムにリモート操作する様子もデモした。

 なお、GRAPは、映像や音声に照明などの舞台演出に関するデータをまとめる技術で、ヤマハが開発。また、MoQ(Media over QUIC)は、QUICプロトコルで低遅延に音声や映像を配信するためのメディア転送技術で、NTT Comが研究している。

IOWN APN越しの双方向ライブビューイング
Interop Tokyo 2025会場側から見たステージ(ライブ開始直前)。足元の照明を「GRAP over MOQ」でリアルタイムにリモート操作する

 「ハイブリッドトラベル」では、Interop会場と大阪・京橋とをIOWN APNでつなぎ、来場者がVRゴーグルで疑似旅行体験を体感できるようにしていた。「裸眼XR相席対話技術」は、IOWN APN越しの2人が、ホログラムで隣に相席しているかのような体験をするもの。Interop会場から東京・大手町で折り返して戻る約140kmの回線でも、じゃんけんなどほぼ遅延なしでコミュニケーションするところなどをデモしていた。

 「CPSロボット遠隔操作」では、約90km離れたデータセンターをデジタルツインとして3D空間に再現しながら、実際にデータセンターで動く作業用ロボットをリアルタイムで操作するところをデモした。

「ハイブリッドトラベル」
「裸眼XR相席対話技術」。IOWN APN越しにホログラムで相席
相手をVRのアバターにするデモも
「CPSロボット遠隔操作」

 「HDMI over APN」では、IOWN APNによってHDMI信号を非圧縮のまま低遅延で長距離伝送する技術を展示。20kmでの遅延が、0.1秒から0.1ミリ秒に短縮されたという。デモでは、4台のモニターを縦に並べてほぼ等身大のキャラクターが踊る様子を表示。さらにモニターに付いたカメラで人の目を認識し、映像がリアルタイムに追従するところも見せた。

「HDMI over APN」のデモ
「HDMI over APN」の信号変換装置

 「GPU over APN」としては、遠隔地のGPUをIOWN APNで接続する実証実験の結果を展示していた。

 川崎・秋葉原・三鷹のデータセンターのそれぞれのGPUを接続してクラスターを構成してAIの学習を実行した実験では、単一拠点の1.01倍とほぼ同じ学習時間だったという。また、3000km離れた海外をエミュレートした実験でも、単一拠点の1.07倍だったという。

 複数拠点のGPUを利用した分散推論の実験では、APN越しであってもGPUを増やすことによって正答率が上がったという。

「GPU over APN」の実証実験結果を展示
分散推論をデモ
分散推論が実行されている様子。下半分のメーターのうち、上の4つと、下の8つは、別のデータセンターで動いている
NVIDIA GH100の展示

 少し変わった展示が「光ネットワークデジタルツイン」だ。これは、ほかの展示とは逆に、APNを使う側ではなく、APNの光伝送路を構築するために、そのデジタルツインを作るというものだ。

 各伝送機器からデータを取得してデジタルツインを作ることで、設計時に伝送路の品質をシミュレーションで求めたり、運用時の状態をモニタリングして可視化したり、AIエージェントでお勧めの設定を提案したりできるという。

「光ネットワークデジタルツイン」の展示