第350回:機器追加はスグできる? 同時利用はどうなる?

UQ WiMAXの機器追加オプションを利用してみた


 市販アダプタの登場や内蔵PCの発表など、対応製品の選択肢が増えてきたWiMAX。こうなると、気になるのが複数台の機器をどう利用するかだ。今回はUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」で提供される「WiMAX機器追加オプション」を実際に利用し、機器の追加や削除方法、同時に利用した際の動作などを検証してみた。

1契約で複数台登録が当たり前に

市販の機器を購入し、オンラインで手軽に契約できるのがWiMAXの特徴の1つ。写真はアイ・オー・データ機器の「WMX-U01」

 「WiMAXの最大の魅力は何か」。そう聞かれたとしたら、個人的には恐らく「手軽さ」と答えるだろう。

 確かに下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの通信速度はWiMAXが持つ特徴の1つではあるが、現状はエリアが狭いこともあり、その実力が十分に発揮されていない印象もある。もしかすると、パフォーマンスという意味では、今後登場する他社サービスの方が有利かもしれない。

 しかし、機器の入手性や契約という点では、少なくとも現状ある他のサービスとは比べものにならないほどWiMAXは手軽だ。

 機器はWebからの契約だけでなく、家電量販店の店頭やオンラインショップでの通販などでも手軽に入手できる。その上、契約手続きもクレジットカードさえあればオンラインで数分程度で完了し、機器を入手してからほとんど待ち時間なく利用を開始することができる。

 そして、1契約で複数台の機器を利用するための「WiMAX機器追加オプション」サービスも、7月1日の有料サービス開始から、ついに利用することが可能となった。

 今月末頃からWiMAX内蔵PCが各社から登場してくることを考えても、このように複数台の機器を手軽に利用できるのは、まさにWiMAXならではの特徴と言えるはずだ。実際にどのように複数台の機器を登録すれば良いのか、同時に通信した場合はどうなるのかなどを実際に検証していこう。

統合ポータルから数分で追加可能

 UQ WiMAXのWiMAX機器追加オプションは、月額4480円の定額制サービス「UQ Flat」の利用者向けに提供されるオプションサービスだ。追加1台あたり月額200円で、機器の追加が可能になっており、契約時に登録した1台と含めて、1契約で最大3台までのWiMAX機器を登録することができる。なお、2010年1月末までは月額200円の機器追加料金は無料で提供されている。


WiMAX機器追加オプションを利用することで、1契約で複数台の登録が可能になる。追加1台あたり月額200円で、合計3台まで登録できる

 オプションサービスと言っても、事前の契約や申し込みなどは一切必要ない。機器を追加すると、その時点で1台あたり200円の月額料金が追加されるようになっており、機器の追加もオンラインで手軽にできるようになっている。

 具体的には、店頭で購入したWiMAXアダプタなどを利用して最初にオンラインサインアップする場合と同様に、「WiMAX統合ポータル」画面から申し込みをすれば良い。追加したいWiMAXアダプタを店頭などで購入後、PCに接続する。ドライバとユーティリティがインストールされると、「WiMAX統合ポータル」に接続できるようになるので、ここから申し込みをするわけだ。

 「WiMAX統合ポータル」には現状、UQ WiMAXを含めて6事業者が登録されているが、今回はここからUQ WiMAXを選択する。すると、新規申し込みをするか、機器追加をするかを選択できる画面が表示される。ここで機器追加を選択すると、UQコミュニケーションズの利用者向けサイト「MyUQ」のログイン画面に移動する。

 そして、ログイン画面で申込時の受付番号もしくは自分で登録したMyUQ IDとパスワードを利用してログインすると、PCに現在装着しているアダプタのMACアドレスと契約情報が表示される。

 その上で、「WiMAX対応機器の追加」ボタンをクリックし、機器を識別するためのニックネームを入力し、現状の契約に追加すれば良いわけだ。これでアダプタ側に登録情報が書き込まれ、回線が1度切断されたあとに再接続が完了すると、インターネットへのアクセスが可能になる。


(1)追加登録したいWiMAXアダプタをPCに接続。ドライバとユーティリティをインストール(2)WiMAX統合ポータルに接続できるので、機器追加オプションを提供しているUQ WiMAXを選択(3)申し込み形態の画面で既存会員を選択後、MyUQにログインする

(4)PCに装着するアダプタのMACアドレスが表示される。「WiMAX対応機器の追加」で追加する(5)識別用のニックネームを設定。また利用者を登録することも可能。本人以外を選ぶと名前や性別などを設定できる(6)契約情報を確認すると、機器が追加されていることが確認できる

 手順としてはものの数クリック、時間としても5分とかからずに設定できるというわけだ。今回はアイ・オー・データ機器のUSB接続型アダプタ「WMX-U01」を利用したが、PC内蔵のWiMAXなど、他の機器の場合も同じ手順での機器追加が可能だろう(MVNO事業者の専用機器は追加不可)。

 なお、登録した機器の削除だが、これも非常に簡単だ。MyUQのページで登録済みの機器を削除するだけで良い。この登録と削除を利用して、新しく購入したWiMAX内蔵PCを登録し、古いアダプタの登録を削除すれば機種変更も可能だ。つまり、機種変更にかかる手続き費用は200円で済むことになる。

 今後、WiMAX内蔵PCが増えるれば、機種変更が進み、もしかすると中古のアダプタが市場に多く登場する可能性も考えられる。契約が手軽なため、機器が自由に流通する可能性が高いという点もWiMAXならではの特徴と言えるだろう。


機器を削除するときは、MyUQから登録を削除するだけでOK。こちらも数分で作業が完了する

同時利用は後優先

 このように手軽に機器を追加することができるWiMAXだが、気になるのは同時利用した場合の動作だろう。

 UQ WiMAXのWiMAX機器追加オプションでは、前述したように合計3台を登録することができるが、このうち同時に通信が可能なのは1台のみに限られており、複数台での同時通信は不可能となっている。

 というわけで、同じ契約下にある2台のWiMAXアダプタを利用して、実際に同時通信にチャレンジしてみた。まず、1台をPCに接続し、WiMAXへの通信を確立。この状態で、もう1台のPCに追加オプションで登録したWiMAXアダプタを接続して、WiMAXへの接続を試みた。


同時接続はサポートされない。常に後に接続した機器が優先されるようになっており、一方の機器で接続すると、もう一方が自動的に切断される

 結論から言えば、同時接続時の動作は後優先だ。後から接続したWiMAXアダプタとの通信が確立すると、その数秒後に先に接続していたWiMAXアダプタ側の通信が自動的に切断されるのを確認できた。

 切断された1台目のPCで再接続処理を行なうと、今度は後から接続したPC側の通信が接続されるので、常に後に接続した機器の接続が優先されるようになっている。

 この後優先というのは確かに理にかなっている。例えば、自宅と外出先の両方でWiMAXを利用しているような場合、うっかり家のPCを接続したまま出かけてしまっても、後優先なら外出先側で問題なく接続が可能だ。

再接続でセッションの取り合いに

 ただし、この後優先というのは、使い方によっては困ったことにもなりかねない。例えば、上記のように2台のPCでWiMAXを利用する場合、最初に接続したPCは、後からもう1台のPCがWiMAXに接続すると、通信が急に切断されるといったことになる。また、WiMAXの接続ユーティリティは切断されると自動接続するように初期設定されていることが多いため、双方が再接続を繰り返すと、場合によっては接続と切断を繰り返す接続合戦に発展する。

 また、WiMAXをWAN回線として利用できる無線LANルータなども同様だ。機器追加オプションで複数台を登録し、1台はルータに繋ぎっぱなしで利用し、もう1台を外出先のPCで利用しようとすると、困ったことになる。外出先のPCでWiMAXに接続すると、家庭のルータが切断されるだが、そのルータも当然再接続を試みるため、今度は外出先側が切断されるなどいうループに陥ることになる。


ルータを利用し、1台は繋ぎっぱなし、もう1台は外出先で使いたいというニーズもありそうだが、この場合も再接続が繰り返されるとひどい目に会う

 というわけで、同時接続が許可されていないのであれば、その際の接続と切断の仕組みをもう少し工夫する必要がある。例えば、接続を開始する際に他の機器が接続中であるかどうか、もしくは他の機器から接続要求があったので切断されるなど、そういったメッセージが表示されるようにするのも1つの手だ(もちろんメッセージを非表示にできるようにすることは忘れずに)。

 また、後から他の機器からWiMAXに接続要求があっても、それを拒否できるような優先接続の仕組みがあっても良さそうだ。こうすれば、自宅のルータと外出先で併用するような場合でも、外出先で接続するときに優先接続を選ぶことで、自宅のルータが再接続しようとしても拒否することができるだろう。

 もちろん、他の機器が優先接続に設定されしまったことで、手元で利用している機器の接続が拒否される可能性もあるので、優先接続の設定を解除できるような方法や、MyUQのWebサイトだけは同時接続を認め、セッションの接続・切断をセンター側からコントロールできるようにするなどいった工夫があれば問題を回避できるだろう。

 いずれにせよ、同時利用ができないのは契約上致し方ないが、それに関連するトラブルを回避するような仕組みが足りない印象だ。

機種変更も機器追加オプションで

 このように、UQ WiMAXのWiMAX機器追加オプションを実際に利用し、複数台の機器を使った検証をしてみたが、いろいろな機器を必要なときに登録して利用できるというのは確かに便利だ。同時利用ができないということさえ頭に入れておけば、非常に便利にWiMAXを活用できるだろう。

 しかしながら、同時利用するつもりはなくても、ユーザーが意図せず、他の機器が接続されている可能性は考えられる。しかも、再接続を繰り返されると、接続と切断が繰り返されるのが厳しいところだ。この点は、何らかの対策を望みたいところだ。


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2009/7/14 11:00  

清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ