手元のPCをクラウド化するフリービット「ServersMan@Desktop」
フリービットが提供するサーバーアプリケーション「ServersMan」にWindows XP/Vista/7向けのバージョンとなる「ServersMan@Desktop」が新たに追加された。その使い心地を検証してみよう。
●待望のWindows版登場
iPhoneやAndoroid、Windows Mobile、NASなどの機器を外出先からもアクセス可能なサーバーとして利用することができるフリービットの「ServersMan」。そんなServersManに待望のWindows XP/Vista/7向けの製品が登場した。
Windows XP/Vista/7向けに無償で提供される「ServersMan@Desktop」。PCに保存されているファイルにインターネットから手軽にアクセスできる |
これまでServersManに興味はあったものの、手元にiPhoneやAndoroid、Windwos Mobile端末がない、かといって対応NASを購入する費用もないという人も少なくなかったと思われるが、今回の「ServersMan@Desktop」の登場によって、自宅や会社のPC、汎用的なサーバーなどを手軽に外出先からも利用可能となった。
ServersManは、インストールした端末をWebDAVサーバー、Webサーバーとして機能させることができるアプリケーションで、同社が運営するVPNサービス「Emotion Link」を経由することで、インターネット経由で安全かつ簡単に自宅や会社のPCに保存されているファイルにアクセスできるのが特徴となっている。
現状、PCのデータをどこからでも利用可能にする方法としては、インターネット上のストレージサービスや同期サービスを利用するケースが多いが、「ServersMan@Desktop」は自宅のPCをどこからでもアクセス可能なパーソナルクラウドとして設定することができるのがメリットとなる。
iPhoneやAndoroid向けのServersManは、どちらかというと端末にファイルをコピーするための転送手段的な使い方がされることが多かったが、NAS版のServersMan@CASや今回のServersMan@Desktopは、まさにクラウド上のパーソナルストレージ的な使い方ができる製品と言えるだろう。
●5分もあればセットアップ可能
ServersManの優れている点は、とにかくセットアップが簡単だということだ。
同社のWebページ(http://serversman.com)にアクセスし、「ServersMan@Desktop(for Windows)」をダウンロード。プログラムのインストールを開始し、アカウントとして利用するメールアドレスを登録すれば、すぐにPCをサーバーとして稼働させることができる。
この状態で、別のPCから同じく「http://serversman.com」にアクセスし、メールアドレスとパスワードでログインすれば「MyStorage」と「public_html」という2つのフォルダーにアクセスできる。
標準ではこれらのフォルダがユーザーの「AppData」内にあるServersManの設定フォルダー内(C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\ServersMan\Desktop\RootDir\)にそれぞれリンクされているので、ファイルは何も見えないが、ServersManの設定画面でフォルダの設定を変更すれば、PCに保存されている文書や画像などを参照可能だ。
ServersMan@Desktopは<http://serversman.com>から無償でダウンロードできる |
利用にはアカウントが必要。IDとして利用するメールアドレスを入力して登録する | 設定完了後、ログインするとすぐにサーバーとして動作する |
別のPCからブラウザーを利用し、<http://serversman.com>経由でログオンするとPCのファイルを参照できる | 標準ではユーザーフォルダ内のServersManの設定フォルダが公開される。PCのドキュメントフォルダーなどを公開設定しておけば、いつでも自分のデータにアクセスできる |
試しに、ファイルサーバーとして利用しているVail(Windows Server 2008 R2ベースの次期Windows Home Server)にインストールしてみたが、公開設定を共有フォルダーにしておくことで、外出先からも、普段利用している共有フォルダーのデータにアクセスすることができた。
通信には80、8080、8888、443のポートを利用するため、企業のネットワークなどで、これらのポートを利用した通信が完全に遮断されている場合は利用できないが、PC上のファイアウォールや一般的な家庭用のルーターなどの設定に関しては一切不要となっており、インストールから5分もあれば使える状態にできるだろう。
●多彩なクライアントからアクセス可能
自宅のPCへのアクセスには、前述したように<http://serversman.com>経由でアクセスすることも可能だが、これ以外にWebDAVを利用してアクセスることもできる。
Windows 7の場合は、認証方式の違いによって事前にレジストリの変更が必要になる。レジストリの変更方法はサポートページ<http://serversman.com/faq/win/faq_win.jsp>に説明があるので参照してほしい。レスポンスがあまり良くないのでおすすめはしないが、ネットワークドライブとして割り当てることで通常のドライブのように利用することも可能だ。
Windows 7でネットワークドライブとして割りあてる場合はレジストリで認証の設定を変更しておく必要がある |
また、iPhone、iPad、Andoroidなどの端末も、WebDAVクライアントを利用することで外出先から自宅のデータにアクセス可能だ。ただし、WebDAVはクライアントとサーバーの相性があるようで、アプリによっては正常にフォルダーが表示されない場合がある。
筆者が試してみた限りでは、iPhone/iPadでは「DAV-E Free」、「OneDisk」で問題なくアクセスできたが、「GoodReader」、「FIles2HD」、「OverTheAir」などはフォルダ参照ができなかった。Andoroidでは、「MobileWebdav」での接続を確認できた。
iPhone向けのWebDAVクライアント「DVV-E Free」。iPad用のクライアントではフォルダーが参照できない場合もいくつか見られた | Andoroidでは「MobileWebdav」を利用してアクセスすることができる |
なお、iPadに関しては、同社が6月2日に発表した「ServersMan HD」がWebDAVクライアントとしての機能も搭載しているので、これを利用するのが理想だ。6月18日時点ではまだ公開されていないが、審査完了後に無償で公開される予定となっているので、もうしばらく待つと良いだろう。
また、同社ではiPhoneやAndoroid向けのアプリケーションとして「Scoop」も無償で配布している。これは、ServersMan向けのクライアントアプリケーションの一種で、端末に保存されている画像や端末で撮影した写真をServersManが動作するサーバー上にアップロードすることができるようになっている。
Andoroid向けのScoopがServersMan@Desktopに対応しているとのことだったが、実際に試してみたところ現状のバージョンのScoopではServersMan@Desktopがアップロード先として選択できなかった。こちらも、対応バージョンが提供されるまで、もうしばらく待つ必要があるだろう。
撮影した写真などをServersManに保存できる「Scoop」。残念ながら筆者が試した時点のバージョンではServersMan@Desktopには対応していなかった |
●クライアント機能と機器間連携の充実がカギ
以上、フリービットの「ServersMan@Desktop」を実際に使ってみたが、べータ版とは言え、サーバー自体の完成度は悪くない印象だ。個人的には、公開できるフォルダーを複数設定できるとうれしいが、難しいことを考えなくても、誰でもインターネットからのアクセス環境を整えられる点は高く評価できる。
また、現状はGoogle Desktopのみの対応だが(Windows Search対応も予定)、検索機能が使えるのもかなり便利だ。わざわざフォルダーをたどらなくても、欲しいファイルに素早くアクセスできる。こういった使い勝手の良さはPC版ならではのメリットだ。
ただし、実際の使い勝手という意味ではまだまだ改善の余地はありそうだ。今後、Scoopの対応やiPad向けのServersMan HDの登場が予定されているとは言え、クライアント側の環境は汎用的なWebDAVクライアントに頼らざるを得ない。
現状、ユーザーからの支持を集めているインターネット上のサービスを見ると、TwitterにしろEvernoteにしろ、優れたクライアントがあるからこそサービスの評価も高い傾向にある。WebDAVという汎用的な技術はそのままに、クライアントは専用のアプリケーションを提供して、その使い勝手をとことんまで突き詰めることが今後の課題だろう。
場合によっては、EvernoteのPC向けクライアントのように、サーバーとして使うPC上でデータを手軽に収集し、ServersMan@Desktopで公開しているフォルダに、あらゆるデータをため込むようなアプリケーションも欲しいところだ。
データの共有に関しても、単にPublic_htmlをパスワードで公開するという最低限の使い方では面白くない。本コラムで紹介したPogoPlugのようにワンタイムでファイルを転送できるようにしたり、将来的にはGoogleドキュメントのように共同で文書を編集できるようになるなど、将来的にはもっと実用的な共有環境を提案して欲しい。
さらに言えば、企業向けでも使えるように、クライアントやサーバーにインストールしたServersMan@Desktopを管理、監視できるツールも、今後は必要になってくるだろう。
個人的には、ユーザー側のリソースを公開するパーソナルクラウドというのは、将来性がある分野だと思っている。しかしながら、現状、インターネット上で提供されているサービスよりも、機能や品質が劣るようでは話にならない。このため、ぜひともServersManには、ユーザー自らがサーバーを稼働させ、その運用コストを負担したとしても、それ以上の利便性と価値を提供するようなサービスに成長して欲しいところだ。
関連情報
2010/6/22 06:00
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