第426回:安くてコンパクトでテザリングも使える
日本通信 Android端末「IDEOS」


 日本通信からファーウェイ製のAndroid端末「IDEOS」が発売された。コンパクトでスタイリッシュなデザインも特長だが、SIMロックフリーなうえ、Android 2.2搭載でテザリングも可能となっている。その実力を検証してみた。

コンパクトでスタイリッシュ

 日本通信から発売された「IDEOS」は、Android 2.2を搭載したコンパクトな携帯端末だ。製品自体はファーウェイ製のグローバルモデルで、基本的には「スマートフォン」と言っていいのだが、本製品に付属するSIMはデータ通信専用のものとなっており、標準では音声通話には対応しない。

 同社では050番号を利用したモバイルIP電話サービスの提供も予定しているが、現時点ではサービスが開始されていないため、音声通話機能のない携帯情報端末ととらえるのが妥当な製品だろう。そもそも、本製品で音声通話が必要かどうかという点は意見が分かれそうだが、サイズや使い勝手を考えると、単純にモバイルルーター+αとして使うのが妥当な製品ではないかという印象だ。

日本通信の「IDEOS」。Android2.2を搭載したコンパクトな携帯端末

 では、早速、製品について見ていこう。まず印象的なのはサイズとデザインだ。幅54.8x高さ104x奥行き13.5(mm)、重量100gと非常にコンパクトになっており、ポケットにスット入るうえ、常に持ち歩いていてもほとんど重さを感じない。それでいて、本体には2.8インチのタッチパネルディスプレイを搭載しており、しっかりと「スマートフォン」らしさが演出されている。

 デザインもなかなか凝っている。個人的には、本体前面のボタン類の質感があまり好みではないが、メタリックブルーの背面カバーが非常に鮮やかで好印象だ。本体にはブラック、イエロー、メタリックレッドの付け替え用カバーも同梱されており、各色ちがった印象の端末に仕上げることができるのが面白い。

 価格も10日間の利用が可能なSIM(bo-mobileSIM U300)付きで2万6800円(日本通信オンラインショップ価格)と高くはないので、サブ端末などとして購入するのに悪くないのではないだろうか。

iPhone4との比較。一回り小さい背面のパネルが結構キレイ。ブラックのマット感も良いし、イエローのソリッド感も良い。この質感は非常に高い

メールチェックやWeb閲覧がすぐにできる

 では、実際の使い方について見ていこう。本製品を利用する場合、まずは付属のSIMを有効化する必要がある。パッケージに記載されている電話番号に携帯電話から電話をかけ、音声案内に従ってSIMの電話番号を入力する。これでSIMが有効化され、5分程度で実際に使えるようになる。

 本体カバーを開けてSIMを装着したら、続いてAPNの設定をする。一般的なスマートフォンの場合、利用する通信事業者が固定されているので、こういった設定は不要だが、本製品はSIMロックが施されてないこともあり、設定も自分で行う必要がある。

 設定情報はSIMカードのパッケージに記載されているうえ、設定情報も同社のWebページに記載されているため、さほど難しくないのだが、はじめての場合は少々戸惑う可能性がある。大手通信事業者のスマートフォンと同じイメージで購入すると、設定や使い方に苦労することにもなりかねないので、Android環境に慣れていない人にはあまりおすすめできない印象だ。

IDEOSのホーム画面APNの設定は手動。既存のスマートフォンユーザーでも、初めて設定するという人の方が多いかもしれない

 APNの設定が完了すれば、あとは通常のスマートフォンと同様に利用できる。すぐにWebページを閲覧することができるうえ、Googleアカウントを登録すれば、メールやカレンダーの利用やマーケットからのアプリのダウンロードもできる。このあたりは、Android端末そのものの動作だ。

 ただし、実際に使い始めると戸惑う部分も少なくない。まず、動作が若干遅い。最新のスマートフォンと比べると、ハードウェアの性能があまり高くないため、スクロールなどのスムーズさに欠ける印象がある。Youtubeの動画もHDではスムーズに再生できない。

 また、比較的処理の重いアプリ、たとえばATOKなどの日本語入力環境を導入すると、予測変換の表示などでワンテンポ処理が遅れる印象がある。ジェスチャー入力などでもパネルが表示されるまでにラグが感じられる場合もあり、利用するアプリを慎重に選ばないと苦労することになりそうだ。

重いアプリの利用は結構ツライ。ATOKなどは予測変換やジェスチャーでもたつく

 また、画面の狭さ(2.8インチ、横240×縦320ドット)も気になる場合がある。マップで地図を見るのは、思いのほか快適な印象があったが、他のアプリでは狭さがネックになる。たとえば、Webページの場合、携帯電話向けのサイトであれば問題ないものの、PC向けのサイトはほんの一部分しか表示できない。かといって全体を表示しよう縮小すると、文字が見にくいうえ、マルチタッチできないため操作ももどかしい。

 さらにツライのはGmailだ。先日のアップデートで、返信などがしやすい大きめのボタンが表示されるようになったが、IDEOSでは、このボタンが画面の半分近くを占有してしまうため、本文がほとんど見えない。qwerty入力ではキーが小さく、文字入力でタイプミスも多くなる。

マップは思いのほか使えるがマルチタッチが使えないのが欠点Gmailはアップデートによってかえって使いにくくなってしまったWebサイトもPC版は一部しか表示できない
ケータイ版はサイズ的には問題ないが画面で見るとフォントが荒く見にくい

 要するに、利用するアプリを厳選する必要があるわけだ。動作が軽いアプリ、シンプルな画面で解像度をあまり必要としないアプリなど、IDEOSのハードウェア環境に合わせたアプリを選んで利用しないと、普段の利用にストレスがたまってしまう。

 考えようによっては、限られたリソースを使いこなす楽しみもあると言えなくもないが、基本的には最低限のビューワー的な端末と割り切って考えた方がいいだろう。

複数のSIMでテザリングを試す

 このように単体での利用には、ある程度の制約があるIDEOSだが、モバイルルーターとして使いたいという人も少なくないだろう。

 冒頭でも軽く触れたとおり、本製品にはAndroid 2.2が搭載されているが、このバージョンでは、本体をUSBや無線LANルーターとして利用できるテザリング機能がサポートされている。

 使い方は簡単で、設定画面の「無線とネットワーク」から「テザリングとポータブルアクセスポイント」を開き、「ポータブルWi-Fiアクセスポイント」にチェックを付けて機能を有効にすればいい。

 これで、「AndroidAP」というSSIDのアクセスポイントとして動作し、PCやゲーム機など、無線LANに接続したいクライアントが、IDEOS本体の3G経由でインターネットに接続できるようになる。

Android 2.2のテザリング機能が使える設定画面でチェックを付ければアクセスポイントとして動作可能mobile AP Shortcutなどを使うと切替が簡単

 国内で発売されているAndroid端末の場合、2.2搭載の機種でもテザリングが無効になっている場合が多いが、本製品は基本的にグローバルモデルそのままの仕様となるため、こういった機能も使えるわけだ。

 「mobile AP Shortcut」などのアプリを入れておけば、ホーム画面からすぐにテザリングを有効にすることもできるため、この使い方はなかなか快適だ。

 気になる連続通信時間だが、PCから複数サイトに対してPINGとHTTP GETを連続して実行し続けるバッチファイルを実行して検証してみたところ、満充電の状態からIDEOSのバッテリーが切れて動作が停止するまで約3時間28分となった。

 最近のモバイルルーターは、もっと長時間の通信が可能な製品も存在するが、これくらい動作すれば十分に実用的な範囲だろう。

 続いて、単体時とモバイルルーター時のパフォーマンスも検証してみた。本製品はSIMロックが施されていないため、日本通信のSIMだけでなく、手元にあったイー・モバイルとWillcom Core 3GのSIMでも計測してみた。

 b-mobileイー・モバイルWillcom Core 3G
 下り上り下り上り下り上り
単体通信時302239908158698419
テザリング時2705039060280100
※SPEEDTEST.NETを使用
※テザリング時:iPhone4を無線LANで接続してSPEEDTEST.NETを実行
※Willcom Core 3GはFOMA網を利用したもの
※単位はkbps

 結果を見ると、単体利用時のパフォーマンスは、回線次第という印象だ。標準の日本通信製SIM(FOMA網)を利用した場合、同社がベストエフォートの最大速度として提示している300kbps前後をマーク。筆者宅の環境では同じFOMA網を利用するWillcom Core 3Gがわずかながらそれよりも高速となり、下りではイー・モバイルの回線がもっとも高速となった。

 一方、テザリング時のパフォーマンスは、本体の性能がボトルネックになっているからだろうか、あまり良好な値とは言えなかった。とは言え、Webやメールといった使い方であれば、300kbps前後でも実用的な印象で、実際に外で使っている限りは不満はない印象だ。

この製品に何を求めるか

 以上、日本通信の「IDEOS」を実際に使ってみたが、この製品に何を求めるかで評価は変わってくるだろう。

 お小遣いで買えるスマートフォン、として購入してしまうと機能的な制約に物足りなさを感じてしまう可能性が高い。一方、モバイルルーターとしては、決して悪くはないのだが、やはり速度やバッテリー駆動時間が少々物足りない印象がある。

 個人的には、PCの世界で言うところのネットブックに近い印象を受ける。もちろん、ネットブックで十分と考える人も少なくないが、ハイパフォーマンスなPCの世界を知ってしまった人にとっては、結果的に物足りなさを感じてしまう。

 そう考えると、モバイルルーター+αというとらえ方がもっともしっくり来る感じだ。SIMロックが施されていないため海外で使うこともできるうえ、普段はモバイルルーターとして使いつつ、たまにメールをチェックしたり、ゲームを楽しむといった程度であれば十分に活用できる。いずれにせよ、ある程度、割り切った使い方をすべき製品と言えそうだ。


関連情報

2011/1/25 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。