第427回:iPhoneに対応した「ホームメディアリンク」
LANDISKやDLNAサーバーに外出先からアクセス


 アイ・オー・データ機器から、同社製のNAS製品に外出先からアクセスできるiPhone用アプリ「ホームメディアリンク」が登場した。iPhoneをDLNA中継サーバーとして使えるなどメディアの再生に強いのが特徴だ。その機能をチェックしてみた。

NASの主役もスマートフォンへ

 NASのスマートフォン対応が進んでいる。今回取り上げるアイ・オー・データ機器のLANDISKシリーズもそうだが、バッファローの製品やQNAPなどの海外製NAS、Windows Home Serverなど、スマートフォン向けのアプリが提供され、外出先から自宅のNASに手軽にアクセスできるようになってきた。

アイ・オー・データ機器から登場したiPhone向けアプリ「ホームメディアリンク」。自宅のNAS上のメディアをリモート再生できる

 これまでNASは、PCのデータを保存する場所であったが、最近では外出先を中心にスマートフォンの利用者が増えてきていることから、PCだけでなくスマートフォンからもNASを使えるようにしたというわけだ。今後、スマートフォンやタブレットが増えてくれば、むしろこちらの機能が主役になってくる可能性もありそうだ。

 とは言え、現状、スマートフォン対応と言っても、各メーカーの対応状況はまちまちで、機能にも差がある。今回、アイ・オー・データ機器からリリースされたiPhone/iPad/iPod touch向けの「ホームメディアリンク」もそうで、外出先から自宅のLANDISKにアクセスできるものの、その操作対象は動画、音楽、写真などのメディアファイルに限られている。

 ビジネス用途であれば、文書ファイルの表示や受け渡しなどの機能も欲しいところだが、この機能はPC向けに提供される「リモートリンク」で実現されているものの、今回の「ホームメディアリンク」では対応していない。あくまでも、外出先から自宅のメディアを再生するための機能というわけだ。

 しかしながら、このホームメディアリンクは、なかなか凝った機能を備えており、外出先に存在するDLNA対応機器にメディアを中継することができるなど、他のスマートフォン向けアプリにはない機能を備えている。では、その利用方法を実際に見ていこう。

LANDISK HDL-Sシリーズでテスト

 まずは、利用環境について触れておこう。

 今回、取り上げる「ホームメディアリンク」は、iPhone/iPad/iPod touch向けに1月にリリースされた最新バージョンだ。同アプリは、昨年12月に公開されたが、今回の新バージョンでは、専用ケーブルを利用したテレビなどへの外部映像出力、iOS4のマルチタスク対応によるバックグラウンド再生に対応している。

 一方、接続側となるNASだが、これは幅広いモデルに対応している。今回は、HDL-Sシリーズを利用したが、HDLP-S、HDL2-S、HDL4-G、HDLP-G、HDL2-G、HDL-GSなどのモデルでも利用可能だ。筆者宅にも2007年発売のHDL-GSが存在するが、ここまで古いモデルでも最新の機能が使えるというのはありがたい限りだ。

今回、自宅側のNASとして利用したLANDISK HDL-Sシリーズ。手軽に購入できるシングルドライブのNAS

 設定に関しては、さほど難しくないと言って良いだろう。必要な設定は、ダイナミックDNSサービスである「iobb.net」への登録、ホームメディアリンクの有効化、iPhone側でのアプリ設定の3ステップとなる。

 最初のiobb.netへの登録だが、設定は単純なものの時間が結構かかる。HDL-Sの設定画面から製品のシリアル番号や希望するホスト名、メールアドレスなどを入力して設定するだけなのだが、設定を実行すると、数分~十数分ほど、設定中が続き、なかなか完了しなかった(起動にやたらと時間がかかる場合もある)。

 おそらく、UPnPの設定に時間がかかっているように思えるので、UPnPを無効にして設定した方が良さそうだ。しかし、本製品に限ったことではないのだが、UPnPでの設定が環境によってうまくいかない状況は、もう少しどうにかならないのだろうか? 個人的には手動でポートを開けるのに慣れてしまったが、このあたりは初心者ユーザーには大きな障壁となる。もう少し、手間のかからない方法を各メーカーに考案してほしいところだ。

ダイナミックDNSサービスの「iobb.net」に登録。UPnPで設定できるかどうかは環境次第

 話を元に戻そう。iobb.netの登録が完了したら、続いてリモートの設定をする。設定画面からリモートリンクの設定画面を表示し、「ホームメディアリンク」を有効にする(PCからファイルにアクセスしたい場合はリモートアクセスも有効にする)。利用するポートは標準の60000/60010のままでかまわないが、もしもUPnPを使わずに設定した場合は、手動でルーターのポートフォワードの設定をしておこう。

 LANDISK側の基本的な設定はこの2項目のみだが、ホームメディアリンクでは、DLNAサーバー機能を使ってメディアを公開する。このため、前提条件としてLANDISKでDLNAサーバー機能が有効になっていること、さらにリモートアクセスで接続する際にユーザーを指定するので、あらかじめユーザーを作成しておく必要がある。これらの設定もチェックしておこう。

ホームメディアリンクの機能を有効化する。ファイルにアクセスする場合はリモートアクセスも有効にしておく手動で設定する場合は、リモートアクセス用に50000、ホームメディアリンク用に60000と60010のポートを転送しておく

 ここまで準備ができたら、iPhone側の設定をする。「ホームメディアリンク」でアプリを検索してダウンロード。起動したら、まずはログイン先のサーバーを登録する。iobb.netで取得したホスト名、およびLANDISK上のユーザー名とパスワードを登録する。

 これでログインすると、iPhoneからiobb.net経由で自宅のLANDISKへと接続され、しばらくすると画面上にDLNAサーバーとして動作する機器が一覧表示される(時間がかかったり、リロードしないと表示されない場合もある)。後はローカルの場合と同様に、VideoやMusicなどアクセスしたいデータのフォルダを参照し、ファイルをタップすればiPhone上で再生されるというわけだ。

iPhoneでアプリをダウンロード(無償)iobb.netのホスト名とユーザーを指定してアクセス接続できるとネットワーク上のDLNAサーバーが表示される

 なお、自宅のネットワークに他のDLNAサーバーが存在する場合は、それも一覧に表示されるが、実際にメディアを参照したり、再生したりできるかは設定や相性の問題がある。写真などであれば問題なく表示できる場合もあるが、動画はファイルが表示されなかったり、再生できない場合もあるので、基本的にはLANDISKシリーズ用と考えた方がいいだろう。

 実際に試してみたところ、動画の再生などもなかなかスムーズだ。iPhoneを無線LANで接続した場合も、3Gで接続した場合でも1280×720/1.5MbpsのMP4の動画をスムーズに再生できた。もちろん通信状況にもよるが、3Gでも意外にストレス無く動画が見られるのは驚きだ。

 ただし、再生できるファイルは限られる。動画はH.264(.m4v、.mp4、.mov)、MPEG-4(.m4v、.mp4、.mov)、画像はPNG、TIFF、JPEG、GIF、DIB、音楽はAAC(著作権保護されたAACは除く)、MP3、MP3 VBR 、Audible(フォーマット2、3、4)、Apple Lossless、AIFF、WAVとなっている。形式の異なるファイルは事前に変換しておく必要などがあるのが注意点だろう。

通信環境や映像のサイズなどにもよるが、3G経由でも快適に再生できる

中継サーバーとしても使える

 このように、自宅のメディアを手軽にiPhoneなどで再生できるホームメディアリンクだが、他のアプリにはない面白い機能を備えている。中継機能だ。

 この機能は若干わかりにくいので例を交えて紹介しよう。友人宅に遊びに行ったときに、そこにDLNA対応のテレビがあったとしよう。通常、このテレビでは友人宅に存在するDLNA対応のサーバーしか参照することができない。ここまでは普通だ。

 しかし、ホームメディアリンクをインストールしたiPhoneがあれば、この友人宅のテレビで、自宅にあるLANDISK上のメディアを再生することができる。iPhoneを友人宅の無線LANに接続後、前述した場合と同様にホームメディアリンクを使って自宅のLANDISKにアクセスする。その後、メニューから「Transmit」を選ぶと、自宅のLANDISKに接続しつつ、iPhone自体がDLNAサーバーとしてふるまうようになる。

 ただし、iPhoneは中継するだけなので、参照するメディアはあくまでも自宅のLANDISK上のものとなる。このため、友人宅のテレビ上にiPhoneが表示されるが、そこからアクセスして再生できるのは、遠く離れた場所にある自宅のLANDISK上のメディアということになるわけだ。

ホームメディアリンクで「Transmit」を選ぶと中継サーバーとして機能する(RemoteLink)と表示されているのが中継サーバー経由でアクセスした自宅のDLNAサーバー

 3Gでは使えなかったり、動画の場合は再生機側がMP4の再生に対応している必要があるなどの注意点はあるが、こういったことが手軽にできるのは魅力的だ。これまで家庭内だけで閉じていたDLNAの環境が、離れた場所に拡張されるようなイメージで、なかなか面白い。

 以上、アイ・オー・データ機器のHDL-Sシリーズと「ホームメディアリンク」アプリを実際に使ってみたが、外出先で自宅のメディアを参照する手段としては、なかなか手軽で良いのではないかという印象だ。

 ただし、欲を言えば、iPhone用の動画を用意するのが面倒なので、ここを何とかして欲しいところだ。現状のパワーでは難しそうだが、将来的には自動トランスコード、もしくはトランスコードしながらストリームしてくれるようになるとありがたいところだ。

 また、文書ファイル参照用のアプリもあるとありがたい。次はこの機能に期待したいところだ。


関連情報

2011/2/1 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。