第462回:設定・サポート込みで手軽にNASを利用できるNASリースサービス「楽蔵」


 QNAPの正規代理店として知られる株式会社ユニティから、リースでNASを利用可能なサービス「楽蔵(らくぞう)」が開始された。どのような製品が利用でき、どのような運用ができるのかを同社 プロダクト・マーケティング部 部長 木村昇氏の話と共に、実際に検証していこう。

NASのリースという新しい形態

ユニティが開始した、リースでQNAPのNASを利用可能なサービス「楽蔵」

 中堅・中小の環境で、設定やサポートも含め、なるべく手間なく、しかも低コストでファイル共有環境を構築したい。

 もしも、あなたがこのような相談を受けたとしたら、どのように回答するだろうか?

 もちろん、正確な提案をするには、より多くの情報が必要かもしれないが、とりあえず「NASを購入する」というのが妥当な提案になることだろう。

 専任の管理者が不在になりがちな中小の現場を考えると、OSをインストールしてファイルサーバーを構築したり、それを運用していくことは難しい。であれば、最低限の設定ですぐに使えるうえ、管理も簡単なNASが候補としては相応しいだろう。

 しかしながら、現状、NASはコンシューマー向けも含め、幅広い機種が存在する。この中から、業務に利用する製品を選ぶのは、なかなか難しい判断となる。

 データの安全性を考えれば、RAID5では不安、できればRAID6が欲しいうえ、長期間、常時稼働させられるだけの安定性も必要になる。業務の集中などを考えるとパフォーマンスも確保しなければならないだろう。

 そういった条件を挙げていけば、自然とハイエンドモデルということになるが、そうなると導入コストが高くなりがちだ。数十万円単位の出費となると、導入が難しいというケースもあることだろう。

 そんな中、株式会社ユニティ(以下ユニティ)から登場したのが、今回取り上げるNASのリースサービス「楽蔵」というわけだ。サーバーをリースで提供する形態は以前から存在したが、そのNAS版というわけだ。

初期設定やサポートも含め月額コスト化

プロダクト・マーケティング部 部長 木村 昇氏

 では、ユニティが提供する「楽蔵」は、どのようなサービスなのだろうか? その詳細について、まずは同社 プロダクト・マーケティング部 部長 木村 昇氏に話を聞いた。

 木村氏によると、「2010年10月から別の名前でサービスの提供を開始していたのですが、今回、『楽蔵(らくぞう)』というサービスで新たに展開を開始しました。ターゲットとしては中堅・中小の企業で、ファイル共有などのIT導入の必要性に迫られているものの、管理者が不在のケースを想定しています。このような環境に、初期導入コストを押さえながら利用できるファイル共有環境として月額9,975円(税込み)からのリースでQNAPのNASを提供しています」とのことだ。

 PCが1人1台の体制になって久しいが、数十~百名前後の中堅・中小の現場では、まだファイル共有環境が整えられていないケースが少なくない。こういった現場でも手軽に利用できるように、NAS導入の敷居を下げたというわけだ。

 具体的にどのような機種を、どのような手順で利用できるのかというと、以下のスペックシートを見ると、現状は、デュアルコアのATOMを搭載した4ベイタイプのQNAP製のNASで、ハードディスクは1TB×4本がRAID6で合計2TBの容量となっている。

 製品としては、「TS-459 Pro II」に相当するが、標準でメモリが3GBに増設されているうえ、製品の左上のロゴが「楽蔵」に変更されているのが違いと言えそうだ。QNAPのNASの中では法人向けハイエンドモデルに分類される製品で、現状、4ベイモデルの最上位機種と言える製品だ。

 木村氏によると、「この製品を初期設定や導入後のサポート対応を含めてリースで提供します。無料の1カ月のお試しサービスを用意していますので、まずはこれを利用していただくことになります。申し込み後、弊社スタッフが現場に機器を持ち込み、アカウントの登録や共有フォルダの作成などのNASの初期設定、さらには接続するクライアントへのネットワークドライブの割り当てなどの設定をさせていただきます。これでNASが使えるようになります」とのことだ。

 リース契約をする前に、1カ月もの間、実際の環境でテストできるのは大きな魅力だ。しかも、単に製品が貸し出されるだけでなく、共有フォルダやクライアントの設定までも実施してくれるうえ、万が一、お試し期間中に製品やサービスに満足できなかった場合は、機器撤収作業まですべて無料で行なってくれる。もちろん、お試し後、そのまま継続してリース契約することができるので、気軽にお試しサービスを使ってみるといいだろう。

「楽蔵」のおもな仕様
CPUIntel Atom 1.8GHz Dual-core Processor
メモリー3GB
HDD1TB x4 (ホットスワップ対応RAID6 / 実効容量 約2TB)
接続ギガビット Lan × 2
USBUSB 3.0×2(前面1、背面1) USB 2.0×4(背面4)
CAL無制限
対応OSWindows 2000/XP/Vista/7、 Mac OS X、Linux、Unix
消費電力約35W (動作時)
サイズ177×180×235(高×幅×奥行)mm
保証期間5年
故障時の対応交換品先出し発送 / 訪問修理(オプション)

 一方、設置後のサポートについてだが、「運用や管理に関する問い合わせには電話で対応いたします。故障についても、良品先出し交換による5年間(リース期間)長期無償保証を基本に、訪問修理にもオプションで対応可能となっています(木村氏)」とのことだ。

 たとえば、ハードディスクが故障した場合、どのような対応になるのかというと、「ハードディスクの故障が明らかになった場合は、交換用のハードディスクを送付し、専任サポートが電話で方法を説明しながら、交換の対応させていただきます(木村氏)」という。

 このようなサポート体制までも含めて、1万円以下の月額費用で利用できるのであれば、決して高くはない。実際、リース期間である5年間の利用を考えると、ハードディスクに何らかの不具合が発生する可能性は高くなる。購入の場合、この交換費用や手間は自己負担となるが、リースであれば費用の心配がないうえ、しかも万全のサポートの元で交換作業ができる。この点は、企業ユースを考えると非常に心強いと言えるだろう。

どこまでNASの機能を使えるか?

 このように、設定や管理の心配がないことが魅力の「楽蔵」だが、ユーザーによっては、逆にどこまで使い込んで良いのかが気になるところだ。多機能なことで知られるQNAPのNASということで、リモートアクセスなどいろいろな用途に使いたいというケースもあるだろう。

 実際にリースで提供される製品を試用してみたところ、機能的には特に制限されていないことを確認できた。iTunesサービスなど、ファイルサーバー以外の機能は標準では有効になっていないが、設定画面から有効化することが可能だ。

 木村氏によると「基本的にファイルサーバーとしての利用のみを想定していますので、サポート外とはなりますが、機能的には使うことは不可能ではありません。弊社にはQNAPのNASの機能に精通した技術スタッフがおりますので、いろいろとご相談させて頂くことは可能です」とのことだ。

 たとえば、アラートなどの機能はファイルサーバーそのものの機能ではないが、日々の運用に欠かせない機能となる。「楽蔵」ではメールによる通知以外に、IM(Windows Live Messenger)やSMSを使った通知にも対応しているので、これらの設定については、同社に依頼することもできるだろうし、自分で設定することも可能となっている。

 これ以外の機能。たとえば、メディア共有やUSBハードディスクへのバックアップ、リモートレプリケーション、リモートアクセスなど、QNAPのNASには非常に魅力的な機能が搭載されているが、これらに関してはリースモデルの「楽蔵」で対応できなかったとしても、販売モデルを使って同社にインテグレートを相談することもできる。

 同様に、基本的には23区内とされている導入場所、初期設定の範囲などについても、「気軽に相談してほしい(木村氏)」とのことだ。NASの導入で迷っていることがあれば、まずは気軽に相談してみるのがよさそうだ。

QNAPならではの多機能なNAS。基本的にはファイルサーバーとしての利用しかできないが、機能的には無効になっていない

アンチウイルス機能も利用可能

 このように、使える機能は限られる「楽蔵」だが、一点、注目したいのが「アンチウイルス」機能を標準で搭載している点だ。ClamAVを利用したウイルスチェック機能が搭載搭載されており、標準ではNAS上のすべてのフォルダのファイルを1日1回(0:00)にスキャンする設定が登録されている(定義ファイル更新も1日1回自動実行)。

無料で利用できるアンチウイルス機能も標準搭載

 ファイルサーバーやNASでのウイルス対策はコストが高くなってしまったり、物理的にソフトをインストールできない場合があるため、何も対策がなされないケースが多いのだが、ネットワークですべてのPCが接続されていることを考えると、何も対策をしないというのは非常に危険な状況と言える。

 これに対して、「楽蔵」であれば、機能的に豊富とは言えないものの、追加料金なしでNASのウイルス対策までもができてしまう。専任の管理者がいない企業では、なかなかNASのウイルス対策まで気が回らないことが多いが、「楽蔵」であればおまかせでかまわないことになる。

 このほか、同じく最新のファームウェアでMac OS X 10.7 Lionへの対応も図られており、TimeMachineを利用したバックアップにもしっかりと対応しているうえ、パフォーマンスもシーケンシャルのライトで100MB/sを超えるなど非常に優秀だ。こういった最先端の機能を搭載したNASを使えることも、「楽蔵」の大きな魅力と言えそうだ。

デュアルコアCPUの恩恵でパフォーマンスも優秀

リースでNASも所有から利用へ

 以上、株式会社ユニティが提供するQNAP NASのリースサービス「楽蔵」を実際に試してみたが、初期投資を低くし、サポートまで考慮した長期的な利用を検討している場合は、検討する価値が十分にあるサービスだと感じた。

 同社、木村氏も、「リースを利用することでNASも『所有』から『利用』するものへと変化させることができます。新規導入だけでなく、すでに利用しているPCサーバーの交換の相談も多く頂いていますので、活用方法なども含めて、ぜひご相談いただきたいと思います」と語る通り、既存のPCサーバーやコンシューマー向けNASからの移行に適したサービスと言える。気軽に相談してみるといいだろう。


関連情報

2011/10/18 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。