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「脱着式Wi-Fi」が集合住宅でのトレンドに? 開発の背景を「つなぐネット」に聞いた
avex traxがプロデュースする賃貸マンション「THE MUSIC COURT」でも導入
2025年4月4日 06:05
株式会社つなぐネットコミュニケーションズ(つなぐネット)が1月8日、マンション全戸一括インターネット接続サービスにおいて「脱着式Wi-Fi」の採用を開始すると発表。3月26日には、avex traxがプロデュースする賃貸マンション「THE MUSIC COURT」(大阪市浪速区)への導入も発表した。
同社のほか、同じくマンション向けインターネット接続サービスを展開する株式会社ファミリーネット・ジャパンでも2月21日、賃貸住宅向けに脱着式Wi-Fiの提供開始を発表している。なぜ、集合住宅で脱着式Wi-Fiの導入が広がっているのか? 今回は、つなぐネットに開発の背景などを取材した。
電源コンセント直挿しタイプのWi-Fiアクセスポイント
つなぐネットの脱着式Wi-Fiは、壁面の電源コンセントに直挿しして設置するタイプのWi-Fiアクセスポイント機器で、無線LAN規格はWi-Fi 6に対応。有線ポートはWAN側・LAN側ともに最大1Gbpsで、WAN側をマルチメディアコンセントの有線LANポートにケーブル接続して使用することを想定している。大きさは63mm×33mm×150mm(幅×奥行×高さ)。
ディスプレイが付いていて、SSIDとパスワードが表示される点も特徴だ。SSIDとパスワードは、ボタンを押すだけでランダムな文字列に変更できる。なお、今春にはメッシュ接続にも対応する予定だとしている。
つなぐネットでは、集合住宅に全戸一括でインターネット接続を提供するサービス「UCOM光 レジデンス」において、この脱着式Wi-Fiを提供する。新築物件のほか、既存物件であっても経年劣化によるネットワーク機器の更新時に、脱着式Wi-Fiに置き換えていく予定だという。
これまでの主流「壁埋め込み型Wi-Fi」との違いは?
つなぐネットをはじめとして、集合住宅に一括でインターネット接続サービスを提供する事業者はいくつもある。その場合、各世帯に設置する通信機器として現在の主流は「壁埋め込み型Wi-Fi」だという。電源コンセントおよびテレビアンテナや有線LANなどの端子が一体化されたマルチメディアコンセントに、Wi-Fiアクセスポイントも内蔵されているかたちだ。
つなぐネットの親会社であるアルテリア・ネットワークス株式会社で脱着式Wi-Fiの企画・開発を担当した栁澤重守氏(マンションプロダクトマネジメント部 ソリューションサービス課 課長)によると、「壁の中にWi-Fiアクセスポイントが埋め込まれているので、スッキリと目立たない」というメリットがある反面、「設置には電気工事が必要」である点がネックだ。
故障した際など修理・交換にあたっては電気工事士による立ち入り工事が必要となり、事業者・入居者の双方にとって日程調整の手間などが負担になるというわけだ。
また、「アクセスポイントが放出する熱を抑えるために通信速度を抑える必要がある」という課題も挙げている。「壁埋め込み型Wi-Fiに使われているICチップは、ものすごく性能が高い」にもかかわらず、熱がこもるために「アクセスポイントの仕様を、本来発揮できるレベルよりセーブさせている」という。
こうした課題を解決するために開発したのが、脱着式Wi-Fiだ。
機器本体が壁の外に配置されるため放熱しやすく、アンテナ部も壁の外に位置することになり、安定した通信が期待できるとしている。また、機器本体の設置は誰でも行えるため、例えば故障してしまった場合にも、サポートなどに連絡して代替機を送ってもらってユーザー自身で交換できる。さらに、高速な無線LAN規格など機器のグレードアップの際も同様に、立ち入り工事不要で置き換えられえるわけだ。
なお、脱着式Wi-Fiというスタイルの製品は、すでに多くの製品がリリースされているが、その中には「電源ユニットをあらかじめ壁に埋め込むタイプのものもある」という。しかし、「アクセスポイントの故障は電源が原因になることがほとんど。電源ユニットを修理するとなると電気工事が必要」と指摘。Wi-Fiユニットのみを脱着式とするタイプでは、運用面では壁埋め込み型とあまり変わらないとしている。
昨今の賃貸住宅は「入居した瞬間からつながって当たり前」
柳澤氏によると、昨今の賃貸住宅では「インターネットは重要な生活インフラのため、賃貸のマンションやアパートでは入居した瞬間からつながって当たり前」。さらに「Wi-Fi完備がスタンダード」だという。
つなぐネットが脱着式Wi-Fiを投入する全戸一括インターネット接続サービス「UCOM光 レジデンス」は、通信速度が最大100Mbps~10Gbps(世帯数などによる)で、専有型または共有型のインターネット接続回線を集合住宅の共有部設備まで引き込んでいる。共用部設備には光終端装置、ルーター、スイッチングハブがまとめられており、各世帯へは、VLANで通信を分けて、光配線/LAN配線/G.fastのいずれかの方式で接続している。
また、部屋数の多いファミリー向けの物件では、1世帯ごとに「ミニハブ」を設置。このミニハブによって、共有部設備からの配線を世帯内の各部屋のマルチメディアコンセントに分配している。
このマルチメディアコンセントは、以前は世帯内の複数の部屋に設置されていたが、最近ではリビングや洋室など限られた部屋のみ。これは「Wi-Fi利用を想定しての変化と受け止めている」(つなぐネット広報)という。
集合住宅の全戸一括インターネット接続サービスでは、どの世帯も常にインターネットに接続できる状態になっているため、入居後の工事は不要だ。また、Wi-Fiでの接続を前提にしているため、入居者がアクセスポイントやルーターなどの機器を用意しなくても、スマートフォンやPCにSSIDとパスワードを入力するとインターネットに接続できる。
今回、脱着式Wi-Fiの導入が発表された「THE MUSIC COURT」は、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社(avex trax)がプロデュースし、信和グループが運営する賃貸マンションだ。音楽クリエイターをサポートするというコンセプトとなっており、楽器演奏が可能な防音性が特徴。共用スペースに音楽スタジオも備えている。
全戸一括インターネット接続サービスとして「UCOM光 レジデンス」が提供されるが、「アルテリアグループの法人向け専有型回線を引き込むもので、他のマンション・オフィス等のユーザーと回線を共有する共有型回線に比べ他ユーザーのトラフィック影響を受けにくく、動画配信や、音楽のライブストリーミング、音楽ファイルのクラウド保存・共有といった、大容量の利用用途に対しても高速かつ安定した通信環境を実現する」としている。