不満点の解消でより使いやすく アイ・オー・データ機器「RockDisk Next」
アイ・オー・データ機器から「挑戦者プレミアム」ブランドとなるNAS製品「RockDisk Next」が発売された。従来モデルから、細かな改良を加え、より使いやすくなった製品だ。その実力を検証してみた。
●タブレットのストレージに
iPadに、Android端末、さらにWindows RTなど、タブレット端末の利用を考えているのであれば、こういった安くて、手軽なNASを一台用意しておいて損はない。
素直にそう思える製品が、今回、アイ・オー・データ機器から発売された「RockDisk Next」だ。昨年発売された「RockDisk」の後継に当たる製品だが、細かな部分の改良がかなり進められ、より使いやすい製品へと進化している。
従来のRockDiskは、どちらかというとキットモデルの印象が強く、若干の手間をかけても安くNASを使いたいという人向けの製品であったが、今回のRock Disk Nextは、全体的に「手軽さ」が重視されており、「挑戦者プレミアム」というブランドの割りには、入門者でも扱いやすい製品となっている。
もちろん、従来モデルと同様にHDDなしのキットモデルも7980円で販売されているが、より手間のかからない2TBモデル(15800円)や3TBモデル(19800円)などのHDD搭載モデルで使った方がメリットがありそうな製品となっている。
アイ・オー・データ機器の「RockDisk Next」。手軽に使える入門用NAS |
スマートフォンやタブレット向けのアプリも改良され、使いやすくなったうえ、新たに登場したWindows 8やWindows RT搭載タブレットからは、ネットワークコンピュータからそのままストレージとして利用することが簡単にできる。
データはクラウドに。とは言っても、まだすべてのデータをクラウドに預けられる状況ではないだけに、今後は、こういった手軽なNASの存在感が高くなってきそうな印象だ。
●ファンレスで振動も低減
それでは、前モデルからの改良点を中心に、実際の製品を見ていこう。まずは、外観だが、見た目のデザインも改善されたが、実用性が大幅に向上した。
最大の注目はファンレスになった点だ。従来モデルは、本体背面に、小型で静音性だったとは言え、ファンが搭載されていたが、今回のモデルでは放熱性に優れたアルミボディを採用することで、完全なファンレスを実現した。これにより、アイドル時はほぼ無音での運用が可能となった。
正面・背面 | 側面 |
もちろん、搭載されるHDDによっては、アクセス時の「カリカリ」というHDDのアクセス音が聞こえるため、完全な無音とは言えないが、一般的なNASと比べれば、かなり静音性は高いと言える。HDDの振動も、今回の新モデルから付属するようになったスタンドのおかげで、床などに直接伝わることがなくなり、不快なうなりに悩まされるようなこともなくなった。これだけでも、かなり大きな進化だ。
なお、キットモデルの場合、自分でHDDを装着する必要があるが、これはネジを数本外してケースを開け、内部に装着するだけと簡単だ。今回のモデルでは、3.5インチHDDに加え、2.5インチHDDも搭載可能となっており、場合によってはSSDを使って完全に無音で運用することさえ可能だ。
このほか、インターフェイスも強化されており、USBポートがフロント×1、背面×2の合計3ポートに増えたうえ、eSATA×1も新たに追加された。eSATA対応のHDDを外部に接続すれば、RAID0/1でHDDを構成することも可能となので、信頼性を重視する場合はRAID1で運用するといいだろう。
キットモデルの場合は、HDDを自分で装着する。底面のネジを外せばケースが開く | HDDを装着してケーブルをつなぐだけと簡単。2.5インチHDDも装着可能 |
●使いやすく高機能になった設定画面
設定面も、かなり改善された印象だ。まず、設定画面が仮想デスクトップのようなインターフェイスに変更された。
「マイサーバー」や「ごみ箱」といったアイコンが画面左側、および下部のドックに並んでおり、ここから設定したい機能を選ぶと、ウィンドウが表示されるというスタイルになった。
同様のUIは、SynologyのNASなど、最近の流行とも言え、慣れてしまえば違和感はないのだが、既存のNASやルーターで主流のテキストベースのWebUIに慣れているユーザーは、最初のうちは、どこからどの設定をすればいいのかに迷うかもしれない。
デスクトップを模したUIから設定が可能。一般的なNASとは設定方法が若干異なる |
設定できる内容も改善された。ファイル共有については、従来同様、共有用のPublicに加え、ユーザー個別のホームフォルダを利用するというスタイルになっているが、「マイサーバー」から「home」配下などに任意のフォルダを作成し、共有することが簡単にできるようになった。個人的には、従来モデルのユーザー設定から新規にフォルダを作成するという方法に、もっとも違和感を感じていたため、これが改善されたのは歓迎だ。
また、ファイルの公開も簡単にできるようになった。同様に「マイサーバー」からファイルを選択して、「公開」を選択すると、メールなどに添付可能なURLが自動生成されるようになった(公開期限も設定可能)。
Facebook、Flickr、YouTubeとの連携機能も搭載されており、アカウントを登録尾することで、RockDisk Nextの設定画面から、Facebookのアルバムに写真をアップロードすることなども可能だ。これにより、PCやスマートフォンなどのデータは、基本的にすべてRockDisk Nextに保存しておき、必要に応じてSNSにアップロードして公開するという使い方などができるようになった。
共有フォルダの作成が簡単にできるようになった |
URLを自動生成してファイルやフォルダを公開可能 |
Facebookなどのソーシャルサービスとの連携も可能 |
初期設定も非常に簡単にできるようになった。前述した自動生成URLによるファイル公開や後述するスマートフォン用アプリからのアクセスには、ルーターのポートフォワードの設定が必要になるケースがあったが、このしくみが改善され、ほぼ設定フリーとなった。
基本的には、従来モデルと同様に、UPnPによってルーターのポートを自動設定する仕様となっているが、万が一、UPnPの設定に失敗した場合は、自動的に専用サーバーとの間にVPNによるセッションを確立するようになっており、外部から自宅へのアクセスにこのVPNを利用するようになる。
同社によると、あくまでもUPnPに失敗したときの対策としてVPNを用意しているのとのことで、ユーザーが任意でVPNを選ぶことはできない。安全性を考慮してVPNを使いたいというニーズもあるかもしれないが、基本的にはパフォーマンスが出るUPnPによる直接通信の方がメリットがあるため、「VPN」という言葉にあまりとらわれない方がいいだろう。
このほか、ターミナルなどを使ったそれなりに手間のかかる設定は必要だが、Mac OS XのTimeMachineバックアップにも新たに対応したうえ、HTML5対応のブラウザを利用して、複数ファイルをドラッグアンドドロップでアップロードすることも可能など、いろいろな改善が施されている。
HDDレスとは言え、8000円弱のNASで、これだけの機能を備え、設定にもきちんと配慮がなされているのだから感心する。
●外出先からも利用可能
外出先からの利用も簡単だ。PCからアクセスする場合であれば、LAN上からアクセスする場合と同様に、「http://myisharing.com」にアクセスすれば、自動的に自宅のRockDisk Nextにアクセスすることができる。
iOSやAndroid端末の場合は、あらかじめアプリ(MyiSharing)をダウンロードする必要はあるが、サーバー名(初期設定ではMacアドレスだが変更可能)とアカウントを指定してログインするだけで簡単に利用できる。
これで、サーバー上のファイルにアクセス可能になり、写真や文書をダウンロードしたり、スマートフォンやタブレットのカメラで撮影した写真をアップロードすることなどができる。
なお、従来モデルでは、動画のストリーミング再生がiOSでしか利用できなかったが、今回のモデルではAndroid端末からもストリーミング再生が可能になった。トランスコードしながらストリーミングするわけではないので、再生できる動画は、Android端末がサポートしているものに限られるが、再生位置を記憶してくれるなど、使い勝手は悪くない。
実際、au版iPhone 5のテザリング機能を利用し、RockDisk Nextに保存したMPEG4の動画(2500kbps)を再生してみたが、スムーズに再生することができた。動画品質と回線速度によるが、実用性は高いのではないかという印象だ。
LAN、WANともにインターネット上のサーバー経由でアクセス可能(初期設定時も) |
iOS、Android用のアプリも提供される。Android版では新たに動画のストリーミングも可能になった |
●法人向け保守サービスモデルも用意
以上、アイ・オー・データ機器から発売されたRock Diksk Nextを利用してみたが、従来モデルから1年を経て、かなり実用的になった印象だ。パフォーマンス的にも、従来モデルとほぼ同等だが、必要十分な値が計測できている。PC用としてはもちろんのこと、スマートフォンやタブレット向けのNASとしても、コストパフォーマンスの高い製品と言えるだろう。
なお、本製品には、3/4/5年の保守サービスを追加した法人向けのモデルも用意されている。機能が充実し、使いやすくなった今回のRockDisk Nextであれば、小規模なオフィスなどでの利用にまったく差し支えないが、さらに保守サービスも利用できるのであれば、利用を十分に検討する価値がありそうだ。
関連情報
2012/11/27 06:00
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