清水理史の「イニシャルB」
特別価格のWindows 8で2万円を節約!
お年玉でできる「Win8+周辺機器」のパワーアップ
(2013/1/8 06:00)
何かと出費の多い年末年始。できれば、あまり予算をかけずに、「しあわせ」になれる買い物をしたいと考えている人が多いことだろう。そこで、今回は、Windows 8の特別価格で節約した2万円を目安に、PCをパワーアップすることができる有効な使い道を検討してみる。
特別価格で「浮かせた」2万円の使い道
いよいよ、今月末(2013年1月31日)までと迫ってきたWindows 8の特別価格での販売。2013年1月現在、Windows 8のアップグレード版のパッケージは6090円で購入できるが、2013年2月1日からは、その価格が2万7090円へと跳ね上がってしまう(いずれも税込参考価格)。
もちろん、OSのアップグレードにはさまざまな作業が伴ううえ、Windows 8は従来のOSと操作環境も変わるため、価格だけを考慮して、アップグレードを決める必要はない。
しかし、昨年末の本コラムでも触れた通り、Windows 8はWindows XP/Vista世代の古いPCを劇的に高速化できる高い実力を持ったOSだ。アップグレードの手間を考えても、移行する価値は十分にあるので、とりあえず高くなる前にパッケージを手に入れておくのは悪くない選択だ。
とは言え、ただパッケージを買うだけでは面白みに欠ける。どうせなら、この「浮かせた」2万円を有効に活用して、Windows 8の環境をより快適にすることを考えてみよう。各種パーツはもちろんだが、キーボードやマウス、ディスプレイなどへの投資は、意外に有効だ。お年玉感覚で、PCのパワーアップに挑戦してみよう。
投資例1:PCの基本性能をアップさせる
地味な投資かもしれないが、まず考えたいのはPCの基本的な性能向上だ。前掲した昨年末の本コラムでも触れた通り、Windows 8はCore 2 Duo、メモリ2GB、250GBクラスのHDDの環境でも十分に高いパフォーマンスを発揮することができるが、ここに2万円の費用を投入すれば、より快適にWindows 8を動作させることができる。ノート、デスクトップ問わず使える方法なので、ぜひ検討してみるといいだろう。
たとえば、標準搭載の1GBメモリ2枚を取り外し、2GB×2の4GBに増量したとしても、その出費はわずか2000円ほどだ。メモリは、年末に価格が底を打ち、若干上昇傾向が見られるが、それでも、まだまだリーズナブルな価格で手に入れることができる。PCをパワーアップするには、欠かせない投資だろう。
残りの費用は、ぜひSSDへと投資したい。1万円以下も珍しくなくなった120~160GBクラスも良い選択肢だが、インテルの335シリーズ(SSDSC2CT240A4K5)やPLEXTOR PX-256M5S、Samsung 840シリーズなど、240~256GBを15000円前後で購入できる製品も登場してきたので、思い切って200GBオーバーを狙うのも1つの手だ。
Windows 8は、シャットダウン時にカーネルを休止状態にするため、メモリを大幅に増やすと、シャットダウンや起動(高速スタートアップ)にかかる時間が若干増えるが、SSDを利用することで、そのボトルネックを解消することができる。
実際にテストしてみたところ、Core 2 Duo世代の古いPC(ThinkPad X200)で、2GB+250GB HDDで起動が21.55秒だったWindows 8の起動時間が、4GBメモリ+250GB SSD(Samsung 840)で20.02まで短縮できた。このほか、アプリの起動なども高速化されるので、日常的な利用では、まず困らないパフォーマンスを手に入れることができるだろう。
投資例2:マウス&キーボードで操作環境を改善する
もしも、変更されたWindows 8のユーザーインターフェイスに不安を感じているのであれば、マウスやキーボードなどの操作環境に、浮いた2万円を投資してみるといいだろう。キーボードやパッドが標準搭載されているノートでは、投資しにくいところだが、デスクトップでは、老朽化したキーボードやマウスをリフレッシュできるという意味でも効果的な投資となる。
たとえば、本家マイクロソフトから発売されている「Wedge Mobile Keyboard」(参考価格税別7600円)はなかなかいい選択だ。Bluetooth接続に対応したコンパクトなモバイル向けのキーボードだが、チャームで表示される「検索」、「共有」、「デバイス」、「設定」の機能が、キーボード上部のショートカットキーとして搭載されているため、Windows 8の操作がしやすい。
Windows 8を快適に利用するためのコツとして、Windowsロゴキーと特定のキーを組み合わせたショートカットキーを活用することが紹介されることがあるが、「Wedge Mobile Keyboard」を利用すると、「Windows+F」の検索チャームや「Windows+I」の設定チャームを特定のキー一発で起動できるようになる。
使い慣れていないショートカットを覚える必要がなく、キーにプリントされたアイコンを見ながら操作できるので、はじめての人はもちろんのこと、Windows 8に慣れた人でも素早くチャームの機能を使いこなすことが可能だ。
小型のキーボードのわりに、アルファベットのキーに関しては、16mm前後の十分なキーピッチが確保されているうえ、ストロークも確保されている。本体の作りも剛性感があり、滑り止めのゴム足などもしっかりとしており、非常に使い心地が良い。付属のカバーをタブレットスタンドとして使えるうえ、動作持続時間も6ヶ月前後と長いのもメリットだ。
ファンクションキーが「Fn」キーとの組み合わせになってしまうのが残念だが、タブレットなどの持ち運び用としてだけでなく(iOS/Androidでも利用可能)、自宅やオフィスなどでも十分に使えるだろう。
一方、マウスだが、Windows 8に対応した製品としては、同じくマイクロソフトの「Touch Mouse」(参考価格税別6600円)や「Wedge Touch Mouse」(参考価格税別6600円)などがある。
前者のTouch Mouseは、マルチタッチに対応し、2本の指を使ったジェスチャー操作でチャームの表示、3本指のジェスチャー操作で拡大/縮小などが可能な製品だ。たとえば、マウスの操作中に、2本指で表面を右から左へとフリックすると、チャームが表示される。
タッチ用のスペースを確保するためか、通常のマウスに比べて若干サイズが大きいうえ、マウス本体が動きやすいため本体をホールドしながらタッチを操作するのに慣れが必要となるが、Windows 8との組み合わせという意味では多機能で親和性が高いので、利用を検討する価値はあるだろう。
後者のWedge Touch Mouseはタッチ操作による4方向スクロールに対応したBluetooth接続の小型モバイル用マウスだ。マルチタッチには対応しないが、ホイールの代わりにマウスの上部をタッチで操作できるため、スタート画面などのスクロールなどの操作がしやすい。
標準では、画面を直接タッチする場合と方向が逆になっているが、設定画面でスクロール方向を逆に設定することで、操作方向とスクロール方向が同じになり、タッチと同じような感覚で利用できるようになる。
マウスは、フィット感や使い方で好みが分かれるため、単純に機能だけで選ぶわけにはいかないが、このようにWindows 8に対応した製品を揃えておくことで、新しいユーザーインターフェイスの操作がやりやすくなるので、浮いた2万円の投資先としては魅力的だろう。
なお、既存のマウスやノートPCのタッチパッドでも、ドライバによってはWindows 8ならではの操作を特定の操作で実現できるものもある。たとえば、LogicoolのWindows 8用マウスドライバ(Setpoint)では、ホイールの右操作にアプリケーションスイッチャ(アプリの切り替え)、左操作にアプリの検索といった機能を割り当てることが可能だ。Windows 8のすべての操作が割り当てられるわけではないが、設定画面から好みの動作を割り当ててみるといいだろう。
投資例3:デュアルディスプレイ+タッチに挑戦
これまでのWindows 7とは違う、Windows 8ならではの新しい使い方を堪能したいということであれば、ぜひデュアルディスプレイ環境を試してみるべきだろう。
デュアルディスプレイは、従来のWindows 7でも利用可能だったが、Windows 8では単なるデスクトップを拡張した使い方だけでなく、デスクトップ+Windowsストアアプリという異なる画面の組み合わせで利用することができるのが特徴だ。
たとえば、メインとなる既存の液晶ディスプレイに加えて、On-Lap 1302(想定価格税込14800円)のようなUSB給電可能なHDMI/D-Sub接続の小型モニターをサブとしてプラスすると、メインでデスクトップを表示しながら、サブでスタート画面を表示してランチャーとして利用したり、メールやSNSクライアントなどのアプリを常に表示して、リアルタイムに情報をチェックしたり、といった使い方ができる。
On-Lap 1302は、残念ながら、タッチ操作には対応していないが、1366×768の解像度に対応しているため、ウィンドウを分割してWindowsストアアプリを複数表示することが可能となっている。古いノートPCなどで、標準の液晶がWindows 8の要件を満たしてない場合などにも重宝するだろう。
また、もともとノートPCの液晶背面に貼り付けて利用することが想定されていた製品のため、本体が非常に軽量でスリムになっている。ドライバなども必要なく、付属するHDMIもしくはD-Subのケーブルを利用して、簡単にPCに接続することができる。
付属のスタンドで設置も手間がかからないので、メインの液晶ディスプレイの横に設置するなどして作業の効率化や生産性の向上に役立てるのがオススメだ。
なお、若干、予算オーバーとなってしまうが、このOn-Lap 1302に、MVPenテクノロジーズの「MVPen Touch8(オンラインショップ価格税込7800円)」を組み合わせると、専用のペンを利用したタッチ操作に対応させることもできる。
MVPenは、もともと手書きのメモをデジタルデータとして取り込むことができるデバイスで、iOS向けの製品が発売されたことでも話題になった製品だが、今回、新たにWindows 8のタッチ操作向けとなる「MVPen Touch8」が登場した。
使い方は簡単だ。On-Lap 1302の画面横に付属のマグネットを貼り付け、そこにユニット(受信部)を貼り付け、USBケーブルで接続する。その後、Windows 8のコントロールパネルにある「タブレットPC設定」から調整を実行し、画面サイズをMVPen Touch8に記憶させればいい。専用のソフトウェアなどインストールすることなく、Windows 8の標準機能のみでタッチ化可能だ。
実際に使ってみると、若干、コツが必要な印象だ。ペンを画面に押しつけるようにして操作する必要があるため、パネルが動かないように工夫したり、ペンを浮かせず、なるべく水平に移動させるようにしたりする必要がある。しばらく使っているとWindows 8ならではの非常にスムーズなスクロールを体験できるうえ、アプリの起動や操作などを直感的に行なうことが可能となるが、ペンを押すという操作に慣れることと、押してもグラつかないディスプレイが必要だ。
さすがにマルチタッチでの操作には対応できないが、ペンにズームボタンが用意されており、マルチタッチの一方でボタンを押して位置を固定したまま、別の部分をポイントして水平に移動させることで、ピンチイン・ピンチアウトによる拡大・縮小操作ができるといった工夫がされている。また、手書きでの書き込みが可能なため、メモアプリなど、タッチ前提で開発されたWindowsストアアプリなども使えるようになるのは大きなメリットだ。
残念ながら、今回利用したOn-Lap 1302では、タッチ操作が考慮されていないため、液晶底面や台座部分に防振マットを敷くなど、滑り止め対策をしないと、ペンで押したときに動いてしまって使いにくい。On-Lap 1302は液晶面とベゼルの段差がない設計になっていることから、右側からのスワイプでチャームを出したり、左側からのスワイプでアプリを切り替えたり、といった操作が比較的やりやすいが、とにかく動かないようにしっかりと固定することが、うまく使うコツとなりそうだ。
MVPen Touch 8(国内版)は、17インチまでのサイズに対応できるため、2012年秋に発売された15インチのOn-Lap 1501(想定価格税込1万9800円)でも利用できる。より大画面で使いたい場合は、この組み合わせも検討してみるといいだろう。
投資例番外編:思い切ってマルチタッチ対応液晶ディスプレイを導入
やはりWindows 8のUIをフルに堪能したいということであれば、思い切ってマルチタッチ対応の液晶ディスプレイを購入するのも1つの選択だ。
投資額が5万円前後と、今回設定している2万円の枠を大幅に超えてしまうが、スタート画面やチャームなど、タッチに最適化された操作がしやすくなるうえ、マルチタッチを前提としたアプリが使えるようになることを考えると、決して損のない投資と言える。Windows 8の登場当初はほとんど対応製品がなかったが、DELL、Acer、LGなどから製品が登場してきたこともあり、いいタイミングだ。
たとえば、LGから発売された「23ET83V-W」は、10ポイントのマルチタッチに対応した23型(1920×1080)の液晶ディスプレイだ(オープン価格、実売価格5万円前後)。応答速度5ms、輝度250cd/m2、HDMI×2とD-sub×1と、標準的なスペックのIPS液晶だが、手軽にPCをWindows 8のタッチに対応させることができる。
スピーカーが内蔵されていないこと(ヘッドホン端子はある)と、スタンドのチルト角度が前5度、後ろ25度までに限られていることが、若干、気になるが、既存の液晶ディスプレイの置き換えはもちろんのこと、デスクトップのサブディスプレイやノートPCの外部出力用ディスプレイとして適しているベーシックな製品だ。
実際に使ってみると、その手軽さに感心した。HDMIとUSBケーブル(タッチ用)でPCに接続しさえすれば、ドライバやソフトウェアのインストールはもちろんのこと、タッチ用の画面調整など一切不要で、すぐにタッチでの操作が利用可能となった。
操作感も軽快だ。正式なWindows 8対応タッチデバイスとして認定されるためには、タッチセンサーの数や反応速度など、非常に厳しい要件が課せられているが、この条件をしっかりとクリアしているだけあって、指の追従性がよく、画面をなめらかに操作することができる。
スタート画面やチャームの表示など、Windows 8のUIだけでもかなり快適に操作できるうえ、たとえばピアノのアプリなどで、10本の指で同時に鍵盤を叩いても音を一斉に鳴らすことができる。
2点以上のタッチを前提としたアプリはまだ数は多くないものの、今後、対応アプリが増えてくることが予想されるので、先行投資としても良い選択だ。予算に余裕があれば、ここまで検討してみるといいだろう。
ハードウェアで広がるWindows 8の楽しみ
以上、今月末で終了する特別価格のWindows 8アップグレード版パッケージで浮いた2万円を活かすための方法をいくつか紹介したが、このようにハードウェアを組み合わせることで、より快適で、使いやすい環境を構築できる点こそ、Windows 8、そしてPCならではの特長と言えそうだ。
なお、今回は、対象となるプラットフォームを限定せずに話を進めたが、紹介した投資例は、メモリやSSDの交換が困難なタブレット以外であれば、ノート、デスクトップ、タブレットとも、どのプラットフォームでも活用できる方法だ。
特にキーボードやマウスに関しては、今後、普及が進むであろうと思われるタブレットを利用する際に、ぜひ揃えておきたいアイテムになっている。今使っているキーボードやマウスから買い換えることに抵抗を感じる人もいるかもしれないが、将来的にタブレットをプラスしたときにも無駄にならないので、個人的にもおすすめしたい投資だ。
思い切って、Windows 8対応の新しいPCを買うのも悪くないが、このような周辺機器とWindows 8の組み合わせで、手持ちのPCをさらに便利に、使いやすくパワーアップしてみてはいかがだろうか。