清水理史の「イニシャルB」

Windows Vista搭載機をWindows 8で激速に
〜動画で見比べるVistaと8との実力差

 まったく同じハードウェアのPCでも、起動時間が約半分に。Windows 8へのアップグレードは、古いPCを蘇らせる非常に有効な方法だ。アップグレード版のパッケージが期間限定の特別価格で買えるうちに、アップグレードを検討するのも1つの方法だ。

Windows 8にアップグレードすべきか

 乗り換えるべきか、それとも今回は見送るべきか、それとももう少し様子を見るべきか……。

 Windows 8の発売から約2ヶ月。店頭でWindows 8搭載機を見かける機会が増えてきた一方で、現在、利用しているPCのOSをWindows 8にアップグレードすべきかどうかで悩んでいる人も少なくないことだろう。

 新しいOSを使ってみたいという気持ちがあったとしても、アップグレードとなると、OSの購入費用やアップグレード作業に割く労力が必要になるだけに、それに見合うだけのメリットがあるかどうかがいまひとつわかりにくく、決断しにくい状況だ。

 実際、Windows 8のメリットとして、現状、大きく取り上げられているのは、タッチによる新しいUIだが、ハードウェアの変更を伴わない単純なアップグレードでは、多くの場合、このメリットを享受できない。であれば「今回は見送りたい」という気持ちになるのも無理もないところだろう。

 では、たとえタッチが使えなかったとしても、Windows 8にアップグレードすることで、明確な、しかも非常に魅力的なメリットがあるとしたら、どうだろうか?

 実は、このメリットが存在する。「パフォーマンス」だ。

 詳しくは後述するが、Windows Vistaがインストールされた2008年製のPC(ThinkPad X200)をWindows 8にアップグレードするだけで、起動時間は半分以上に短縮され、ネットワーク上のファイルコピーも2割程度高速化できる。

 古いハードウェアはそのままに、アップグレードするだけで、PCを蘇らせることができるというのも、Windows 8の魅力というわけだ。

2008年製のThinkPad X200をWindows 8にアップグレード。これだけで大幅なパフォーマンスの向上が期待できる


2013年2月1日以降は2万7090円に

 「とは言え、急いでアップグレードしなくても……」と、思うかもしれない。しかし、実はあまり告知されていないが、Windows XP/Vista/7からアップグレードするためのパッケージ版のWindows 8は、安く購入できる特別価格(参考価格税込6090円。PC1台につき1ライセンス、個人もしくは組織あたり合計3ライセンスまで購入可能)の期間が2013年1月31日までとなっており、2013年2月1日以降は参考価格税込2万7090円になってしまうのだ。

 実に2万円以上もの差となると、その金額で安いタブレットが買えてしまうのだから、無視できないだろう。

現状のアップグレード版パッケージの価格は1月31日までの特別価格。注をよく見るとわかるが2013年2月1日以降は参考価格税込2万7090円となる

 もちろん、アップグレードとなると、インストールの際に注意すべき点がいくつかあるが、Windows 8の場合、従来のOSのアップグレード作業に比べて、考慮すべき点はさほど多くない。

 たとえば互換性だが、Windows 8のインストール要件は1GHz以上のCPU、1GB以上のメモリ、16GBのハードディスクの空き、1366×768ドット以上の解像度となっている。PAE、NXビット、SSE2に未対応のCPUには対応していないため、さすがに10年以上前の世代のPCにインストールすることはできないが、Windows XP SP2以降程度の現役で使われているPCであればアップグレードが可能と考えて差し支えない。

 ハードウェアについても、数多くのデバイスがOS標準搭載のInboxドライバーで動作するようになっているため、アップグレードするだけで、ほとんどのデバイスを認識可能だ。たとえば、今回テストに使ったThinkPad X200であれば、認証用の指紋リーダーも自動的にドライバがインストールされたうえ、ネットワーク上に接続されているプリンタも自動的に認識された。

 アナログモデムなど、ごく一部のデバイスを認識しない例もあるが、2〜3程度なら、メーカーのWebサイトからドライバをダウンロードしても、手間はかからないだろう。

 データや設定の移行も、あまり手がかからない。Windows XPからはデータのみ、Windows Vistaからはデータの設定、Windows 7からはデータと設定とアプリケーションがアップグレード可能となっている。また、Windows転送ツールを使ってデータと設定を移行することもできるので、たとえば32bitから64bitへのアップグレードでも、データと設定を引き継ぐことは可能だ。

 もちろん、事前にメーカーのサイトでアップグレード情報を調べておく、アップグレード作業を始める前にWindows転送ツールやバックアップを実行しておく、といった最低限の準備をしておけば、アップグレードそのものに苦労することはない。

 また、アップグレード前に、インストール対象のハードウェアやソフトウェアがWindows 8に対応しているかどうかを確認することができるアップグレードアシスタントも実行することができる。特に、Windows 7からアップグレードする場合、インストール済みのソフトウェアも引き継ぐことができるが、その際に、互換性に問題があるソフトウェアを検出し、アップグレード前に削除しておくことも可能だ。

 いざアップグレードした後に互換性の問題などで、「しまった……」と後悔することも避けられるだろう。

ハードウェアの多くがInboxドライバで認識可能。ThinkPad X200では、アナログモデムなどごく一部のデバイスのみ後から手動でドライバをインストールすれば済む

Windows VistaとWindows 8の性能を比較

 では、気になるWindows 8のパフォーマンスに迫ってみよう。

 今回のテストでは、2008年に発売されたThinkPad X200(745423J)を使用した。Intel Core 2 Duo P8600(2.4GHz)、Intel GM45 Expressチップセット、メモリ2GB(PC3-8500)、250GB HDD(5400rpm)、12.1型1280×800ドット液晶を搭載したノートPCで、発売時はWindows Vista Businessがインストールされていたものとなる。

 解像度がWindows 8の要件となる1366×768を満たしていないため、Windowsストアアプリをスナップで1画面に分割表示することができないが、普通に起動して利用する分には問題ない。ネットブックなど、縦方向の解像度が768以下となる場合、Windowsストアアプリを起動できないが、1024×768以上の解像度であれば、問題なくWindows 8を利用できると考えて良いだろう。

 このPCのハードウェアはまったく同じ状態のまま、Windows VistaとWindows 8で、それぞれWindows Updateのみすべて実行した状態で、起動時間などを計測してみた。なお、セキュリティ対策ソフトは、Windows VistaがMicrosoft Security Essentials、Windows 8は標準のWindows Defenderを使用している。Windows Vistaは、多くのユーザーが利用している状態を想定し、Lenovoのユーティリティなども自動的に起動する設定のまま利用していることをあらかじめお断りしておく。

 まずは、起動時間だが、以下の動画のように、Windows Vistaはデスクトップが表示されるまでに43秒84、サイドバーの表示が完了し使える状態になるまでに1分30秒55の時間がかかったが、Windows 8ではスタート画面が表示されるまで、わずか21秒55しかかからなかった。

 もちろん、Windows 8はスタート画面の起動後も、バックグラウンドでの読み込みが継続されるが、わずか半分の時間で、アプリを起動してPCを使い始めることができるのだから驚きだ。とても、同じハードウェアで動作しているとは思えない印象だ。

 同様に、シャットダウンも早い。OSからシャットダウンを実行し、PCの電源ランプが消えるまでの時間は、Windows Vistaが35秒16、Windows 8はわずか8秒40だ。Windows 8はシャットダウン処理が変更されているが(カーネル部分は休止状態)、それでもこれだけの差が開くと実用性に大きく影響する。

 Windows Vistaは、まさにPCの電源を入れてから、コーヒーの一杯でも飲みたくなるが、Windows 8は電源を入れてスグにPCを使えるうえ、サッと終了して速やかに席を立つことができる。実際に使い比べてみると、今まで、いかに時間を無駄にしてきたかを実感させられるところだ。

普段の利用シーンでも明確な差が

 Windows 8のパフォーマンスの高さは、普段、アプリケーションを利用するシーンでも明確に表れる。

 以下は、日本郵便がWebサイトで公開している郵便番号データの全国版(11.6MB)をExcel 2010で開くまでの時間を計測したものだ。

 Windows Vistaでは、Excelが起動し、ファイルの読み込みが完了するまで17秒48かかっているが、Windows 8では11秒07で読み込みが完了する。中小規模の企業では、Excelで大きなデータを扱う機会が少なくないが、こういったシーンでもWindows 8が有利というわけだ。

 また、LAN経由でのファイルコピーもWindows 8は高速化されている。以下はWindows 8を搭載したPC(Core i5/RAM16GB/SSD120GB/Windows 8 Pro 64bit)の共有フォルダに保存されているファイル(約3MBのJPEG100枚、約300MBのMOV、約500MBのZIPの合計約1GB)をローカルにコピーしたときの速度だ。

 Windows Vistaは完了するまでに34秒20の時間を要しているのに対して(動画では一旦背面にダイアログが移動しているがコピーは継続している)、Windows 8は28秒79でコピーを完了している。

 Windows 8ではファイルコピー時のスループットが、大容量の単一ファイルで100MB/sを越えているうえ、複数の小さなファイルの転送でも40MB/s前後にまで達している。

 ネットワーク経由でのファイルコピーは、サーバー側の性能にも依存するため一概には言えないが、NASやファイルサーバーなどを利用することが多いオフィスなどでの利用にもWindows 8は適していると言えそうだ。

 最後に、Internet Explorerの性能も比較してみた。Windows VistaのIE9、Windows 8のIE10で、「Internet Explorer Test Drive( http://ie.microsoft.com/testdrive/ )」のFishbowlとBubblesを実行したときの様子だ。

 Windows VistaではBubblesの描画で17fps、FishbowlではAuto設定でも魚1匹で7fpsでの描画しかできないが、IE10を利用可能なWindows 8では、Bubblesで40fps、Fishbowlで120匹表示しても60fpsの描画が可能になっている。これが同じPCなのかと疑いたくなるほどの圧倒的な差だ。Webアプリケーションを使う機会が増えている現在の状況を考えると、この差は大きいと言えるだろう。

 これはGPUのハードウェアアクセラレーションが有効かどうかの違いだ。IE9でもGPUアクセラレーションは利用可能だが、今回、利用したThinkPad X200の場合、Windows Vista標準のドライバではGPUアクセラレーションに対応してないうえ、最新のグラフィックドライバをインストールして、ハードウェアアクセラレーションを有効にするとIE9が起動しないという不具合が発生してしまった。

 これに対して、Windows 8では、標準のInboxドライバできちんとGPUアクセラレーションが有効になり、何もしなくてもIE10でGPUを利用した描画を実行することができた。余計なアップデートや設定などが不要なうえ、不具合なしに、ハードウェアの性能をOS標準の機能のみできっちりと発揮させることができるのもWindows 8ならではのメリットだろう。

パッケージ版なら32bit/64bit同梱

 以上、Windows Vista世代のPCにWindows 8をインストールした場合に、どれくらいの差があるのかを比較してみたが、想像以上の結果が得られた。同じPCでも、ここまでパフォーマンスが向上するのであれば、データ移行などの手間をかけたとしても、Windows 8に乗り換えるメリットはあるだろう。

 冒頭でも触れた通り、アップグレード版の価格が大幅に上がるまでのタイムリミットも僅かとなってきたので、正月休みを利用して、思い切ってアップグレードすることをおすすめしたいところだ。

 なお、Windows 8 Proのアップグレード版には、店頭で購入可能なパッケージ版に加えて、オンラインで購入できるダウンロード版が存在する。価格は、パッケージ版が参考価格税込6,090円なのに対して、ダウンロード版が3,300円(2012/6/2〜2013/1/31までにWindows 7搭載PCまたはDSP版を購入し、登録サイトからプロモーションコードを入手した場合は1200円)と安いが、パッケージ版はメディアが手元に残るというメリットがある。

パッケージ版には32bitと64bitの両方のメディアが同梱されている。価格で選ぶならダウンロード版だが、利便性はパッケージ版が上

 ダウンロード版もUSBメモリ、もしくはDVDに自分で書き込んで保管することはできるが、ダウンロード時に指定する必要がある。また、32bitと64bitのどちらをダウンロードできるかも、アップブレードアドバイザを実行したPCのエディションに左右されるため、XPやVistaからダウンロードすると通常は32bit版になってしまう。

 これに対して、パッケージ版は32bitと64bitの両方のメディアが同梱されている。来年2月1日以降の参考価格2万7,090円に比べれば、十分に安いのだから、ここはダウンロード版より若干高くてもパッケージ版を購入しておくことをおすすめしたいところだ。

 年末年始の休暇を長めに取っている人も少なくないと思われるが、家で眠っているWindows XP/Vista世代のPCをWindows 8にアップグレードして、もう一度、主力マシンへとして使えるようにしてみてはいかがだろうか?

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ