清水理史の「イニシャルB」

無線LAN内蔵で消費電力を手軽にチェック サンワサプライ「Navi-Ene Tap」

 昨年秋に購入後、NAS用の電源タップとして運用してきた「Navi-Ene Tap」。無線LAN対応で各種情報をブラウザーで確認できる高機能タップだ。その使い心地をチェックした。

付加価値にどこまでコストを支払えるか

 発想は面白いし、実際に使えば役に立つ。しかしながら、実売2万円前後という価格に見合うだけの価値があるかと問われると、ケースバイケースといったところだろうか。

 2012年9月にサンワサプライ株式会社から登場した「Navi-Ene Tap」は、そんな印象の製品だ。株式会社ユビキタスが企画・開発した無線LAN内蔵の電源タップで、クラウドサービスの「Navi-Ene(http://www.navi-ene.com/)」経由で、接続された機器の消費電力を確認したり、コンセント単位で電源をON/OFFすることができる。

無線LAN内蔵の電源タップ「Navi-Ene Tap」。消費電力をインターネット上のサービスから確認することができる

 先日、2013 International CES関連のニュースとして掲載されたCerevoの「OTTO」(詳細は本誌記事http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130108_580948.htmlを参照)も、同様に無線LANを内蔵した電源タップとなるが、こちらは、スマートフォンからの制御という実用性に加え、インテリア的な要素も付加されており、デザイン家電に近い印象がある。

 これに対して、「Navi-Ene」は、どちらかというと実用性重視の製品だ。デザインも凝ってはいるが、電源タップとしての伝統的な形状は守られており、あくまでも電力の可視化が目的となっている。

 いずれも、もはや進化が望めないと考えられてきた成熟分野の製品を次のステージへと引き上げようとしている点は高く評価できるが、電源を供給するという、電源タップ本来の目的以上の価値に対して、消費者がどこまでコストを負担してもいいと思えるかがポイントとなりそうな製品だ。

WPSで無線LANに接続

 それでは、実機を見ていこう。まずは、外観だが、電源タップとしてはかなり大柄だ。本体サイズは、幅284×奥行き97×高さ34mmとなっており、一般的な5~6口の電源タップを横に2つ並べたくらいの大きさになっている。通常、電源タップは部屋の隅や家具の裏などの目立たない場所に設置するが、本製品の場合、目立たない場所に置こうとすると少々苦労することになるだろう。

 デザインは、表面がピアノ調のブラックのパネルとなるなど、電源タップとしては凝っているが、前述したCerevoのOTTOのような思い切ったデザインではなく、「見せる」製品とまでは至っていない。

正面
側面
背面

 コンセントの数は4口で、すべて3P対応。電源コードは2mで、給電用のプラグもL型の3Pとなっている。2P用の変換アダプタは付属していないので、一般的な2Pの家庭用コンセントに接続する際は、アダプタを事前に用意しておく必要があるだろう。

 容量は15A、125Vで、合計1500Wまで対応しており、雷ガードを内蔵しているうえ、1500W超で内蔵ブレーカーが自動的に作動するようになっている。このあたりは、価格が高めの電源タップと同等だ。

 スイッチ類は、側面にブレーカーリセットスイッチが搭載されるほか、表面に「POWER ALL ON」、「POWER ALL OFF」ボタンが用意されており、これらのボタンで4口すべての電源をオン・オフできる(個別オフはWebから可能)。

電源のオン・オフボタンに加え、無線LAN接続用のWPSボタンを搭載

 無線LANの接続は、電源ボタン下のWPSボタンで実行する。アクセスポイント側のボタン操作でWPS設定を開始後、Navi-Ene TapのWPSボタンを2秒以上押し、「NETWORK ERROR LED」が点滅したことを確認して指を離すと、しばらくして接続が完了する。

 このように、WPSを利用することで簡単に接続できるNavi-Ene Tapだが、逆に言うと、WPS以外では無線LANに接続することはできない。最近の無線LANルーターであれば、ほとんどWPSをサポートしているので問題ないが、万が一、WPSをサポートしない古い無線LANルーターを利用している場合は、合わせて無線LANルーター側のリプレイスも必要になる。

 なお、サポートする無線LAN規格は2.4GHz(1~13ch)のIEEE802.11b/gのみで、5GHzはサポートしない。無線LANルーターに接続する際は、そもそも2.4GHzが有効かどうか、WPSで2.4GHzが優先になっているかどうかも確認しておこう。

サイトからタップの情報を入力

 無線LANの接続が完了したら、続いて、Navi-Eneのサイトからタップの登録を行なう。無料のユーザ登録を実行後、タップの新規登録画面で、製品背面に記載されているシリアル番号やCODE番号、識別名や設置場所などを登録すれば、タップの情報が表示されるようになる。

Navi-Eneのサイトにユーザー登録後、シリアル番号や登録用のコードを入力してタップを登録する
登録用のシリアル番号やコードは本体背面に記載されている

 Navi-Eneのサイトから表示できる情報は、タップの各口ごとの現在の消費電力、指定した期間(今日、昨日、2週間、1カ月、1年)の消費電力の変化の棒グラフとなる。

 たとえば、以下のグラフは、筆者宅で運用しているNASの消費電力の変化だ。現在の消費電力が54Wで、午前0時から11時30分までの合計が0.460kWh、各時間ごとの合計がグラフとして表示されている。

消費電力がグラフで表示される

 午前4~6時の間のグラフが表示されていないのは、NASの省電力機能を利用し、夜間に自動的にシャットダウンし、朝方に自動的に起動するという運用をしているためだ。ちなみに、完全に24時間稼働させた場合の消費電力は1.414kWhで、午前1時~午前6時まで運用を停止した場合の消費電力は1.014kWhとなった。つまり、4割弱の節電だ。

 NASなど、最近ではスケジュール運用などの省電力機能を搭載した機器が一般的になってきているが、このように設定の違いによって、具体的にどれくらい節電できたのかが見えるのは、確かに便利だ。

 なお、標準では、計測時間が60秒周期、アクセス周期が5分に設定されており、計測時間は10~180秒まで、アクセス周期は1~60分まで変更できるが、通常は変更する必要はないだろう。過去の消費電力も最短で1時間単位でしか表示できないため、リアルタイムで細かな電力の変化を見られるメリットはあるが、過去の値の変化を秒単位で確認するなどといったことまではできない。

 タップのリモート制御に関しては、法令で遠隔操作での電源オンが認められていない関係から、オフのみが可能となっている。Navi-Eneのページからタップ情報を表示すると、各口ごとに電源ボタンが表示されるので、ここからボタンをクリックすれば電源をオフにすることができる。

計測周期やアクセス周期を変更可能
リモートからの電源制御はオフのみが可能

 ただし、同一LAN上から実行した場合は即座にオフにできるが、インターネット経由の場合は、オフをスケジュール設定し、アクセス周期に従ってアクセスされる次のタイミングでオフになる。オフにしたコンセントは、本体の「ALL ON」ボタンを押すことで復帰させることが可能だ(個別のオンはできない)。

 このほか、iPad用のアプリも用意されており、アプリから消費電力を確認したり、電源をオフにすることもできる。iPhoneやAndroid用のアプリは用意されていないが、ブラウザを利用してNavi-Eneにアクセスすることで消費電力を確認することは可能だ。

iPad用アプリも用意される

消費電力の測定機器と考えるとお買い得

 以上、無線LAN対応の電源タップ「Navi-Ene Tap」を実際に使ってみたが、実際の消費電力を把握しながら、機器の省電力設定を調整するといった使い方ができるため、手元にあると便利な製品であることは間違いないと言える。特に、サーバーやNASなどで利用すると、電源のオンオフなどのスケジュールを最適な値に調整できるので便利と言えそうだ。

 とは言え、やはりネックになるのは価格だ。実売で2万円となるため、この製品で節電できた金額で購入代金の元を取るには、かなりの期間が必要になってしまう。複数のタップをWebから統合的に管理できるのもメリットだが、その場合、購入費用はかなりの額になってしまう。

 このため、現状の使い方としては、ログ機能を搭載した消費電力測定器的な使い方を推奨したいところだ。消費電力の確認にワットチェッカーを使う人も少なくないと思われるが、これと同様に、機器の消費電力を調査したいときに使う測定機器と考えれば、2万円のコストを支払うことにも納得できる。複数の機器の一定期間の消費電力を調べたり、接続する機器の省電力設定を変更しながら、その違いを確認できるとなれば、本製品を購入するメリットも見えてくるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。