いまさら聞けない!? ちかごろ話題のサービス・アプリをさくっと解説
エディターがもつ解放感が心地よい、書けるプラットフォーム「Medium」
2016年11月30日 06:00
サービス名 | Medium |
リリース日 | 2012年8月14日 |
運営会社名 | Medium |
料金 | 無料 |
登録 | 必要 |
URL | https://medium.com/japan |
スッキリシンプルな公式ページを作りたい、自分のメディアを作りたい、思いを綴るには140文字では足りないが、装飾機能が山ほど付いたブログのエディターを立ち上げるほどでもない……。メモ帳やテキストエディターに書き込むような感覚で、スムーズにコンテンツを公開したい、と考えているなら「Medium」があります。
Twitterの共同創業者が作り上げた、テキストを重視する新たなプラットフォーム
「Medium」は、「すべてのアイデアやストーリーが繁栄する場を提供する」というビジョンのもとに、Blogger創業者であり、Twitterの共同創業者でもあるEvan Williams氏が始めた新ブログプラットフォームです。
パソコンのウェブブラウザーのほか、スマートフォン用のアプリも用意されており、Twitterアカウント、Facebook、Google+のアカウント、メールアドレスのいずれかがあれば、誰でもすぐ無料で始められます。
サービスは2012年8月14日に誕生、2013年10月28日に一般公開され、日本で本格的に展開されたのが2015年1月31日(Medium Japan誕生)。実はかなり歴史の浅いサービスですが、現在アメリカやヨーロッパを中心に日本やロシア、インドネシアなど世界11カ国で展開されています。
日本上陸当初は、日本人ユーザー数が1720人だったところが、2015年12月では5456人にまで増えているそうです。2015年12月時点の話なので、現在ではもっと増えているはずです。
Mediumでできること
Mediumでは、読む、フォローする、書く、投稿する、他者の投稿に反応する、共同編集ページを作るといったことができるほか、簡単なアクセスログ機能があります。
ブログでいう記事は、「ストーリー」と表現されています。個人のストーリーを公開できるだけでなく、複数のユーザーで1つのマガジン風のページを立ち上げて共同で更新できます。印象的な写真とテキストがあれば、今風のメディアや個人の公式サイトを立ち上げることも簡単です。
投稿されたストーリーは、他のユーザーに関連するストーリーとして紹介されるため、自然と流通していくようにできています。読みに行かなくても、ストーリーのほうからやってきます。
そんなMediumは、ブログのプラットフォームでもないければSNSでもないともいわれます。創始者のEvan氏は「Mediumはブログではありません。Mediumは編集ツールではなく、ネットワークだ」と述べています。
これだけ聞くと、自分にあったものかどうか判断しかねて、おいそれと手が出せないと思うかもしれません。しかし、実際は情報を発信したい人、伝えたい体験がある人などが、気持ちよく語れるような環境と、それを相応しい人に見てもらい、評価され、拡散するための仕組みが構築されていると考えればいいでしょう。
周りに何もないので、本文に集中できる
Mediumでは、Mediumで生み出されたストーリーが、読み手のシェア数によって回遊しています。Medium自体がユーザーのストーリーを集めて提供する媒体になっているので、それらがシェアされた回数に応じてトップページに現れるようです。「TOP STORY」「PHOTOGRAPHY」「WRITING」「TRAVEL」「DESIGN」「LIFE」「TECH」など、ストーリーはある程度分類されているので、そこから読みたいものを見つけられます。
さらにフォローしているユーザーや、自分のエントリーにレコメンドされるストーリーなどが読めます。気になる個人やパブリケーション(マガジンのようなもの)をフォローすれば、自分のタイムラインに記事が流れてきます。1つ読むと、次のストーリー、また次のストーリーと、関連するエントリーを紹介してくれるので、探しに行かなくても読みふけってしまうことがあります。自分がどんなストーリーを読んだか確認することもできます。
ストーリーそのものは、すっきりとしたデザインです。派手なテンプレートはなく、多くは印象的な写真と、落ちついたテイストの文章で構成されており、現時点では広告類も一切見られません。文章を遮るものがないため、気持ちよく読めるようになっています。フォントも大きめでスペースもゆったりとられているため、見やすいのも大きな特徴です。
ちなみに、日本語以外のストーリー数が圧倒的ですが、良質なものはMedium Japanの翻訳チームが日本語化してくれます。翻訳ツールでは感じきれないニュアンスもあり、読みごたえがあります。
「ハイライト」「レスポンス」「レコメンド」は読む体験を面白くする機能
通常のブログでは記事に対して、いいねを押す、コメントを書く、外部へのシェアといったアクションができます。これに対してMediumでは、ストーリーを読みながら、「ハイライト」「レコメンド」「レスポンス」「シェア」という4つのアクションができます。特に、ハイライトがストーリーを面白いものにしています。
ハイライトは、気になる箇所にマーカーする機能です。自分でマーカーするだけでなく、他のユーザーがハイライトした場所も見え、同じ箇所にハイライトすると、自分を含めたユーザーが記録されます。まるで電子書籍を読んでいるような感覚です。ハイライトした箇所には自分だけのメモが書き込めるほか、Twitterに投稿することもできます。
誰がどこにハイライトしたかは書き手にも分かります。誰かに読まれていることが分かるだけでなく、相手に強い印象を与えている箇所を生み出しているということが、続けるモチベーションになりそうです。また、自分のストーリーに自分でハイライトすることで、読み手の注意を引く効果も得られます。
さらに、レスポンスという形でコメントも残せます。それが相手のストーリーのコメントとして残るだけでなく、自分のストーリーとして投稿できるというのは面白いところ。つまり、読み手はレスポンスすることで、新たなストーリーを生み出せるわけです。誰のストーリーのどこにコメントしたのかが自分に分かりやすいだけでなく、自分のストーリーにアクセスしてくれた人に対して、元のストーリーを紹介できるというメリットもあります。
ストーリーが気に入ったらハートマークをクリック。これは「レコメンド」といわれる機能で、Medium版リツイートとも呼べるものだそうです。自分ではいいねしている感覚なだけで、Twitterのようなリツイート感はないですが、レコメンドすると、その人のフォロワー全員のホーム画面とニュースレターにそのストーリーが表示されます。Facebookでいうところの、コメントなしのシェアが1クリックでできると思えばよさそうです。
ストーリーに対するアクションは、必ずしも共感の現れとは限りません。しかし、全体として読んでいるストーリーを尊重しながら、自分の思考を展開できる作りになっているように感じます。
枠もツールバーもない、解放的なエディターで書ける
Mediumのストーリーがとてもシンプルなのは見て分かる通りですが、編集機能も必要最小限です。しかし、見たままに、編集したい場所でやりたいことがすぐできるようになっており、これがMediumの最大の魅力になっていると同時に、Mediumの思想が現れている部分といえます。
一般的なブログサービスのエディターでは、入力フォームの枠があり、周囲に非常に多くのボタンが並んでいるはずです。一方、Mediumでは清々しいくらいに入力画面にほとんど何もありません。タイトルを入力する箇所が分かるくらいです。
書き始めようとすると、左上の余白に[+]が表示されます。クリックするとツールバーが表示され、画像、YouTubeやVimeoのビデオ、音楽、さまざまな埋め込み素材、TwitterのツイートやInstagramの投稿、セパレーターなどを挿入できるようになります。
挿入した画像は、カラムに合わせた画像幅(1400px)から画面最大幅(2500px)まで、サイズの切り替えは1クリック。回り込みの指定もできます。挿入した写真にはキャプションも付けられます。画像挿入時に複数選択すると、横に並べたグリッド表示もできます。
文字を入力してから、編集したい部分を選択するとテキスト編集用のツールバーが表示されます。ここでテキストを太字に変えたり、イタリック調に変換したり、タイトルやサブタイトルに指定したり、ハイパーリンクを埋め込めます。引用文や本文抜粋に指定できますし、自分しか見られないプライベートなメモを埋め込んでおくこともできます。アルファベットなら、先頭だけ大きく表示するドロップキャップ指定もできます。
実際に使ってみると、長文になるほどこのインターフェースが効いてくることがわかります。ブログエディターでは、固定された編集メニューに戻るためにフォームの中をスクロールしまくったり、画像を挿入するために、一旦アップロードしてから挿入するなど、細かい設定が必要なものもあります。そういった操作に対する心理的な負担から、書くのが面倒になってしまうこともあるでしょう。
Mediumには、チカチカ動くアイコンはありませんし、フォントを部分的に大きくしたり、色を付けることもできません。画像などの要素を挿入する、整えるという機能はとても限られていますが、シンプルな分見た目は整えやすい。その分書くこと、とくに内容に集中しやすい静かな環境になっています。
なお、うっかり保存し忘れても、Draftとして自動的に保存されているので安心です。
予約投稿もできる
ストーリーの投稿に「タグ」は欠かせません。Mediumにはカテゴリーやジャンル作成機能などはなく、すべてタグで管理します。マガジン風の「パブリケーション」でも、メニューへの分類は、あらかじめ指定しておいたタグで行います。
予約投稿も可能で、本文中のタイトルやサブタイトルとは違う、キャッチーなものを別途付けられるほか、自分しか見られないプライベート投稿もできます。
すでにTwitterやFacebookも利用しているなら、あらかじめ設定で接続しておくことで、ストーリーを投稿する度にそれらに自動投稿します。
共同更新できる機能「Publication(パブリケーション)」で公式ページも
これを知ると、さらにMediumを利用したくなる機能としてご紹介したいのが「Publication(パブリケーション)」です。複数のユーザーがライターとしてストーリーを提供し、1つの媒体のように見せられるというもの。つまり、いつでもメディアの立ち上げが可能ということです。1人でも運営は可能なので、個人の公式ページとして利用することもできます。
現在パブリケーションに設定できるメニューは7つまで。それ以外に、外部リンクを1つ設定できるようです。デザインは、テキストと画像を最大に生かせるようなレイアウトが選択できます。ブログのような膨大なテンプレートはありませんが、個性はカバー画像で主張できます。
今後どのような機能が追加されるかは不明ですが、ストーリーが最も美しく見えるものが提供されるに違いありません。
ストーリーを紡ぎたい人に
自分のテキストや写真の価値を高めたい人、もっとほかに見てもらいたい人、最終的にはそれを生み出している自分のクリエイターとしての価値を高めたい人が、余計なものに邪魔されることなく、コンテンツに集中できる場所がMediumです。
誰もが最初からいいストーリーが生み出せるわけでありませんが、書いているうちに上手くなっていくはず。すでにすばらしいストーリーはたくさん読めるので、人気のストーリーを参考にしましょう。
ちなみに、Mediumにまだ存在しないのは、書いたものをお金に換える機能です。将来実装される気配ですが、すべてはまだ始まったばかり。今後あらゆる点で進化することは間違いありません。まだ英語のメニューも多いですが、今から慣れておくとよさそうです。