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生まれ変わったWindows Live

ウェブブラウザーで使えるOffice 2010「Office Web App」


 Windows Live 2011で最大の特徴と言えるのが、オンライン版のOffice 2010「Office Web App」だ。今回、Office Web Appとして提供されているのは、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteの4つのアプリケーションだ。

 オンライン版の文書作成・表計算・プレゼン作成サービスといえばGoogle ドキュメントが有名だ。しかし、GoogleドキュメントはMS Officeと100%の互換性を持っているわけではなく、Wordで作成した文書をGoogle ドキュメントにアップロードしても、Wordと同じ画面が表示されるわけではない。

 この点、マイクロソフトが提供するOffice Web Appは、Office 2010を開発したチームが開発にあたっているため、Googleをはじめとした他社のオンライン版Officeスイートに比べ、MS Officeとの高い互換性を持っている。

無料で利用できるオンラインのOfficeアプリケーション

 Office Web Appでは、PC上で作成した文書をOffice Web Appにアップロードし、関係者間で文書を共有し、各自必要なコメントを書き足して文書を完成させることもできる。もっとも、これだけならGoogleドキュメントでも実現可能だ。

 何より便利なのは、Office 2010と同じユーザーインターフェイスをオンライン版でも実現しているため、Office 2010の使い方を知っているユーザーなら、オンライン版をすぐに使いこなすことができる点だろう。

 Office Web Apps は、Windows Live IDでWindows Live SkyDrive上で、ドキュメントの作成・編集・保存・共有ができる無料のオンラインアプリケーションだ。Officeソフトを持っていなくても、Windows Live IDがあれば無料で利用できる。

 マイクロソフトでは「全世界のWindows Liveユーザーすべてが、Office Web Appを利用できるようになるのは、年内いっぱいになるだろう」とコメントしている。ただ、テストしたところ、新たなWindows LiveのアカウントでOffice Web Appが利用できた。

 Office Web Appは、多くのウェブブラウザーやOSで動作するように、AJAXなどのスタンダードな技術で構築されている。このため、対応するウェブブラウザーはマイクロソフトのInternet Explorer 7/8だけでなく、FireFox 3以降、Mac用のSafariでも利用できる。また、OSはLinuxでもMacでも、ウェブブラウザーが対応していれば、Office Web Appを利用することが可能だ。

 Chromeに関しては正式サポートはされていないものの、筆者が試してみた範囲ではChromeでも動作するようだ。ただし、PCのOfficeアプリケーションに文書をダウンロードする際にエラーになった。これは、PCのOfficeアプリケーションと連動する時に、ActiveXコントロールを利用しているためだ。現在、ChromeにはFireFoxのように専用プラグインが用意されていないため、エラーになったと思われる。

  Silverlightは、Windows OS上のFirefox 3、Chrome 4、Mac OS上のFireFox 3、Safari 3/4などに対応する。多くのウェブブラウザーでOffice Web Appは利用できるわけだが、より高度な表現力を使うには、マイクロソフトのSliverlightをインストールしておくと良いだろう。

 Silverlightをインストールすることで、ページの読み込みが高速化されたり、PowerPointにおいてはアニメーションがよりなめらかに表示されるようになる。

IE8で、Word Web Appを使ってみた FireFoxでも、Word Web Appは利用できた Chormeでも、編集などは問題なかった。しかし、ローカルのWordを起動する時に、エラーが起こった
Word Web AppでWordを起動するを選択すれば、クラウドからファイルを自動的にダウンロードして、そのファイルをローカルのWordで編集する Word2010では、ネットからダウンロードした文書は、アラートが表示される

Office2010とOffice Web Appの機能差は?

 Office Web Appは、無料で利用できるOffice 2010と思われがちだが、実際に使ってみると、当然ではあるが、オンライン版ではフル機能のOffice 2010がサポートされているわけではない。Office Web Appは、パッケージ版のOffice 2010を補完するサービスと考えたほうがいいだろう。

 Office Web Appは、Office2010をベースに開発されている。このため、Office 2007以前のフォーマットの文書をOffice Web Appにアップロードすると、最初にウェブブラウザーで編集を行ったときに、フォーマット変換が行われる。この時、同じファイル名で、新しいフォーマットに変換した文書(新しい拡張子)が作成される。ブラウザー上での編集は、すべて新しいフォーマットの文書をベースに行われる。

 このため、Office Web Appで編集した最新文書をダウンロードすると、Office 2007以降のフォーマットになっている。このため、古いOffice(Office XP/2003など)がインストールされているPCでは、Office Web Appで編集した文書を扱うことはできない。

 Office Web Appとの連携を考えると、PCで利用するのはOffice 2007以降、できれば最新版のOffice 2010なら統一された使い勝手で利用しやすい。Office Web Appは、Office 2010のユーザーインターフェイスを元に開発されており、Office 2010ユーザーにとっては、Office Web Appでも、PCのOffice 2010でもそれほどユーザーインターフェイスが変わらないので、戸惑うこともないだろう。

Office Web Appでは、Office2007以降の文書フォーマットを使っているため、Office2003の文書フォーマットは、自動的に変換される 変換した文書が新しくクラウド上にコピーされる。このため、オリジナルは古いフォーマットで残っている。Old Dataというファイルが2つ出来ている

 ちなみに、Office Web AppのリボンUIは、「ファイル」、「ホーム」、「挿入」、「表示」という4つのタブしかない。Excel Web Appについては、このうち「表示」タブがなく、タブは3つだ。パッケージ版のWord 2010は、メニューのタブだけでも8つ以上あり、このことからも、Office Web Appは、Office 2010のフル機能は持っていないことがわかるだろう。

 以下では、Office Web AppをWord、Excel、PowerPoint機能について使い勝手を紹介する。

Word Web App

 Word Web Appで、文書の編集を行うときには(編集表示)、下書き編集モードになってしまうため、印刷時のデザイン画面で編集することができない(WYSIWYGでの編集はできない)。文書のデザインを確認するには、「表示」タブの「閲覧表示」に切り替えなければならない。

 また、「閲覧表示」では、ヘッダーやフッターのグラフィックは表示されている。しかし、編集を行う「編集表示」では、ヘッダーやフッターは表示されない。つまり、Word Web Appでは、ヘッダーやフッターの編集、作成することはできない。

 Word Web Appで使用できるフォントはOSにインストールされているフォントの数によって、変化するようだ。筆者の環境では、約40種類ほどのフォントが使用できた。ただし、OSにインストールされているすべてのフォントがWord Web Appで利用できるわけではない。

 例えば、PCのWordで、あるフォントを使って文書を作成する。その文書をWord Web Appにアップロードすると、その文書で使用されているフォントがメニューから使用できるようになる。

 Word Web Appでは、図形、SmartArt、記号、数式、グラフなどは利用できない。「閲覧表示」では、キチンと画面が表示される。しかし「編集表示」では、[描画]、[グラフ]などのようにマークが表示されるだけで、文書全体のイメージはわからない。

 さらに、Word2010の特徴といえるライブプレビューなどの機能も利用できない。

 Word Web Appでも、表、図、クリップアートなどは利用できる。図は、ローカルPCからイメージを直接アップロードして利用することができる。クリップアートは、「マイクロソフトのクリップアート コレクション」からキーワードで検索して、サムネイルが表示される。このサムネイルから、使用するクリップアートを選択すればOKだ。

 8月下旬になり、Word Web Appで印刷機能がサポートされた。これは、ブラウザーの印刷機能を利用するのではなく、Word Web Appが直接PCに接続されているプリンターをコントロールして、Word 2010と同じような印刷を行うことが可能になった。

Word Web Appで、表示すると、キチンとWordの印刷イメージが表示されている 編集中は、テキスト中心に画面表示がされている。ヘッダーやフッターのイメージが表示されていない 表示画面では、数式、グラフは表示されている
編集画面では、[記号]、[数式]などのマークが表示されているだけ。さすがに、Word Web Appでは、文書のイメージがつかめない Word Web Appで、表を挿入することもできる クリップアートも挿入可能
文字フォントは、OSにインストールされているフォントが表示されている Office Web Appは、保存というメニューが用意されていない。終了する時に、自動的に文書を保存するか確認してくる Offce Web Appでは、変更履歴を確認することが可能。古い文書に戻すこともできる

Excel Web App

 Excel Web Appでは、スパークラインを新規に作成できない。ただし、あらかじめローカルのExcelで作成したスパークラインは表示できる。この場合、セルの値を変更すればスパークラインも変化する。

 グラフに関しては、8月末のアップデートで、サポートされた。これにより、Excel Web App上で、各種グラフの作成が可能になった。ただし、グラフの種類などはExcel 2010に比べると少ない。

 関数に関しては、Excel2010とほぼ同じモノがサポートされている。ただし、Excel2010のように、関数を検索したり、関数の引数をインタラクティブに入力を促してくれるモードなどは用意されていない。

 また、ブラウザー上で動作しているため、マウスの右ボタンを使った操作は行えない。マウスを使って、セルを移動したり、コピーする機能はない。

 8月末のアップデートでは、セルに入力された計算式をコピーして、貼り付ける機能がサポートされた。単に、計算式だけをコピーするだけでなく、コピーした計算式に合わせて、列や行を自動的に変更してくれる(オートフィルハンドル機能)。

 なお、現在のベータ版では、図やクリップアートなどは、Excel Web App上では挿入や編集ができない。あらかじめ、図やクリップアートが挿入されているシートをExcel Web Appにアップロードした場合は、Excel Web Appで表示は可能だが、表示モードでは、図形やSmartArtが入っているシートそのものは表示されるが、図形やSmartArtは表示されない。

Excel Web Appでは、Excel2010と同じ関数が使用できる。ただし、Excel2010のようにウィザードは表示されないため、関数を知っていないと入力できない。 ローカルのExcel2010でグラフやスパークラインを作成すれば、Excel Web Appでも表示される。ただし、編集が出来ない。

PowerPoint Web App

 PowerPoint Web Appの一番のメリットは、ブラウザー上でPowerPointのスライドショーが行えることだ。このため、PCにPowerPoint 2010がインストールされていなくても、プレゼンテーションを行うことが可能になる。

 PowerPoint Web Appで、新規のプレゼンテーションを作成する時は、まずテンプレートの中にあるテーマを選択する。このテーマは、PowerPoint 2010のデザインのテーマと同じモノだ。ただし、現状のPowerPoint Web Appでは、途中でテーマを変更することができないので注意が必要だ。

 また、なお、あらかじめPowerPoint 2010で作成した文書をPowerPoint Web Appにアップロードして編集する場合、PowerPoint 2010で図やSmartArtのないスライドを作成した場合、PowerPoint Web App上では図やSmartArtを追加したり編集したりが現状ではできないので注意が必要だ。図やSmartArtをあらかじめ入れてあるスライドや、Web App上で新規に作成したスライドでは図やSmartArtを編集可能だ。このほか、現状ではPowerPoint Web Appでは、表の作成や編集がサポートされていない。

PowerPoint Web Appでプレゼンテーションを作成。いくつかのテーマが選択できる PowerPoint Web Appを使えば、ブラウザーでスライドショーを行うことができる
PCのPowerPoint 2010でSmartArtを挿入しておけば、PowerPoint Web App上で編集ができる SmartArtのライブプレビューはできないが、これだけのSmartArtが利用できる

OneNote Web App

 OneNote Web Appも、Word Web Appと同じように、閲覧表示モードと編集表示モードがあるが、OneNote Web Appでは両方とも同じ画面が表示される。

 ただし、OneNote Web Appではムービーやオーディオなどはサポートされていない。さらに、描画機能、画面の取り込みなどもサポートされていない。

 OneNote Web Appでは、新しいページや新しいセクションを追加することはできる。そこに、表、図、クリップアートも追加可能だ。

OneNote Web Appでも、ローカルのOneNoteのすべてのアイテムが表示・編集出来るわけではない。 OneNote Web AppとOneNote2010は、両方で変更があれば、自動的に同期する。友人知人とのデータ共有も便利になる

Office Web Appのメリット

 Office Web Appを使ってみて感じたのは、Office Web Appだけでは最終的な成果物としての文書を作成するには機能不足――というのが率直なところだ。少なくともベータサービスである現段階では、ウェブブラウザーを使ったOffice Web Appは、テキストの入力や修正用と考えて、図や表を使ったり、文書全体のデザインを編集したりといった作業は、PCのOfficeソフトを利用するなど、ある程度作業を切り分けて考えた方が良いだろう。

 Office Web Appの最大のメリットは、Office 2010と連動していることだろう。Word 2010、Excel 2010、PowerPoint 2010では、「保存と送信」で、直接Office Web Appに文書をアップロードすることができる。逆に、Office Web Appでは、PCのOffice 2010を直接起動して、Office Web Appに保存されている文書をダウンロードすることができる。

 ここでダウンロードされた文書をPCのOffice2010で編集して保存すると、自動的にOffice Web Appにもアップロードされる。つまり、ウェブサービスとソフトウェアがシームレスに連携している。

 Office Web Appとソフトウェアの連携という面では、OneNoteがもっとも進んでいるだろう。もともとOneNoteには、「データを保存する」という作業がない。編集途中にアプリケーションを終了しても、その時点のデータが自動的に保存されている。

 OneNote Web AppとOneNoteは、同じデータを共有することができる。しかも、共有するためにいちいちダウンロードしたり、アップロードする必要はなく、PCのOneNoteで「このノートブックを共有する」というボタンを押せば、自動的にオンラインストレージ上にも保存され、Office Web AppでもOneNoteのデータが共有される。その後は、OneNote Web Appで編集したり、PCのOneNoteで編集しても、データは自動的に同期される。

 とくに同期するための操作をしなくても、1つのファイルをウェブ上でも、PCのアプリケーションでもシームレスに利用できるというわけだ。同期し忘れるという心配も無用になる。

 もう1つのメリットとしては、Office Web Appでは、複数のユーザーで文書を共有し、共同作業するのが便利になる。Office Web Appでは、SkyDriveのアクセス権限がそのまま利用できるほか、直接メールアドレスを入力して、ユーザーを招待することもできる。

 従来は電子メールに文書を添付するなどして、複数の担当者間で修正点を上げてもらって誰かがまとめて修正するなどの作業が必要だったが、この共有機能を使えば、ドキュメントにそれぞれ直接コメントを書き加えてもらえばいいことになる。

 ただし、Word Web App、Excel Web App、PowerPoint Web Appなどは、コメント添付の機能が不十分なので、編集はPCにインストールしたOffice 2010を利用するのが最も効率的だろう。

 なお、Office Web Appでも、バージョン履歴、誰がどの部分を変更したかなどの履歴を確認することができる。

 Office Web Appは、Googelドキュメントのようにウェブブラウザー上で完結する、ドキュメント作成サービスというよりも、他ユーザーとのファイル共有や、オンラインストレージとローカルPCでファイル共有するための機能がメインで、PCのOfficeソフトよりも簡易な編集機能も付いていると考えるといいかもしない。

 もちろん、現段階ではあくまでベータサービスのため、将来的には機能が拡充されて、Office Web Appで、ローカルPC上のOfficeソフトなみの機能が提供される時が来るかもしれない。

 6月にサービスが開始され、8月末には早くも1度目のアップデートが行われ、こうしたマイナーアップデートは、3カ月ごとに行われるようだ。今後の機能強化に期待したいが、現段階で利用するにあたっては、Office Web App上でローカルPCでのOfficeソフトのように、文書作成作業がWeb上ですべてできるというような過度な期待は抱かない方がいいだろう。

別のユーザーが同じ文書にアクセスすると、きちんと文書の排他制御が行われている。このため、後からアクセスしたユーザーは、文書を開くことが出来ない Office2010には、Office Web Appに文書を保存する機能が用意されている。Office2010のファイルメニューの「保存と送信」で設定が出来る。これなら、Officeから直接、文書をクラウドにアップしたり、編集したりすることが可能

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(山本 雅史)

2010/9/3 06:00